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ライブハウスで繋がる10年の絆
- TENDOUJI&HOLIDAY! RECORDSが贈る
『Salad Days』特別座談会

昨年、結成10周年を迎えたTENDOUJI。ライブハウスという現場を誰よりも楽しみ続けてきた彼らが、盟友であるHOLIDAY! RECORDSとともに2025年9月、ライブイベント『Salad Days TENDOUJI & HOLIDAY! RECORDS presents』を開催する。会場は、活動初期から多くの思い出を重ねてきた大阪・南堀江のSOCORE FACTORY。イベントにはナードマグネットやベランダといった気心知れた仲間たちも集結し、特別な二日間になること間違いなしだ。 今回はTENDOUJIのアサノケンジとモリタナオヒコ、HOLIDAY! RECORDS店主の植野秀章、SOCORE FACTORY店長のKasagoの4人に集まっていただき座談会を実施。“何でもあり”ではなく、自分たちの美意識を貫き続けてきたTENDOUJI。その10年の歩みや今回のイベントについて、思う存分語っていただいた。

SOCORE FACTORYはフラットな関係で楽しめる場所



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ーー植野さんはTENDOUJIと最初に出会った時のこと、覚えていますか?

植野:はっきりとは覚えていないのですが知ったきっかけは、もう8年か9年前。THISTIME RECORDSのディストロで販売しているのを見て知ったのが最初だと思います。最初は、東京のインディーロックやギターポップ、パワーポップが好きな、いわゆるマニアックなバンドという印象でした。実際に初めて直接関わったのは、天王寺Fireloop(現・寺田町Fireloop)でのナードマグネットのワンマンライブの時だったと記憶しています。

アサノ:2015年頃だったかな。その時はベースのヨッシー(ヨシダタカマサ)も一緒でした。その時、藤澤さんが関東のナードマグネットのファンを一台のバンに乗せて、みんなでナードマグネットのワンマンライブを観に行くというツアーのような企画をしていたんです。それでワンマンの前日に藤澤さんから「お前らも来るよね?」と電話があり、特に予定もなかったので参加することにしました。

ーーその頃、HOLIDAY! RECORDSのことは知っていましたか?

アサノ:あまり覚えていないですね。本当に何も知らない状態でバンドを始めたし、藤澤さんも偶然に知り合ったので。そこからナードマグネットのことを知り、HOLIDAY! RECORDSの存在も知った、という流れだったので。もしかしたら初めて秀章に出会った時は、HOLIDAY!のことは知らなかったかもしれません。

ーーKasagoさんはTENDOUJIのことをどのタイミングで知りましたか?

Kasago:SOCOREで初めて会ったと思います。確かRock'n Roll Birthdayというイベントでした。TENDOUJI、ドミコ、Tempalay、DENIMSが出演していて、夏休み中の学生をターゲットにした平日のイベントだったのですが、会場は満員で、とても印象に残っています。あと、そのときはドラムの音がすごく小さかった印象があって、「ロックバンドなんだから、もっと思い切り叩いたらいいのに」と感じたのを覚えています。ただ、2回目に来たときは爆音になっていて驚きました(笑)。

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ーー今回のイベント、SOCORE FACTORYでやりたいと言い出したのはTENDOUJI側からの希望だったそうですね。

モリタ:大阪でライブをした際にKasagoさんと会い「SOCORE FACTORYでやりましょう」という話になったことが、今回のイベントにつながりました。バンドを始めて間もないころ、最初に自主企画を開催したのもSOCOREでしたし、仲の良いバンドを呼んで一緒にイベントをやったことなど、本当にたくさんの良い思い出があります。

植野:僕も一番印象に残っているTENDOUJIのライブはSOCOREですね。たしか、プププランドも出演していた時でした。

Kasago:3周年の時かな。キイチビール&ザ・ホーリーティッツやtetoも出演していた......。

植野:それだ!たしかtetoの大阪初ライブだった気がします。そのときのライブを観て、「TENDOUJIってこういう楽しみ方をするバンドなんだ」と気付きました。あまりにも楽しくて、TENDOUJIのライブ中にスミノフアイスを5本くらい飲んでしまったんです。このときの経験があったからこそ、TENDOUJIのことが本当に好きになりました。

10年も活動していると、「今日のライブはどうでした?」と聞かれることも増えて、バンドと真剣に向き合うことも多くなりました。だから何も考えずに純粋に楽しめるバンドはどんどん減ってしまって。その中でTENDOUJIは、当時のあの楽しい感覚を今でも思い出させてくれる存在です。

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ーーTENDOUJIのお二人にお聞きします。SOCORE FACTORYで特に印象に残っていることはありますか?

モリタ:まずKasagoさんがとても優しかったことが、強く印象に残っています。それから、会場の床下にスピーカーが設置されていて、「かっこいいでしょ?」と自慢げに見せてくれたのも覚えています(笑)。でも初めて会った気がしなかったですし、緊張もせずすぐに自然に会話ができました。そういうタイプの人ってあまりいなかったので、とてもやりやすかったですね。会場の音もすごく馴染む感じがして、居心地の良い場所です。

アサノ:楽屋も広いですし、出演していたバンドも友達ばかりだったので、本当に遊びに来ているような感覚でライブができました。ライブハウスというより、お酒を飲みに来ているお客さんが多くて、ヤジを飛ばす人もいたりしましたが、みんなフラットな関係で楽しめる場所、というイメージが強いですね。

Kasago:今年でSOCORE FACTORYは11年目になりますが、その前は難波ROCKETSというライブハウスでやっていたので、その雰囲気は引き継いでいます。だから本格的な転換をするイベントは少なくて、転換中はDJが曲をかけるイベントが多いです。クラブとライブハウスの中間のような空間、と言った方が分かりやすいかもしれません。

アサノ:東京も大阪も、当時はDJパーティーのようなイベントが多くて。ライブハウスで演奏し終わったらお酒を飲む、というのがバンド活動のスタイルでした。だからSOCOREはそういう意味でも本当にやりやすい場所です。



"何でもあり"じゃないからできたTENDOUJIの10年



ーーHOLIDAY! RECORDSに関しても、何か特に印象的だった出来事や思い出があれば教えていただけますか?

モリタ:たくさんありますが、一番の思い出は、難波のど真ん中で酔っ払った秀章が「CDを売って、家を建てるんだ!」と叫んでいたことです。あの時は本当にやる気を感じました。でも、その後CDバブルが終わって、全く売れなくなっちゃいましたが......。

植野:僕はその記憶がないので、フィクションかもしれません(笑)。

Kasago:実際、家は建てられたんですか?

植野:建てられるわけないじゃないですか(笑)。僕個人としても、CDが売れなくなって落ち込んでいた時期に、Music Club JANUSで浪漫革命とTENDOUJIのツーマンライブがあって。その打ち上げで、ケンジ君から「とにかく売るしかない。数がものを言う、パワーだ」と言われて、すごく元気をもらいました。

アサノ:ここ5年くらいは、そんな話しかしていませんね。

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ーー植野さん、Kasagoさんに伺いますが、TENDOUJIのこの10年での印象の変化をお聞かせください。

Kasago:僕はそこまで追いかけきれていないので細かいことは分からないんですが、昔から変わらず、どこか面白そうな雰囲気が常に漂っていると思います。ライブも今も当時と変わらず勢いがありますし、期待させてくれる存在ですね。最近はSNSでしか見ていませんが、人を巻き込むような活動も昔と変わっていない気がします。ただ、昔みたいなインディーロックっぽさはなくて、今はもう「TENDOUJI」というバリュー・ブランドになったんじゃないかなと感じています。

植野:僕もあんまり変わっていない印象ですね。でも10年やってきて、ずっと面白いことをしてくれそうな存在であり続けているのは、本当にすごいことだと思います。それにTENDOUJIって、「何でもあり」なイメージがあるけど、実は話してみると「ここから先は行っちゃダメ」とか、かっこいいとかかっこ悪いとか、ちゃんと線引きがある印象もあります。

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アサノ:秀章が言っていたことは、本当にその通りだと思います。話し合わなくても、みんなの感覚が近いので、カッコいい・カッコ悪いの線引きははっきりしています。その基準が多少ずれることはあっても、「何でもありにしよう」となったことは一度もありません。だから、ブレない芯が常にあるのだと思います。

Kasago:自分たちらしさを貫いてきたからこそ、お客さんもTENDOUJIの空気に慣れてきて、自然に受け入れられるようになったのかもね。

モリタ:変わったことといえば、出番前に酒を飲まなくなったことかな。最初のころ、それこそSOCOREで自分たちの企画をやっていた時は、出番前にみんな酔っていたんです。でもお客さんが増えてきたことで、メンバー全員が責任感を持つようになったのは大きな変化だと思います。

アサノ:もちろん最初のころから「ちゃんとやろう」という気持ちはありました。でも、バンドとしての「ちゃんと」が何かを当時はよく分かっていなかったんです。だからライブ前にお酒を飲むことも、その一環だと思っていました。ただ、バンドを続けていくうちに、その"真面目さ"が必要以上に強くなっていたな、と感じています。特にコロナ禍では、人数制限やソーシャルディスタンスなど、今まで以上にきちんとしなければいけないという意識が強くなり、本来は気にしなくてもいい部分まで神経質になってしまうこともありました。

最近はそうしたプレッシャーからも少し解放されて、またTENDOUJIらしさが戻ってきたように思います。僕らは、最初にSOCOREや下北沢のBASEMENTBARでライブをやっていた頃の空気感を、今でも追いかけています。あのときは本当に楽しくて、自然と人が集まっていた気がします。ライブハウスで音楽を楽しみながらお酒を飲む、そんな雰囲気の中にTENDOUJIのライブがあったと思うんです。ただ、その空気感をお客さんが憧れて真似しようとするのは、またちょっと違うような気がしていて。そこが今の課題ですね。



ナードマグネット・ベランダ 気心知れた2組と迎える特別な夜


ーー今回のイベントにナードマグネット、ベランダを呼んだ理由やそれぞれ思い出についても聴かせてください。

モリタ:ナードマグネットは、僕たちが初めて「ちゃんとバンドをやっている人たち」として出会った存在です。まだ何も分からなかった頃、THISTIME RECORDSの藤澤さんから「このバンドは見ておけ」と言われてライブを観に行ったのですが、そのライブが本当に素晴らしくて。ギターポップ寄りの珍しいバンドで自分たちと近いものを感じましたし、さらに同い年ということもあり親近感を覚えたのを覚えています。

アサノ:最初に会ったときは、「芸能人に会ったみたいだ」と感じました。当時はSNSを始めたばかりで、バンド同士の距離感もよく分かっていなかったんです。初めてライブを観たときも、「ナードマグネットの人だ!」と驚いたのを覚えています。今でも、例えばDENIMSやドミコ、Tempalayなど、当時大阪で一緒だったバンドとは、久しぶりに会ってもすぐにあの頃の感覚に戻れるし、本当に特別な存在です。

モリタ:向こうがどう思っていたかは分かりませんが、TENDOUJIにとっては特別な存在で、一番最初に刺激をくれたバンドです。歌も演奏も圧倒的だし、特に「Mixtape」が流れた瞬間、ライブハウスの空気が一変し「すごい」と心から思いました。あの曲をライブで聴くと、当時の記憶が蘇ってきて、思わず泣きそうになります。

ーーベランダはどうですか?

モリタ:ベランダは本当にいいバンドで、僕たちもファンなんです。それこそライブを観るたびに、毎回「エニウェア」の同じところで泣いてしまうくらい。去年も2回ほどイベントに声をかけました。ただ、去年のHOLIDAY! RECORDSの10周年イベントにベランダが出ていなくて、「なんで呼ばれてないんだろう?」って話になって。じゃあ、もう一度SOCOREで一緒にやろうかという流れで今回のイベントにつながりました。

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ーー今回のイベントはTENDOUJIにとって本当に仲の良い2組が揃って、素晴らしい夜になりそうですね。

モリタ:まあ、でも10年やってきて思うのは、昔から一緒にいる人たちとまた何かできるのはすごくうれしいです。

アサノ:秀章がどう捉えているかは分かりませんが、僕らとしては良い意味で気負いもなく、2日間同じ場所で仲間たちとライブができることが本当に楽しみです。こういう時こそライブが一番盛り上がると思うので、すごく期待しています。


10周年を迎えたTENDOUJIが、信頼する仲間たちと共に贈る『TENDOUJI & HOLIDAY! RECORDS presents Salad Days』。SOCORE FACTORYという特別な場所で、ナードマグネットやベランダら盟友バンドとの共演は、音楽好きにとって見逃せない特別な瞬間になること間違いなし。バンド同士の絆と、その場にいる全員でしか作れない空気感をぜひ体感してほしい。

Text by マーガレット安井




(2025年6月18日更新)


Check

Live

「Salad Days TENDOUJI&HOLIDAY! RECORDS presents」

▼9月6日(土)・7日(日) 16:30
SOCORE FACTORY

1日券-3500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
2日通し券-5000円(整理番号付、ドリンク代別途要)

[6日(土)出演]TENDOUJI/ベランダ
[DJ]星原喜一郎/片山翔太
[7日(日)出演]TENDOUJI/ナードマグネット
[DJ]星原喜一郎/片山翔太/小村幸男

[問]holiday_records_distro@hotmail.com

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Link

TENDOUJI Official HP
https://thetendouji.com/

TENDOUJI Official X
https://x.com/TENDOUJItw

HOLIDAY! RECORDS オンラインショップ
https://holiday2014.thebase.in/

HOLIDAY! RECORDS X
https://x.com/holiday_distro


HOLIDAY! RECORDS10周年記念連載「そっちはどうだい、うまくやってるかい」