ホーム > インタビュー&レポート > 終幕のベルは華やかに──DENIMS主催フェス 聖地・味園ユニバースでの最後の 『ODD SAFARI VOL.7』ライブレポート
開場時からナイスな選曲でライブへの期待を高めてくれたDJはMikity(PISTOL)。DENIMSとは旧知の仲で「Song For You & Me」のミュージックビデオが撮影された桜川のヘア&サブカルチャーサロン、PISTOLのオーナーでDJとしてもお馴染み。出店は、TENDOUJIともども『ODD SAFARI』に初回からレギュラー出演のFLAKE RECORDSに、フードは谷町六丁目のホットドッグ店「HOT DOG STAND」からタコライスの「DOCORICE」が昨年に続いて出店。もう一店の「酒パンつつみ」は、パンをアテにお酒が飲める南船場の店。店内のBGMは高確率でDENIMSが流れているという。岸和田名物コーヒーランドをかじるお客さんの姿があちこちに見られ、限定販売のガーリックトーストがイイ匂いをさせる中、ライブは今年もODD STAGE 、SAFARI STAGEの2ステージでタイムテーブルは被ることなく交互にライブが行われた。
志波太朗
坂本慎太郎の『まともがわからない』に乗せて颯爽と登場したオープニングアクトは、大阪発メロウでソウルなシンガー・ソングライター、志波太朗。3ピースバンドYosac Owlではドラム&ボーカルを務めている彼が、歌い始めた第一声の艶やかさで会場中の耳を惹きつける。トランペットを含むバンド編成で、「ODD SAFARIはまだ始まっていません!でも大トリぐらいの気持ちで生意気にやってやるぜ!」とイキのいい雄叫びをはさみ、ファンキーでありながらキメすぎない心地よいレイドバック感のあるステージで盛り上げた。
ここで「どーもー」とステージに釜中健伍(vo、g)と岡本悠亮(g)が登場し、『ODD SAFARI VOL.7』開幕の挨拶。「志波太朗くん最高でしたね!あのピークが一日中続くんですよ」(釜中)、「今日でユニバースの酒の在庫を使い切るつもりで飲みましょう!」(岡本)という、あまりにも「らしい」主催者からのありがたいお言葉。いよいよ最後のユニバースでの饗宴の幕が開いた。
ザ・おめでたズ
SAFARIステージの1組目、ザ・おめでたズはDENIMSの『Pray To The Moon』をサンプリングした『THA THEME』で登場。「くだらないことをおもしろがりたい」というフレーズにDENIMSとの親和性を感じる5MC+1DJの6人組from富山。焼肉の歌『ニク☆ヤク☆ニク☆クウ』から、ビールの歌『GOOD BEER』へ繋ぐ曲順もGOOD。最後は、「皆さんの毎日がハレの日になりますように」と『TODAY IS THA DAY』でハッピーなままお開き。
グソクムズ
味園ユニバースでライブをやりたいと思い続けながら、取り壊しと知り「縁がなかったのかなあと思っていたら...今日は呼んでいただけて感激です」(Vo&gたなかえいぞを)と話したグソクムズ。傘を忘れ、通り雨の中を駆ける。日差しを浴びて、坂道を走る自転車...日常をスケッチしたような歌が、ころりとした深みのあるサウンドと美メロで紡がれてゆく。「素敵な思い出を作りましょう」と添えた言葉は今日の日をいつまでも忘れないと言っているようにも聞こえた。
滝音
グソクムズに続いて登場したのは滝音。ジュースごくごく倶楽部のワンマンライブで4月9日に味園ユニバースを埋めたさすけと、この日初めて味園ユニバースのステージに立った秋定遼太郎。「距離感も近くてありがたいですけども」(秋定)という通り劇場よりも至近距離に観客がいる中、秋定の飄々としたボケと、さすけのワードセンスが炸裂するツッコミで大きな笑いを生み出していた。
HYPER TAMADE(KOPERU&ISSEI TERADA)
「DENIMS」「ODD SAFARI」できっちりオチをつけた滝音の漫才に続いては、今年初の試みであるHYPER TAMADEによるショットライブ。梅田サイファーのKOPERUとヒューマンビートボクサーやDENIMSのMVも手がける映像作家などいくつもの顔を持つISSEI TERADAによるHYPER TAMADE。DJを務めるのは釜中。釜中が参加した曲『DONUTS』他短い時間ながらハンズアップせずにいられないステージで沸かせた。
muque
フロアの盛り上がりに、「大阪あったかいっすね」と笑顔を見せた福岡在住の4人組、muque。彼らの曲は音源を聴いていても気づけば体がリズムをとっているが、ライブはその何十倍もエネルギッシュ。立ち上がってドラムを叩くtakachi、ステージをスキップで駆けながらギターを弾くKenichi。熱量の高いバンドサウンドに四つ打ちやジャングルを掛け合わせたカラフルでエモ度高めの曲でフロアとコミュニケーションを取っていく。初のアニメタイアップである「ワンピース」のエンディング主題歌『The 1』をこの日大阪初披露。
Nagakumo
雲ひとつない青空のようなくっきりとしたコモノサヤの歌声にひき寄せられ、サウンドチェック中からお客さんが集まっていたNagakumo。3曲目の『Awayokuba』という曲名からもDENIMS愛がうかがえるが、「今日はDENIMSの正統関西後輩枠で出場しました!」とオオニシレイジ(g)が表明。フリッパーズ・ギターやカジヒデキらひねりの効いたギターポップ、ネオアコのエッセンスを落とし込んだ"ネオネオアコ"をコンセプトとする彼ら。まるで今日のことを歌ったような『贅沢な週末を』ではシンガロングが湧き、ステージもフロアも終始弾けるような笑顔と温かい拍手に満ちたライブを繰り広げた。
MONO NO AWARE
どこを切ってもハイライトだったこの日のMONO NO AWARE。静かに歌い始まった『同釜』が徐々に熱量を上げていきそれにつられてフロアも心臓の鼓動が高鳴り、ついにはバースト。いつしか血湧き肉踊る熱狂のセッションの只中。『異邦人』も『幽霊船』もご多分に漏れず。「ご挨拶が遅れましたがDENIMSのお友達のMONO NO AWAREです。...この場所がなくなってもODD SAFARIは続いていくでしょうから......、なんか気まずいな(苦笑)」と玉置。ラストの『東京』で歌詞中の「東京」を大阪に置き換えて聴いていたその時、「大阪も一緒だー!」と玉置の咆哮が。興奮に満ちた歓声がユニバースを揺らした。
TENDOUJI
SAFARIステージのトリ、『ODD SAFARI』レギュラー出演のTENDOUJI。「7回目でも初めての人もいると思います」とメンバー紹介ではきっちり個々の見せ場を作る。『TOKYO ASH』のサビをフロアが一緒に歌っていたらいつの間にかアサノケンジ(vo、g)がカズーでDENIMSの『Benny』を歌い始め、「一緒に歌おうぜ」(モリタナオヒコvo、g)と大合唱。DENIMSと知り合った頃からやっている曲をと『LIFE-SIZE』。大混雑のフロアに「もっと来い!」というようにアサノが手で合図をすると、観客は飛び跳ね手を叩く。それを見てOKサインを送るアサノにフロアがさらに沸くという幸せな盛り上がり。最後『PEACE BOMB』を歌い終え、「ありがとう大阪!DENIMS愛してます!」と思いのたけを吐き出しステージを後にした。
DENIMS
タイムテーブルの一番最後。DENIMSを待ちわびるワクワクと、もう『ODD SAFARI VOL.7』が終わってしまう寂しさが入り混じったような思いを、ステージに現れた4人が最初の一音で吹き飛ばす。オープニングは『たりらりら』。頭を振り体を揺らし、どファンキーな演奏でみるみるフロアの熱気を高めていく。続く『さよなら、おまちかね』は、「さよならお待ちかね 新しい私」「まだ続いていく」という、なんでもない時だったら軽快な音に乗って心地よく響く歌詞のひとことひとことが刺さりまくる。「味園ユニバース、最後までありがとう!」と、釜中は満面の笑み。うまくいかないことがあった時、自分の中には絶対に埋められない穴があいてしまったような気持ちになる。「やりたい事はやれるけど、なりたい人にはなれないよ」と歌う『fools』を聴いていると、穴があいていたとしてもそれは欠陥じゃないんだと言われているような気がしてくるから不思議だ。
「今日、ソールドアウトです!フードもほぼ完売だそうで、みなさん本当に楽しんでもらってるのがよくわかります。今日来てくれて本当にありがとう!最後まで楽しんでください」と岡本が心から感謝を伝え、そのMCのバックで始まっていたセッションがどんどん曲になっていっていく。『INCREDIBLE』だ。4人の掛け合いでどんどん熱が高まっていくグルービーなこの曲は歌詞の言葉遊びも強烈で、今日はひときわ戦闘力が高い。「行こうかー!」(釜中)という叫びに応え、勢いよく上がる拳も力強い。
「7回やってきたけど、今日が一番自分もお客さんとして楽しんでる。というか、ずっと楽しかった」とギターを置いてキーボードの前に座った釜中が言うと、「めっちゃいいイベントやん」(岡本)、「そうやんなあ」(釜中)と思いきり普段着の会話が続き、今日みたいな日の歌を歌いますと『夜にとけて』へ。
MCでは改めて釜中が「結論から言うと、バンドってめちゃ最高やなって思ってます」と語る。「味園ユニバースでも長いことやってるし僕らも長いことやってる。ちゃんとうまくやらないととか、大きなところでやって認められるような曲を作らないととか考えたんすけど、バンドやり始めた時って全然そんなんじゃなくて。ガシャン!とやってもっと適当でええやんってノリで始まってて。やっていくうちに難しいところもあるなっていう時期もあったけど、いろいろ経てバンドってまじで最高やなって思ってます」と打ち明ける。ここでフロアから「パパー」という愛らしい声がかかり、「パパ、頑張ってるで」と続ける。
「ロックって、"大人なんてクソ"って言ってるイメージあるけど、大人最高です。大人になって良かったと思うし、これからもどんどん良くなってく気がするんで、これからもよろしく!今日はほんまに来てくれてありがとう」と話し、『おたがいさま』を。歌詞の〜Oh Lalalalaを「歌えますか?」と促し、フロアも土井徳人(b)も江山真司(dr)も岡本もみんなで歌う。いつまでも素敵なことを「最高」と思える大人でありたいし、日曜の夜にお酒を飲みながら好きな音楽を一日中全身に浴びる大人である自分を最高だと思える。
「残り2曲です!ぶち上がっていけますか?味園ユニバース!」と呼びかけ『DAME NA OTONA』、最後は『Song For You & Me』。誰もが手を伸ばさずにいられないし一緒に歌わずにいられない。片手にタコライスを持ち、もう片方の手で拳を上げる人もいれば、指先で涙を拭いながら歌う人も。みんなDENIMSの歌を傍に置いてここまでやってきた人たちばかり。本当にこんな歌が今必要なんだって心から思う。
大拍手と叫び声のような歓声に見送られた4人が、アンコールに応えて再びステージに戻ってくる。「まっつん(松原大地)も来てくれてたな。嬉しかった」(釜中)と言い、続けて「味園ユニバースという場所があってここでライブをしたいって気持ちで『ODD SAFARI』ってイベントが始まって、ずっと続けて来れて良かったです」と改めて感謝の思いを伝える。「来年の場所はまだ決まってなくて、ここに変わる場所はほんまになくて、ここは特別な場所だと思う。形は変わってしまうと思うけど『ODD SAFARI』っていうパーティーをみんなが信頼してくれるんやったら、また違う形になってもやり続けたいんでまた遊びに来てください」と『ODD SAFARI』というイベント、そして味園ユニバースへの思いを明かす。
「楽しかったですか?疲れたやろ」とお客さんを労いつつ、今日を振り返って噛み締めるように「楽しかったなぁ」と釜中がこぼす。アンコールの1曲目は『酔いは醒めないで』。無邪気な少年のような釜中の歌声を、岡本のコーラスがそっと縁取る。「最後1曲爆発して帰っていいですか?」「いっつもここでぐだぐだになるから先にみんな呼んでおいていいですか?」と本日の出演者を呼び込み、と最後は『Alternative』を。本日の出演メンバーがどんどんステージに出てきて踊ったり歌ったり、フロアももれなく手を挙げて歌い踊る。ギターを高く掲げる釜中も顔をくしゃくしゃにして笑い、ステージは一段と明るく、華々しい終わりを迎えた。
音楽ってライブって、DENIMSと彼らが選んだ出演者たちがたくさんの愛を詰め込んで繋げてきた『ODD SAFARI』ってなんて素晴らしいんだろう。最高の時間だけが続いてほしいし、悲しみのその先には新しい歌があって、僕らはまた旅に出る。この先どんなふうにDENIMSが吃驚させ続けてくれるのかを楽しみにしながら、味園ユニバースでの『ODD SAFARI』は一旦終幕。これからも長い旅=SAFARIはまだまだ続いていく。
Text by 梶原有紀子
Photo by 翼
(2025年4月30日更新)
●ザ・おめでたズ
01. THA THEME
02. THA FOOL
03. 鬼より
04. ニク☆ヤク☆ニク☆クウ
05. GOOD BEER(remix)
06. PLAYGROUND
07. 三途のリバーサイド
08. SOMETHINGOOD
09. TODAY IS THA DAY
●グソクムズ
01. すべからく通り雨
02. ユメのはじまり。
03. 素敵なメモリー
04. 春の歌
05. いつか渚へ
06. あるサンセット
07. グッドナイト
08. 朝陽に染まる
●muque
01. Dear,My friends
02. tape
03. 456
04. feelin’
05. Teardrop In The Sea
06. cheers
07. The 1
08. nevermind
09. my crush
10. Bite you
●Nagakumo
01. 思いがけず雨
02. Birthday
03. Awayokuba
04. 贅沢な週末を
05. 日曜前夜
06. CITY GIRL
●MONO NO AWARE
01. 同釜
02. 異邦人
03. もうけもん
04. 夢の中で
05. 幽霊船
06. 風の向きが変わって
07. 東京
●TENDOUJI
01. TOKYO ASH
02. Killing Heads
03. FIREBALL
04. LIFE-SIZE
05. HEARTBEAT
06. DODA
07. THE DAY
08. PEACE BOMB
●DENIMS
01. たりらりら
02. さよなら、おまちかね
03. fools
04. INCREDIBLE
05. Runnin’
06. 夜にとけて
07. Ben&Robin
08. おたがいさま
09. DAME NA OTONA
10. Song For You & Me
En1. 酔いは醒めないで
En2. Alternative
▼9月20日(土) 19:00
サンタマリア号
乗船券-5500円(ドリンク代別途必要)
※本券は1枚につき1名様のみ、有効です。本券はいかなる場合も再発行は致しません。乗船にあたっては、係員の誘導に従ってください。気象・海象の条件によりましては安全上やむなく運休もしくはコース変更をする場合があります。入場列は18時頃から整列になります。18時より前に来て頂いても並べませんので御了承ください。
[問]GREENS■06-6882-1224
▼5月5日(月) 15:30
梅田Zeela
オールスタンディング-5300円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[出演]ajiheng/韻シストBAND/Keyco/SUKISHA/DENIMS
※[SAKE&FOOD]日本酒みずどり/鮨 大吾/BAR QUINTA/穀雨
※10歳以下保護者同伴のみ無料で入場可能。
[問]梅田Zeela■06-6316-1199
DENIMS Official HP
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