ホーム > インタビュー&レポート > 鈴木真海子、さらさ、NEWLYが抜群の親和性で 作り上げた、メロウソウルな夜 『JANUSPIA pre. “danro” vol.3』ライブレポート
この日は『"danro"』3回目の開催にして初のソールドアウト。JANUSにはフロアに入りきらないほどの人が押し寄せていた。翌日からゴールデンウィークの4連休ということで、片手にお酒を持って楽しむモードの人がたくさん。会場にはライブ前特有の高揚感に加え、そこはかとなくパーティー感が漂っていた。
NEWLYはオープンから上質なDJでフロアを盛り上げる。ジャズ、ブルース、ファンク、ソウル、R&B、ヒップホップと多様なジャンルの音楽をクロスオーバーしつつ、慣れた手つきで楽曲を滑らかに繋いでいく様子に、耳も目も惹きつけられる。コンポーザー、アレンジャー、プレイヤーとしての顔を持つ彼は、自身の楽曲もかけながらスキルフルなDJタイムで楽しませてくれた。
先攻のさらさは、サポートにオオツカマナミ(ba)と松浦千昇(ds)を迎えたトリオセットで登場。青く染まるステージで『朝』をゆったりと静かに紡いでいくと、自身もギターを手にしてデビューシングル『ネイルの島』、浮遊感のある『温度』と心地良い温度感で楽曲を届けていく。やわらかさの中に凛とした軸と色気を感じる歌声で、じっくりとフロアを音の海に浸していった。
MCでは「こんばんは、さらさです。『"danro"』、初ソールドアウトだそうです!」と笑顔で挨拶。chelmicoのRachelと毎月会うほど仲が良いというさらさは「真海子さんとはライブでご挨拶するくらいしかお話したことがなくて。だから今回お話をいただいた時は絶対やりたいと思って。しかも大阪に頻繁に来れてないから、大阪の皆さんに会えるのも楽しみでした。たくさんの方が来てくれてハッピーな気持ちです」と、手でハートポーズを作って感謝を示す。
続く『グレーゾーン』では、「人間の価値観や思考ってすごくグラデーションになってると思ってて。でもついつい白黒はっきりつけようとしちゃったり。もっとグラデーションの部分に価値を置く人でありたいと思って作った曲」と述べ、儚くて切ないサウンドスケープを描き出す。メロウな歌声とコーラス、ゆらゆらグルーヴするリズムはもちろん、青からオレンジ、白へと色を変える照明演出が素敵で、しばし別世界へと連れて行かれる感覚になった。
その後も、イントロのリズム隊とボーカルの表情の幅広さがクールな『Roulette』、歌声に切なげな感情を乗せた『feel down』、ビートのドライブ感が印象的な『リズム』、さらさが踊り歌いグルーヴィにフロアを巻き込んだ『退屈』、情熱的な『太陽』と、彩りのある楽曲と歌声を存分に響かせた。5月25日(日)に心斎橋RARCOで行われる『FUJI ROCK DAYS OSAKA』に出演した後はしばらく制作期間に入るというさらさ。クライマックスに向けてじわじわと高まる熱が気持ち良く、きらめくサウンドが耳を喜ばせた『火をつけて』に続き、ラストはソウルフルに『Amber』をプレイした。
NEWLYはさらさの空気感を引き継いで、DJ Harrisonの『Together』やLOST GENERATIONの『THIS IS THE LOST GENERATION』、Dexter Story & Carlos Niño『Chadwick』、Jack J『Clues(PartⅡ)』、Kamasi Washington『Desire』とシームレスに楽曲を繋げていった。メロウでジャジーでムーディーで、NEWLYの知見とテクニックが存在感を放つDJタイム。後攻の鈴木真海子も「NEWLY、カッコ良いね」と彼のDJを賞賛していた。
この日の鈴木真海子は、お馴染みのバンドメンバーであるryo takahashi(ds)、井上真也(ba)、沼澤成毅(key)を迎えた4人編成で登場した。サウンドチェックの後「さらささんカッコ良かったね」と笑顔で述べて、『Blue』からライブをスタート。スローに身体を揺らしながら、情景の浮かぶ歌詞をやわらかく紡いでいく。沼澤が優しく奏でる鍵盤も心地良く、心がほどけていくようだ。続けて華の金曜日にぴったりの『judenchu』を披露する。chelmicoでの元気なラップとは違う、大人っぽくてブルージーな歌声。落ち着きとリラックスのちょうどよいバランスが、チルな空気を醸成する。
MCで鈴木は「こんばんは。お集まりいただきましてありがとうございます。ゴールデンウィークだけど、今日が仕事最後の人もいるのかな?お疲れ様です。よくやったね。皆お疲れ」と近い距離感でオーディエンスをねぎらう。
ボサノヴァちっくなサウンドとボーカル、メロが軽快な『どっかの土曜日』、少し低めのハスキーボーカルとスキャットがあまりにも気持ち良い『お酒を飲んだ夜』に続き、「私来月29歳になるんですよ。10年前にGarageBand(音楽制作アプリ)で作った曲がありまして。それをラテンバージョンでやってみていいですか」と、自身が未成年の時に作った『19』を、大人になった鈴木の最新モードでプレイした。うねるような早口ラップと情熱的なリズム、鍵盤の循環コードが痺れるほどにカッコ良い。さらにそのままラテンアレンジの『EO』で低音の波を作り、オーガニックな『からから』までを流れるように連続で披露。このドラマチックな展開に、フロアは大喝采!
ラストは初のソロ作品『Deep Green』に収録された『Contact』。大人の恋のもどかしさをダイナミックなバンドアンサンブルに乗せて歌う。井上のソロパートではGrover washington Jr. feat.Bill Witherの『Just the Two of Us』のフレーズを織り込み、極上の音世界に連れていく。いつまでも浸っていたい至極のライブを届けてくれた鈴木真海子だった。
ライブ後はNEWLYが、約30分間の見事なクロージングDJでフロアを魅了した。音楽に吸い寄せられた人々で、DJセットの周りには人だかりが発生。皆気持ち良さそうに身体を揺らす。彼のDJに感銘を受けたオーディエンスがNEWLYに話しかける場面も散見された。やがて迎えたフィナーレ。自身の楽曲『Freefall』を経て、Dazz Bandの『Everyday Love』でアーバンかつメロウに締め括った。
3組が最高の親和性を魅せた『JANUSPIA pre. "danro" vol.3』。次回は5月29日(木)、初めての東京編。『"danro" vol.2』で実現したHomecomings、THE NOVEMBERS、DJのDAWA(FLAKE RECORDS)の組み合わせがLIVE HOUSE FEVERに再び集結する。一体どんな化学反応が起こるだろうか、楽しみにしておこう。
Text by ERI KUBOTA
Photo by キョートタナカ
(2025年5月26日更新)
01. 朝
02. ネイルの島
03. 温度
04. グレーゾーン
05. Roulette
06. feel down
07. リズム
08. 退屈
09. 太陽
10. 火をつけて
11. Amber
01. Blue
02. judenchu
03. どっかの土曜日
04. お酒を飲んだ夜
05. 19
06. EO
07. からから
08. Contact
【東京公演】
▼5月29日(木) 19:30
LIVE HOUSE FEVER
一般-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
U-23-3000円(要身分証明書、整理番号付、ドリンク代別途要)
[出演]Homecomings/The Novembers [DJ]DAWA
※保護者同伴の場合のみ未就学児童入場可 (小学生以上要チケット)。出演者が許可した場合を除き、写真撮影、録音・録画禁止。
[問]LIVE HOUSE FEVER■03-6304-7899
さらさ オフィシャルInstagram
https://www.instagram.com/omochiningen/
鈴木真海子 オフィシャルInstagram
https://www.instagram.com/______mmk______/
NEWLY オフィシャルHP
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心斎橋JANUS HP
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