ホーム > インタビュー&レポート > ASIAN KUNG-FU GENERATION、10-FEET、Perfume、羊文学 大阪から世界へ、日本が誇るライブ・アクトを発信! 『OSAKA MUSIC LOVER -LIVE TO THE WORLD- supported by アサヒスーパードライ WITH MASSIVE BEATS OSAKA』 ライブレポート
開演前の大阪城ホール、フロア内に足を踏み入れると体にズンズンと響く音楽が鳴り響いている。アリーナの後方エリアにステージと向かい合う形で設置されていたDJブースからゴキゲンなBGMを届けているのはFM802 DJの大抜卓人と落合健太郎。この日のキーワードである"世界"にちなんだ語学堪能なふたりがフロアの盛り上げ役だ。大抜が赤、落合は白の装いで、日本の国旗を意識したのか紅白歌合戦イメージか、どちらにせよまずは観客を楽しませようという気合いが桁違いだ。ふたりはBack to Backスタイルで次々曲を繰り出したり、「お手を拝借!」と観客の手拍子を煽ったり、会場内をどんどん一体化させていく。開演直前、ラストにセレクトされた曲はヴィレッジ・ピープル「Y.M.C.A.」。みんなで声を上げ手拍子したり腕を振り上げたり、華やかな金曜の夜の始まりを感じさせる。大抜の「今日は一緒に伝説を作っていきたいです!」という宣言に、大きな拍手が起こる。さあ、いよいよ本編スタートだ。
【10-FEET】
この日、トップを飾ったのは観客の中でもバンドロゴのTシャツ+タオルを着用した人の多さが目立った10-FEET。2023年に韓国での単独公演を成功させ、この公演直後にもまた韓国でのフェス出演も控えていた彼ら。まるでライブハウスにいるかのような熱気でむせかえるパフォーマンスを見せたライブは「RIVER」でスタート(歌詞の中で淀川、土佐堀川と大阪を代表する河川の名前も叫ばれた)するも...早々にTAKUMA(vo&g)の「お前らにはまだ照れがある!」という叫びが挟まり、観客にスマホを取り出してライトを点けるように指示。TAKUMAの号令で観客全員参加のウェーブをしたのだが、この景色は圧巻。スマホライトの雪崩はそうそう見られる景色ではない。
そこから「ハローフィクサー」、「goes on」と曲が進むと観客全員の手が挙がっている光景が目に入る。単独公演だったっけ?と思うほどの盛り上がり方だ。そして空間の熱を急上昇させたのは、世界を席巻した映画『THE FIRST SLAM DUNK』の主題歌「第ゼロ感」。これを聴きに来たぁ!と言わんばかり、大阪城ホールが揺れているようだ。歌い終えたTAKUMAは「さっきのウェーブで時間使いすぎたわぁ、あと2曲や!」と照れ笑いしつつ「その向こうへ」、急いだらいけるかもしらへん! 「蜃気楼」いこか! とメンバー全員が笑顔を見せつつ2曲を披露。
この日MCで「今日はみんなで笑って帰ろな」「悲しみは幸せの原石やから時間かかっても乗り越えていこ」と熱いメッセージを送り続けたTAKUMA。「必ずしも明日があるとは限らへん。だから今を楽しもうという曲です」と「ヒトリセカイ」でこの日を締め括る。イベント開始早々ガッツリと10-FEETを喰らったと、終演後もしばらくぼんやりとさせられるほど破壊力のあるパフォーマンスが光った。
【羊文学】
続いてステージに現れたのは塩塚モエカ(vo&g)、河西ゆりか(b)に、この日はドラムに大井一彌(yahyel、DATS ほか)を加えた羊文学の3人。昨年から本格的に海外でのライブにも注力しており、今年春には初のUSツアーを終えまた秋にもアジアツアーが控えている。まさに、目線は世界へと向いているバンドだ。
歪んだギターの音が脳までビリビリとさせる冒頭にシビれた「mother」。ゆったりと演奏しつつ、この3人での音を空間に広げていくような始まりの曲だ。大井がドラムを叩く羊文学は、力強さよりタイトで曲がキュッとしたように聴こえてくる。塩塚と河西が左右に揺れつつ演奏を続けた「永遠のブルー」、新曲やりますと披露された「mild days」は日常の中にあるかけがえのないものを歌った、塩塚の声が生きる曲だ。そして「Burning」では、演奏はもちろん河西のコーラスの美しさが爆発。
ここまでのパフォーマンスに見入っていたが、凄みは「OOPARTS」にあった。音源ではポップな印象が強いこの曲が、少ししっとりと、でも体の奥にダイレクトに響くタイトなバンドサウンドを持っていて、今日の3人で演奏するからこその「OOPARTS」として届く。大袈裟なMCで何かを語るわけでもなく、次々と曲をやっていくスタイルを貫き6曲目はアニメ『呪術廻戦』で世界の視線を浴びたエンディングテーマ「more than words」。空間が3人の放つ音でふわーっと埋まっていく。拍手の中、塩塚の「最後に1曲ブチこみます!」と言った笑顔がたまらない「Addiction」がラストソングに。
ロックをやる人のかっこよさと、女の子が音楽をやる可愛らしさが同居したとんでもないステージ。これこそが、hitsujibungakuなのだ。
【Perfume】
バンドセッティングが片付けられたことで、次はPerfumeだと気づいたファンがメンバーの名を叫び始めた。今年結成25周年を迎えテクノポップアーティストとして最前線を走り続ける彼女たちの変わらぬ注目度の高さが窺える出来事だ。ドローンでビルの合間を抜けていくような映像を映し出したスクリーンを背景に、ステージは「The Light」で幕を開ける。
あ〜ちゃん、かしゆか、のっちの一糸乱れぬパフォーマンスは一瞬で私たちを釘付けにするほど、視覚的刺激に満ちている。そして羊文学・河西ゆりかからのリクエストで披露することが決まったという「だいじょばない」へ。その後のMCの中であ〜ちゃんが放った「大阪は万博もあるし海外の方もたくさん来てくれているので、今日だけの熱い日にしたいと思うんです! これも一期一会、出会いだから!」という言葉が妙に沁みる。この日この瞬間にしかないライブは出会い、本当にその通りだ。その言葉を引き継ぐように『大阪・関西万博』のNTTパビリオンでも3人がパフォーマンスを行った「ネビュラロマンス」、マイクスタンドを据え静の雰囲気を持つしなやかなダンスで魅了した「STAR TRAIN」を重ねる。
来場している全ての人とのコール&レスポンスでブレイクタイムを楽しむ「P.T.A.」のコーナーではたこ焼き、通天閣、ミャクミャクポーズを観客と一緒にやりながらケラケラと笑う3人の姿に、ライブでの観客のコミュニケーションを大切にするPerfumeらしさが滲む。「残り2曲に魂ぶっ込みます!」と「FAKE IT」、「チョコレイト・ディスコ」という踊れる曲で畳みかけ、会場中に"Perfumeを見られて幸せ!"という空気感を充満させてくれた。世界よ、これが日本のテクノポップ・トップランナーだ!
【ASIAN KUNG-FU GENERATION】
この日のラストバッターはASIAN KUNG-FU GENERATION。海外公演の経験はもちろん、海外アーティストとの共演や招聘など、音楽を媒介して世界とつながってきた彼ら。このイベントのサブタイトル「LIVE TO THE WORLD」を自らの存在を持って体現しているのがアジカンで、ステージに現れたメンバーに客席から「待ってたぞ!」という言葉が飛んだのもいいシーンだ。ライブは始まりの音に歓声が起こった「Re:Re:」、「リライト」とバンドの歴史の中でも長く愛されてきた2曲から。それに続く曲「ライフ イズ ビューティフル」を演奏する意義として後藤正文(vo&g)はこう言った。「ここに集ったみなさんの人生が幸福になることを祈って」。今、世界的に見れば悲惨な状況にある国や人も多い。でも少なくともこの日、この時間、この場所に集った人々がこれから幸せに生きていくために傍に音楽があればいい。この日のライブMCで全アーティストが共通で語っていたことだ。
そしてちょっとしたギターのイントロだけで、会場が大きな拍手に包まれた「ソラニン」、後藤曰く「せっかく一緒にステージに立つ日が来たからね」と羊文学・塩塚モエカをボーカルに迎えた「触れたい 確かめたい」が披露され、ふわりとした優しいベールをまとったロックンロールが鳴り響く。触れたり確かめたりすることが御法度だったコロナ禍で発表されたこの曲の演奏を終え、「こういう瞬間に立ち会ってくれる人がいるのがどれだけ心強いか。どうもありがとう。ここに集った人たちの人生が少しずつ温まって今日より明日がもっといい1日になるように作った曲です」と「MAKUAKE」へとつなぐ。未来へと進んでいくことへの強い意志が描かれたこの曲。メンバーのコーラスも相まって、壮大でハッピーな気持ちが満ちていくエンディングを見せてくれた。
そして鳴り止まぬアンコールを受けて、再びステージへと姿を見せたASIAN KUNG-FU GENERATIONの面々。「俺たちを世界に連れて行ってくれた曲です!」とイベントの締めくくりに選んだのはTVアニメ『NARUTO -ナルト-』オープニング曲「遥か彼方」。最後まで「-LIVE TO THE WORLD-」というイベントタイトルの意味を、サウンドで聴かせてくれたのも印象的だった。
やはりアニメは我々が誇るべき日本の文化で、世界の扉と密接に繋がっていることを感じさせてくれた。ただ驚いたのは、4組とも日本語で表現することを大切にしているアーティストだったことだ。海外とつながるという点で言えば、全詞英語でもおかしくないのに...と思いつつ、すでに海外へ目を向けている・海外から目を向けられている彼らが日本語で表現していることは、うれしく頼もしいことにも感じられた。
なお、イベントの模様は7月20日(日)20:00~22:00、FM802の特別番組にて放送が予定されている。
Text by 桃井麻依子
Photo by 渡邉一生、キョートタナカ
(2025年6月17日更新)
●10-FEET
1. RIVER
2. ハローフィクサー
3. goes on
4. 第ゼロ感
5. その向こうへ
6. 蜃気楼
7. ヒトリセカイ
●羊文学
1. mother
2. 永遠のブルー
3. mild days
4. Burning
5. OOPARTS
6. more than words
7. Addiction
●Perfume
1. The Light
2. だいじょばない
3. ネビュラロマンス
4. STAR TRAIN
「P.T.A.」のコーナー
5. FAKE IT
6. チョコレイト・ディスコ
●ASIAN KUNG-FU GENERATION
1. Re:Re:
2. リライト
3. ライフ イズ ビューティフル
4. ソラニン
5. 触れたい 確かめたい
6. MAKUAKE
EN. 遙か彼方
日時:7月20日(日) 20:00~22:00
※生放送
DJ:大抜卓人、落合健太郎
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