ホーム > インタビュー&レポート > TENDRE、藤井怜央 (Omoinotake)が グランドピアノで弾き語る贅沢な夜 『めったにない』ライブレポート
会場は、オール着席スタイルでステージの真ん中にはグランドピアノがセッティングされている。座ってじっくりと音に浸れそうな予感とともに、どんなセットリストになるのかと期待が高まる。チケットはソールドアウトとなっていて、後方には当日券で訪れた立ち見のお客さんも。
友達の家に遊びに来たように、気さくに手を振りながら登場したのは、藤井怜央(Omoinotake)。白シャツ姿で、「みなさんこんばんは!」と爽やかに挨拶すると、グランドピアノの前に座り「彼方」のイントロを奏でる。木漏れ日のようなピアノの音色はどこまでもピュアで、伸びやかな歌声が神々しく会場を満たしていった。暖色の照明とともにあたたかい雰囲気をまとう「Bitter Sweet」のあと、大きな拍手を受け、天を仰ぐと「心音」へ。至福のラブソングが観客の心を掴んで離さない。息をのむようなハイトーンヴォイスの美しさに聴き入ってしまった。
3曲を歌い終えて、「ありがとう!」と力強く伝えた藤井は、「弾き語りをやる機会はなかなか無くて...。いつもは、ステージ真ん前で、みなさんの方を向いてお届けしているので、横を向いてMCをするスタイルが慣れないんですけど」と照れくさそうに挨拶。「太朗さんがやっていたバンド、『ampel』を2014年ごろに下北沢に観に行ったのが最初です。色気のある佇まいがかっこよくて」とTENDREとの出会いを振り返った藤井は、「いつか一緒にやる機会があればと思っていたんです。いいツーマンになりそうですね!」としみじみ。バンドでは何度も立ったJANUSのステージだが、「グランドピアノでの弾き語りは初めて!」と笑顔を見せた。今日は、まさに"めったにない"ライブになりそう。最近は、曲作りモードで人前に出る機会が少ないということもあり、お喋りが止まらない様子だった。
ひときわ優しい歌声が染みた「Better Half」では、暗めの照明とスポットライトにより、没入感が生まれていく。ジャジーな旋律に誘われた「夏の幻」では、センチメンタルな情景が浮かび、「Pieces」では、深みある低音で魅了。ささやくような息使いによる繊細な歌唱など、弾き語りで際立つ表現力の豊かさに客席は釘付けとなった。
MCでは、「最近、TVの『のど自慢』で歌ってる人を見たら泣いちゃうんです」と明かした藤井。"歌を好き"という純粋な想いに気づかされるといい、曲作りがうまくいかないときも「音楽が好き」という気持ちに改めて向き合っているという。そして、「やっぱり今日、歌うのは楽しいなと思いました」と充実した表情を見せ、「エネルギーや癒しをもらいに来ているみなさんに、自分の好きな音楽で何か力になれたら」と語りかけた。そんな素敵な相互関係を生み出すことができるライブ空間は、彼にとって特別なもの。想いを込めて「ひとりごと」へ続けると、観客は藤井の言葉と歌を重ね合わせた。
「オーダーメイド」では、力強いロングトーンで圧倒。一息つくとラストソングは「第66回 輝く!日本レコード大賞」で優秀作品賞を受賞した代表曲「幾億光年」だ。あふれるポップネスとメロディラインの美しさに、どっぷり浸る。グランドピアノの弾き語りで、温度を感じながら全身で音を浴びる至福のひとときとなった。最後にバンドでの来阪も告知すると、また会える日を楽しみに、オープニングと同じように手を振ってステージを後にした。
スタンバイ中に、肩のストレッチをすると「よしっ」と気合をいれたTENDRE。冒頭で、「すごかったですね。怜央くん!怜央くんに拍手」と藤井の素晴らしいライブを讃えると、イチファンとして客席で聴く準備万端の本人が立ち上がり、観客からは驚きの声があがる。「俺が一番びっくりしたわ!(笑)」と笑顔のTENDREは、「グランドピアノが真ん中にあると、何かの発表会みたいですね」とはにかみながら、リズミカルなタッチが心地よい「DOCUMENT」でライブをスタートさせた。親近感のあるまろやかな歌声が会場を満たし、曲が終わると「こんな感じです!」と語りかけ、軽やかに距離を縮めた。
続く「NOT EASY」では、「"楽じゃないよな"ってことを歌ってる」とTENDRE。数年前のパンデミックで「何に向き合うのが正解なのか」と自問自答したといい、自身の曲作りの指針となる部分を語ってくれた。TENDREにとっては、珍しい日本語詞の曲である「胸騒ぎ」では、「みなさん恋をしたことはありますか?」と呼びかける。「心がザワついたときを思い出して聴いてください」とイントロを弾き始めるが、自分のMCに気恥しくなって演奏を中断する場面も(笑)。そんな風に弾き語り特有の緊張感を上手に緩めながら、心地よい空間を作り出していった。
MCでは、藤井との出会いやラジオでの共演を振り返り、「いろんな縁がつながって今日があるんだなと...。今日企画してくれた人に今一度拍手を!」とこの日、弾き語りライブで再会できたことに改めて感謝を伝えた。
そして、中盤はベーシストである父と作り上げた「MOON」で月灯りのような優しいピアノとリンクした歌声を響かせ、「HOPE」では、ピアノと対話するようなサウンドスケープが会場を隅々まで癒していく。ジャズシンガーである母に捧げる「GIVE」は、マイクなしで披露。目の前に立つ母の姿を想像し、優しい眼差しで語りかける感動的な場面。生の歌声を聴き洩らすことのないように、物音を立てずに聴き入るみんなの集中力もすごい。
いよいよライブも終盤となり、去年末のワンマンライブ『TENDRE ONE-MAN LIVE 2024 "TARO"』で初披露した「HAPPY END」に"終わりはすべての始まりである"というメッセージを込めるTENDRE。「そうだ!今日手拍子してないですよね」と一体感を高めると、キラキラとミラーボールが回り流れたこの上なくやわらかい時間に笑顔があふれた。「"オモイノタケ"をこれからも話していこう!」とアドリブのフレーズをふんだんに盛り込んだ「hanashi」では、"めっちゃ好っきゃねん"と大阪弁のサービスも。「怜央くん一緒にやってくれてありがとう」と、会場の本人にも語りかけ、人柄がにじみ出るパフォーマンスでライブを締めくくった。
アンコールの拍手を受けて、TENDREがピアノ、藤井がマイクの前にスタンバイ。藤井は「素敵なライブですね」と振り返ると、お互いに恐縮しながら褒め合うふたりだった。「また大阪でやりたい」と、大阪での再会を約束すると、貴重なコラボで披露したのは、玉置浩二の「メロディー」のカヴァーだ。TENDREが前奏を奏で、藤井がしっとりと歌い始めると一瞬で空気が変わる。後半のハモリパートでは、ふたりの声の親和性が際立ち、唯一無二のふくよかな響きを生み出していた。お互いを讃え合うと、最後に肩を組み、お客さんの拍手を気持ちよさそうに受け止めるふたり。ライブ後は、会場を出るお客さんから「また大阪でやってほしいなあ」「今日来てよかった」という声が聞こえてきて、誰もが素晴らしい夜の余韻にひたっていた。
Text by 岡田あさみ
Photo by 松本いづみ
(2025年7月 8日更新)
●藤井怜央 (Omoinotake)
01. 彼方
02. Bitter Sweet
03. 心音
04. Better Half
05. 夏の幻
06. Pieces
07. ひとりごと
08. オーダーメイド
09. 幾億光年
●TENDRE
01. DOCUMENT
02. NOT EASY
03. 胸騒ぎ
04. MOON
05. HOPE
06. GIVE
07. HAPPY END
09. hanashi
EN. メロディー(cover with 藤井怜央)
●Omoinotake
「Omoinotake ONE MAN TOUR 2025」
【島根公演】
▼9月23日(火・祝) 島根県民会館 大ホール
【愛知公演】
▼10月3日(金) Zepp Nagoya
【福岡公演】
▼10月5日(日) Zepp Fukuoka
▼10月12日(日) 18:00
Zepp Osaka Bayside
1F全自由(一般)-6500円(整理番号付、ドリンク代別途要) 2F指定席-7000円(ドリンク代別途要)
※3歳未満は入場不可。3歳以上は有料。
※開場/開演時間は変更となる場合がございます。
※客席を含む会場内の映像・写真が公開されることがあります。
※録音・録画機材(携帯電話)使用禁止。
[問]GREENS■06-6882-1224
【石川公演】
▼10月13日(月・祝) 本多の森北電ホール
【宮城公演】
▼10月19日(日) 電力ホール
【東京公演】
▼10月25日(土) Zepp Haneda(TOKYO)
【北海道公演】
▼11月1日(土) Zepp Sapporo