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音楽は永遠に残り、永遠に鳴らし続けられ、永遠に歌い続けられる
〇〇と〇〇シリーズ『初恋の嵐とKhaki supported by GREENS』ライブレポート

4月28日に心斎橋JANUSにてライブイベント『初恋の嵐とKhaki supported by GREENS』が開催された。『〇〇と〇〇シリーズ』は最高の対バンをテーマに開催される心斎橋JANUSの人気企画であり、今回は関西のイベンターであるGREENSが文字通りサポートで入った特別企画。親子ほど年齢が離れたと言っても過言ではない2組による対バンである。

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まるで何かを追い立てるようなKanye West(カニエ・ウェスト)『Bound 2』が登場SEとして流れる中、Khakiの5人が現れる。1曲目『車輪』は、先程までの追い立てるようなサウンドとは違い、緩やかにどっしりと始まる演奏。厳かな雰囲気の中、中塩博斗(g&vo)が歌い出した瞬間、不思議なもので初恋の嵐が本当に好きなのだろうなということが、何故だか一瞬で伝わってきた。それは何か表面上のものがわかりやすく似ているとか、そういう単純なことではなく、大袈裟かもしれないが、遺伝子DNAレベルというか、こういうことを真の意味でのルーツと呼ぶのだろう。これだけで、この対バンが行われるべき運命だったことがわかった。抑え気味だった照明も徐々に強くなっていき、緩やかさは保たれながらも歌も演奏も凄みを増していく。そのまま、橋本拓己の少しためたドラムカウントから、『Hazuki』へ。照明も赤や緑と色鮮やかに変化していき、ギターも少し激しめで、気が付くとセッションのように鳴らされている。どう言葉で捉えて表現したらと考え込みながら聴いていたが、後攻の初恋の嵐の鈴木正敏(ds)がライブ中に話した言葉をいち早く使わせてもらうならば、"めくるめく展開"そのもの。

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序盤2曲でKhaki独自の音世界を浴びて、呆然としているところに、不穏で怪しげ、ミステリアスなメロディー『子宮』へ。そして、『違う月を見ていた』は、作曲も担当する平川直人(g)が歌う。ミラーボールも回る中、リバーブがかかった平川の歌声が場内に響き渡る。続く『萌芽』も平川による楽曲であり、歌うのも平川。最初のギターリフからして印象的なメロディーだが、やはり作り手歌い手がふたりもいるのは強みである。

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『Undercurrent』は2023年にリリースされたEPであり、中塩が全3曲を手掛けているが、或る意味3曲による組曲の様な構成。インストである『Undercurrent #2』から鳴らされて、『Undercurrent #1』の『あの子が言うに』という耳に残る歌詞が歌われる。特に歌の強さを感じる『#1』だが、『Undercurrent #3』はアップテンポナンバーであり、より歌の強さを感じた。一転して、『裸、道すがら』は中塩の語りというか、気だるく吐き捨てながら呟く強き口調が独特の歌い方であり、そこから、またもや終盤はセッションへと雪崩れ込んでいく。で、唐突にすっと終わるが、これも後攻の初恋の嵐の鈴木正敏がライブ中に話した言葉をいち早く使わせてもらうならば、"突然バツンと終わって"そのもの。

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"めくるめく""突然"といった言葉遣いがどうしても多くなってしまったが、『ハンメルフェストの口づけ』みたいな真っ直ぐなメロウナンバーを聴くと、その振れ幅に気付かされるし、何をおいても、シンプルでありストレートど直球メロディーを奏でられることが、実に魅力的である。続く『Kajiura』は平川作曲で平川が歌う。こちらも『ハンメルフェスト~』の如く真っ直ぐなメロウナンバー。直球も変化球も見事に投げられるピッチャーをふたり持つチームと、柄にもなくスポーツ例えを書いてしまったが、これ何気なく書いているものの、とんでもないことであり、とんでもない武器である。

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じっくりミディアムで鳴らしていく『眠りの午後』から、ラスト2曲『天使』『文明児』は5月21日(水)リリースのニューアルバムからというのも誠にニクかった。自分たちの最先端現在進行形を、自信もって、それも先駆けて聴かせてもらえるのは、聴き手からしたら至福である。特に『文明児』はこの日、特別な感覚を与えてくれたセッションが最大の魅せ場となった。最後の最後にスピードアップして畳みかけるセッションは、後攻の偉大なるバンドを前にして、果敢な攻めであり、爪痕を残すなんていう言葉を使うのであれば、まさしく今使うべき状況...。全てを魅せてくれた。

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隅倉弘至(b)と鈴木による初恋の嵐が、木暮晋也(g)、玉川裕高(g)、高野勲(key)というもはやメンバーと言っても間違いではない鉄壁のサポートメンバーと共に後攻として登場する。登場SEの静かなジャズピアノが、彼らの佇まいにとても似合っていて、その姿は貫禄でしかない。1曲目『どこでもドア』からして揺るぎないサウンド...。約25年の歴史を感じる音...。全楽曲をボーカルの西山達郎が手掛けているが、西山は23年前の3月に急逝しており、隅倉が歌っている。

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2曲目『Untitled』は、その隅倉の一聴するだけで胸を掴まれるベースフレーズから始まり、隅倉が『須藤寿!』と呼びかけ、髭の須藤が颯爽と顔を見せる。両手を高く上げて舞台に現れただけで、何とも言えない、ボーカルでしかない華がありすぎて、格好良くて痺れてしまう。そのロマンチックナンバーは、初恋の嵐が過ごしてきた歴史を加味しなくても、ただただロマンチックで泣けてくる...。ずっと須藤が笑顔なのも湿っぽくないし、どこまでも須藤の歌声は艶っぽい。動きもシャウトも軽やかで、そこに合わさる演奏を聴いていると、こちらもゆらゆら体を揺らしてしまう。曲終わり聴き惚れていると、演奏は始まらず、須藤が『誰!?』と問いかけると、自然にギターが鳴り、『星空のバラード』が始まる。こんな行間を感じさせる演奏は他にないし、その行間には全く違和感がなく、逆に心地良い。歌う須藤がロマンチックナンバーに酔いしれているから、その酔いしれが我らにも伝播する。隅倉の両肩を軽く揉んで、笑顔で袖に消えていく須藤。

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隅倉は、初恋の嵐がツーマンライブ自体が基本なくて、ちょっと緊張するものの、若いバンドのライブをリハーサルから観て刺激を受ける喜びを語る。ベテランらしくイベントの趣旨もしっかりと観客に説明して、ここですでに前述している鈴木の絶妙なKhakiへの感想へ。そんな鈴木が歌う『君が待つ場所』は、ギターの音色が美しく切なく儚くて、初恋の嵐が始まってから、終始感じている堪らなさを改めて強烈に感じさせてくれる。曲終わり、隅倉は事前に中塩と対談したことも説明して、中塩が好きだと言った曲を一緒にやりたいが、アンコールでやるにはマニアックで地味だと笑いながら明かし、中塩を呼び込む。

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「すごい良い曲なのでお願いします」と緊張した面持ちで横にいる隅倉に頭を下げたが、大先輩に対する誠実真摯な想いが感じられて、個人的には物すごくぐっときた。そして、何よりも若者が西山の歌を歌い継いでいることが嬉しかった。歌い出すと、何かが憑依したように歌うのも、当たり前だがプロフェッショナルを感じる。隅倉のコーラスが混じり合い化学反応が起きるのも、まさしくコラボレーション。歌い終わった中塩の表情は清々しかった。

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冗談交じりとはいえ、鈴木が「真剣勝負なんだよ!」と口にしたが、本当にそうであった。お互いに敬意を持ちながらも、生温さなんていう言葉は程遠く、お互いに真剣にぶつかりあっている。「続いてはコヤマシュウ!」と隅倉が呼び込み、SCOOBIE DOのコヤマが飛び出てくる! 「ロックンロールしにきました! コヤマシュウです! ぶっとばしていこうぜ!」の言葉どおり、ロックンロールでぶっ飛ばしていく。コヤマの歌声は重厚な初恋の嵐の楽曲に彩りをつけてくれる。ピョンピョンと飛び跳ねて投げキスまで炸裂! 本人も歌い終わり「楽しいね!」と言っていたが、こちらが何よりも楽しませてもらっている。

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隅倉は西山亡き後、デモテープを元にアルバム『セカンド』(2016年リリース)を制作したことと、西山の歌入れができていなかったものは、さきほどコヤマが披露した『宝物』などゲストボーカルを迎えたと補足する。こういったいわゆる解説は初恋の嵐ファンなら誰もが知ることだが、今日初めて聴くであろうKhakiファンにとっては誠に丁寧であり、感じ入るものがあったように思う。初恋とSCOOBIEの関係性も23、4年前から対バンしていたと話して、盛り上がるSCOOBIEと盛り上がらない初恋と、隅倉とコヤマは笑いながら話す。この光景を西山も笑っていると笑うふたりだが、盟友が歌い継ぐのは素敵なことである。

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続く『nothin'』は、そんな当時からあった曲であり、「聴くと落ち込むと言われた曲を、コヤマが歌うと西山が笑う」と、ふたりはまた言うものの、コヤマが歌い出すと、何とも言えずに胸が詰まる...。とにかく聴き惚れるしかないし、どんなタイプの楽曲でも初恋と西山に敬意を持って素晴らしく歌い切るコヤマに感激すらしてしまう。圧倒的に場を支配する初恋の嵐という特殊なバンドに感極まってしまう。こうして本編は、体感的にはあっという間に終わる。

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「アンコールさくっとやります!」なんて隅倉は言って、歌い出すのは『touch』。コヤマ・須藤・中塩も揃って歌う。中塩はシングル『Untitled』のジャケットデザインTシャツを着ていて、真の初恋の嵐ラバーであることが伝わる。4人がたゆたうように歌が、いつしかドラムが鈴木から橋本に替わっている。中塩と平川はギターを弾き、下河辺太一(b)はベースを弾き、黒羽広樹(key)はキーボードを弾き、と全員楽器が初恋の嵐からKhakiへと替わっている。これこそがリアルセッションなのだろうが、もちろん楽曲は『touch』のままであり、こんな神業は観たことがなく、その場にいる全員が驚嘆した顔で興奮しきって魅入っている...。ソウルフルでありブルージーでありファンキーであり、いつの間にやら木暮はカメラを持って撮影している。こんなに成立し切った混沌は前代未聞である...。隅倉も「ワンモア! ワンモア!」と煽り、コヤマはブルースハープを吹きまくり、より鼓舞していく。コヤマのアジテート、つまりは扇動によって、そのリアルセッションはなお一層うねりまくり、これまた不思議なもので、知らないうちに、楽器演奏陣は初恋の嵐へと戻っている。どう終わるかも誰にもわからないリアルセッションはスリリングでしかなく、永遠に続いて欲しいとすら想う...。そんなリアルセッションは10分以上も鳴らされて大団円を迎えた。

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この日は何よりも、音楽は永遠に残るし、永遠に鳴らし続けられ、永遠に歌い続けられることが証明されたように感じた。その場にいるすべての人に捧げられた心に響く夜...。

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Text by 鈴木淳史
Photo by 原田昴 (@shohnophoto)




(2025年5月12日更新)


Check

Set List

Khaki
01. 車輪
02. Hazuki
03. 子宮
04. 違う月を見ていた
05. 萌芽
06. Undercurrent #2
07. Undercurrent #1
08. Undercurrent #3
09. 裸、道すがら
10. ハンメルフェストの口づけ
11.1Kajiura
12. 眠りの午後
13. 天使
14. 文明児

初恋の嵐
01. どこでもドア(隅倉弘至)
02. Untitled(須藤寿)
03. 星空のバラード(須藤寿)
04. 君が待つ場所(鈴木正敏)
05. 君の名前を呼べば(中塩博斗(Khaki))
06. 宝物(コヤマシュウ)
07. Nothin'(コヤマシュウ)
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Khaki

【愛知公演】
Khaki LIVE TOUR 2025 『発向』
▼5月30日(金) 池下CLUB UPSET

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▼6月1日(日) 横浜B.B.STREET

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Khaki LIVE TOUR 2025 『発航』
▼6月7日(土) 苫小牧ELLCUBE
Khaki LIVE TOUR 2025 『発港』
▼6月8日(日) BESSIE HALL

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▼6月22日(日) 18:00
Shangri-La
[共演]中村佳穂
※ドリンク代別途必要。4歳以上チケット必要。U23チケットは、公演当日23歳以下のお客様が対象となります。当日年齢が確認できるものを必ずご持参ください。
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