ホーム > インタビュー&レポート > “ファンにとっての名曲”を全国各地に届けにいく 活動6年目のハラミちゃんが語るやりがいと、ピアノの可能性
私という存在を通して、最終的にピアノの良さに気付いていただければそれでいい
ーー昨年活動5周年を迎えられたということで、おめでとうございます!
「ありがとうございます」
ーー"ピアノを身近な存在にする"を掲げて活動してこられたと思いますが、そのことを実感する時はありますか?
「シンプルに『ハラミ定食 2~新メニュー揃いました!~』をリリースした時よりも、ライブに来てくださる方の人数が増えました。多分私がメディアに出させていただくことでピアノに興味を持っていただいたりしているのかなと。あとは、"コロナ禍で家でできる趣味を皆が探して、ピアノの売上が上がった"という記事を読んだ時、本当に僭越ながら "ハラミちゃんやよみぃさん、色んなピアノYouTuberの影響もあるかも"と取り上げていただいたり。自分の力なんてほんのちょっとだと思うんですけど、少しでもピアノを楽しむ人に貢献できているのかもと感じられた時は本当に嬉しかったですね」
ーー意識的にメディアに出てピアノを広げようという気持ちは、ずっとおありですか?
「そうですね。ピアノ業界という大きなものが盛り上がるために自分が前に出ていくというのは、自分の中で必要な要素だと思っていて。例えばフィギュアスケートって30年前はあまりメジャーじゃなかったと思うんですけど、浅田真央選手みたいなスターが出てくると、その業界ってすごく盛り上がるじゃないですか。"ピアノをもっと知ってほしい"という時にメディアに出させていただくのは、皆さんにわかりやすくピアノの魅力を届けられるひとつの大きな手段だと思っていますし、私という存在を通して最終的にピアノの良さに気付いていただければいいので、オファーをいただいた時は前向きに取り組ませていただいてます。」
日本でストリートピアノ文化が根付く難しさ
ーーハラミちゃんの名が知られてからの5年で、世の中のピアノの使われ方や見られ方も大きく変わったと思いますが、ご自身が影響を与えたという感覚はありますか?
「いやいや、全然。だけどたまたまYouTubeを見ていた時に、地方で話題のピアノ教室の特集動画がおすすめに上がってきて。ふと気になって無意識に再生したら、ちっちゃい子が一生懸命ピアノを練習してて、先生が"ハラミちゃんみたいになれるといいね"と言ってて。"ハラミちゃん"ってタイトルにもサムネにも書いてなくて、再生回数も200回ぐらいの動画だったんですけど、"今私の名前言った!?"と思って巻き戻して見たり。あとはピアノ教室に"J-POPを弾こう"とか"ハラミちゃんみたいに耳コピができるようになります"という"ハラミちゃんコース"ができているのをインスタグラムで見かけたり」
ーーそれは素敵ですね。
「自分もクラシックでずっとピアノをやってきて、基礎をしっかり学ぶ大切さはすごく感じているんですけど、"即興で弾けたら、普段聴いているJ-POPを楽しく弾けたらいいよね"というスタイルが少しずつ伝播できていると思うとすごくやりがいも感じますし、それが自分の活動の意味なので、涙が出るほど嬉しい気持ちです」
ーー逆に、ピアノを広げるために"まだ足りないな"と思うことはあったりしますか?
「なんでしょうか。自分がもっと頑張るしかないって感じなんですけど......ピアノという名称だとちょっと大きいですが、日本人との相性も結構ある気がしていて。海外はストリート文化への許容が全然違うんです。日本だとどうしても騒音問題や迷惑行為みたいなネガティブな部分もあったり。例えば自分が切羽詰まってる時に音が聴こえてきたら"やだな"と思う瞬間があるのも理解できるんですけど、海外はもっと街中に音楽が溢れてる。そういった意味だと、日本は今ストリートピアノの音量を小さくしていたり、防音の板がつき始めたり......もちろん一部ですけど、どんどん厳しくなっているのを感じてい て。国民性と言えばそれだけだし、マジョリティ、マイノリティ、どっちが多いという話でもないんですけど、文化として根付くまではなかなか難しいなとも感じます」
ーーなるほど。
「でも自分にとってストリートピアノは、日常の中で音楽を共有できるすごく素敵な場所。フランス、ブラジル、イギリスでも演奏させていただいたんですけど、ストリートピアノという無料で楽しめる音楽の場を、皆さんとても大切にされていて。海外は人種が多様なので、ストリートピアノの周りでは肌の色や貧富の差も関係なく、本当に平等に音楽を楽しんでいる。そんな姿を見て、ストリートピアノの素敵さを再確認しました。日本でも全然可能性はあると思っているので、そこは諦めたくない部分でもありますね」
明確に1人のために弾くピアノは、どんな音になるんだろう
ーー現在開催中の『ハラミちゃん 全国ピアノツアー2025 ~あなたの街に名曲お届けするぬ!~』は、お米さんとの連動企画("あなたが思う名曲&その曲にまつわるエピソードや思い出"を募集し、その中からセットリストを構成)ということですね。前回のインタビューでお話を聞いた『ハラミ定食2 全国ツアー2022 ~新メニューお届けするぬ!~』は昼夜2部制で、夜の部はお米さんのリクエストで楽曲を演奏されていたとおっしゃっていましたが、それをしっかりやるイメージですか?
「そうですね。3年前のツアーは、その場でリクエストを受けてただ私が即興で弾く感じで、アレンジも作り込んでなかったんですけど、今回は事前に"皆さんが人生で出会った名曲"をエピソード付きで募集していて。本当にたくさん応募をいただいて、全て目を通しているんですけど、"こんなに辛い体験をしていたんだ、嬉しいことがあったんだ"という曲に紐づく思い出が、思ったより皆さんディープというか。ほんとに辛かったことってなかなか人に話せないじゃないですか。でもある意味匿名で、曲にまつわる色々な想いをハラミに話してくださって。もう応募フォームを見てるだけでもボロボロ泣いてしまうぐらい、皆様の人生を感じるものがたくさんあります。その中からセットリストを構成することで、私は明確に誰かのためにピアノを弾ける。皆様のエピソードを抱きしめながら弾くという経験は初めてですけど、その方を明確に思うことで、自分の中では"こう弾きたい"というイメージがすごく想像できて、いつもと違った演奏ができるんです。すごくやりがいを感じますし、楽しいです。あと今回は全国21カ所でライブを行うんですけど、全てセットリストが違うんです。関西は奈良・大阪を終え、次は兵庫でライブがあるんですけど、どの公演も一緒のものはないので、ぜひおかわりしていただきたいです(笑)」
ーー応募フォームに"なるべく細かい理由が伝わる方がありがたい"と書かれていましたが、解像度高く背景を知ることで演奏が変わったり、より気持ちが乗ったりするということでしょうか?
「そうですね。"この曲好きです"だけだと、なぜ好きなのか、いつ好きになったのかがわからないので、そういうのも知りたいというか。なるべく詳細を知ることで、私もよりその方に感情移入できるので。4コマ漫画より2時間の映画の方が感情移入できて泣けるのと同じで、描写が細かい方が自分にとっては表現しやすく、その方の像を浮かべやすいので、自分で注釈をつけちゃいました(笑)」
ーー実際に詳細なエピソードが届いていますか?
「より細かくきています。匿名だし、出会ったことはなくても"この年代の女性の方がこういうディープな経験されたんだ"と思いながら曲を聴くと、既に涙が止まらないです」
ーー同じ曲を挙げてる人でも、きっと理由は違いますもんね。
「それもすごく面白くて。恋愛の時に聴いてる方もいれば、仕事の応援歌になってる方もいたり。"名曲"と言うと、有名な曲のイメージがあると思うんですけど、有名無名関係なく、その人が人生で出会った名曲が"名曲"だと思うので。有名な曲や皆が知ってる曲をメインで弾くんですけど、"実はこんな名曲があるんだよ"という曲も、弾いています」
ーーハラミちゃんが"誰かのために弾きたい"と明確に思われたのは、どのタイミングでしたか?
「もともと私に"ピアノを弾ければそれでいい"とか、"内側から溢れ出る自分の想いを表現したい"という気持ちがあまりなくて。それよりも、誰かが求めてるものを弾きたい想いがすごく強いんです。たまに"それは疲れませんか?"と言われるんですけどむしろ逆で、そっちの方が自分にとっては楽というか。小学校の時から友達のリクエストに応えて曲を弾いて、皆が笑顔になってくれたり仲間が増えることが自分の喜びだったので、今お客様に対してもその延長線上でやっている感覚なんです。"この曲をハラミちゃんに弾いてほしい"という方のために全力で弾くことにやりがいを感じますし、届け先がいる方が自分の心が動いたり、あたたまることが多くて。今まではお客様がなんとなく求めているような音楽をランキング形式でやっていたんですけど、匿名とはいえ"ピンポイントで1人のために弾くピアノって、どんな音になるんだろう"というのも、6年目の挑戦として出会いたかったというか。今までとまた違ったものに会えるかなと思って今回のツアーを企画しました」
ーーちなみにハラミちゃんにとっての名曲の定義と、具体的な曲名があれば訊いてみたいです。
「私だけなのか、人間がそうなのか、日本人がそうなのかわからないんですけど、人生を振り返ると、やっぱり辛い時に救ってくれた曲は印象に残りやすいですね。自分は半年間引きこもって何もできない時期に聴いていた、ハンバートハンバートさんの『虎』です。山月記がテーマの曲で、"今日は何もできないし、昼からお酒を飲んで虎になって溺れる"みたいな歌詞なんですけど。当時の私は"頑張れ頑張れ"と応援される曲よりも、ダメダメな自分が描かれている曲の方が仲間がいるような気がして、すごく心強かったんです。おふたりのハーモニーも楽曲も、本当に素晴らしくて。毎日『虎』を聴いてボロボロ泣いて救われていたので、自分にとっては名曲だし、私なら応募フォームにこの曲を書きますね」
お米さんという存在が、私を満たしてくれる
ーーそれこそお米さんとハラミちゃんの関係性はとても深いですよね。毎年全国ツアーを開催されたりと、距離の近い関係を築いてこられたと思いますが、これまでお米さんの行動や言葉で、"そこまで見てくれてたんだ"とびっくりするようなことって何かありました?
「基本的にめっちゃびっくりするんですけど、すごいなと思ったのが、3年前の全国ツアー(『ハラミ定食2 全国ツアー2022 ~新メニューお届けするぬ!~』)のアンコールで、私がご当地の被り物を被って出てくる演出をやったんです。ツアー1カ所目か2カ所目が、たまたま被り物がしやすい土地だったんですよ。例えば北海道はメロン、大阪はたこ焼き、沖縄はパイナップルとかご当地をイメージするものがあるじゃないですか。でも被り物がない地域も結構あって。"最初にノリで被ったものの、被り物がないところがほとんどだな"となっていたら、3カ所目からずっと、お米さんから匿名で被り物が届いて。しかもクオリティも高くて。おかげで最後まで毎公演で被り物ができました。だから家に被り物コレクションがたくさんあるんです」
ーーそれはすごい。ロビーに贈られるお花もすごいですね。
「2022年の『ハラミちゃん47都道府県ピアノツアー』は電車がコンセプトだったんですけど、花の周りにプラレールが走ってピカピカしてたり。お子様がすごい喜ん で、映えスポットになってました。私たちが公式で一生懸命作ったパネルよりも、全然そっちの方が人気で。お米さんがみんなでお金を出し合って作っているので、金銭の力でも負けるという(笑)」
ーーそれだけ愛されているんですね。
「ありがたいですね。"誰かのために弾いてるのが好き"とさっき言ったんですけど、結局それって自分のためで。要するに、誰かに弾いてる自分が楽しいんですよ。正直、お米さんという存在がいることによって私がめっちゃ満たされているので、私が幸せなだけでこの活動は十分やる意味が成り立ってるのに、ファンレターやDMで"この時救ってもらいました"とお便りをいただくんです。でも私はほんとに救った記憶がなくて。ただ自分が幸せで、楽しいからやり続けてきたことが、色んなところで皆さんの心にちゃんと届い て、いつの間にか感謝していただく。こんなにWin-Winなことはないですし、"自分が楽しむことってやっぱりすごく大事なんだな。意外と皆に伝わるのかな"と思っていて。だから、自分が笑えなくなったらこの活動は終わると自分の中で決めています。"自分が辛くなってでも、周りが求めてるからやらなきゃ"というのは自分のポリシーには合わないので、それは活動を辞める時や休む時なのかなと思っています」
ーー自分が笑顔で幸せでいることが活動を続けられる秘訣だと。素敵なお話ですね。
「ありがとうございます」
将来は自分のピアノ教室を開いてみたい
ーー今回のツアーでは奈良・大阪に来てくださいましたが、地域ごとにお米さんの盛り上がり方は違いますか?
「やっぱり大阪の方は全体的に親しみやすい雰囲気がありますね。親戚っぽい感じというか、すごくあたたかく、ほんとによく笑ってくださるし、朗らかで太陽みたいな方が多いイメージです。奈良の方はちょっとおっとりめ。控えめじゃないんですけど、割と静かに見守ってくださる感じ。でも内なる熱さがあるというか、手拍子はどこよりも大きくて、すごく前のめりに楽しんでくださいます。兵庫公演はこれからですが、兵庫の方のイメージは、マダムというんですか?皆さんすごく綺麗な格好で良い香りで、会場がフローラル。"極上ハラミ定食券"のチケットは、LIVE終演後にお客さんと私でツーショットを撮れるんですけど、昨年の神戸公演は本当に忘れられないぐらい皆さんの気品がすごくて、"これが神戸か"となりました。京都の方もとてもあたたかいんですけど、大阪とは違う言語化しにくい微妙な差があります。関西にちゃんと住んだことはないけれど、住んでいたらわかるであろう違いを疑似体験できて、すごく楽しいです」
ーー最後に、活動6年目のハラミちゃんは今何に1番興味があるか訊かせてください。
「色々ありすぎるんですけど、将来どこかで自分でピアノ教室をやってみたいなと夢見てます。やっぱり自分で自分の好きな曲を弾けるって、すごく楽しいんですよ。"楽器を弾けるのは特殊能力だ、才能がある人が弾くもので自分はそれとは違う"と思っている方が多いんですけど、指1本でも自分の好きなメロディーを奏でた時の喜びはとてつもなくて。それを皆にもっと味わっていただきたい。自分もクラシック出身なので、王道クラシックを習って基礎を固めるレッスンの大事さはもちろんすごくわかっているんですけど、全員が全員そのコースを歩む必要もないと思っていて。もっと趣味というか、本当に楽しく基礎的なもので、気軽に自分の好きな音楽を奏でられる喜びを学べる場所が自分で作れたらいいなと妄想しています。"ピアノを身近にする"というのももちろんなんですけど、もっと大きく言うと、私はやっぱりピアノ人口を増やしたい。だから自分がそういった教室を開くのはすごく憧れますし、人生の中でやってみたいなと思います」
Text by ERI KUBOTA
(2025年8月 6日更新)
2640円(税込) / AVCD-63532
《収録曲》
01. 祈りのワルツ
02. シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~
03. WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント~
04. ミックスナッツ
05. 群青
06. アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN)
07. あの素晴しい愛をもう一度
08. 雨 (Live Version)
09. 世界でいちばん熱い夏 (Live Version)
10. 何度でも (Live Version)
11. みんなのうた (Live Version)
12. ありがとう (Live Version)
ハラミちゃん…ポップスピアニスト。絶対音感、即興演奏などの特技を活かし世界各地のストリートピアノでの演奏動画が話題となり、YouTubeのチャンネル登録者数は230万人超、動画総再生回数は約9憶回!デビューアルバム「ハラミ定食~Streetpiano Collection~」はピアニストのインストアルバムとしては快挙のビルボードジャパン週間アルバムセールスランキング1位を獲得。2022年には女性ピアニストとして15年ぶりに日本武道館での単独公演を成功させ、2023年には47都道府県ピアノツアーにて5万人を動員。若いファミリー世代から高齢の親子二世代まで幅広く支持を得ており、TVをはじめとしたメディアにも多数出演し、ピアノ絵本や楽譜の監修など、"ピアノを身近な存在にする"を目標に幅広く活動中!現在は、全世代が楽しめる名曲をお届けする「ハラミちゃん全国ピアノツアー2025~あなたの街に名曲お届けするぬ!~」を全国21ヶ所で開催中。
【香川公演】
▼8月11日(月・祝) サンポートホール高松 大ホール
▼8月16日(土) 16:00
神戸国際会館こくさいホール
一般ハラミ定食券-7300円
一般ハラミ定食券(こども学生割引)-6300円(公演日時点で3歳~18歳(高校生)が対象、要身分証明書)
特上ハラミ定食券-9800円(メッセージカード、限定グッズ付(会場お渡し))
数量限定!極上ハラミ定食券-29000円(メッセージカード、限定グッズ付(会場お渡し)/終演後ツーショット撮影)
※3歳以上有料/3歳未満は膝上鑑賞無料(但し席が必要な場合は有料)。開場・開演時間は変更になる場合がございます。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888
【広島公演】
▼8月17日(日) 広島上野学園ホール
【北海道公演】
▼8月23日(土) 札幌文化芸術劇場hitaru
【北海道公演】
▼8月24日(日) 旭川市公会堂
【福岡公演】
▼8月30日(土) 福岡国際会議場 メインホール
【熊本公演】
▼8月31日(日) 熊本城ホール シビックホール(多目的ホール)
【栃木公演】
▼9月6日(土) 栃木県総合文化センター メインホール
【静岡公演】
▼9月7日(日) 静岡市清水文化会館(マリナート) 大ホール
【神奈川公演】※追加公演
▼9月12日(金) 鎌倉芸術館 大ホール
【山口公演】
▼9月15日(月・祝) 下関市民会館 大ホール
【沖縄公演】
▼9月21日(日) 琉球新報ホール
【東京公演】
▼12月7日(日) 東京国際フォーラム ホールA
ツアー特設サイト
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Web Site
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