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“4人が良い状態で結成20周年を迎えられるよう、
楽しいことを積み上げたい”
SCANDAL・RINAが語る、作品や表現へのモチベーション

4人組ガールズバンド・SCANDALが、約1年ぶりに新作となるEP『LOVE, SPARK, JOY!』をリリースした。今作には1月1日から3ヶ月連続で配信リリースされたシングル『Terra Boy』(M-1)、『どうかしてるって』(M-2)、『Soundly』(M-3)と、彼女たちがデビュー前に初めてカバーしたロイ・オービソンの『Oh, Pretty Woman』(M-4)を収録。今回はRINA(ds)に『LOVE, SPARK, JOY!』についてはもちろん、RINA自身が昨年夏のヨーロッパ旅行で感じたことをリアルタイムに綴ったZINE『秘密日記』についても話を聞いた。来年結成20周年を迎えるSCANDAL。RINAが語ったのは、クリエイティブへの前向きな想いだった。

バンドとは違う表現をする時間が、自分の潤いにも繋がっている


――ZINE『秘密日記』は、RINAさんが五感で感じたことを言葉にされていて、温度感がちょうどいいなって。

「めっちゃ嬉しいです。ZINEのことをインタビューで話させてもらうの初めてです」

――ほんとですか。去年アルバム『LUMINOUS』をリリースして、全国ツアーとアジア公演を終えてから南フランスに行かれたんですね。

「そうですね。プライベートで、去年の7月に10日間ぐらい行きました」

――ZINEに綴られた言葉は少し冷静というか、高すぎず低すぎない温度感でスッと入ってきますし、写真もあって身近に感じられ、"こういう見方で物事を見られているんだ"という、RINAさん独自の感性が伝わってきました。

「旅行中は夜寝る前に毎日その日のコラムを書く生活をしていて、ZINEはそれをまとめた1冊なんですけど、"その日の言葉、その日書いたもの"が残ってるのが大事だなと思ったから、帰国してから編集もせずにそのまま載せたんですよ。だからより空気感が残ってて。"多分東京の生活の中だとこういうふうに書かないな"と思うところが自分の中でもあったんですけど、"それはその日しか書けなかった文章だろうから"と、敢えて書き直さないことをした1冊だったので、そこをキャッチしてもらえて嬉しいです」

――"2024年7月19日 前髪の話になった"とか、日記の題名もすごく良いなと。

「ZINEならではの内容になったなと思ってて。"ミュージシャン・RINA"として書いたというよりかは、1人の30代女性として書いた感覚が大きくて。大勢に広くたくさん届けようという想いで書いてなかったから、読みたい人の元にだけ届けばいいなという意味で1,000冊しか作らなかったんです。あまり気を遣わずバーッと書いたので、独特な雰囲気を纏った1冊になりました」

――"ZINEにしよう"と決めてから行かれたんですか?

「そんなに決めてなかったんですけど、やっぱり旅の中でどんどん新しい気持ちになっていって、何も作らずにこの感覚が過ぎ去っていくのが勿体なく感じて。クリエイティブな仕事をしていることの良し悪しだなと思うんですけど、自分が新しい気持ちになったり、メンタルに波があった時に"何か作らなきゃ勿体ない"という感覚になる時があって。で、フランスに向かう飛行機の中で、とりあえず1日目のコラムを書いたんです。そしたら毎日続いちゃって。友達といたのに申し訳ないなと思いつつ、その子も"全然気にしないで書いていいよ。先寝るね"と言いながら過ごしてましたね」

――何かを作らずにはいられない、と。

「ほんとにそうなんですよ」

――中学生の頃からSCANDALで活動されてきて、アウトプットが習慣になっているのもありそうですね。

「めっちゃあると思います。"作ってる時間がめちゃくちゃ好きなんだな"といつも思いますね」

――帰国後完成したZINEを見て、改めて感じることはありましたか?

「シンプルに楽しい良い旅だったなということと、やっぱり"やりたい"と思った時にやりたいことをどんどんやっていくことが、新しいものを生み出すキッカケになるんだなと思いましたね」

――また意欲が湧いてきましたか?

「SCANDALは常に新作をリリースしてきて、新しい姿をずっと4人で見せようという感覚があるバンドだと思うんですけど、この数年、バンドとは違う表現をする時間が、自分の潤いにもすごく繋がっているなと感じることもあったので。例えば文章で表現してみるとか、違う作り方で音楽を作ってみるとか。広い視野でいろいろやっていけたらいいなという気持ちになってます」

――ZINEの中で"コンプレックスに向き合って、許したり受け入れて挑戦していきたい"とも書いておられますね。

「苦手だなと思うこと、怖いなと思うこと、私もいくつかあって。それにトライしなくてもSCANDALというバンドが完成しきっているので、全然素敵に活動していけるんですけど、"より良くなろう"、"もっとドキドキしたい"と思った時に、苦手や怖いものに向き合っていくことでしか、真新しい気持ちになれない瞬間もあったりして。そういうこともやっていくのが、大変だけど楽しい、みたいなところに来てるのかな」

――大変だけど楽しい。

「どこかに"できないこともやってみたい"という気持ちがあって。そういうことを1個1個楽しみながら挑戦していけたら、30代後半の人生で別の楽しさを感じられる時間ができるかなと思いました」

――そういうモードはRINAさんの中だけでのものですか?

「バンド的には来年結成20周年なので、そこに向かって楽しいことを積み上げていって、良い自分たちでその日を迎えたいよねというモチベーションですね。今回のEPもそういう気分で作った作品です」



"SCANDALって楽しい!"という感覚だけで制作する期間があってもいい


――今作『LOVE, SPARK, JOY!』には、3ヶ月連続リリースのシングル『Terra Boy』『どうかしてるって』『Soundly』が収録されていますが、シングル3ヶ月連続リリースはインディーズ時代の『スペースレンジャー』『恋模様』『カゲロウ』ぶりですね。

「そうです」

――シングル3曲は初期の楽曲を手掛けられた田中秀典さんと田鹿ゆういちさんに依頼されて、しかもデビュー前にコピーされていた『Oh, Pretty Woman』も収録されているということで原点回帰感がありますが、そうなった経緯というのは?

「作曲に関しては、最近MAMI(g&vo)が担当してくれる機会が増えていたんですけど、数年前からMAMIがスランプになってしまって。でも"自分で曲を作りたい"という気持ちもあって、何とか頑張って作ってきてくれたり、メンバーもそれぞれ作曲するので、皆で協力しながら仕上げていって、2枚(『MIRROR』(2022年1月)、『LUMINOUS』(2024年3月))アルバムを作ったんですよ。でもMAMI自身はスランプから抜け出すことが難しくて、傍から見てても制作がキツそうで。その中でも2枚のすごく良いアルバムが作れたので、苦しんで自分を追い込みすぎるより、もっと軽やかで明るい気持ちで、"SCANDALって楽しい!"という感覚だけで制作する期間があってもいいよねという話になって。それで久々に作家さんに作詞作曲をお願いして、自分たちは思い切り楽しく、ある意味無責任に演奏することをやってみようとなったんです。そしたら全然違う気持ちで制作できて。ちょうどギネス世界記録(SCANDALは2023年8月、メンバーチェンジなし・活動休止なしでのガールズバンド最長活動記録のギネス世界記録に認定)を取るかどうかの時期で、自分たちに向き合って、自分たち自身のことを曲にする期間が数年あったんですよね。だから"音楽で遊ぼう"と思っても、手放しに軽やかに曲を書くことが難しくて。それで作家チームには、"自分たちから出てこないような、楽しくて遊び心のある曲を作りたいんです"と話しました」

――なるほど。

「ひでさん(田中)と田鹿さんに会うのも久々だったので、"会わない期間にこういう活動をして、いろいろあったんだよね"という話をたくさんして制作に取り掛かりました。バンドのストーリーもしっかり汲み取ってもらいながら、大人になった自分たちとして再会して楽しく制作ができたので、すごく良い選択でした」



初期のSCANDALを支えた2人の作家


――田中さんと田鹿さんにお願いした理由は?

「私たちの初期を支えてくれた代表の作家2人なので。『瞬間センチメンタル』や『少女S』といったカッコ良いイメージの曲を作ってくれた田鹿さんと、『太陽と君が描くSTORY』や『夜明けの流星群』といったポップな印象のある曲を作ってくれたひでさん。2人の曲調は対照的なところにあるので、いつもバランスが良くて。2人ともバンドを本当に大切に思ってくれて、"4人と曲を作れることはもうないと思ってたから、すごく嬉しい"と言ってくれて。すっごい熱量で前のめりに来てくれて、ビジネスじゃない制作ができる2人だというところも大きくて。作家さんに作ってもらうアイデアが出た時、2人の顔しか思い浮かばなかったぐらいでした」

――ラジオも拝聴したのですが、メンバーさんとも仲が良いんですね。

「めちゃくちゃ仲良いです。田鹿さんは学生の時から一緒に合宿して曲を作ってくれて。逆にひでさんはディレクターさんを挟んで会話する距離感だったので、当時は直接会うことはあんまりなかったんですよ。今回は電話して相談したり、LINEでやり取りしたり、ご飯に行ってメンバーの話を汲み取ってくれたりして、"ちゃんと一緒に作れたな"という感じがしました」

――関わり方が違ったんですね。

「当時は私たちも子どもだったので、全部スタッフさんが動いてくれて、ある程度プロデュースされてる状態で用意された曲から選ぶ感じだったんですけど、今はコンセプトやお願いしたい理由、どんなテンポとコード感の曲が欲しくてひでさんにお願いしたか、というところまで4人で話せるようになったので、やり取りの違いはかなりありましたね」

――田中さんにも田鹿さんにも5曲お願いされたんですか?

「曲数は指定してなかったんですけど、ひでさんはクリスマスライブ『BEST☆Xmas 2024』を観に来てくれて、"久々に4人で演奏してる姿を見たら、曲がめちゃくちゃ溢れてきた"と5曲も作ってきてくれて。どれも素敵だったけど、その中から特に気に入った2曲を選ばせてもらって。田鹿さんはストックで置いてくれてた曲と書き下ろしの曲を全部で3曲送ってくれて、その中から『Soundly』をチョイスさせてもらいました」

――曲調的には、"楽しい曲を"とオーダーされたんですか?

「そうですね。ひでさんには制作がうまくいかない時期が続いてるという話もして。その上で"もう1度バンドを楽しみたい気持ちがあるから、ひでさん節MAXのキラキラ明るくて、明るいからこそちょっと泣けちゃうみたいなメロディーが欲しいんです"という話をしましたね」

――田鹿さんには?

「田鹿さんには"今の私たちが演奏したらカッコ良いと思う曲を自由に書いてほしい"と言ったのと同時に、『Documentary film MIRROR』を見てもらって。コロナ禍でリリースしたアルバム『MIRROR』を提げたツアーだったんですけど、結構過酷で。ワールドツアーの中盤でメンバー4人ともコロナに罹って、シカゴで足止めになって約2週間帰国できなくて。マネージャーさん2人と4人の最小人数でシカゴのホテルに缶詰状態になって、その後の公演が全てキャンセルになるという。事務所の負担もすごかったし、何よりお客さんがシカゴのライブハウスの前に行列を作って待ってくれてる最中にメンバーの体調が悪くなって、検査したらコロナだということがわかって、その瞬間中止のアナウンスをしてお客さんに帰ってもらったので、気持ち的にものすごいダメージを受けちゃって。しんどい症状のまま帰国できない生活にもダメージを食らいすぎて、帰国してからも"申し訳ないな"という気持ちがメンバーの中に強くあって、なかなか気分が晴れなかったんです。田鹿さんにその生々しい映像を見てもらったら、"映画を見終わった瞬間にこれが書けた"と『Soundly』を送ってきてくれて、すごく嬉しかったです」

――強く感情移入されたんでしょうね。

「そうだと思います。ほんとに学校ジャージみたいな格好で伊豆で合宿して、朝からレコーディングして曲作りするみたいな生活を一緒にしてくれた人なので、特別な思い入れも持ってくれてたんだろうなと思いますね」



田鹿さんが書いてくれたからこそ、気持ち良く演奏できる『Soundly』


――『Soundly』は元気な曲ですが、田鹿さんは"ドキュメンタリーを見たら切なくなっちゃう"とお話されていましたね。

「そうですね。でも田鹿さんには"田鹿さん節が効いたカッコ良い曲がいいです"という話をしていたので、もうちょっとロックな曲がくるかなと思ってたんですけど、すごく綺麗な曲で」

――美しいですよね。曲が届いた時はどう思いましたか?

「歌詞もすごく好みだし、自分たちの曲だけど、第三者の田鹿さんが書いてくれたからこそ、あまり重くならずに気持ち良く演奏できる曲になったなと思いました」

――特に気に入っているフレーズはありますか?

「歌詞は全部大好きなんですけど、1か所変えてもらったところがあって。2番のAメロ辺りに"メイクが上手くなって大人になったと感じる"みたいなニュアンスのワードが入っていたんですけど、"もはやメイクの仕方で自分の成長を感じることってないかも"と思って。メイクを始めた時は、新鮮な自分に変身できる感覚や、赤リップを塗って大人になった感覚が多少あったけど、"もはや意外とリアリティないかも"と思って、何か違うワードに変えたいなと言って今の歌詞になったので、そこは話し合って良かったなと思うところです。あと歌詞には載ってないんですけど、アウトロで<できないsoundに>というコーラスが入ってくるんですよ。サビには<今しかできないsoundに>というワードを使ってるんですけど、私にはそのコーラスが"結局本当の気持ちを100% soundにすることができない"という意味に感じ取れて、それがすごく現実感があってカッコ良いなと思ったんですよね。でも自分じゃ書いちゃいけないワードのような気がして」

――"できない"という否定形の表現が?

「そうです。"自分では書けない、選ばない言葉かもしれないな"と思って。頼んだからこそ歌えたフレーズな気がして好きですね」

――シングル3曲のMVは同じシチュエーションで撮影されていますが、『Soundly』だけ全員が内側を向いて歌っているのが印象的でした。

「MVの監督に"『Soundly』は向かい合って演奏するのがいいと思う"と言われて採用したんです。『Soundly』はEPの中で唯一バンドのことを歌ってる楽曲なので、そのフォーメーションだけでも伝わるものがあるんだろうなと思いますね」

――ドラムの面ではどうでしたか?

「すごく繊細なプレイで、意外と難しいです(笑)。今回どの曲もそうなんですけど、サビや盛り上がるところでハイハットをオープンさせないというのが、自分的には新しかったですね。昔だったら全部開けてたと思うんですけど、アレンジャーさんと話しながらアレンジを詰めていった時に、今回はサビやイントロ、リフも全部クローズでいくのがいいかもとなって。それをしたことで、弾けてるけど大人っぽさもキープされたサウンドになって、自分の中では結構ポイントでした。『Soundly』はフレーズ自体が結構繊細なので、そこは注意しながら叩くというか。4人のグルーヴに集中力が必要な演奏だなと思います」



アレンジャーや作家陣も、音楽で一緒に遊んでくれた


――田中さん作の『Terra Boy』『どうかしてるって』ですが、『Terra Boy』はとても勢いのあるロックチューンです。ライブでも皆さんノリノリでしょう?

「ノリノリです。皆めちゃくちゃ楽しそうで、ライブ映えする曲ですね」

――サビの振りはお客さんも踊ってるんですか?

「踊ってる。すごい光景になってます(笑)」

――私もMVを見てやってみましたが、途中でついていけなくなりました(笑)。

「テンポも速くて難しいですよね。"無理しなくていいよ"ってお客さんにも言うんですけど、ツアー初日に初めてその景色を見てびっくりしました。練習してきてくれたんだなと感じましたね」

――『Terra Boy』は明るいけど泣ける曲で、新たなアンセムになりそうですね。ドラムもパワフルで。

「4人とも歌っているのがまずポイントなのと、ドラム的には、生ドラムの上にエフェクトを結構強めにかけているので、そもそも音が面白いと思います。ライブも少しドラムの音色を変えているので、結構ハッとする曲になってくれてます」

――最初に聴いた時はどう思われましたか?

「これは5曲デモを送ってくれた中で1曲目だったんですよ。イントロを聴いた時点で、まさに自分たちが今求めていた曲になってると思ったので、"絶対やりたい"とすぐ言いました。ひでさんはアレンジャーの川口圭太さんとアレンジを作ってくれて。リフのフレーズの部分だけ7拍子なんですよ。"そのリフを発明できたのがめっちゃ嬉しかった"とずっと言ってて(笑)。拍が取りにくくて、お客さんはノるのが難しいと思うけど、すごくキャッチーでカッコ良いフレーズになってて好きです」

――サビのシンセもアクセントになっていますね。

「シンセは元々2Bの<Twilight 夢の続き頂戴>の部分から入ってたんですけど、レコーディングの途中で"そこに普通のピアノを入れよう"となって。最初は川口さんがコードを弾いてたけど、"もっとはじけた方がいいかも"となって、めっちゃ楽しそうに肘で弾いてましたね。アレンジャーや作家陣もこの3部作で一緒に遊んでくれた感じがあって、その雰囲気も最高でした」

――それこそ4人が数珠繋ぎでラップされているところは、どんなふうにレコーディングされたんですか?

「制作前のミーティングで、"4人全員歌う曲を1曲は作りたい"とひでさんが言ってくれて、ラップをそのパートにしようかとなって。歌割りもひでさんに任せてレコーディングしました」

――RINAさんのリリックは<茶沢通り>ですね。

「<シルクロード沿い>にかけて、"現実はどこの通りがいいかな"と、しっくりくる通りを2人で話して(笑)。"目黒通りはちょっとリッチすぎるかな。茶沢通りに思い入れある?"と言われて。私初めて上京した時、茶沢通りのある三軒茶屋辺りに住んでたんですよ。茶沢通りをまっすぐ歩くと下北沢に着くんですけど、その道を毎朝歩いて高校に通ってたんです。だからめっちゃ思い入れがあって、"じゃあこれだね"と決まりました」

――やはり4人で歌うのは格別ですか?

「4人全員歌えるからというのはひとつあるんですけど、自分たちで曲を作ってると、一人称の曲はやっぱり1人で歌って完結した方が伝わりやすいし、大人っぽくなるんですよね。なので、HARUNA(vo&g)1人で完結してもらう曲が大半になってたけど、4人とも歌うとシンプルにすごく盛り上がるんです。ライブでも湧いてくれるし、音源でも4人の声が入った曲は特別人気だったりするから。ここでまた4人で歌う曲ができて良かったです」



"大嫌いで大切"。バンドに対する愛情を込めたラブソング


――『どうかしてるって』はいかがですか?

「最初ひでさんがフルで書いてくれた歌詞は、甘くて可愛いラブソングで。世界観が完成されてそれも良かったけど、さっきのメイクの話じゃないけど、何年も自分たちの曲として歌っていくものになるから、感覚のギャップがない方がやりやすくて。だから私もフルで歌詞を書いて、2人の良いところを組み合わせて1曲に仕上げてみたんです。ひでさんはラブソングを書いてくれたので、私はバンドに対する想いを軸に歌詞を書いて。混ぜると大きいラブソングになって、すごく良い塩梅になったと感じてます」

――歌詞を混ぜるのは難しくなかったですか?

「組み合わせるのは意外とすんなりできました。歌詞を送った時、ひでさんに"こんな歌詞書けるようになったんだね"と言われたんです。ずっと何が正解かわからずに歌詞を書き続けているけど、自分がリスペクトするクリエイターの方にそう言ってもらえたことはすごく嬉しかったし、"ここ良いね、使いたいよ"と言ってもらえるのも嬉しくて楽しくて。テンポ良く進めていけたと思います」

――ラブソングがテーマになったんですね。

「<どうかしてるって>というワードはひでさんが出してくれたので、私が<どうかしてる>と思うことを書こうと思って。私がそう感じるのは、誰かが好きすぎて自分がどうかしてるみたいな感覚ではなくて、"大事すぎるからこそ、大好きだし大嫌い"みたいな矛盾した気持ちを持ってる時だなと思ったんですよね。恋愛と同じで、バンドも大切すぎてしんどくなる時があって。"楽器に触れたくない"となる瞬間もある。でも毎日ずっとSCANDALのことを考えてるんですよ。大切すぎて愛おしすぎて、逆の気持ちを同時に持ってるって究極の愛だなと思って、バンドへの愛情を書いていきました」

――<毒にも薬にもならない ハッピーエンドは うんざり>はリアルで印象的でした。

「これはひでさん作で、私が絶対入れたいと言ったんです。最初は1Aに入ってたんですけど、ちょっと場所を変えて。<今夜はこの1回>や<大嫌いで大切だなんて>は私ですね」



思い出の楽曲を、今の4人でカバー


――『Oh, Pretty Woman』はデビュー前にコピーしていた曲で、当時は演奏が難しかったとか。

「結成してすぐの頃、木村カエラさんがカバーされていたのをキッカケに『Oh, Pretty Woman』を知って。楽器屋さんで譜面を見つけて、すごくシンプルに聴こえたので"コピーできそう"と思ってやってみたんですけど、意外に小節数が複雑で、最後まで演奏しきれなかったんです。ワンコーラスぐらいで諦めてそのまま放置されていて。ライブでもやったことのない、4人で練習してただけの曲なんですけど、"難しい、わかんない!"と言いながら途中で挫折したのもめっちゃ楽しい記憶で。EPの3曲が完成した時、当時の作家さんと作ったという点でも"原点回帰とアップデートみたいなテーマでまとまったEPになったね"という話から、思い出の『Oh, Pretty Woman』をカバーして4曲入りにしようという話に繋がって。すごくしっくりハマってくれたので良かったです」

――放置されていた間は全く演奏していなかったんですか?

「全然やってなかったです」

――で、今やってみたら。

「さすがにできました(笑)。でも小節が複雑なのは変わりないので、罠がいっぱいあるような曲なんですけど、良い仕上がりでオリジナリティーも出せたし、改めて4人で演奏できて嬉しい1曲です」

――後半のアレンジがカッコ良いですよね。

「カッコ良いですよね!」

――アレンジは皆さんで考えられたんですか?

「そうです。シライシ紗トリさんとアレンジを作ったんですけど、"海外の小さいライブハウスで、ガールズバンドが思い切りガシガシ弾いてるイメージで、ちょっとジャンクな感じも残しながら、バンド感が前面に出るアレンジにしたい"と言って。原曲へのリスペクトも込めつつ作ってくれました。オープニングの少し巻き戻る部分は最初なかったんですけど、"始まりにオリジナリティーが欲しいな"と思っていたので、レコーディング後にひっつけました。それも良いアクセントになって、オシャレに仕上がりました」

――ボーカルも皆さんで歌われているんですか?

「これは私が入らなくても完結する感じになったので、私以外の3人で歌っています。ハモも気持ち良くて、TOMOMI(b&vo)もメインで出てくるからHARUNAとの違いが楽しい。飽きない1曲になりましたね」

――アートワークは3曲のシングルのジャケットがひとつになったものですね。

「とても信頼してるMOTTYというアートディレクターさんにお願いして。"とにかく20周年に向けて、楽しい気持ちを前面に表現できるものにしたいんだ"という話をさせてもらって。あとはコンセプトと、"3部作で関連性があるアートを作りたい"、"わかりやすくハートを使っていいです"と伝えたら、MOTTYがコラージュして素敵に仕上げてくれました」

――『LOVE, SPARK, JOY!』のタイトルにも今のバンドの気持ちが表れているということですよね。

「まさにです」

――ここからは海外公演もありつつ、20周年に向けて走り続けていかれると。

「頑張りたいですね。4人で良い状態で20周年を迎えられるように、楽しく過ごせたらなと思ってます」

Text by ERI KUBOTA




(2025年4月25日更新)


Check
RINA

Movie

Release

SCANDALの初期を支えた作家陣と作り上げたEP

EP『LOVE, SPARK, JOY!』
発売中

【初回限定盤】(CD+Blu-ray)
6600円(税込) VIZL-2419
【通常盤】(CD)
1980円(税込) VICL-66045

《CD収録曲》※全形態共通
01. Terra Boy
02. どうかしてるって
03. Soundly
04. Oh, Pretty Woman

《Blu-ray》
SCANDAL TOUR 2024 ”LUMINOUS” @Zepp Haneda
01. 群青pleats
02. 恋するユニバース
03. LOVE ME DO
04. 私たち
05. 1:47
06. 愛の正体
07. Plum
08. LOOP
09. 最終兵器、君
10. テイクミーアウト
11. Fuzzy
12. あなたへ
13. ファンファーレ
14. Line of sight
15. 瞬間センチメンタル
16. LOVE SURVIVE
17. ハイライトの中で僕らずっと
18. STANDARD
19. 会わないつもりの、元気でね
20. Sisters

Profile

2006年大阪で結成。2008年「DOLL」でメジャーデビュー。翌年には「少女S」でレコード大賞新人賞を受賞。国内外問わずに多くのフォロワーを持ち、世界中でコンサートを行っている。近年ではファッションアイコンとしても注目を集め、自身のアパレルブランド「FEEDBACK」をプロデュース。2019 年にはプライベートレーベル “her” を設立する等、名実ともに日本を代表するガールズバンド。2023年8月には「同一メンバーによる最長活動ロックバンド(女性)」としてギネス世界認定された。

SCANDAL 公式サイト
https://www.scandal-4.com/