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「これまでの自分のスタイルに固執せず、自由に書いていくことができた」
無常感、一期一会の思いを綴った曲たちをバンド感あふれるロックな
アンサンブルで聴かせるニューアルバム『儚く脆いもの』を携えて
約2年ぶりの全国ツアー開催。藤巻亮太インタビュー

前作『Sunshine』から2年ぶりとなるニューアルバム『儚く脆いもの』を3月26日にリリースした藤巻亮太。この表題を目にすると、“儚く脆いものってなんだろう…?”と思い巡らすのではないだろうか。一枚の作品として手に取り、その歌の物語や世界観、信頼を寄せるミュージシャンと共に奏でるバンドサウンドをじっくりと味わいたくなる。ジャケット写真は一見、生い茂る森のようにも見えるが、実は…。今回ぴあ関西版WEBでは表題に込められた思いや藤巻自身が撮影したというジャケット写真にも注目してインタビュー。ディストピアを描いた異色のナンバーが誕生した背景、曲作りで新たにトライしたことなど、そうだったのか…と噛み締めたくなるような奥深い制作秘話を明かしてくれた。

自分自身が普段ちょっと蓋を閉めてるようなことと
向き合って作っていった


――約2年ぶりとなるニューアルバム『儚く脆いもの』はどのように制作されましたか。

「去年の3月9日の『THANK YOU LIVE』の直後くらいに、『新しい季節』(M-8)という曲を書いたんです。この曲は自分にとっての所信表明のような曲に当たりますね。今の自分の足元を見つめて、これからも頑張るぞ!みたいなことを思いながら、この曲がスイッチを入れてくれて、そこから曲作りに没頭するようになりましたね。そして、アルバムを作っていくっていう流れができたのかなと思います」

――『新しい季節』はイントロから疾走感たっぷりに掻き鳴らされるギターサウンドが印象的です。

「16で細かく刻んでいくようなところがすごい推進力があって。その推進力とともに、結構ポジティブな言葉が出てきました。自分はちっぽけな存在ではあるが自分のできることを頑張ろうみたいな感じで生まれた曲でしたね」

――ちなみにアルバム作る際は、最初から何かコンセプトがあったわけではないんですか?

「そうですね、途中で見えてくることの方が多くて。このアルバムはコンセプトっていうのを決めずに作っていったんですけど、ソロではどうしても、『新しい季節』みたいな、自分がどういう風な生き方をしていて、どこに進もうとしているかという自分の気持ちを表明したりするような曲が多くなってしまいがちだと思うんです。でも、そこに意味を求めすぎると、できる曲が偏ってくると思っていまして。もっと身近な、自分自身の感じていることであったり、本当に些細なことでもいいから、普段ちょっと蓋を閉めてるようなことと向き合って作っていくと新しい世界が見えるのかもしれないなと。そういう風に作っていったんです。それで、今作に別れの曲が多くなったのかもしれませんね」

――確かに、歌詞において、別れを感じさせる曲が多いなと。そういう歌が生まれてきた背景も気になります。

「1人の人間としてはどうポジティブに生きていくかみたいなことってすごい大事で。特にソロになってから、バンドの時には通用したことが通用しないとか、うまくいかないことがすごくたくさんあったんですけど、そんな中でも続けていくために、物事をネガティブに捉えないで、ポジティブに捉えていくことが、自分自身の活動を前進させていく原動力だったんですね。だから、割とポジティブなものを書いていくような時期が多かったんですけど、それ以外の感情であったり、いろんな目線で書いてみようって思ったわけです。そうなった時に、1人の世界に集約されるのではなくて、他者との繋がりみたいなものを大事にして、その繋がりが断ち切れてしまったような物語を設定して、そこから歌詞を書いていくみたいなことが多かったですね」

――なるほど。

「『桜の花が咲く頃』(M-1)という曲は1年に1回この季節が巡ってくると思い出す人っているなと思うことがあって。それが心に浮かんだ瞬間に言葉がどんどん広がっていくみたいな感じでひとつの物語を書いていったんですけど。そこに自分の中の思い出とか、自分の経験みたいなものが染み出ていったりとかして。そうすると、ポジティブに自分を鼓舞しながら音楽を作っていくだけじゃない、みずみずしいものが言葉の世界の中にも出てきました。そういうトライをしていったことが、このアルバムはすごくいい形で表現されてるんじゃないかなと思いますね。だから、これまでの自分のスタイルに固執しないで、自由に書いていくことが、このアルバムはできているような気がします」

――歌詞にディストピアというワードが出てくる『メテオ』(M-9)なんかも異色なダークサイドを描いた曲ですね。

「これはお気に入りの1曲ですね。この曲だけぶっちぎりで闇に染まっているんですけど(笑)。やっぱり時代と呼吸をしながら歌詞を書いてるから、この曲を書き始めた頃って、ちょうど(イスラエルの)ガザへの侵攻が連日いろんなメディアで報道されていて、ほんと気が滅入っちゃって...。人間の闇みたいな部分がすごく胸に迫ってきたんです。それを遠い国の誰かの出来事っていう風に捉えているだけじゃなくて、そこで起きている闇と、自分っていう人間が生きてる闇というのは、同じ人間だからきっと何か繋がってるものもあるだろう。そういう闇みたいなものと呼応しながら、自分のストーリーとして出てきた曲ですね。このアルバムの歌の中では、桜が咲いたり、目黒川が出てきたり、インバウンドを感じたり、愛の風が吹いて、パン屋さんの匂いを嗅いで...みたいな世界があったりしながら、(『メテオ』の歌詞では)急に星が落ちてくるという展開です。でも、今回のアルバムでこの曲が書けてよかったなと思っていますね」

――三線の音が入っているラストの『ハマユウ』(M-10)も歌の中に別れの物語を感じます。これはどういうきっかけで生まれたんですか。

「実はこの曲のデモは結構前に作っていました。海が見える所にお家を構えてる知り合いがいまして。その人がたまに家を空けるときに、ちょっとの間貸してくれるんです。そこに楽器を持ち込んで、海を見ながらできたのが『ハマユウ』で、本当に弾き語りだけで作りました。ずっと寝かしておいた曲なんですけど、今回トライしてみようと思って作りました」

――アレンジはどのように?

「今回のアルバムはソロになってから出会った、本当に素晴らしいミュージシャンと一緒にアレンジをしていったんです。ドラムが片山カタズミくん、ベースが御供信弘くん、キーボードが曽我淳一くんというメンバーで。この曲もその3人がそれぞれのアイディアを出してくれて、アレンジが成り立っていますね。ミニマルなサウンドに三線の音色みたいなものを入れたアレンジにしてくれたのは曽我くんです。この曲もお別れの曲ではあるんだけれども、人の幸せを願うところで終わっている曲なので。今作はこの曲で終わりたいなっていうことでラストにしました」

――全体的にギターサウンドが前面に出てるように感じますが、サウンド面で大事にしたことは?

「リズム隊とギターだけで構築できるような世界を作りたいなと思ってバンド感を大事にして作りました。割とギターサウンドが際立っているんですけど、曽我くんがアレンジしてくれている曲に関してはピアノやストリングス、ループみたいなものが生きてたりとか、ほんとにそれぞれのプレイヤーの個性がちゃんと散りばめられてる部分もあると思います」



心は儚く脆い我々の象徴なのかなって
それがジャケットに写っている


――アルバムタイトルの『儚く脆いもの』はどういうところから出てきた言葉なんでしょうか。

「まず、表題曲『儚く脆いもの』(M-7)から先につけたんですけど、自分がいただいた命は父、母、さらにもっと前から脈々と繋がってきて、今の自分がいるんだなと。こういう時間軸の中で、今っていう時代に出会わせてもらってる自分がいるっていうことや、この命をいただいて、その自分が心も体も変化しながら無常の中にあり、いつか終わっていく命があるということを考えると、僕たちは儚く脆い存在だなって思うんですけど...。だからこそ、この一瞬の中に生きていることや、あるいは誰かと出会って何かを共有できたり、いろんな思い出を作れたり、お互いに影響し合えたり、そんなことがどれだけすごいことなんだろうなって思いまして。"儚く脆いもの"だからこそ、人間は価値があるのかなって。そういうところで、本当に裏側から言っているタイトルかなと思いますね」

――そんなアルバムのジャケット写真は藤巻さんが撮られた写真なんですね。

「『儚く脆いのもの』というのは、今の自分が表現したいタイトルだなと思っていて。自分も写真を撮るのがすごい好きなので、(ジャケットのことを考えていたら)昔撮ったこの写真がぱっと思い浮かんだんです。そのデータをPCでジャケットにしてみたら、もうこれしかない!というようなハマり方をしたので、これをアルバムのジャケットにしてみたいと思ったんです」

――ちなみにこの撮影場所はどこですか?

「どこか旅先で撮った一枚で、水面に写ってる森の写真なんです。水面って人の心みたいに例えられたりするじゃないですか。心っていつもざわざわしたりして、凪いでないから。心が凪だったら、世界がそのまま映せて、ああ綺麗だなと思うんですけど、そうじゃない。世界はありのままあるんだけど、心がさざなみをたてたりとかしてて揺れちゃうから、それが心なのかなとも思うし、それが儚く脆い我々の象徴なのかなって、それがあの写真に映ってるように思ったんです。だからあの写真も不思議な揺らぎなんですよ、ぜひ見ていただけたら嬉しいですね」

――なるほど、これは水面に映った森の写真なんですね。そういう藤巻さんならではの感性が映し出されたジャケットにも注目ですね。そんな今作が完成してどんなことを実感していますか。

「今作は全体を通して口ずさみやすいメロディーを作れたらいいなと思って作りましたし、本当にバンド感あふれるロックなアンサンブルができたので、そこはすごくいいなと思ってます。言葉の世界は、さっき語ったようにすべては儚く脆いものっていうことを裏返しながら、一期一会の思いを綴った曲が多いんじゃないかなと思ってますね。ツアーはそのアルバムを一緒に作れた素晴らしいミュージシャンと一緒に回れるので、すごく楽しみにしていてほしいなと思います。メンバーは『Mt.FUJIMAKI(マウントフジマキ)』なんかも一緒にやってる仲間のミュージシャンなので、もうばっちりじゃないかなと。本当にバンド感溢れるライブで歌を丁寧に大事に届けられたらなと思ってます。開催が4月ということで、季節感も大事にしたいですね。新しいアルバムの曲はもちろん、いろんな時間軸の曲たちもセットリストに入れているので、みんなが楽しんでもらえるライブにできたらなと思います」

Text by エイミー野中




(2025年4月 8日更新)


Check

Release

Album『儚く脆いもの』
発売中 

【通常盤(CDのみ)】
3200円(税抜)
VICL-66061
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A024917/VICL-66061.html

【初回限定盤(CD+DVD)】※3方背ブックケース仕様
4500円(税抜)
VIZL-24リンクオール
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A024917/VIZL-2434.html

《収録曲》
01. 桜の花が咲く頃
02. 朝焼けの向こう(album mix)
03. Glory Days
04. 愛の風
05. 真っ白な街
06. 以心伝心
07. 儚く脆いもの
08. 新しい季節
09. メテオ
10. ハマユウ

《DVD収録曲》※初回限定盤のみ
01. ハロー流星群
02. ビールとプリン
03. オオカミ青年
04. Blue Jet
05. ありがとう
06. ゆらせ
07. 3月9日

Profile

ふじまきりょうた…1980年生まれ。山梨県笛吹市出身。2003年にレミオロメンの一員としてメジャーデビューし、「3月9日」「粉雪」など数々のヒット曲を世に送り出す。2012年、ソロ活動を開始。1stアルバム「オオカミ青年」を発表以降も、2ndアルバム「日日是好日」、3rdアルバム「北極星」、レミオロメン時代の曲をセルフカバーしたアルバム「RYOTA FUJIMAKI Acoustic Recordings 2000-2010」をリリース。2018年から自身が主催する野外音楽フェス「Mt.FUJIMAKI」を地元・山梨で開催。2024年3月には「3月9日」のCDリリースから20周年を記念する日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブ「THANK YOU LIVE 2024」を開催。2025年3月26日には約2年ぶりとなるオリジナルアルバム『儚く脆いもの』をリリース。4月にはアルバム『儚く脆いもの』を引っ提げて、バンド編成での全国ツアーも開催。追加公演で初の海外公演が台北で決定。

藤巻亮太 オフィシャルサイト
https://www.fujimakiryota.com/


Live

藤巻亮太 LIVE TOUR 2025
「儚く脆いもの」

【愛知公演】
▼4月11日(金) ダイアモンドホール
【広島公演】
▼4月13日(日) 広島クラブクアトロ
【福岡公演】
▼4月18日(金) DRUM LOGOS

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:284-822
▼4月20日(日) 16:00
GORILLA HALL OSAKA
全自由-6800円(ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。体調不良等の事情により、やむを得ず出演者の一部が急遽変更になる場合があります。出演者の変更を理由としたチケットの払い戻しは行いませんのであらかじめご了承ください。
※販売期間中はインターネット販売のみ。1人4枚まで。チケットの発券は4/13(日)10:00以降となります。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

【東京公演】
▼4月24日(木) Zepp DiverCity(TOKYO)


『靱公園MUSIC FESTA FM COCOLO~風のハミング~』
▼4月29日(火) 14:00
靱公園センターコート特設会場
全席指定-6600円
[出演]スターダスト・レビュー/馬場俊英/岸谷香/藤巻亮太
※雨天決行・荒天中止。
※3歳以下は保護者膝上に限り無料。お席が必要な方はチケット必要。
[問]キョードーインフォメーション
■0570-200-888

「浜崎貴司 暦GACHIスペシャル 60祭 2days~Road to 100~」
▼6月14日(土) 18:00
EX THEATER ROPPONGI
アリーナスタンディング-9000円
スタンド指定席-9000円
[共演]おおはた雄一/佐藤タイジ/小泉今日子/高野寛/藤巻亮太/藤原さくら/矢井田瞳/山内総一郎/PES/FLYING KIDS
※未就学児童入場不可。ドリンク代別途必要。
[問]HOT STUFF PROMOTION
■050-5211-6077

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