ホーム > インタビュー&レポート > 盟友3バンドによる、最高熱量の“3マン”が大阪で実現 『downt x ANORAK! x くだらない1日』ライブレポート
開演時間の少し前に会場のJANUSに到着すると、フロアは人で溢れており、熱気が充満していた。開演時間が近付くにつれて人の数はさらに増え、パンパンの満員状態に。週明けの月曜日だったが、翌11日も祝日ということでバーカウンターも盛況。お酒を手に意気揚々とライブを楽しむ大勢の姿が見られた。
1月の東京公演の後、くだらない1日のXの公式アカウントが「3年前に東京で一緒に色々やり始めた3バンドな趣きもありなかなか感慨深いです」と投稿していたが、3バンドの関わりは非常に深い。かつては3バンドとも東京のインディレーベル・ungulatesのレーベルメイトであり、くだらない1日とANORAK! は2021年にスプリットEP『Split』をリリース、昨年4月にはくだらない1日の3rdアルバム『どいつもこいつも』のレコ発ライブをANORAK! がサポートする形で下北沢SHELTERでツーマンライブを開催した。もともとANORAK! にくだらない1日の高値ダイスケ(vo.gt)がギターで加入していたという経緯もある。
downtとくだらない1日は、河合崇晶(ba)が両バンドを兼任しており、共同で『ALCAHEST』というスリーマンライブシリーズを主催している。昨年11月~12月にかけては2度目となる中国ツアーを一緒に廻り、各所ソールドアウトで完遂した。そしてdowntとANORAK! も度々対バンするなど、2020年代の東京エモオルタナシーンで切磋琢磨し、進化してきた仲間だ。
トッパーは、アイナ・ジ・エンドやBiSらを輩出した音楽事務所WACKに所属する、くだらない1日。昨年は『SXSW2024』にも出演した。高値ダイスケ(vo.gt)、太陽(gt)、河合(ba)、高石 晃太郎(Dr)の4人が登場すると、タイトな音を響かせて『泣き虫』からライブをスタート。淡々と演奏されるどこか哀愁のあるサウンド、高値の張り上げる歌声がじわじわと高まり、これから何かが起こりそうな予感を感じさせるように、秘めた熱を放出していった。
短いリフを重ねてフロアをエネルギッシュに踊らせた『状態c』に続き、イントロのアルペジオに感情を揺さぶられた『アメフト部』、高値の荒々しいボーカルと疾走するサウンドの熱に没入した『力水』、ロックサウンドのパワフルさにJANUSの床が揺れた『誕誕』、さらに爆音で思い切りエッジーに歪ませ、わななき、叫び、躍動させた『レッドアイズオルタナティブブラックドラゴン』と、息つく間もなく連続で披露した。最初は静かに見守っていたオーディエンスも、このストイックな展開に徐々に惹き込まれ、音に身体を任せて拳を突き上げる。瞬く間にフロア後方まで熱狂の渦に巻き込んでいった。
MCでは太陽が「エモオフ会にようこそ」と歓迎。高値も「今日は来てくれてありがとうございます。嬉しいです」と述べて、好きな土地である大阪に来るのが久しぶりで、実はテンションが高いことをメンバーに気付かれず、心の中で悲しくなっていると告白。「高度なギャグですね。言ってくれたらいいのに」と太陽に突っ込まれながら、来阪の喜びを表現した。
『こわれはじめてゆく今』では、メンバーがドラムの方に向き合いゆっくりとギターを鳴らす。照明も音数も最小限で、高値は話しかけるように呟くように歌う。空気を作るのがとても上手い。曲の後半は、腹に響く爆音に乗せてひたすら反復する歌詞により、音に襲われるような感覚に。さらに視界を奪うほどの光量の中で、脳内で何かが崩壊するような陶酔感に陥ると、再び照明も音数も減らしてフィニッシュ。あまりのインパクトに圧倒され、会場はしんと静まり返った。
ここからはラストスパート。『帰宅部』『激情部』と続くうちに、4人のエネルギーもプレイも激しく熱く高まっていく。ラストはキラーチューン『やるせない』。超絶爆音を放ちながら、心の内を吐露するかのように叫び歌う高値。あんな音を至近距離で浴びたら、もうただではいられない。前列のオーディエンスは一心不乱にヘドバンし、中列から後ろは拳を突き上げ、細かく身体を揺らして踊りまくる。荒々しく美しいライブで熱狂させてくれた4人に、大喝采が贈られた。
2番手はdownt。東京公演とは違う出演順で、この日だけの流れと空気を醸成していく。先ほどくだらない1日のステージで熱く骨太なベースを弾いていた河合、富樫ユイ(Vo,&Gt)、テネール・ケンロバート(Dr)がスタンバイし、ゆったりと『紆余』を奏で始める。富樫のウィスパーボイスが心地良く耳を潤す。後半は3人とも弾かれたように大きく身体を揺らして躍動する。声も音も高く響かせて、上昇感を感じるサウンドを丁寧に演奏した。
柔らかくて凛とした歌声の中に冷たさも感じるような『Whale』、ポエトリーリーディングから緊迫したサウンドが会場を満たした『Yda027』で完全に空気を作り上げると、『underdrive』を投下。リズム隊がタイトに走る中で富樫の囁くような歌声が響く。ヒリヒリしたギターの歪み、ボトムを支えるゴリゴリのベースとドラム。情熱的なプレイがカッコ良い。最後は富樫も高まったように咆哮し、曲が終わるとフロアからは「たまらない!」とばかりに大歓声が湧き上がった。
はぁはぁと息を切らすメンバーの様子からも、パフォーマンスの激しさが伝わってくる。「お越しいただき本当にありがとうございます。downtです。元気ですか?」と挨拶し、「ライブってその場限りなんですよ」と言葉少なに想いを伝える富樫。もう2度と会えないかもしれない一期一会の瞬間や、ライブ会場にいる時だけ体験できる唯一無二の時間を存分に共有するように、後半戦もdowntの音楽を惜しげもなく解き放っていった。
ここからは、未発表曲を含む新曲を連続で投下。大音量の河合のベースとロバートの息の合ったアンサンブル、富樫の儚さと強さが同居する歌声に圧倒された『balance』に続き、「ベベベベベ......」と短い音符で奏でられるベースが存在感を示し、囁くようなボーカルやアウトロで歪むギターが全身を心地良く揺らした『not』、イントロのメロディアスなギターソロからエモーショナルに展開した『AWAKE』をパフォーマンスした。
そして8分を超える長尺の『13月』をダイナミックにプレイすると、ラストは『111511』をパワフルかつ繊細に歌い上げた。音源から感じる印象よりもずっと生々しくてクールで熱いライブを終え、充実感を滲ませた笑顔でステージを去っていった。
トリはANORAK! 。2組のライブから引き継がれたアツアツの熱気が会場に充満する。Tomoho Maeda(gt.vo)、Crystal Kato(gt.vo)、Mikuru Yamamoto(ba)、Kotaro Nakamura(dr.cho)がステージに現れ、サウンドチェックでオートチューンを使っただけで、フロアは高まって大歓喜。オーディエンスも完全に仕上がっている。
「What's up JANUS? ANORAK! です、よろしくお願いします」とMaedaが一声放ち、ゆったりと高揚感のあるギターリフが響きわたる。やがて4人が一気に振りかぶると、2022年11月にリリースされた1stフルアルバム『ANORAK!』から『中野』『浅草』『表参道』『吉祥寺』をアルバム収録順に披露してゆく。オーディエンスは1曲目から手を伸ばしたりシンガロングしたりと、音を浴びる喜びを全身で表現する。
ここからは雰囲気を変えて、昨年8月にリリースされた2ndアルバム『Self-actualization and the ignorance and hesitation towards it』から、こちらも収録曲順に『Sonic』『Joy』『Username』『Summertime』『Pure Magic Pt.2』と、1曲目から5曲目までを一気にプレイ。オートチューンや電子音を用いたサウンドで、スペーシーな世界へと誘ってゆく。メンバーの背後から照らされるブルーの照明や、ステージの奥に立てられた5本のLEDライトが楽曲の雰囲気にピッタリで、まるでステージが宇宙船の内部のようにも見えた。シームレスに繋がれる楽曲群に牽引され、じわじわとトランスへ向かう過程がとても気持ち良かった。
MCでKatoは「今日は、落ち着いて聴きたい層と騒ぎたい層が入り混じってカオスですね」と、思い思いに楽しむフロアに声を掛ける。Maedaは「めちゃくちゃ楽しいです」と感謝を述べて、4月に南堀江SOCORE FACTORYで行う初大阪ワンマンのアナウンスも挟み、「アルバムの中からもうちょっとやります」と2ndアルバム6曲目の『Word5』と7曲目『Twelve』を投下、さらに会場の温度を引き上げる。続き、最高のエモ・メロディックパンクソング『Basement』をプレイすると「4曲後に新曲をやるので」と予告して、再び1stアルバムから『渋谷』『池袋』『品川』を披露。最高の疾走感と煌めきを伴って、サウンドスケープを描き出した。
ここで予告通り、新曲の『fledgling』をドロップ。ノイジーなギターのイントロからMaedaのシャウトが炸裂するヒリヒリしたショートチューンで、歌う者も聴く者も一体となって思い切り感情を震わせる。そしてラストスパート。2ndアルバムを締め括る『Still Life』から『Birdhouse』の流れで、大充実の本編を終了した。新旧の楽曲を織り交ぜてバンドの世界観と現在地を示しつつ、フロアを完全掌握したANORAK! だった。
興奮は冷めやらず、アンコールを求めるクラップが自然発生。嬉しそうにステージに戻ったメンバーは、1stシングル『浮かない顔のまま』を披露。これにはフロアのテンションも爆上がり。大興奮でジャンプし拳を突き上げる。後半加速するとダイバーも出現! メンバーも一心不乱に楽器をかき鳴らす。ゴキゲンな様子のメンバーは、最後に『Call Me By Your Name』を高速爆音で叩きつけ、残響音を残してステージを後にした。
3バンドにとってもファンにとっても、非常にエモーショナルで特別な夜となった、この日のライブ。太陽が"エモオフ会"と形容していたが、まさにファン同士も顔見知りが多いようで、会場には一種のコミュニティのような雰囲気が漂っていた。これからも3バンドが共にシーンで活躍し続けてくれること、新たな音楽やライブを届けてくれることを楽しみにしていたい。
Text by ERI KUBOTA
Photo by Riku Kawahara
(2025年3月 3日更新)
01. 泣き虫
02. 状態c
03. アメフト部
04. 力水
05. 誕誕
06. レッドアイズオルタナティブブラックドラゴン
07. こわれはじめてゆく今
08. 帰宅部
09. 激情部
10. やるせない
01. 紆余
02. Whale
03. Yda027
04. underdrive
05. balance(新曲)
06. not(新曲)
07. AWAKE(新曲)
08. 13月
09. 111511
01. 中野
02. 浅草
03. 表参道
04. 吉祥寺
05. Sonic
06. Joy
07. Username
08. Summertime
09. Pure Magic Pt.2
10. Word5
11. Twelve
12. Basement
13. 渋谷
14. 池袋
15. 品川
16. fledgling
17. Still Life
18. Birdhouse
EN1. 浮かない顔のまま
EN2. Call Me By Your Name
『SYNCHRONICITY’25 -20th Anniversary!!-』
【東京公演】
▼2025年4月12日(土)・13日(日) 13:00
Spotify O-EAST/Spotify O-WEST/Spotify O-nest/duo MUSIC EXCHANGE/clubasia/LOFT9 Shibuya/SHIBUYA CLUB QUATTRO/Veats Shibuya/WWW/WWWX/TOKIO TOKYO
1日券-8800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
2日通し券-16800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[12(土)出演]
東京スカパラダイスオーケストラ/離婚伝説/w.o.d./SPARK!!SOUND!!SHOW!!/Suspended 4th/betcover!!/THE SPELLBOUND/SPECIAL OTHERS/THA BLUE HERB/envy/Boris/The Novembers/world's end girlfriend/downy/LITE/Rega/fox capture plan/揺らぎ/mudy on the 昨晩/sleepy.ab/paranoid void/ドミコ/法茲 FAZI (China)/MONO NO AWARE/Cody・Lee(李)/Homecomings/odol/Helsinki Lambda Club/TENDOUJI/NOT WONK/Enfants/She Her Her Hers/緩緩 Huan Huan (Taiwan)/Dos Monos/どんぐりず/SUSHIBOYS/YonYon/QOOPIE/the engy/Billyrrom/muque/荒谷翔大/Emerald/First Love is Never Returned/Blu-Swing/goethe/brkfstblend/HALLEY/luvis/LAUSBUB/高井息吹/幽体コミュニケーションズ/タデクイ/水平線/pavilion/Trooper Salute/穂ノ佳/Simmer Pine/Ko Umehara/New Action!
[13(日)出演]
渋さ知らズオーケストラ/ZAZEN BOYS/サニーデイ・サービス/Hedigan's/ALI/柴田聡子/おとぼけビ~バ~/SOIL&"PIMP"SESSIONS/踊ってばかりの国/No Buses/DYGL/奇妙礼太郎BAND/TENDRE/BREIMEN/kiki vivi lily/chilldspot/NIKO NIKO TAN TAN/DÉ DÉ MOUSE/imai/80KIDZ/ぷにぷに電気/Shin Sakiura/toconoma/the band apart/People In The Box/MASS OF THE FERMENTING DREGS/tricot/jizue/JYOCHO/kurayamisaka/蛙池 wachi (China)/モーモールルギャバン/SuiseiNoboAz/ゆうらん船/Khaki/luv/えんぷてい/柯智棠 Kowen (Taiwan)/ベランダ/Guiba /トリプルファイヤー/saccharin/浪漫革命/Nao Kawamura/POLYPLUS/JABBERLOOP/ANORAK!/ひとひら/雪国/cephalo/yubiori/171/the bercedes menz/aldo van eyck/Qoodow/life crown/北村蕗/Cosmic Mauve/こがれ/Ko Umehara/New Action!
※ANORAK!は13(日)出演予定
※小学生以上有料/未就学児童無料(保護者同伴の場合に限る)。
※開場・開演時間は変更となる可能性がございます。
※アーティストのキャンセルや変更等による料金の払戻しはございません。
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