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デビュー15周年を迎えた森 恵
苦手を克服しながらミュージシャンとして進化
「ミュージシャンの役割は、良い音楽を途切れさせないこと」

デビュー15周年を迎えた、シンガーソングライターの森 恵。2024年には、これまでの彼女の作風とはまた異なる打ち込み曲をベースとした実験的なアルバム『WORDCLOCK』をリリースし、ミュージシャンとしてさらなる進化を遂げた。そんな森は「MEGUMI MORI 15th Anniversary」と題し、弾き語りによる『森 恵 弾き語り LIVE TOUR 2025』と、バンド編成で楽曲を届ける『森 恵 LIVE TOUR 2025〜Overcome Weaknesses!〜』の二つのアニバーサリーツアーを実施している。そこで今回は両公演の見どころや、公演タイトルにちなんだ話題などについて話を訊いた。

――2024年にフルアルバム『WORDCLOCK』がリリースされてから、1年が経ちました。ファンのみなさんとしてはそろそろ新しい作品を手にしたいタイミングかと思いますが、いかがですか。

今ちょうど、『WORDCLOCK』とはまた別の角度の曲を書いています。『WORDCLOCK』は打ち込みなど、生バンド以外の要素が多かったですが、現在作っているものは真逆なんです。アコースティックギターの音色の美しさや、声の音色を特徴的に色付けしたものなどを作っています。まだ作り進めている途中なのですが、また違った世界観をお届けできるのではないでしょうか。

――森恵=ギターという原点的な印象に近い作品になりそうですか?

アコギ一本の弾き語りというイメージに近いかもしれません。アコギに特化したオリジナル作品は意外と少ないですし。なので今、いろんなギターを触って演奏しています。もちろん、アコギ以外の音も入ってくる可能性もあるのですが、そういった音も自分で作ったりしています。『森 恵 弾き語り LIVE TOUR 2025』でもルーパー(※楽器などのフレーズを録音・繰り返し再生できる機材)を使ってライブをおこなうなど、アコギ中心だけどいろんなアイデアと経験値をまじえながら音楽を表現しています。自分の頭のなかにある音を、自分で具現化する作業にチャレンジしているんです。

――お話がありましたが、4月よりスタートした『森 恵 弾き語り LIVE TOUR 2025』はどのような感触のツアーになっていますか。

まさに旅という感じです。特に弾き語りツアーは、もともと酒蔵だった磔磔(京都/1019日開催)や、文化財などいろんな場所でライブができたりします。毎回、ご来場くださるみなさんの心がほぐれるようなライブになっていますし、一体感も生まれ、私も「この旅を楽しんでいるよ」とお伝えできる雰囲気が流れています。

――『森 恵 弾き語り LIVE TOUR 2025』ではカバー曲のリクエストもおこなっていますよね。

事前に各会場でリクエストを受け付けて、カバー曲を披露しています。リクエストには、私が知らない曲もたくさんあるんです。初めてチャレンジする曲を通して「あ、こういう曲調もいいな」と新しい発見もあります。「こういうコード進行は自分の曲ではやったことがないな」とか。そこで自分の曲作りにもどん欲に取り入れてみたり。

――森さんはこれまでカバー曲もたくさんリリースされていますが、曲作りにも好影響があるのですね。

カバー曲からヒントを得るのって、人によっては「オリジナリティに欠けるのではないか」とマイナスなイメージを持つかもしれません。もちろん、そのまま引用するのはいけません。ただ私の場合は、その曲の魅力的なところを自分なりに解釈するんです。そして、あくまで曲作りの発想として生かしていくんです。

――あくまでヒントを得るということですね。

以前はそういうやり方に抵抗したい時期がありました。これまでにないような、まったく別のものを考えて作ろうとしていました。だけど活動するなかで自然と「いいものはいい。いろんな曲を聴いてその良さを自分なりに解釈して表現したい」と思うようになりました。ミュージシャンの役割の一つは、良い音楽を途切れさせないこと。この15年の活動のなかで、そういったことを恐れずにできるようになりました。

――一方、バンド編成の『森 恵 LIVE TOUR 2025〜Overcome Weaknesses!〜』は、「苦手や弱点を克服する!」というストレートな意味を持つツアータイトルですね。なんだかちびっ子が成長するにつれて嫌いな食べものを克服していくような光景が浮かびました!

そういえばたしかに、私は以前に比べると音楽の食わず嫌いがなくなりました!前はすごくあったんです。「歌詞には英語を使いたくない」とか。今となってはなんであんなに頑なだったんだろうって思います。私は英語が得意ではないので、英語の歌詞を使うと表現しきれない気持ちがあったんです。ただ、自分が洋楽を聴いているときのことを思い返すと、メッセージ性以上に音楽としての美しさを重視していました。歌詞も、正確に訳せない分、自分なりに解釈を膨らませて楽しんで聴いていたんです。私はもともと、曲を聴いて「歌詞が刺さりすぎてつらい」ということがあったのですが、そういう意味で洋楽は気持ちを軽くして聴くことができたんです。

――なるほど。

そういった自分の経験もあり、曲を作るとき、日本語で直接的に言いたくないときは英語にしてみるようになりました。私は弾き語りのスタイルが中心で、声も強い方なので、メッセージが生々しくなりすぎることがあると自覚しています。自分自身の気持ちを軽くするためにも、英語など、いろんな言葉を取り入れて曲にしていくようになりました。そして言葉の使い方次第で、音楽表現の可能性を追求できるようにもなりました。

――そうやって音楽的な弱点や苦手を乗り越えていったわけですね。

活動をしていると、そんなことの繰り返しです。音楽を始めたときの方が、まだ知識もないから、自分の好きなようにやれました。でも活動を重ね、素晴らしいミュージシャンやスタッフのみなさんと接するうちに、自分の力の足りなさを痛感していきました。自分の世界のなかだけで音楽を作ったり、発言したりしてはいけない。もっと吸収しなきゃいけない。そう考えるようになったんです。その一つとして、いろんな楽器に触るようになりました。

――いろんな楽器を触ったり、演奏したりすることで見識も広がったのではないですか。

そうなんです、「ベースってこんなに難しかったんだ!」と驚いたり(笑)。どの楽器もそうですが、バンドのなかでその楽器がどれだけ重要な役割をになっているのか。実際に触ることで気付かされました。知識としてそのルーツをたどるのも大切だけど、それだけでは"世界"は生まれない。そしてたどり方一つで"世界"が変わる。「私はこんなに素敵なミュージシャンたちと音楽を作れているんだ」という考えを大事にしたいからこそ、知らない楽器に触れるということを今後もやっていきたいです。

――そうやって少しずつ、いろんなものと向き合ってきて今があるんですね。『森 恵 弾き語り LIVE TOUR 2025』はもちろんのこと、『Overcome Weaknesses!』でも、そんな森さんの"現在"が感じられそうです。

Overcome Weaknesses!』の大阪公演は、817日にOSAKA MUSEで実施します。大阪のみなさんの熱量や盛り上がり方は特別なものがありますし、急角度でガッとテンションも上がっていく。そういうライブの空気を感じられることは、演奏している私たちも本当に幸せなこと。『WORDCLOCK』の曲をバンドでどのように表現するか。グルーヴ的なものはそのライブでしか作り出せないですし、そこでしか味わうことができません。ですので、ぜひ楽しみにしていてください。

Text by 田辺ユウキ




(2025年7月15日更新)


Check

Live

「森 恵 LIVE TOUR 2025 ~Overcome Weaknesses!~」

PICK UP!!

【大阪公演】

▼8月17日(日) 15:30
OSAKA MUSE
全自由-6600円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[共演]大坂孝之介(p)/後藤秀人(g)/浜崎賢太(b)/原治武(ds)
※3歳未満は入場不可。3歳以上からお一人1枚ずつチケットが必要になります。
[問]サウンドクリエーター■06-6357-4400

【愛知公演】
▼8月23日(土) 名古屋クラブクアトロ


「森 恵 弾き語り LIVE TOUR 2025 ~ずっとここは私の思い出の場所~」

【愛媛公演】
▼9月6日(土) 萬翠荘
【高松公演】
▼9月7日(日) 栗林公園 商工奨励館
【神奈川公演】
▼9月27日 (土) 県民共済みらいホール
【札幌公演】
▼10月11日(土)・12日(日) PLANT

PICK UP!!

【京都公演】

▼10月19日(日) 15:30
磔磔
自由席-5800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※3歳未満は入場不可。3歳以上からお一人1枚ずつチケットが必要になります。
[問]サウンドクリエーター■06-6357-4400

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