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「声が枯れるまで歌声や歓声を交わし合いたい」
“妬み嫉み恨み辛み”に囚われてる人へ慈愛を届ける
1stフルアルバム『さんすくみ』の前祝い!
初の関西ワンマン公演を開催
八方不美人 ドリアン・ロロブリジーダインタビュー

個性のまったく異なる3人のドラァグクイーン(エスムラルダ/ドリアン・ロロ ブリジーダ/ちあきホイみ)からなる新宿二丁目発本格派ディーヴァ・ユニット、八方不美人。作詞家・及川眠子、作曲家・中崎英也の全面プロデュースにより誕生し、2018年12月にデビューミニアルバム『八方不美人』リリースを皮切りにライブ活動を開始。各メンバーの活動も活性化して世間にその魅力を拡散させている。エンタメに徹したパフォーマンス&歌唱力に加えて、バラエティに富んだ質の高い楽曲と笑いを誘うNG無しのあけすけトーク、何より観る者を惹きつけてやまないド派手な美貌。これまでに各種イベントやメディア等にも登場して、LGBTQ界隈だけに留まらない幅広い人気を獲得している。2018年12月のデビューから7年目を迎え、5月7日には関西初ワンマン公演『八方不美人~さんすくみin大阪~』をバナナホールで開催する。ぴあ関西版WEB初登場となる今回、ドリアン・ロロブリジーダにライブの注目ポイントはもちろん、5月14日にリリースされるニューアルバム『さんすくみ』の聴きどころについて、いち早く語ってもらった。

ステージが終わると、泣いていた赤子が笑顔になり
眉をひそめていたひとも握手を求めてくる


――2018年12月にデビューミニアルバム『八方不美人』リリースして以来、ライブ活動も積極的に行っていますね。その中で印象的な出来事などはありましたか?

ドリアン(以下同)「これまでも様々なイベントやショッピングモールのステージなどで大阪にもお邪魔する機会が幾度とありました。ショッピングモールなどでやらせていただくと、八方不美人に会いに来ていただいた方だけではなくて、その時たまたま買い物でいらっしゃった方々が本当にたくさんいらっしゃるので。小さいお子さんは泣き出しますし、お年寄りは眉をひそめるっていう(苦笑)。ただ、ステージが終わってみると、さっきまで泣いていた赤子が笑顔になり、眉をひそめていらしたお年寄りに握手を求めていただけたりということもあります。実際のステージで歌やトークをお見せして時間を共有することで繋がれるものや伝わるものはあるんだなと思います。私はライブ会場でやるライブも好きなんですけれども、ああいう偶発的な出会いがある場所でのステージも割と好きなんですね。腕が鳴るというか、そのステージが終わるまでには絶対にファンにしてやるぞ!っていう気概を持って臨みます」

――ショッピングモールなどでドリアンさんたちのライブに遭遇すると相当インパクトが強そうですが、そんな初心者に向けて何か伝えたいことはありますか。

「そうですね。でも、個人的な思いとしてはわからない人はわからないし...、例えば私を見て気持ち悪い...って思うのも個人の自由だとは思ってるんですね。ただ、何を感じていただこうと、何を思っていただこうといいんですけれども、やはりこの時代の流れだったり、様々な価値観が変わってアップデートしていく中で、今この時代に何が好ましいか、もしくは何がスマートでカッコイイか、おしゃれか...みたいなところが基準にはなってくると思うんですけど...」

――なるほど。

「これが正しいから、それしなさいって言っても、なかなか人って簡単に聞き入れられないところもあるし。"寛容な心を持たないのは、間違ってる"っていう言い方をすると、人って"何くそ!"って反発してしまうところもあると思うんです。だから、"今、そういった態度だったり、そういったスタンスを取るのは、ちょっとイケてなくない?"みたいな感じで、私はお話しするようにしているんですね。なので、個人的には好きに見ていってという感じですね。我々が楽しそうにやってるところを見てくれて、それでも気持ち悪いなって思うんだったらもうしょうがないですし。でも、"なんか楽しそうにやってるな、面白そうだな、ちょっと覗いてみようかな"みたいな感じで思っていただければありがたいなと思います」

――そんな八方美人さんとしての今後の野望というのは?

「そうですね...、少しずつではあるんですけれども、会場も広くなり、来ていただくお客様の数が増えている中で、やっぱりもっともっと大きい会場でパフォーマンスしたいですし、それに伴ってお客様もしっかり呼べるような存在でありたいし、その大きいステージに見合うようなパフォーマンスができるように精進していかなきゃいけないなと思っているので。最終的な野望としては、どこなんでしょうね? 紅白? 紅白歌合戦、"応援ゲストでも可"って書いておいてください(笑)」

――ちなみに今後、目標としている会場などは?

「大阪ではフェスティバルホール? 京セラドーム? 大阪城ホール? もう夢はいつだって大きく持ってます!」



"妬み嫉み恨み辛み"に囚われてる人へ
慈愛みたいなものをお届けしたい


――5月14日にはニューアルバム『さんすくみ』がリリースされます。これはどういった内容になっていますか?

「前作のミニアルバム『三途』が出てから何曲か配信リリースをした楽曲に加えて、今回の『さんすくみ』というアルバムに新譜として3人で歌う曲が1曲と、3人のソロがそれぞれ1曲ずつ入りまして、全8曲になっています。キャッチコピーにも書かれているように、基本的に我々八方不美人が歌うナンバーというのは、"妬み嫉み恨み辛み"といったものがたくさん散りばめられてはいるんですね。ただ、1回聴いただけではちょっと刺激的に思えるような言葉の裏にある愛だったり、"妬み嫉み恨み辛み"に囚われてる人への慈愛みたいなものをセットでお届けしたいと思っております」

――"慈愛"というお言葉に癒されます。

「なので、すごく刺激的な内容であったとしても、そういったものを例えば女性の歌手が歌うと、ちょっとドロドロしすぎちゃうとか、男性の歌手が歌うとリアリティがないっていう時に、やはり我々のような存在が歌うことでダイレクトに届けられる部分もあると思いますし、逆に我々が歌ってるからこそ、"なんか女装の人たちが歌ってるのを観たり聴いたりしたら、私のモヤモヤも解消されちゃったわ"くらいな感じになればいいなと思ってます」

――いいですね。各メンバーのソロ曲にも注目です。

「1枚目と2枚目のミニアルバムは3人で歌う曲と3人それぞれのソロ曲とで合わせて4曲の構成でしたが、2019年からソロのナンバーは新しくできていなかったので、今回5年ぶりにソロナンバーを新たに書き下ろしていただいて歌っております」

――ドリアンさんのソロ曲はどういったテーマの曲になっていますか。

「私の曲は『お月様も笑ってる』というナンバーです。これは尽くすタイプの女性がダメな男性を思う歌ではあるんですが、やはり(及川)眠子さんの本領発揮というか、及川眠子節が効いてると思います。世間的にはいわゆる綺麗な恋愛だったり、羨ましがられるような恋愛ではないかもしれないけれども、2人の間ではとても深い情だったり絆みたいなものがあって、女性が殿方を思って、その殿方に対して深い愛情を抱いているっていうナンバーなんですね。で、おそらく片思いの曲ではなくて、カップルの女性から男性に向けられたナンバーだと思います。サウンドも含めて今っぽくはもちろんないんですけれども、それがいいなって思ってます。ちょっといなたい感じで」

――ちょっと昭和歌謡のような?

「そうですね。昭和歌謡の世界観にも近いですし、ちょっとブルースとかロッカバラードですね」

――ほかの曲もそれぞれ曲調は違うんですか?

「そう、全部違いますね。今回、書き下ろしていただいた曲で『けだものだもの』は八方不美人としてもちょっと新たなチャレンジとなるような軽快なナンバーで、ちょっと抜け感があるような夏らしいナンバーなんです。『ジーザス!』に関してはもう本当に疾走感のある音楽と、本当に過激な歌詞でこれもなかなか挑戦的な内容だったりします。『そこどいて!』は我々の中では割と明るめなナンバーではあるんですけれども、やはり我々はセクシャルマイノリティという立場から、悪意みたいなものが投げつけられたりして、人生の中で様々な無理解が立ちはだかることが多いんです。でも、それは我々に限ったことじゃなくて、もうあまねく皆さん、生きていると、大きな壁だったり悪意だったり、そういったものが立ちはだかる時があると思うんですけれども。そんな時に、"そこどいて!あたしが通るから"みたいな形でそういったものをはじき飛ばせるようなスタンスを皆様にご提案しているナンバーですね。もう、そこのけそこのけあたしのお通りだっていう(笑)」

――確かに! そういうパンチ力と痛快さがあって、ライブでもぜひ聴いてみたい一曲です。

「ありがとうございます。で、もう1曲、『夜明けの詩』というのは本当に壮大なバラードになっておりまして、某ディズニーをホーフツとさせるようなすごくスケールの大きい音楽と歌詞だったりもするんですね。暗闇から夜明けになり、パッと太陽が登っていく様を人生の様々なフェーズに見立てて。人っていうのはやっぱりちっぽけな存在ではあるんだけれども、だからこそ、その中に無限の宇宙みたいなものがあるし、そういったものが夜明けとリンクしていくような。そんな全8曲かなと思っています。ぜひぜひお聴きください。



本当にどこかしらツッコミどころが多い3人
MCでは楽屋とほぼ同じようなやり取りを


――5月7日には関西では初めてのワンマンライブが開催されます。それに向けて現在の心境は?

「東京を中心に様々なライブを続けてきて、また大阪でも様々なイベントでお邪魔した時に"大阪でワンマンライブやらないの?"っていうお声はいただいていたんです。そして、いよいよ大阪でワンマンライブができるというところで、我々メンバー3人もとても喜んでいます。初めての大阪ワンマンということもあって、ちょっとドキドキもしながら、今もブルブルと武者震いをしてるところでございます」

――八方美人さんのライブといえばバラエティに富んだ質の高い楽曲と笑いを誘うNG無しのあけすけトークという風にご紹介されることが多いかと思います。MCパートなどで心がけていることなどはありますか?

「我々としては特に笑いを誘おうとは思ってなかったりするんですけれども、笑いにも様々な種類がありまして、苦笑、失笑、冷笑、どんな笑いでもいいんですけれども、本当に普段通りの楽屋とほぼ同じようなやり取りをさせていただくことが多かったりするんですね。メンバー3人いるんですけれども、天然の方もいれば、色々ガタが来てる方もいて(笑)。私を含めて本当にどこかしらツッコミどころが多い3人なので、私が割とちょこちょこと指摘して、ツッコミや是正をしていくとお客様が笑っていただけるというだけなので。そんなに爆笑トークみたいな感じで言われると、若干困ってしまうところがあるんですけれども(苦笑)。中年の男性が女装してハイヒールを履いてジタバタしてキャッキャしてるところもご覧いただきたいなと思います」

――今回、八方不美人さんの関西初ワンマン公演の同日に、ミッツ・マングローブさんが所属する星屑スキャットの大阪公演も開催されますね。

「そうなんです。なので、どちらに行ってほしいっていうのはあんまり言えないんですけれども(苦笑)、どちらかには必ず行ってほしいなと思ってます!なかなかこの女装3人歌唱ユニットが同じ日にライブをするってことは、本当に惑星直列みたいな感じで(笑)。同じアホなら踊らにゃそんそんみたいな気持ちでどちらかには必ず行っていただきたいと思っております(笑)」

――それでは最後に、ライブを楽しみにされているお客さまに向けてメッセージをお願いします。

「やっぱり我々も大阪での初のワンマンライブということで、もうガッチガチに力が入りながら、肩をぶん回しながら当日お邪魔させていただくことになると思います。その中で、"素敵なライブだったね"って思っていただけるように我々も最大限良いパフォーマンスをしたいと思いますので、どうぞ皆様には歴史の生き証人になっていただくとともに、いらっしゃっていただいた方にはお互い声が枯れるまで、歌声や歓声を交わし合いたいなと思っております。そして、10年後、20年後に、"あたし、八方不美人の大阪初ワンマンライブに行ったんだよね!"と、皆様が周りのお友達に自慢できるように今後も精進していきたいと思いますので、ぜひ1人でも多くの方のご来場お待ちしておりまぁす♡」

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Text by エイミー野中




(2025年4月 2日更新)


Check

Release

Album『さんすくみ』
2025年5月14日(水)発売
EDOYA

Profile

はっぽうふびじん…作詞家・及川眠子(『淋しい熱帯魚』『残酷な天使のテーゼ』ほか)、作曲家・中崎英也 (『あなたのキスを数えましょう』『もう涙はいらない』ほか)の全面プロデュースにより誕生した、個性のまったく異なる 3 人のドラァグクイーン(エスムラルダ、ドリアン・ロロブリジーダ、ちあきホイみ)からなる新宿二丁目発本格派ディーヴァ・ユニット。 圧倒的なパフォーマンス力と歌唱力と、見るものを引きつけてやまない派手なルックス。加えて、バラエティに富んだ楽曲や NG なしのトーク等で、すでに各方面で高い評 価を得ている。2018年12月にデビューミニアルバム『八方不美人』をリリースし、2019年7月にセカンドミニアルバム『二枚目』、2022年6月にサードミニアルバム『三途』をリリース。 定期的にワンマンライブを行いつつ、「サマーソニック 2019」(幕張メッセ)、「コカ・コーラ presents LIVE PRIDE~愛をつなぎ、社会を変える。~」(東京国際フォーラム)など 各種イベント、「有吉ジャポン」(TBSテレビ)、「婦人公論」(中央公論新社)など各種メディアに出演。2021年4月より1年間、ラジオ番組『LOVE RAINBOW TRAIN』(毎週土曜日20時~、TBSラジオ)で、MISIAのパートナーを務めた。
2025年5月7日、初の関西ワンマン公演『八方不美人~さんすくみin大阪~』開催。5月14日アルバム「さんすくみ」発売。

ドリアン・ロロブリジーダ…2006年冬に開催されたドラァグクイーンコンテストで初登場にして優勝をかっさらい、人々の注目を浴びてデビュー。180cmのスレンダーなボディに20cmのハイヒールと巨大なヘッドドレスを装着し、圧倒的な存在感を放っているが、女装やメイクをしない男性シンガー「マサキ」としても定期的にライブ活動を行っている。日本テレビ「上田と女が吠える夜」、フジテレビ「千鳥の鬼レンチャン」等のメディアにも露出があり、昨年大きく話題となりシーズン2も決定しているNetflix「ボーイフレンド」のスタジオMCとして出演していた。その他、映画「エゴイスト(2023 ※最近Netflixにて配信が始まりました!)」やNHKドラマ「Shrinkー精神科医ヨワイー」に役者として出演も果たしている。

八方不美人  オフィシャルサイト
https://happofubijin.com/


Live

『八方不美人~さんすくみin大阪~』

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:290-725
▼5月7日(水) 19:00
梅田BananaHall
全席指定-6600円(ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。
※販売期間中は1人4枚まで。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

【東京公演】
▼5月9日(金) EX THEATER ROPPONGI

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Kaya/ドリアン・ロロブリジーダ

【東京公演】
▼5月15日(木) I’M A SHOW

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ドリアン・ロロブリジーダ The Entertainment!! with Big Band

【東京公演】
▼6月20日(金) 紀尾井ホール

Pick Up!!

【兵庫公演】

チケット発売中 Pコード:287-605
▼7月12日(土) 15:00
神戸朝日ホール
S席-10000円(ポストカード、サイン付)
A席-6500円
[出演]ドリアン・ロロブリジーダ(歌)/森田悠介(b/編曲)/平手裕紀(p/tp)/柴田亮(ds)/ドリアン・スペシャルビッグバンド
※未就学児入場不可。車椅子席をご希望のお客様は、必ず公演の2営業日前までにMITT TICKETにてお電話でチケットをご購入頂きますようお願い申し上げます。お連れ様がご鑑賞される場合もチケットは必要です。曲目は公式サイトをご確認ください。都合により曲目・曲順などを変更させていただく場合がございます。
[問]Mitt■03-6265-3201

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『八方不美人 with DANCERS サマーナイトカーニバル 「ジーザス!」』

【北海道公演】
▼7月3日(木) Zepp Sapporo


『Nostalgic Cabaret』

4月12日(土)一般発売 Pコード:533-049
▼6月2日(月)~10日(火)
シアタークリエ
[司会]ドリアン・ロロブリジーダ

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