ホーム > インタビュー&レポート > 今年の野外春フェスの先陣を切った 『KEEN presents TVO ROCK HEAT 2025』ライブレポート
少しゆるんだ風の冷たさや植物の芽吹きからようやく春の訪れを感じたと思えば、気温がガクンと下がる三寒四温の日々。当日は朝から曇天が広がり、午後から雨が降り出すというあいにくの天気に。しかし大阪城音楽堂には、めいめい推しのグッズを身につけたオーディエンスが集合した。
昨年に続き、アウトドア・フットウェアブランドのKEENが特別協賛として本イベントを全面バックアップ。会場外のブースでは「コーンホールゲーム」という、トウモロコシの粒を詰めた布袋をボードの穴に投げ入れるミニゲームが体験できたり、KEENの商品の実物を手にとって購入できたり、アンケート回答者にKEENのアイテムが贈られたりと、お楽しみが盛りだくさん。出演アーティストやスタッフは、皆KEENのフットウェアを履いてイベントに臨んでいた。
また、この日だけのKEENとイベントのコラボグッズも販売。売上は全額大阪のNPO法人に寄付され、さまざまな事情で学校に通えなくなった子どもたちの支援に充てられる。
会場内にはキッチンカーも出店。「クロワッサンワッフルの店」はサクサク&ふわふわの「クロワッサンワッフルバーガー」や「クロワッサンワッフルバー」を、「天串と海鮮の店 はれ天」はジューシーなから揚げ、とり天、丼ものを、「菓子処 京ひみこ」はもちもち&ふわとろ食感の「わらび餅」を提供した。さらにマイボトルを持参するとドリンクが100円割引になるという、エシカルな取り組みも行われていた。
ステージ上部には、イベントロゴがあしらわれた黄色のバックドロップと映像を映すビジョンが吊るされていた。
開演時間が近づき、ステージに総合MCの大抜卓人(ラジオDJ)とアシスタントのテレビ大阪アナウンサー・上原美穂が登場。大抜は「寒いですが、最高に熱いライブが繰り広げられるのは間違いないので、最後まで楽しんでいただければと思います!」と盛り上げ、昨年に続きゲストMCを努める、お笑い芸人のみなみかわを呼び込んだ。昨年松竹芸能からフリーに転身したみなみかわは、曰く「スープにこだわりのあるラーメン屋」のような格好で登場し、のっけからハイテンション。前回はライブを終えたばかりのアーティストとMCが楽屋から「トークLIVE」をビジョンで生中継したが、今年は「居酒屋みなみかわ」として、ライブ直後のアーティストを迎えてドリンクを飲みながら「居酒屋トーク」を行うとアナウンス。
終演後の楽しみが増えたところで、いよいよ開歌宣言! オープニング映像が流れ『TVO ROCK HEAT 2025』が幕を開けた。
【Mr.ふぉるて】
トップバッターを飾ったのはMr.ふぉるて。総立ちの客席に拍手で迎えられると、吉河はのん(ds)の力強い一打から『なぁ、マイフレンド』でライブスタート。稲生司(vo&g)は「おはようございます!」と叫び、阿坂亮平(g)と福岡樹(b)は同時にお立ち台に飛び乗り、爽やかなロックサウンドで勢いづける。1人ひとりに呼びかけるように放たれる、高らかなサウンドが心に響く。続く『I Love me』でも<自分のことも愛してあげなくちゃね>とリスナーに寄り添い、オーディエンスはそんな想いを受け止めるように真っ直ぐに手を上げた。
稲生は「呼んでいただいて、早い時間から僕らの音楽を共有してくださることをめちゃくちゃ嬉しく思います。イベントの始まりも皆の心も、僕らの音楽を色濃くつけて帰れたら」と述べて、毎日を懸命に生きる自分たちを肯定する『シリウス』『克己心』をパワフルにプレイ。弱さも悩みも生き方も共有できるサウンドが、ふぉるての魅力で優しさだ。楽曲を紡ぎながら「僕らの音楽、届いてますでしょうか?!」と何度も問いかける姿が印象的で、メンバーは客席のレスポンスを愛おしそうに見つめていた。
日々を生きていれば、嫌なことや上手くいかないことで落ち込むこともある。稲生は「今日もほんとは晴れててほしかったけどさ。鳥が羽を休めるように、幸せにもきっと日曜日があって、ほんの1°物の見方を変えるだけでも、悩んでたことが何てことなかったと思える瞬間があるのかもしれないね。何とかやって命繋いで、また音が鳴る場所で、どんな形でもいいので皆で生きて会えたら嬉しいです」と述べて、『幸せでいてくれよ』を力いっぱい歌い届け、ライブを締め括った。Mr.ふぉるては6月をもって解散することを発表したが、彼らの音楽はいつまでも私たちを勇気づけてくれる。イベントの始まりに素晴らしい音を鳴らしてくれた4人に<どうか幸せでいてくれよ>と願わずにはいられない。
ここからは居酒屋トーク。ライブが終わり、大抜に「居酒屋みなみかわ」へと促されるメンバー。ステージ上のビジョンには、青いのれんや手書きメニューであしらわれた大衆居酒屋の雰囲気のセットでメンバーを待ち構えるみなみかわと、割烹着姿の上原アナの姿が映し出される。やがてメンバーが到着して乾杯!(車で来阪しているため吉河以外の3人はソフトドリンクをチョイス)。さらに皆でアツアツのおでんを囲む。なかなかレアな光景だ。ライブの感想を聞かれた稲生は「(お昼だったので)お客さんの表情がちゃんと見えました」と笑顔。みなみかわは興味津々で結成の経緯やバンド名の由来、メンバーの性格などについて話を聞いていた。ビジョンで中継されたのは前半のみ。トーク後半の模様は特番で放送されるそうなので、お楽しみに。
【YONA YONA WEEKENDERS】
パラパラと小雨が降り出し、カッパ姿のオーディエンスが増えてきた。2番手は今年4月7日(ヨナの日)にメジャーデビュー4周年を迎える、"ツマミになるグッドミュージック"を奏でるYONA YONA WEEKENDERS。磯野くん(vo&g)、スズキシンゴ(b)、小原"beatsoldier"壮史(ds)にサポートのギターとキーボードを迎えた5人編成で登場した。リハから板付で「大阪城音楽堂の皆さん、こんにちは! YONA YONA WEEKENDERSでーす!」と挨拶した磯野くんだが、何とキーボードが機材トラブルで修理中とのこと。そんなトラブルも「わははは」と笑い飛ばし、『君とdrive』『寿司と酒』をキーボード抜きの4人で披露。高橋遼(key)はキーボードが直るまでの間、コーラスとクラップで参加した。磯野くんの伸びやかで透き通る歌声と気持ち良すぎるグルーヴが耳を潤す。そして『寿司と酒』の後半でキーボードが復活! 厚みの増した極上アンサンブルが会場に広がり、メンバーも最高! と言わんばかりに、嬉しそうに笑顔を浮かべた。
磯野くんは改めて挨拶すると「本日はお日柄もよく......せーの、どこがやねーん」というひとりボケツッコミをかまして明るく場を和ませる。いつもはステージ上に置かれたミニ冷蔵庫にお酒がたんまり入っているが、この日は後ほど居酒屋トークが控えていることからノンアルコールでライブを進行した。
テレビ大阪制作のドラマ『地球の歩き方SP inベトナム』のEDテーマで2025年第1弾シングルの『あたらしい旅』は新生活を迎える人の背中を押す、春にぴったりのナンバーだ。さらにありのままを肯定する『シラフ』と続け、最後は『SUNRISE』で熱量高くフィニッシュ。冷たい春の雨が降りそぼる中でも、とびきり上質なメロディーとアンサンブルでゴキゲンな音楽を奏でてくれたYONA YONA WEEKENDERSだった。
「居酒屋トーク」は、お酒大好きなメンバーにとっては至福の時。「やってるっ?」と軽やかにのれんをくぐった磯野くん、スズキ、小原の3人は迷うことなくお酒をチョイスし、景気良く乾杯!「お客さんの熱量であったまらせていただきました!(磯野くん)」とほくほくで感想を述べる。お酒も進み、話題は普段のお酒を飲みながら行うライブについて。「最近ライブにおける酒量の限界値がわかってきた」と話す磯野くんは、大阪では「楽屋でたこ焼きを食べてお酒を飲んで、千鳥足でステージに出ていく」と明かす。ほかにも、平日は会社員として働くメンバーのブラック企業時代のエピソードも飛び出し、MC陣をおおいに湧かせていた。磯野くんはみなみかわをTVで見て会いたかったそうで、みなみかわも「お酒片手に聴いたら気持ちええやろうな~と思いました。ファンになりました」とYONA YONA WEEKENDERSを気に入った様子だった。
【カネヨリマサル】
続いては大阪出身のカネヨリマサル。大阪城野音は彼女たちが昨年9月に初めて『君と私の世界を変える大阪城野音ワンマン』を行った思い出の地だ。くるりの『THANK YOU MY GIRL』をSEにステージに登場したちとせみな(vo&g)、いしはらめい(b)、もりもとさな(ds)は、3人集まって気合いを入れると、ちとせの弾き語りから『関係のない人』を奏で始める。いしはらは雨などもろともしない様子でぴょんぴょんジャンプし、もりもとはタイトなビートを繰り出して、ポジティブな空気を伝播させていく。続き「皆の心を晴れさせまーす!(ちとせ)」と疾走感たっぷりに『はしる、夜』を投下。息ぴったりのアンサンブルが、心地良く会場を牽引していった。
いしはらは雨の野音が新鮮な様子で「うちら雨の中でライブするの初めてかもしれへん。雨でもこんなに素敵な景色が見れるんやなと思ってます。呼んでもらってありがとうございます!」と感謝を述べ、イベントの「開歌宣言」というサブタイトルにちなみ「地元で梅の花の蕾が咲きかけてるのを見かけて、もうすぐ春が来るんやなって感じて。自分らも今日、春一番のあったかい風を吹かせようと思ってます!」と目を輝かせた。映画『代々木ジョニーの憂鬱な放課後』主題歌の『君の恋人になれますように』、ギターのアルペジオとコーラスワークが印象的な『春』、感情が乗ったロックナンバー『ひらりとパーキー』を連続で披露して熱を宿すと、あっという間に終盤へ。
この日は「手がかじかんでる(ちとせ)」というほどの寒さ。しかし笑顔で「雨やけど楽しいです。私は、ライブ会場だからこそ渡せる音楽のパワーがあると思ってて。皆がこの春あったかい気持ちでおれるように、精一杯大切に音楽やって帰ります!」と初期の楽曲『もしも』を経て、ラストは思い切りパワフルに『ハッピーニューデイ』で駆け抜けた。客席は喜び勇んで手を上げ、クラップやシンガロングでひとつに。雨の野音でも新しい景色と前向きな時間をくれた、カネヨリマサルだった。
雨足の強まる中で熱いライブを繰り広げたメンバーを、拍手で迎えるみなみかわと上原アナ。普段は3人とも打ち上げでしかお酒を嗜むことがないそうで、いしはらだけがチューハイで、ちとせともりもとは烏龍茶で乾杯。ライブの感想を聞かれると「お客さんが1曲1曲を受け止めてくれて、一緒に楽しめました。ワンマンは自分たちの雰囲気があるけど、今日はいろんなバンドさんが出て、1日通して作り上げる雰囲気があるので面白い(ちとせ)」と回答。3人の関係性については、3人とも真面目で音楽にストイックなため、周りが話しかけられないほどのオーラを出して話し合いをしている時があると笑い合う。バンド名の由来やメンバー内での担当などを話している途中でタイムアップ。ぜひ、続きは特番で。
【梅田サイファー】
2年連続で出演したのは、大阪が誇るHIPHOPグループ・梅田サイファー。昨年は病気療養のため出演がかなわなかったDJ SPI-Kも仲間とステージに立つ。リハからコール&レスポンスで導き、あっという間に場を掌握したKBD、KZ、KennyDoes、KOPERU、テークエム、teppei、コーラ、ILL SWAG GAGA、HATCH、peko、Cosaqu、DJ SPI-Kは、その熱を引き継いだまま本番へ。『BE THE MONSTERR』でKOPERUが先陣を切ってステージに飛び出し、勢いよくラップを叩き込むと、続々とメンバーがステージにインし、目にも止まらぬ速さでマイクリレーを披露。間髪入れずにTVアニメ『青のミブロ』第2クールOPテーマの『OOKAMI』を投下して、後方の芝生エリアまでしっかり巻き込んでいく。
KZは雨を見て「こういう日の方がお互い記憶には残るし、すげえ、すげえ、すげえ、すげえ良いライブできたなって今年の終わりとかに思い出すと思うんで、俺らも手抜かず、皆も集中力切らさず、しっかり俺らについてきてください! クソカッコ良いバンドの中に唯一のHIPHOPグループ。その意地、プライド、矜持としてがっつりマイク回し合って俺らの仕事こなしたいと思います!」と声を張り上げて『スイッチ』を投下。さらに『韋駄天S**t』ではKOPERU、テークエム、KennyDoesの超絶テクが炸裂。まるで人力でスクラッチをしているような高速ラップに、目も耳も釘付けになる。
終盤、春にちなんで披露されたのは、いきものがかりの『SAKURA』を彼らなりの新解釈でリアレンジしたver.。大胆にラップを入れたアレンジで展開もリリックも違うが、客席はダンサブルなビートに身体を揺らして手を上げる。ラストはアッパーな『Rodeo13』。雨に濡れずにパフォーマンスするメンバーにKOPERUが「梅田サイファーへこたれてんちゃうぞ!」と叫んで客席に飛び降り、そのままオーディエンスに囲まれてラップする場面も。ステージ上のメンバーも大きく躍動し、最高潮の熱を作り上げた。シーンの第一線を突っ走る梅田サイファーの圧倒的な実力を提示した、アツアツのライブだった。
メンバー12人でぎゅうぎゅうになった「居酒屋みなみかわ」。昨年の楽屋トークではKZがみなみかわとゴムパッチンで勝負し、KZの顔面にゴムが直撃するという場面があったが、そこに異議を申し立てるKZ。それを発端に、芸人として独立したみなみかわに伝統芸の「熱々おでん」を求めてワイワイしていると、流れで「第2戦 KZ VS みなみかわ」が実現することに。今年もみなみかわが先にゴムを離してKZの顔面にヒットするというオチであったが、KZは楽しそうに「(今日は)最高でした。天気も悪かったし、ロックバンドの中に我々HIPHOPグループで、ほんまに皆さんに受け入れてもらえるかなって不安があったんですけど......」というところで中継は終了。終始笑いの絶えない、爆笑居酒屋トークとなった。
【シンガーズハイ】
今、右肩上がりで若者の人気を獲得し続けているのは、2020年結成のロックバンド・シンガーズハイ。この日彼らのタオルを持つ人の多さや物販列の長さからも、その人気ぶりが伝わってきた。意気揚々とステージに現れたりゅーいち(ds)、ほりたいが(g&cho)、みつ(b&cho)、内山ショート(vo&g)がパワフルに音の塊を放つと、それだけで全身が高揚した。内山が大声で煽り、ほりとみつが同時に前に出て、まずは挨拶代わりとばかりに約1分のショートチューン『愛の屍』をドロップ。のっけから拳が突き上がり、続く『サーセン』では、見事なシンガロングも発生。ハイトーンボイスとヒリついたサウンドに、湿気を孕んだ空気がよく似合う。内山は「今日俺たちを初めて観る人もいるかもしれないから、俺たちのことをあなたたちに教えていくんで、どうか、どうか!<あなたのことを教えてほしい~♪>」と『ニタリ』に繋ぎ、ミドルバラード『SHE』へ。不安や焦燥をゆったりとした曲調に乗せて歌う表現力と演奏力の高さに舌を巻いた。
タンプトップ姿の内山は「別に寒くねーし!」と強がり、「雨降ってる中、俺らだけ屋根の下にいるのも申し訳ないなと思って、絶対に寒い格好でやってやろうと思って。これでイーブンにならないですかね」と笑顔を浮かべる。そして「上昇空気を作りませんか? それぐらいあったかい空間を作れたらいいなと思ってます」とアンセム『STRAIGHT FLUSH』を披露。身体を揺るがすリズム隊の轟音と、超絶技巧が炸裂したほりのレフティギター、前へと放つ内山のボーカル、複雑な楽曲展開に圧倒される。半年前に観た時よりもさらに4人の存在感とライブパフォーマンスの魅力が増していて、その進化ぶりに思わず鳥肌が立った。ラスト3曲は『Kid』『daybreak』『ノールス』と人気曲を連投し、最高の熱を生み出した。自己紹介的なセットリストで楽曲の幅と実力を見せつけ、疾走した35分。やはり何度観ても、シンガーズハイは4人全員が主役でヒーローだ。これからの飛躍が楽しみで仕方ない。
熱きロックサウンドを響かせ、スッキリした表情でのれんをくぐった4人。りゅーいちはレモンチューハイ、内山とほりはオレンジジュース、みつは烏龍茶というチョイスで和やかに乾杯した。みつは「全員KEENの靴を履いてライブをできたから雨で滑らなかった」とライブを振り返る。ライブからはプライベートの様子が想像できないとみなみかわに言われた内山は「まだガキなんでしょうね(笑)。ナメられたくないんですよ」と発言。喋ると物腰柔らかな内山のギャップにMC陣は驚いていた。4人の仲の良さが垣間見えるトークを展開しつつ、りゅーいちが坂道で自転車で走っていた時にバランスを崩して転倒し、前歯を折って差し歯になったというエピソードも明かして場を湧かせていたシンガーズハイ(折れた歯は牛乳に入れて病院に持っていくことが大事だそう)。トーク後半も盛り上がったに違いない。
【NEE】
NEEが大阪城音楽堂に戻ってくるのは、2023年7月のワンマン『大阪城、夏のサイレン』ぶり。昨年5月にボーカルのくぅが逝去して、夕日(g&vo)、かほ(b&vo)、大樹(ds&vo)の3人での帰還となったが、3人でバンドを続けることを決め、昨年10月に全国ツアーを廻った彼らの決意と覚悟の強さは目を見張るものがあった。それから約半年が経ち、大阪城野音に立った彼らは前向きなエネルギーに満ちていた。活動再開後からサポートギターをつとめる、夕日の元バイト先の音楽スタジオのひらこ店長と4人で臨んだライブ。客席にはNEEのタオルを持つ人も多く、彼らが本当に愛されていることが伝わってきた。
夕日は「皆寒くない? 大丈夫? 俺今めっちゃめちゃ寒いから、皆の力で激アツにさせてくれ! ついてこれるか!」と叫び、『月曜日の歌』から爆音を響かせる。客席は歓喜し、早速手を上げる。この曲でボーカルを取るのは夕日とかほ。叫ぶように歌いながらベースを弾くかほは「雨もいいね、めっちゃ!」と顔を輝かせる。続けて『九鬼』『本日の正体』と人気曲を連投。客席は前のめりに食らいつき、ぐんぐん会場の熱を上げていく。
ここでひらこ店長は一旦はけ、3人のステージに。「雨良くない? うち楽しいんだけど。皆もそうだったらいいな~!」と言うかほに賛同したオーディエンスは、「くぅの遺志を引き継いで、3人でもっともっとデカくしていく」と力強く宣言した夕日の言葉と覚悟をしっかりと受け取る。決意の言葉の後に披露された『ボキは最強』では、湧きまくった客席が一斉にボキポーズ! くぅが生み出した曲の力と存在感を、35分の間に何度も何度も感じた。だけど彼らは先に進み始めた。3人で作った新曲『マニック』は夕日、かほ、大樹の3人が順にボーカルを取る楽曲。一度聴いたら忘れらない歌詞と中毒性のあるメロディー、複雑な楽曲構成はNEEらしさ満載で、新たなアンセムになる予感がした。
再びひらこ店長も加わり、『歩く花』を経て、最後はNEEのライブで欠かせない『不革命前夜』。かほと夕日による「革命は起こりません!」のセリフで爆発的な熱狂を生み出し、興奮の渦に包まれてライブを終えた。第2章を歩み始めたNEEをこれからも見守っていたい。
「居酒屋みなみかわ」に移動した夕日と大樹はビール、かほはレモンチューハイを注文し、清々しい表情で乾杯! 美味しそうにお酒を流し込み、おでんももぐもぐ頬張る。大抜にこの日のセットリストについて聞かれたかほは「春だから『歩く花』を入れた」と回答。さらに「今年はどんな年になるのか想像がつかない。未知の世界。やったことないことばかりの年になりそうなので、体力から健康から、そろそろスタートを切らないと(かほ)」「あとは俺らの頑張り次第(夕日)」「歌上手くなりたいっす。カラオケで80点ぐらいだったんです。これじゃお客様の前で聴かせられない(大樹)」と、各々の想いと課題を口にする。また、今は夕日が曲作りを行なっているが、いずれかほと大樹もトライしたいとのこと。未来について明るく話す3人の笑顔が眩しい、居酒屋トークだった。
【This is LAST】
しとしと雨がそぼふる中で完全に陽が落ちた大阪城野音は気温がグッと下がり、かなりの冷え込みに。しかしオーディエンスは大トリのThis is LASTを待つ。SEとともに笑顔で登場した菊池陽報(vo&g)、鹿又輝直(ds)、サポートの芳井雅人(b)は鹿又の元に集まり気合い入れ。菊池は「遊べるかい大阪! 千葉の柏からThis is LASTです、よろしくお願いします!」と叫び、1曲目からキャッチーでロックなアンセム『恋愛凡人は踊らない』に続き『もういいの?』を軽快に飛ばし、メロディーメーカーぶりをありありと提示する。
そして、ABEMAオリジナル恋愛リアリティーショー『キミとオオカミくんには騙されない』の最終回でBGMに使われ話題になった『Strawberry』、バラードソング『#情とは』を連続で披露。ひんやりとした夜の空気に菊池の優しい歌声が響きわたり、楽曲に込められた喜怒哀楽が、深度を増して全身に染み渡った。
菊池は「雨降ってるね。この時間まで残ってくれて本当にありがとうございます」と感謝を伝え「天候とか関係なく、俺たちはロックバンドとしてできることをやっていきますので、最後までよろしくお願いします!」とギアをアップ! ロックチューン『ディアマイ』を勢いよく投下し、「最大の感謝を込めて!」と華やかなホーンが入った『カスミソウ』で、一気に明るいサウンドで満たしてゆく。見ているこちらが笑顔になってしまうほど楽しそうに演奏するメンバーの姿が、寒さを和らげてくれる。
いよいよラストチューン。「さて大阪! 残ってるもん全部置いていけますか? 雨に負けんなよ。個人戦じゃなくてチーム戦でいきたいんですけどどうですか! 最高だったと言える日にしよう!(菊池)」とアンセム『オムライス』で締め括った。クラップにコール&レスポンス、シンガロングで最高潮の一体感と盛り上がりを作り出したThis is LAST。バンド史上最大規模のホールツアー真っ只中の彼らの現在地を、3年ぶりの大阪城野音でしっかりと示したのだった。
This is LASTの居酒屋トークの中継はなく、ステージでMC陣としばしトーク。菊池は「楽しかったです」と笑顔で答え、鹿又は「大阪は毎回お客さんがすごくあたたかくて、今日もあたたかく迎えてもらえて、何の心配もなく気持ち良くライブできました」と、感想を話していた。
こうして『TVO ROCK HEAT 2025』は大団円を迎えた。雨の日ながらも、春の始まりに「開歌宣言」を聴かせてくれたアーティストたち。昨年とはまた違う景色を見ることができた。大抜は「Mr.ふぉるてから熱い一体感がずっと生まれて、ジャンルレスにたくさんの方がひとつになって歌を紡いだ本当に良い時間でした!」と総括。みなみかわは「アーティストの方と色々お話させていただいて、皆さんと素晴らしい楽しい時間を過ごしたんですけども、ただひとつ梅田サイファーさんとは因縁ができたので、決着をつけなければならないと思っております!」と意気込み、次回への流れも作り上げた。
この日のライブと居酒屋トーク後半の模様は、4月19日(土)昼12:57からテレビ大阪で1時間の特別番組として放送されるので、ぜひチェックしてほしい。
Text by ERI KUBOTA
Photo by オイケカオリ、キシノユイ
(2025年3月29日更新)
『KEEN presents TVO ROCK HEAT 2025』
2025.3.15 Sat at 大阪城音楽堂
Mr.ふぉるて
1. なぁ、マイフレンド
2. I Love me
3. シリウス
4. 克己心
5. こがれ
6. あの頃のラヴソングは捨てて
7. さよならPeace
8. 幸せでいてくれよ
YONA YONA WEEKENDERS
1. 君とdrive
2. 寿司と酒
3. あたらしい旅
4. シラフ
5. SUNRISE
カネヨリマサル
1. 関係のない人
2. はしる、夜
3. 君の恋人になれますように
4. 春
5. ひらりとパーキー
6. もしも
7. ハッピーニューデイ
梅田サイファー
1. BE THE MONSTERR
2. OOKAMI
3. スイッチ
4. 韋駄天S**t
5. REVENGE
6. 梅田ナイトフィーバー19’
7. SAKURA
8. Rodeo13
シンガーズハイ
1. 愛の屍
2. サーセン
3. ニタリ
4. SHE
5. STRAIGHT FLUSH
6. Kid
7. daybreak
8. ノールス
NEE
1. 月曜日の歌
2. 九鬼
3. 本日の正体
4. ボキは最強
5. マニック
6. ばっどくらい
7. 歩く花
8. 不革命前夜
This is LAST
1. 恋愛凡人は踊らない
2. もういいの?
3. Strawberry
4. #情とは
5. ディアマイ
6. カスミソウ
7. オムライス