ホーム > インタビュー&レポート > 「歌っておもしろい!」を体現した夜 『林 萌々子と奇妙礼太郎 supported by サウンドクリエーター』 ライブレポート
【奇妙礼太郎】
レトロなスタンドライトが置かれたシンプルなセットにフラリと登場した奇妙礼太郎。ギターを抱えると、「コンビニからの帰り道、家の近くの路地で中学生がすごいキスしてて...。そのときの曲やります」と「ONLY FOOL」を始めた。クスリと笑わせるトークで緩めたあと、アコースティックギターの響きとリンクするメロウな歌声で、会場の空気を震わせる。ギターをつま弾きながら客席に話かけて、セットリストは気の赴くままに。続く「いつのまにか猫」では、「今ひとり暮らししてて、猫を飼ってるんですけど...」と、愛猫とのエピソードを語りつつ、日々の暮らしが目に浮かぶ歌を届ける。そんなリラックスムードから一転、2024年秋に公開された映画『夜のまにまに』の主題歌「朝までのブルース」では、夜明けを思わせるようなブルーの照明の中、身体全体を鳴らすような情感豊かな歌唱でオーディエンスの心をわし掴みに。
そして、4月23日に5thフルアルバム『オールウェイズ』がリリースされることを告知して始めた「スケベなSONG」では、ブルージーで軽快なリズムに思わず体が揺れる。さまざまな表情をみせながら、気ままに歌を紡いでいく奇妙は、「最近、練習してる曲をやります。絶対間違うと思うんですけど...」と前置きして松田聖子の名曲「渚のバルコニー」も披露。息遣いやブレスも巧みに操りながら少女のような儚さを表現したかと思えば、新作の表題曲「オールウェイズ」では、リズミカルなリフとともにエモーショナルなサウンドを響かせる。歌もギターも変幻自在だ。タブラ奏者U-zhaanの「ギンビス」カヴァーでは、「U-zhaanさんに覚えさせられた曲やります」と笑いを誘い、出だしがうまくいかなくて2度やりなおす場面も。老舗製菓会社「ギンビス」のおなじみのお菓子が登場する歌詞が楽しく、みんなから「ギンビス」コールが巻き起こる。「みんな一緒に歌ってくれてありがとう!」と奇妙もご機嫌な表情だ。
エディット・ピアフ「愛の讃歌」カヴァーで背筋がのびるような繊細な音色を響かせた奇妙は、「Spotify上位の曲もやっといたほうがいいですよね?」と、次は菅田将暉とコラボした「散る 散る 満ちる」をセルフカバー。艶めく歌声が会場を包みこむ時間は至福だった。ラストは、U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESSの「おでん」をカヴァー。「この曲を聴いたときに自分がおでんやったら何かな?と思いました」とユルいおしゃべりにまたしても脱力。鍋の中のおでんを頭に浮かべながら、最後は「あ~♪おでん♪」という控えめなコール&レスポンスが自然発生!最後までほっこりした空気に満たされたあたたかいステージだった。
【林 萌々子】
SE中にサウンドチェックに現れた林萌々子は、レースのブラウスにダメージデニム姿。春らしい装いがステージをパッと明るくすると「奇妙さんの弾き語り...ほんま、溶けるかと思いませんでした?」と大阪弁全開で一言。笑いが起こり、みんなが大きく頷くとあっという間にフレンドリーな空間が生まれる。まずは、「はじめましての人もいると思うので...」と自己紹介。「主婦をしている31歳です。息子のおむつ代やミルク代を稼ぐべく歌を歌っています!」という母の気合に大きな拍手が送られた。即興で「こんなところに犬♪」と、奇妙の「いつのまにか猫」のアンサーソング(!?)を奏でると、グっとみんなの心を掴み、そのまま「今夜、抜け出そう」へ。<今夜抜け出そう"JANUSで">と歌詞を変え、せつなく心に沁みる歌声で魅了した。
そして「2つあるトイレットペーパーホルダーの紙がなぜか同時になくなるんです(笑)」という日常の何気ない風景を語った林。アコースティックギターにのせて普段の生活が描かれると、大切な人と過ごすかけがえのない毎日が彼女の音楽を作っていることがわかる。みんなに「仕事帰りですか?おつかれさ~ん!」と呼びかけると、「平日にライブハウスにくる人はまともな人はいないですよ?」とリスペクトを込めてお客さんをいじるなど終始、友達に語りかけるような空気感が心地良い。
「春なんで浮かれていきましょう!」とセレクトした「思春期」のリズミカルなギターリフが心を弾ませ、「知ってる道と知らん道があったら、知らん道を選ぶ方がおもろい」そんな林のロックな生き方そのものを表現した「新曲」では、ソウルフルな歌声に合わせてコール&レスポンスが巻き起こる。
チューニング中に「歌う人生と歌わない人生だったら歌う方がおもろい。15年くらい歌ってるんですけど、ずっと"歌おもろッ!"ってなりますよ!」とこぼす林。そんなふうに彼女の歌や言葉にはずっと音楽への愛があふれている。"どうしても忘れたくない想い"を残したいと5日前にかいたばかりの曲も披露する場面も。さらに「子育てがこんなにも切なさを伴うものだと知らなかった」と子育てで感じたリアルな気持ちも歌にする。柔らかく奏でた「にぎ」「月まで」では、ピンスポットのみの照明でしっとりと余韻を残した。ラストソングを前に「やっぱり歌って楽しすぎてヤバすぎる...」とつぶやいた林。最後は、「30代は2回目の青春。20代最後につくった曲を歌います」と「もう30」で締めくくり、パワフルなギタープレイとともに力強いロック魂をみせつけた。
拍手の中始まったアンコールは、林萌々子と奇妙礼太郎による待望のセッション。スタンバイするとトークが盛り上がり、「もう(演奏)やらんでもいい?」と帰ろうとする奇妙をとめて、林がピアニカで演奏をはじめたのは、「オー・シャンゼリゼ」だ。ミラーボールが煌めく中、「みんな集まるJANUSへ」「シャンゼリゼ~♪」総立ちのお客さんとともに、なじみのあるメロディを合唱。最高にピースフルな空気の中、音楽愛に溢れた2マンライブは終幕となった。
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Text by 岡田あさみ
Photo by 桃子
(2025年4月28日更新)
●奇妙礼太郎
01. ONLY FOOL
02. いつのまにか猫
03. 朝までのブルース
04. スケベなSONG
05. 渚のバルコニー(Cover)
06. オールウェイズ
07. ギンビス
08. 愛の讃歌(Cover)
09. 散る 散る 満ちる
10. どんぐりころころ
11. おでん
●林 萌々子
01. 今夜、抜け出そう
02. 暮らし
03. ナンニモナレナイ
04. 思春期
05. 新曲
06. 新曲
07. ティーンエイジペイン
08. 新曲
09. にぎ
10. 月まで
11. もう30
EN. オー・シャンゼリゼ (林 萌々子&奇妙礼太郎)
Hump Back pre. “産休サンキューツアー2025”
【北海道公演】
▼6月18日(水) 北見Onion Holl
【北海道公演】
▼6月19日(木) 旭川CASINO DRIVE
【群馬公演】
▼6月30日(月) 前橋DYVER
【愛知公演】
▼7月2日(水) 名古屋CLUB QUATTRO
【香川公演】
▼7月8日(火) 高松DIME
【山口公演】
▼7月22日(火) 周南RISING HALL
【千葉公演】
▼7月28日(月) 千葉LOOK
【兵庫公演】
▼8月5日(火) 神戸太陽と虎
【京都公演】
▼8月6日(水) 京都磔磔
【宮城公演】
▼8月19日(火) 仙台Rensa
【東京公演】
▼8月20日(水) 府中Flight
【佐賀公演】
▼8月25日(月) 佐賀GEILS
【大分公演】
▼9月2日(火) T.O.P.S BittsHALL
【大阪公演】
▼9月9日(火) BRONZE
【京都公演】
▼9月10日(水) KYOTO MUSE
【石川公演】
▼9月17日(水) 金沢EIGHT HALL
【茨城公演】
▼9月24日(水) 水戸LIGHT HOUSE
【長野公演】
▼10月1日(水) 長野CLUB JUNK BOX
【富山公演】
▼10月2日(木) Soul Power
【大阪公演】
▼10月14日(火) OSAKA MUSE
【福岡公演】
▼11月4日(火) Fukuoka BEAT STATION
【岡山公演】
▼11月5日(水) CRAZYMAMA KINGDOM
【神奈川公演】
▼11月12日(水) F.A.D YOKOHAMA
【神奈川公演】
▼11月13日(木) F.A.D YOKOHAMA
【静岡公演】
▼11月18日(火) 静岡UMBER
【愛知公演】
▼11月19日(水) DIAMOND HALL
【愛媛公演】
▼12月12日(金) WstudioRED
【神奈川公演】
▼12月15日(月) CLUB CITTA’
【大阪公演】
▼12月17日(水) なんばHatch
奇妙礼太郎BAND 5th Album「オールウェイズ」Release Tour
【北海道公演】
▼6月21日(土) 17:30
SPiCE
【福岡公演】
▼6月22日(日) 17:30
The Voodoo Lounge
【愛知公演】
▼6月28日(土) 17:30
NAGOYA JAMMIN’
▼6月29日(日) 17:30
BIGCAT
オールスタンディング-5000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※小学生以上は有料。未就学児童の方は保護者同伴に限り、入場無料です。
[問]GREENS■06-6882-1224