ホーム > インタビュー&レポート > 平松愛理、35年を経て再生の一歩は愛する神戸から!
まずはコンサートの内容から。新曲のCDシングル『北風と太陽~エピローグ』は「須磨海岸を見ながら書き上げ、須磨海岸を見ながら歌っているんです」と平松。「須磨海岸の太陽」の光と六甲おろしの北風と。「だから神戸発」と話すこのCDが今回の会場限定で発売される。カップリング曲には『部屋とYシャツと私 U-35』。35周年にちなみ、昨年末よりプロアマ問わず35歳以下から募集、採用となった1曲に新たに歌を吹き込んだ。その作者と共演するコンサートも「このツアー会場じゃないと見れないんです」。多くの応募があり「ジャズやボサノバ、テクノなど、いろいろなジャンルの音楽になって帰ってきました。世代を超えると、こんなに音楽のとらえ方が違うんだと、まず驚きがありました」。普通は触らない大切なコードまで変えたものもあり「怖がらずに、熱量高くアレンジして来てくれました。その中で最も自分の心に響いたので。ちょっと泣けてきました、この作品は」。採用者の詳細は5月中にSNSで発表の予定だ。この初めての企画から「違いをまざまざと見て、自分たちの世代にしか残せない音楽は、今きっちりと作って残すべきだとすごく思いました。同時に、ジャンルを問わず上の世代の人たちへリスペクトする思いを強く持つようになりましたね」。
そして新曲『北風と太陽~エピローグ~』のこと。実は3年前にできていた。が、35周年記念のアルバムに入っていない。「出さなかったんです。アルバムの中の1曲では決してなくて、自分がこれから一生を賭けて歌って行く、すっごく大事な曲なので、シングルで発表したかった。3年かけた特別な曲ですね」。そのきっかけは、2020年に区切りをつけた『KOBE MEETING』後のコロナ禍だった。
「3歳の頃から当たり前にやってきた音楽活動、ずっと定期的にパフォーマンスの積み重ねで走ってきた列車が急に止まった状態で。普通に自分の音楽を同じ空間で歌で伝えられなくなると、自分の存在意味が分からなくなって」。YouTubeを配信していたがコロナに罹患。つながらない電話、やっと来た救急車は搬送先がなく、5時間後に自宅待機へ。症状が悪化する中「天井を見ながら、これで終わりだなって。阪神淡路大震災ではみんなもっとつらかっただろうと重ね合わせて、このまま一人で逝く死の準備をしていました」。その後、病院に搬送され入院、退院後も後遺症とコロナ肺炎のひどい咳に苦しむ中、小学校の同級生ふたりが突然上京、ほぼ強制送還のように神戸へ連れ戻る。神戸でも再び入院するが、歩行困難となり病院で車椅子生活に。「友人が毎日毎日、病院に手作りのおかずや日用品を届けに来続けてくれて」。平松は先生の目を盗み、毎日必死で歩き始める。「どうしても生きたかったし、もう一回歌いたかった。歩かなければ絶対に次はないと思いながら」。この苦しみの中から歌詞が生まれた。「コロナ禍を経て、人に助けられて、今の私がある。そのすべてが凝縮されてできています」。それが『北風と太陽~エピローグ』。
「今までの人生の続きではなく、自分がそこで立ち止まって、感じたことをそのまま書きました。だから通りすぎることができない曲なんです。これから生きていく自分の指針となる、思いや姿かたちそのものをメッセージしている曲なので、一生歌っていくだろうと思う」。だから軽い扱いにはしたくなかった。そして「独りよがりの曲になってはいけないというのが私のポリシー。同じような思いを違う形でしていらっしゃる方にも、きっちり届いて共有したいと思っています」。どんな状態でも平松はプロ、である。
ついに6月22日、コンサート開催。会場は2023年にリニューアルオープンした神戸朝日ホール。「やっと、この日が来た、という感じですね。会場限定ですけれど、やっとリリースできる。助けてくれたお友達も来てくれて、しかも神戸で。ちょっと感慨深すぎて、ちゃんと歌えるかな、歌い終わった後、放心状態になって倒れるんちゃうかなと思って(笑)。この曲はいつも歌い終わると、魂が抜けたみたいにぼ~っとなって、しゃべれなくなることが多いんですよ」。
最後に神戸の、関西の人たちに向けてメッセージをもらった。「気持ち120%全開で臨もうと思っています。35周年を迎えたのは去年ですが、自分の35周年のオリジナルライブ、平松愛理として今までの全部を出し切る総まとめのコンサートは、ここだと思います。しかも神戸で。神戸で生まれて神戸で育って、日本中のどの街より神戸が好きな私。須磨で書き上げた曲を引っ提げて神戸にもどるステージです。是非一緒に時間を過ごしていただきたいと思っています」。彼女を知る人も、曲だけ知っている人も、再生して前を向き、歩き出した平松愛理の姿を目撃し、応援しに行ってほしい。
取材・文:高橋晴代
(2025年5月27日更新)
ライブ会場限定発売CD
『北風と太陽~エピローグ』
6月1日(日)東京・大手町三井ホール、6月22日(日)神戸朝日ホールの2会場のみの限定発売
《収録曲》
01. 北風と太陽~エピローグ
02. 部屋とYシャツと私 U-35
【東京公演】
▼6月1日(日) 大手町三井ホール
チケット発売中 Pコード:290-921
▼6月22日(日) 16:30
神戸朝日ホール
S席-8500円 S席 高校生以下-1000円
A席-4000円 A席 高校生以下-1000円
[共演]田中徹(ds)/円山天使(g)/ジミー岩崎(Mp/key)
※販売期間中は1人4枚まで。
[問]神戸朝日ホール■078-333-6540