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「綺麗事ばかり言わずに、ライブでもさらけ出していきたい」
オルタナ的趣向でダークに振り切った
デジタルニューシングル『Die or feel』も初披露する
対バンライブ「ジャムVol.2」開催!
chilldspot・比喩根インタビュー

恐るべき10代として2019年から活動を開始し、メンバー4人が20代となった現在は国内のみならず、中国や台湾など海外フェスにも進出して活動範囲を拡大中。また、話題のガールズグループオーディション「No No Girls」(※BE:FIRSTを排出したBMSGが主催、ちゃんみながプロデュース)から誕⽣した7人組ガールズグループ・HANAのメンバーYURIがchilldspotの『ネオンを消して』をカバー歌唱して反響を呼び、Spotify急上昇チャートにランクイン! 今また新たに注目を集めているchilldspotが、ゼロ年代に通じるオルタナ要素を全面に出したダークな歌とバンドサウンドで内なる葛藤と怒りを露わにするニューシングル『Die or feel』を6月11日リリースした。今回ぴあ関西版WEBでは比喩根(vo&g)にインタビュー。衝撃作ともいえる『Die or feel』誕生までの興味深いエピソードと制作秘話をたっぷりと語ってもらった。

今の自分たちが押し出していきたいのは
ゼロ年代のオルタナ系バンドのようなサウンド


――ニューシングル『Die or feel』はダークサイドに振り切ったような印象です。

「今回はライブとかでもけっこう映えそうなダークな感じがいいんじゃないかなと思って。今までのchilldspotって、楽曲によってけっこう作風が変わったり、(音楽性の)幅が広かったんですけど。それをまとめたときに、私見なんですけど、ゼロ年代(2000年代)くらいのオルタナ的な方向性に落ち着いていくんじゃないかなと思ってて。今回のこの曲は自分が好きなUKのバンドのイメージをもっと出していきたいと思いつつ、この一個前に出した自分たちの初期のイメージをオマージュした『Up!』の雰囲気に似たような、今の自分たちがより押し出していきたいバンドサウンドが見えたらいいなと思って出すことにしました」

――ちなみに、比喩根さんが好きなゼロ年代のUKバンドというと?

「私はもうがっつりカサビアンが大好きで。UKに限らずなんですが、まわりのスタッフさんの年代的にもフランツ・フェルディナンドみたいなオルタナっぽいかっこいいバンドが好きな人が多くて。それを教えてもらって聴いた時に、今までいろいろやってとっ散らかってたものが全部がそこにある気がして。これを中心にやっていきたいわけではないんですけど、この年代感(ゼロ年代)が自分たちの真ん中に位置するんじゃないかなと...」

――それはつまり、chilldspotのコアな部分がゼロ年代のオルタナ系のバンドサウンドに通じるものがあるということ?

「うーん、コアっていうか...、ギターの玲山くんはソウルとか、70~80年代の音楽が大好きなんですよ。で、ベースの小﨑くんは最近のインディー文化が好きで。お客さんが自分しかいないようなライブを見に行くぐらい日本や世界のインディーに強くて。この2人がまず対極にあって。今、バンド活動を休止中のドラムのジャスティンくんは基本的に全部の音楽が大好きなんですよ。ロシア語のラップとか、すごい変なのも聴いてて(笑)。私はポップスが好きなので、そういうメンバー全員の持ち味を活かしてライブでできるのがゼロ年代のごちゃ混ぜ感なのかなって」

――そこにchilldspotのメンバー4人のクロスポイントがあるんですね。

「まさにそうだと思います。この『Die or feel』もそうですけど、そのクロスポイントがちょっとゼロ年代っぽいところに落ち着くんじゃないかなって思うようになりましたね」

――なるほど。『Die or feel』という曲はどのように作っていったんですか?

「この曲は元は自分が打ち込みで作って、ギター、ベース、ドラムそれぞれが考えながら、みんなで作るみたいな感じで。アレンジは初期からやっていただいてるプロデューサー兼ディレクター兼アレンジャーのようなEthan Augustinさんにしていただきましたね。ルーツがガッチガチUK系な方なんです。だから、自分がブラーとカサビアンにめっちゃはまってて、ラップ調っていうか、スポークン系の吐き捨てる系みたいなのを作りたいって思った時にぜひアレンジをお願いしたいなと思って。ちょっと一癖あるような音作りになってますね」

――楽曲自体の構成もちょっと変則的でカッコイイですね。

「けっこうチルズの歌の構成は、ABC~ABCみたいなのが多いよねっていう話はしてて、そこからちょっと外れたいなとは思ってたので。後半部分の<眠れない思考が>くらいからガラッと雰囲気を変えてみたいなと思って作っていきました」

――ちょっと洋楽っぽく聞こえる展開ですね。

「ああ、そうですね。これはぜんぶ洋楽リファレンスみたいな感じでやってましたね」

――タイトルもそうですが、歌詞もけっこう強烈な印象を受けました。"理性と感情・生と死、相反する概念の狭間で揺れる葛藤を描いた"ということですが、なぜこういうテーマで書こうと思ったんですか?

「これは何回も書き直して、ようやくOKが出た曲なんです。今までの歌詞はけっこう一発で通ることが多くて。逆に歌詞がすぐに通らないと、私は頭がどんどんこんがらがって行っちゃうタイプなんです(苦笑)。今回は最初はこのテーマじゃなかったんですけど、書き直していくうちに、この歌詞のようにムシャクシャしてきちゃって。その憤りをそのまま書いたらいけんじゃね?って思って書いたんですよね。まわりは良かれと思っていろいろ言ってくれているので、申し訳ないなって後から思うんですけど、でも瞬発的にパーンって出たエネルギーのまま書いたんです。だから"死ぬか生きるか"みたいな歌詞になって...なんか過激すぎるでしょ(笑)」

――たしかに、この歌の主人公はめっちゃ追い込まれてますよね。

「そうですよね。だからその勢いで喧嘩っ早いというか、そういうエネルギーがすごい詰まってる感じなんだと思いますね」

――歌詞を聴いてると、10代初期の思春期の男の子の葛藤を歌っているようにも受け取れました。そういうメッセージ性を込めて書かれたのかなと。

「そうなったのは、私自身が10代前半の男の子っていうことですね(笑)。でも、同年代のスタッフさんからは新社会人になって、会社や社会に順応していくのか、でも自分の個性は捨てたくないと思って葛藤している曲にも聞こえるって言われて。基本的に私が伝えたいことっていうより、私自身が悩んでることをそのまま書いてるので、その感情が伝わったらいいかなって思いますね」

――比喩根さん自身のアーティスト、クリエイターとしての苦悩がここに歌われているということ?

「クリエイターという前にひとりの人間として、ずっとこうやって斜に構えて生きちゃってるなっていう(苦笑)。それをそのまま書いてると思いますね」

――それは20代になっても変わらずですか?

「そうですね、ずっと変わらないまま、ずっと悩んでる感じはあります」

――それがアーティスト、芸術家の性なのかもしれないですね。そういう自分自身を殺したくないという思いがこの歌から伝わってきます。

「そうですね。なんか大人になる上で必要な調節ってあると思うんですよ。今でも全然できてないことばっかりですけど、それをやり過ぎると、お湯が沸騰して、ばーって溢れちゃうみたいなことがなくなってくるじゃないですか。自分の感情を中火にすればいいや、弱火にすればいいやってなって。でも、お湯が溢れ出た時こそが人に共感を持ってもらえたり、"あいつやべえ! イカれてやがる"っていう突出した表現が手に入ると思ってるんですよ。だから、そこの間をずーっと悩みますよね。人として成長していくのが正しいのかもしれないけど。憧れたロックスターはそんなこと言わない...みたいな、なんかそんな感じはありますよね」

――比喩根さんはまだ27歳前ですよね?

「はい。ほんとに私は27で死ぬんだったらこんなことやってらんねーみたいな(笑)。トゥエンティセブン(27)とかに憧れてるけど、でも今自分が生きてる時代は(かつてのロックスターが生きた時代と)同じ状況でもないしとか、そういうのはこの曲はすごい表してる気がしますね」

――けっこう冷静に自己分析されてますね。

「あはは、そう見えるかもしれませんが、本来は、"あいつイカれてるよー!"みたいな感じになりたいなと思ったり、もっと変わりたいなとか、もっと変になりたいな、もっと面白いこと言いたいなって思ってて...。それがなかなかできなくて、くすぶってる感じもあると思います」

――そんなご自身のリアルな葛藤を歌にして発信するっていうのはすごく大事なことだと思います。

「ほんとですか? 嬉しいですね。最近、『ネオンを消して』っていう曲がちょっとずつまた聞かれるようになったりしてるんですけど、今回はそれとは真逆の曲じゃないですか。なので、恋愛ソングだけじゃなくて、アーティストとしての意地というか、綺麗事ばっか言ってねえで汚く生きてんだみたいな感じは確かに出していきたい。それをライブでもさらけ出していきたいなとは確かに思いますね」

――いいですね。私はこういう曲が好きですね。

「嬉しいです。全世界の人がそう言ってほしいですね。私はこの曲好きだなって(笑)」

――こういう曲を聴きたかったと潜在的に求めてる人はいると思いますよ。でも、こんな風に明るくお話してもらえると思ってなくて、もっと暗めにシリアスな感じでお話されるのかなと思ってたんです。

「シリアスさは全部曲に置いてきてる感じはあって。書くことで昇華するみたいな。ストレス発散じゃないですけど。逆にこういう感情を100%表に出す方が今はけっこう大変ですね、こういう風な曲になる前に自分で鎮火しちゃうんで。なので、こういう経験が素直にできるような環境にいるっていうのはありがたいなと思いますね。そうやってバチバチ話して、私の創作魂がどんどんどんどん、うわあって溢れ出てきた曲なので。最近はめっちゃ怒ることもあんまりないし...。(そう言ってまわりのスタッフに聞くと、)たまに、機嫌悪いときはあるみたいですね(笑)」

――それは自分に正直に生きてるからで、作家とか芸術家はそういう部分を持ってた方がいいと思います。

「ほんとですか? じゃあ、ちょっと機嫌悪く行こうかな(笑)」

――『Die or feel』の歌唱法も今までにない感じですね。冒頭から感情を押し殺したように歌ってるけど、<眠れない思考が疼きだす>というラインから徐々に感情を露わにしていくような構成で。

「ありがとうございます。歌い方も含めて、ちょっとオルタナっぽくっていうか。普段だったらもうちょっと楽しそうに口角上げて歌うところを、ちょっと口角下げてちょっと暗そうな感じにして、<眠れない思考が疼きだす>から音量自体をどんどん上げて、息遣いとかもどんどん荒くしていく感じは確かに考えましたね。サビは逆にずっと一定に歌うというか、淡々と歌うようなこととかは意識しました」

――ライブでも聴いてみたいです。ポイントになる一曲ですごく引き込まれそうです。

「自分もまだライブで歌ったことがないのですごい楽しみですね。喜怒哀楽の怒が追加されるみたいな感じですよね。もっとライブに自分が没入できるようになるんじゃないかなっていうのはすごい思います。私の闇がチラっとライブで見えるかもしれないですね。そこに引き込めるように頑張りたいです」

対バンライブは自分たちが好きな人を選んでるので
初めて観る人でもめちゃくちゃ楽しめるライブになると思う

――今後の活動も気になるところですが、9月にニューアルバムが予定されているとのことで楽しみですね。

「はい、次のアルバムは9月にリリース予定で、8月にもう1曲シングルが出ます」

――次のアルバムはどんな方向に進んでいきそうですか?

「今までで一番ラフなアルバムになるんじゃないかなって。けっこうEPはコンセプチュアルにしがちなんですけど、アルバム自体はひとつのテーマを設定して作ってるわけじゃなくて、いい曲たちをどんどん入れていってバランスを取るみたいなイメージなんですけど。次のアルバムは一番なんのしがらみもなく、何も気にせず、いい曲たちをいいバランス感でいい曲順で入れられてる気がしてて。一番自然体のチルズなのかも。メンバーの個性が一番出てるんじゃないかな。前作のEPの『echowaves』とかとはまた違って。『echowaves』は試作というか、自分たちのすごい好みの趣味のためだけに作ったみたいなEPだとすると。次のアルバムは他の聴いてくれてる人に届けたいみたいな。音楽の趣味が内側からもうちょっと外側に向いた感じ。だから、ほんと自然体なんじゃないかなって。一番楽だと思いますね。そんな予感がしています」

――EP『echowaves』はオールセルフプロデュースですよね。そういうトライアルができる環境もいいですね。

「はい、ほんとにありがたくて。この曲をアレンジしてくれたEthan Augustinさんが、1回自分たちで好きなものをやってみて、その反応を見て、次は自分たちがchilldspotをやっていくためにどうするべきかをちゃんと考えれるなら、1度やってみていいんじゃないかって後押ししてくれて。だからほんとその通りというか、いい意味ですごく均衡が取れたアルバムになりそうです。振り幅は狭めたくないっていう、それが自分たちの個性のひとつとして認識できるようになったので、そこはチャレンジしていきたいですね」

――音楽的にはソウル、R&B、オルタナロック的な振り幅があるんですか?

「そうですね。電子ドラムの曲もあったり、もっとロックなやつもあるし。次のはめちゃくちゃ振り幅あると思います」

――そして、ライブの方では今月、『対バンライブ"ジャムVol.2"』が開催されます。このライブに"ジャム"とつけた理由は?

「ジャムセッションのジャムと、あと果物とお砂糖を混ぜて作るイチゴジャムみたいに違うものを混ぜ合わせるという意味を込めて、"ジャム"っていうタイトルになりました。この名前はずっと変えずに対バンの企画はやっていきたきたいし、誰とやっても相乗効果があるようなライブがしたいなと思っています」

――東京は崎山蒼志さん、大阪は雪国さんとの対バンですね。対バン相手はどのように決めているんですか?

「今までの対バン相手は同い年とか年下の方があんまりいなかったのですが、今回の"ジャムVol.2"は自分たちと年が近い人たちとやります。けっこう前から小﨑くんが"雪国がイイ!"っていう話をしていて、そこから聴くようになって。崎山さんも雪国さんも実際にはまだお会いしたことなくて、純粋にリスナーとして聴いてただけなんです。だから、音同士で自己紹介をし合うみたいな、そんな感じのライブになると思いますね。すごい楽しみです!」

――このライブはどんなセトリになりそうですか。

「もちろん雪国さんとか崎山さんの雰囲気を意識したセットリストにはするんですけど、chilldspotのここは見せたいぞ!っていう部分を外さない感じのセットリストで行きたいですね。なので、例えばフェスやイベントとかではやらないような曲とかもやるんじゃないかなと。『Die or feel』は今回の対バンライブで初披露します。曲自体が結構ヘヴィなので、自ずとライブの後半になってくるんじゃないかなとかは思いますけど、自分たちの企画なんで、やりたい放題やらせていただいただけると思います」

――では最後に改めて今回のニューシングルの注目ポイントと対バンライブに向けて一言お願いします。

「この『Die or feel』は歌詞とサウンドが渾然一体となって、一点に突き抜けてる曲だと思うんで、そのままサウンドに身を任せて、みんな怒りながら聴いてもらってもいいですし、ムシャクシャしてたら、この曲にぶつけるみたいな気持ちで、ストレス発散として聴いてもらえたらいいなと。対バンライブは私たちも初めましての方たちなので、私たちはこういうバンドでこういうことをやりたいんですよって、ライブで自己紹介ができるような演奏をしたいなって思います。すごい未知数のライブですけど。自分たちが好きな人を選んでるので。chilldspotしか知らなくて、見に来てもめちゃくちゃ楽しめるライブになるんじゃないかなって思います」

Text by エイミー野中




(2025年6月19日更新)


Check

Release

Digital Single『Die or feel』
発売中
https://lnk.to/chilldspot_Dieorfeel

Profile

ちるずぽっと…東京出⾝の比喩根(vo&g)、玲⼭(g)、⼩﨑(b)、ジャスティン(ds)の4⼈で構成される。比喩根(vo)がメインで作詞し、メンバー全員で作詞や作曲、アレンジを⾏う。比喩根の繊細かつ鋭い歌詞は呼び声が⾼く、楽曲提供も⾏う。彼らの型にはまらない媚びないスタイルが、同世代や国内外の⾳楽好きリスナーの注⽬を集める。2020年、Shibuya WWWでの初ワンマンはSold Out。その後SUMMER SONICやJAPAN JAMなど国内の様々なフェスに出演。2024年12⽉、Zepp Shinjukuで開催するワンマンライブも早々に完売。世界でも今、ライブパフォーマンスと⾳楽性の⾼さが注⽬を受ける2024年中国の「STRAWBERRY MUSIC FESTIVAL 2024」、台湾の「Neo Oasis Fest」に出演。2025年北京での初ワンマンはチケット販売開始10分でSOLD OUT、⼤盛況を収めている。6月11日、ニューシングル『Die or feel』リリース。同月、クアトロ東阪ツアーを開催する。

chilldspot オフィシャルサイト
https://fan.pia.jp/chilldspot/


Live

chilldspot主催ライブ「ジャム Vol.2」

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:298-779
▼6月20日(金) 19:00
梅田クラブクアトロ
全自由-5500円(ドリンク代別途要)
[ゲスト]雪国
※未就学児入場不可(小学生以上チケット必要)。
※販売期間中はインターネット販売のみ。1人4枚まで。チケットの発券は6/18(水)10:00以降となります。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

【東京公演】
チケット発売中 Pコード:294-823
▼6月27日(金) 19:00
渋谷CLUB QUATTRO
全自由-5500円(ドリンク代別途必要)
[ゲスト]崎山蒼志
※未就学児入場不可(小学生以上チケット必要)。
※チケットは、インターネットでのみ販売。店頭での販売はなし。1人4枚まで。発券は6/25(水)10:00以降となります。
[問]クリエイティブマン プロダクション■03-3499-6669

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