ホーム > インタビュー&レポート > カメレオン・ライム・ウーピーパイ、Chi-インタビュー 2ndフルアルバム『Whoop It Up』に閉じ込めた 大好きな90sテイストと自分流の“違和感”について
コラボするアーティストには
「振り回されたい!」
――気づけば2025年も3ヶ月が過ぎましたが、どんな1年が始まっていますか?
「詳細はまだ言えないんですけど、今までにやったことがないことへの挑戦が始まっています。夏頃には具体的にお届けできるかなと思って取り組んでいます」
――そうなんですね、楽しみです。今日はぴあ関西版WEB初登場になりますが、4月25日にリリースされるニューアルバム『Whoop It Up』のお話を伺っていきたいと思っています。前作が1stアルバムだったわけですが、初のフルアルバムを制作したことによる何か発見はあったのでしょうか。
「1枚目のアルバムは、初めてリリースした曲も含めてシングルを集めたような作品になりました。ただ自分たち的には音楽のジャンルにこだわらずいろんな曲を作ろうというのがいつものやり方なので、アルバムにした時に"っぽさ"みたいなものは出たなと思いましたね。アルバムを作ったことで自分たちはどんな音楽をやっても大丈夫と思えたことは、自信につながったと思います」
――その"っぽさ"は、どういうところに見えたのでしょう。
「具体的に言葉にするのは難しいんですけど...私たち、3人で音楽を作っていても意見が分かれないんですよ。何をやっても全員同じ方向を見ているし好みも同じ。それと3人共通でちょっと抜けているものが好きで。かっこいいのど真ん中から少し外れているものというか。そういう点がアルバム制作で見えてきたことが"っぽさ"を感じられた理由なのかな。まぁ、単純にアルバムは作っていて楽しかったですね」
――初めてアルバムを制作してみて、次にやりたいことも見えました?
「1stを出した後こうしたいと思ったことを今回実現できたんですけど...ちゃんとコンセプトを掲げて、刺さる人に刺さるアルバムを作りたいと思いました。自分たちの好みを強めに出して、私たちが今カッコいいと思うものを集めたアルバムにしたいというのが出発点ですね」
――2ndアルバムはコンセプトありきなんですね!
「そうですね、コンセプトは大切にしました。ただ、ガチガチにコンセプトに寄せるというよりはふんわり意識するくらいの感じで。今回意識したのは"90年代の音楽"です。元々3人とも90年代の音楽が大好きでそのテイストを取り入れた曲は多かったけど、今回はよりそこを突き詰めたり濃くしたりしました」
――インタビューが始まる前「このアルバムの制作に入ったあたりで、カメレオン・ライム・ウーピーパイは音楽的にどんなモードでいたのでしょうか」と質問しようと思っていたのですが、その答えが「90年代の音楽を打ち出すモード」だった、ということでしょうか。
「そうですね。ただ90年代の音楽ではあるけれど、今までとは少し違う角度の90年代のロックっていう感じもありますね」
――Chi-さんがそこまで90年代の音楽に惹かれるのはなぜでしょう?
「私は90年代の洋楽が好きなんです。現代の海外のアーティストの曲を聴いていても、90年代の音楽の影響を受けているなと感じる人がめちゃくちゃ多いんです。90年代の音楽に感じる個性が私にはすごく刺激的で、やりたいことをやっている感じがします。今は情報が溢れているから"こういうのが流行っている"ということがつかみやすいけど、当時はここまで情報社会じゃなかったからとにかく自分がいいと思うことを突き詰めてやっている感じが伝わってくるんだと思います。それをかっこいいと思うからこそ、私も周りの情報に惑わされずにかっこいいと思えることをやりたいと思うのかな」
――ちなみにChi-さんお気に入りの90sアーティストは?
「特にBeastie Boysが好きです。めちゃくちゃ影響を受けています。でも私と同世代だとビースティを知らない人もたくさんいるので、そういうテイストを新しいものとして捉えてくれたりもします。同世代のどこかしらにも刺さってくれたらうれしいですよね」
――フェイバリットアーティストを聴くと納得です! アルバムの1曲目の「So-so Life」にもすごくビースティみを感じます。
「ふふふ。私たち3人ともビースティが好きなのはもちろんですけど、ビースティの影響を受けているんだろうなぁと思う人たちの曲を好んで聴いちゃうんですよ。どうにもビースティが好きなんでしょうね(笑)」
――じゃあ今回のアルバムに関しては、自分が好きなものを見つめて突き詰めることから始まった、と。カメレオン・ライム・ウーピーパイに関しては、そこからどうやって楽曲制作が始まっていくのかということも気になります。
「曲作りに関しては、私がふんわりとこういう曲にしたいというイメージをWhoopies1号・2号に伝えると、彼らがトラックを作って...1号がメロディーをつけて送ってきてくれたものに私が歌詞をつけるという流れですね」
――例えば今回の収録曲の「So-so Life」だと、Whoopiesにはどんなリクエストを?
「とにかくユルい曲を作ろうって言ったかな。そこには遊び心があるみたいなニュアンスもありました。カメレオン・ライム・ウーピーパイは激しめの曲が多いと思われがちですけど、実際ミドルテンポの曲が結構あってそういう曲が自分たちのよさなのかなという思いもあったんです。それでユルい曲をというリクエストをしました」
――「とにかくユルい曲を」というとかなり抽象的なリクエストにも思えるのですが、それで伝わります?
「彼らとは毎日集まって一緒に作業しているので、ニュアンスで伝わっているんだと思います。もう3人でしかできないやり方でやっているのかもしれないですね。その分、他の人と一緒にやる時に大変になるんです。私たち3人以外の人が加わった時に"なんで伝わらないのかな〜"と思っちゃうことがあったり(笑)」
――今回のアルバムはゲストアーティストも多いじゃないですか。楽しさももちろんあったと思いますが、難しさもあったのではないですか?
「特に海外のアーティストとのコラボレーションに関しては慣れてきて、やりとりの流れも掴めてきたので曲の完成まではすごく早かったです。海外のアーティストは特にこだわりが強い印象があるんですけど、話を聞くとそのこだわりが壁になって今まではコラボもうまくいかなかったっていう方もいたんです。でも君たちとはうまくいったと。実は私たち、コラボの時は相手に乗っかることにしていて」
――乗っかる?
「そうです。それこそコラボでどうなるかがわからない面白さがあるから、できるだけ一緒にやるアーティストには振り回されることにしているというか。向こうの提案を面白がるから、リリースまでスムーズに進んでいくのかなと思います」
――振り回されたいという考えはどこから生まれたんですか?
「LAの元FEVER 333のギターリスト・スティーヴン・ハリソンさんとコラボしたことがあるんですけど...彼に曲を渡して戻ってくるのを待っていたら、もう全然違う曲になって手元に届いて!サビの位置が変わっていたり、一部がごっそりとなくなっていたり(笑)。それがめちゃくちゃ面白かったんですよ。初めてそれを聴いた時に笑っちゃって。破壊、っていうキーワードが浮かぶぐらい面白かったです。それが相手の提案に乗っかっていこうと思えるようになったきっかけでしたね」
作品制作で大切にしているのは
自分が納得できる"違和感"
――今回のアルバムの作り方としては、90年代の音楽というコンセプトがあった上で既発曲の中からどの曲を収録するかを考えつつ、新しく曲を作っていくというような組み立てだったのでしょうか。
「そうですね、ほぼ全てが同時進行でした」
――だとすると、既発のシングルから収録されているのは2024年8月以降にリリースされたシングルだけじゃないですか。前作アルバムリリース後2023年8月以降翌年8月までにリリースされた6曲のシングルがゴッソリと収録曲から外れているのはなぜかな? と気になりました。何か意図があったのか、モードが違ったからなのか...。
「今回入っていない曲に関しては、単純に90年代を感じないかなと思ったからです。というか90年代のテイストをそこまで強く打ち出していなかった曲だったというか。「Flower」はもう本当に90年代をめちゃくちゃ意識して、「REACH」はPESさんともご一緒して。もう"まさに"という曲になっているので収録したいと思った感じですね」
――なるほど。『Whoop It Up』を通して聴かせていただいて、前作より超ポップな作品だと感じました。ポップという言葉が正しいかどうかちょっと疑問もあるのですが、開けた感じというかたくさんの人が難しいことを考えずにノレるというか。そこに何かご自身の中で変化があったのかを伺いたくて。
「実は自分の認識としては真逆ではあるんですけど...そういう感想を聞くとめちゃくちゃありがたいです。自信につながるし、うれしいなと思います」
――その真逆というと...。
「曲の作り方は変わらないけど、前作より今作の方がより踊れるようにということは意識したんです。そうなると激しい曲もあったりするから、"刺さる人には刺さる"作品になったのかなと自分では思っていたところがあって。だからポップって言われたことは、意外だけどとてもうれしいです」
――踊れるような作品にということは、コロナ後アーティストのみなさんがよくおっしゃいます。「せっかくコロナが終わったんだから、ライブの時にみんなで踊れる曲が作りたかった」と。そういう意味で今回のアルバムの中でカギになった曲はありましたか?
「「So-so Life」と「Growing」アルバムの頭の2曲は自分の中で大きなポイントになりました。歌詞も曲も、今の自分たちらしさを全面に出せたというか。特に歌詞で曖昧なことを言っているのが私っぽいかなと思います」
――サウンド面では、ゲーム音がすごく耳に残るアルバムだなというのも印象的でした。音から感じられるマリオ感と、「Flower」や「Donkey Song」(歌詞にはDonkey Kongも登場)などタイトルからも、あれ? ニンテンドーファンかな? と感じるところもたくさんありました。実際どうですか?
「押し出そうと思っていたかというとそうではないんですけど、ニンテンドーのゲームはかなりやっていますよ。根底でめちゃくちゃ好きですね。今回「So-so Life」のアートワークを手がけてもらった3DCG アーティストのSajanuさんの作品も、めっちゃニンテンドーっぽさを感じてもらえると思います。3DCGアートがめちゃくちゃカッコよくて! アルバム全曲のビジュアライザーも作ってくださいとお願いしたんです。とにかくSajanuさんからどんな表現が生まれてくるのかに興味があったので、全部お任せで」
――アートワークに関しても、"乗っかっていく"精神ですね(笑)。
「そうです! もう本当に好きなようにやってくださいってお願いして届いたのが、こういう世界観の作品で。めちゃ可愛いですよね。ちなみに音に関してはゲーム音的なものは初期から使っているんですけど、今回はより耳に残る感じを追求しました。Whoopiesからトラックが届いた時にも言っちゃうんですよ。"もうちょっとゲーム音っぽいの立たせて欲しいな"とか。曲に対して遊びの部分をプラスするイメージです。曲に違和感を出すという意味合いもあります」
―― "違和感"というのもかなり重要なキーワードになっているような気がするんですけど、例えば前作だとどういう違和感を演出されたのでしょう?
「アートワークやMVもそうですけど、シチュエーションに合わないことをするのは心がけています。かっこいい場所でかっこいいことをするのではなく砂丘で畳を敷くとか、キャンピングカーでの撮影もそのまま行くのではなくてバナナを小道具として取り入れてフィーチャーするとか。絶対に合わないモノやコトを組み合わせています。それが自分が納得できる"違和感"ですかね」
――今回でいうと、それがゲーム音だった。
「うん、そうですね。なんかそういう違和感が好きなんですよね」
――ちなみに今作の中で一番難産だった曲というと、挙げられますか?
「「Donkey Song」は、自分たちが納得できる形に持っていくのにすごく時間がかかりました」
――今振り返ってみて難しかった理由は見えます?
「実はこの曲、本当に大改造だったんです。作った時と完成が全然違う曲になったというか。作っている時に、図らずもJ―POPっぽさをすごく感じる曲になっていて。それが悪いわけではないけど、自分が思っていた方向性ではなかったんです。どう聴いても納得できなくて、考え抜いた先に全然違う部分で使っていたメロディーをサビに持っていったらようやくハマった感じがありました。組み替えたことでサビが消えちゃった(笑)」
――そうすることでどんな曲に仕上がったのか、言葉にできますか。
「ちょっとマイナーな感じですかね。もうこれ、最初に自分が書いていた歌詞も全部消してやり直して。最初の歌詞もこうあるべきみたいなこととか、いろいろ破壊したいからこそ自分のスタイルとか、世の中変えたい的な歌を書いていたんですけど、気づいたらなんか凝り固まっているというか...めちゃくちゃ普通のこと言ってる...って思って」
――それは歌詞の言葉選びから感じたとか?
「いや、どちらかというと内容ですね。ありがちな内容だし、真っ直ぐ過ぎるがゆえに誰もが言っているようなことを書いていて。やば...って(笑)。めちゃくちゃ説教臭いし、私が一番嫌いな奴に自分がなっていたのがめちゃくちゃ怖くて。とんでもないこと言ってるぞ! と。今考えていることすらもよくないんじゃないかというところまで行き着いた瞬間もありました」
――そのことに自分自身でちゃんと気がつけるのは、客観視する目線を持っていてすごいなと思います。
「夜中に歌詞を見て、びっくりしちゃったんですよ。いつもは歌詞を書いている時って、おぉいい感じってどんどん湧いてくるんですけどこの時は自分が超つまんない奴になっていっている感じというか、書いている時も全然面白くなくて消しちゃいました。そういう意味で難しかったですね」
――でも難産だった曲が、アルバムのリード曲になるという!
「結果的にすごく自分たち的にもいいなと思っている曲なので、聴いてくれる人も面白がってもらえるんじゃないかなと信じています。...でもこの曲がリードになるなんて、不思議ですね」
――「Donkey Song」はMVにも映像の色や質感に90年代みを感じます。
「ストーリーは私が考えているんですけど、今回初めて映像ディレクターさんに入ってもらったんです。とにかくゴリラを使いたかったということがひとつと、せっかくプロに入ってもらうんだから今までやってなかったことをやろう! と思って。ただ初めて自分以外の人に映像を任せたので、難しいこともありました」
――例えばどういったところが?
「自分たちで撮る時は、その場で決めていったり変更したりすることも多いんです。即興でやっているというか。プロにお願いすると、当たり前なんですけど台本を元に進んでいくからそこはいつもと勝手が違うなというところでした。でも委ねてみて面白かったのは、いろんな場所を使って撮影ができたことですね。自分たちでやると2カ所ぐらいで収めちゃうから(笑)。あと、撮影に無駄がなかったです!」
――ちなみに2作目のアルバムを作り終えてみて、今感じていることはありますか?
「90年代の音楽をすごく濃く出せたのでアルバムをトータルで聴いてもらいたいなと思うのと、この作品で聴く人の心を深く刺せたら嬉しいなと思っています」
――そういう思いを持った作品に『Whoop It Up』というタイトルをつけた理由を伺えますか。
「音の響きがいいと思ったのがひとつと、この言葉には騒ぐというような意味もあるんです。カメレオン・ライム・ウーピーパイを始めた頃からどんちゃん騒ぎみたいなものはずっと意識していることでもあるので、2枚目のアルバムで"踊る/騒ぐ"みたいなニュアンスをタイトルで打ち出したかったのは大きかったです」
――『Whoop It Up』はジャケットもすごく印象的です。
「これはライブでお客さんが手を上げているイメージなんですけど、それが手を上げるとかではなくてもう頭の形が変わっちゃうぐらい、頭から手が出ちゃうぐらいに盛り上がってほしいという願いを込めて。意味わかんないぐらいテンション上がってほしいなという私の希望が表れています。なので、ぜひ6月のワンマンにもテンション上げに遊びにきてくださいね!
取材・文/桃井麻依子
(2025年4月25日更新)
4月25日(金)配信開始
go homeCLWP Rrecords
《収録曲》
01. So-so Life
02. Growing
03. Ready Yeah feat. テークエム
04. Cranky
05. Donkey Song
06. Sleepy Monkey
07. Flower
08. Secret March
09. REACH feat. PES
10. I Know feat. MadeinTYO
11. Can't Hold Back [Coolboi × CLWP]
12. Cookie Junkie [Rony Rex × CLWP]
13. Tin Toy
14. REACH feat. PES (End Credits Edit)
配信リンクはこちら
配信日時:毎週木曜日 21時頃
番組ハッシュタグ: #ごちゃウピ
▼配信URL
https://bio.to/gochawhoopiePR
(Spotify・Apple Podcast ・Amazon Music・Google Podcast)
カメレオン・ライム・ウーピーパイ…Chi-によるソロユニット。オレンジの髪が特徴的なChi-と、仲間にWhoopies1号・2号がいる。楽曲制作やライヴ活動に限らず、MUSIC VIDEOやアートワークなどをはじめとした、自らの活動にまつわるすべてのクリエイティヴを3人のみで手がけている。2019年12月に初のシングル「Dear Idiot」をリリース。2021年には、Spotifyの『RADAR:Early Noise 2021』に選出される。2022年8月に『SUMMER SONIC 2022』東京・大阪に出演。2023年3月に、米国テキサス州オースティンにて開催された世界最大級の複合フェスティバル『SXSW 2023』に出演。米音楽メディア「VIBE」では、出演者総数1000組を超えるアーティストの中から「ベストパフォーマンス10選」に選出。また、2024年3月には、2年連続となる『SXSW 2024』に出演。英国メディア「CLASH」にて「SXSW 2024: The Best 15 Acts」に選出。国内外のミュージシャンやプロデューサーからのラブコールも多く、国やジャンルを問わず様々なクリエイターとのコラボレーションも積極的に行い、国内外からも注目を集める次世代型アーティスト。
▼6月6日(金) 19:30
Yogibo META VALLEY
オールスタンディング-5500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。
※開場/開演時間は変更の可能性がございます。
※ご購入いただいたチケットの払い戻しは出来ません。(公演延期・中止の場合除く)
※チケットをご購入の際には「開催にあたってのご案内と注意事項」をご確認ご理解の上、お申し込みください。
※営利目的の転売禁止。
[問]GREENS■06-6883-1224
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