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唾奇、Mina Okabe、Skaai、さらさ、柊人らが
TASOGARE COFFEEの8周年を祝福。
『TASOGARE HOLIDAY タソガレの休日
- 8th ANNIVERSARY PARTY -』レポート

11月3日(日・祝)に大阪・名村造船所跡地 クリエイティブセンター大阪で、都市型フェス『TASOGARE HOLIDAY タソガレの休日 - 8th ANNIVERSARY PARTY -』が行われた。本イベントを主催するTASOGARE COFFEEは、今年8周年を迎えた人気コーヒーショップで、8月には店舗を大阪・南船場から南堀江に移転したばかり。リニューアルオープンという節目と新たな想いを抱えて、3年ぶり6回目の開催となる当イベントをお祝いしようとアーティスト・DJ合計30組が大集合。それぞれに個性豊かでバイブス高めのライブを繰り広げた。本記事では「PARTITA」と「BLACK CHAMBER」ステージのライブをレポートする。

『FUJI ROCK FESTIVAL』をはじめ、国内外の音楽フェスで出店を行うなど、音楽との結びつきも大きいTASOGARE COFFEE。名村造船所跡地とクリエイティブセンター大阪を使ったエリアには「PARTITA」「BLACK CHAMBER」「RED FRAME」「BLUE FRAME」の4つのステージと、TASOGARE COFFEEと繋がりの深い飲食店、古着屋、アパレルブランド、美容室などが出店。

630C2930T01.jpg会場に足を踏み入れると、木材や布で組まれたオーガニックなステージが出迎えてくれた。TASOGARE COFFEEのこだわりが随所に見られ、おしゃれで居心地の良い空間が広がっていた。日が落ちるにつれて輝きを増したミラーボールとネオンは、イベントの雰囲気をよく高めていた。

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「PARTITA」と「BLACK CHAMBER」はライブステージ、「RED FRAME」と「BLUE FRAME」はDJブースになっており、12時のオープンと同時に「RED FRAME」ではFM802 DJの板東さえかがビートのきいたダンスミュージックを流してじわじわとオーディエンスを踊らせる。一方「BLUE FRAME」では、ゆったりとした音楽が流れる空間が広がっていた。

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オープン直後から続々と入場したオーディエンスたちは、お目当てのショップに並んだり、早速お酒やドリンク、フードをゲットして思い思いの時を楽しむ。「BLUE FRAME」には歴代の『TASOGARE HOLIDAY タソガレの休日』のボードが掲示され、出演者のラインナップなどを見て懐かしむ人の姿もあった。音楽に包まれながら、集った人誰とでもコミュニケーションが生まれそうなウェルカムで自由な雰囲気は、TASOGARE COFFEEだからだろう。信頼やリスペクトがあちらこちらから感じられる、あたたかな空間だった。


【BLACK CHAMBER】

●Sincere

"タソガレの休日"というネオンが灯された室内ライブステージ、<BLACK CHAMBER>。一番手となるアクトは兵庫県出身のシンガーソングライター、Sincere。一曲目『Are you』からDJをバックにキレのある動きで惹きつける。ブラックミュージックを昇華したナチュラルな強さと艶があるボーカル&パフォーマンス。英語と日本語がミックスされたリリックで、MCでも両方を駆使するスタイルはインターナショナルな雰囲気だ。

序盤の2曲歌った後に、「"タソガレの休日"楽しんでいってください!」とフレンドリーに声をかけて歌った『Good Girl』、『no pride』を披露。中盤は1023日にリリースされたばかりの最新EPBetter Weather』に収録された曲を中心に展開。BPMを上げて加速する『rain』では密度が高くなったフロアも気持ちよさそうに揺れている。そして転してメロウなグルーヴで包み込んだ『bed』。その後、新たな始まりを告げるような『dawn』で気持ちを煽る。

water』で彼女が手を大きく振ると、オーディエンスも一緒に手を上げる光景が広がり、さらに熱を帯びた『I'll be』で心を揺さぶっていく。ラストに「感謝の曲で締めたいと思います!」と『Our Way』を差し出すと心温まる空気に包みこんでステージを後にした。

●kojikoji

青色のエレキギターを抱えて、kojikojiがステージ上に現れ、「はじめまして、kojikojiです。よろしくお願いします」と挨拶して、"タソガレの休日"に相応しい『TASOGARE』を一曲目にセレクト。kojikojiらしい柔らかいムードに浸らせる。「今日は思い切り楽しんで帰ってください」と伝えると、2曲目ではビリー・ホリデイの『Crazy He Calls Me』を聞かせてくれた。すでにフロアはギッシリと埋まった状態で、「ちょっと人が多くなってきたので、できれば半歩一歩前にお願いします」と声をかける場面も。中盤の『陶芸』『じっくりコトコト』ではビートにギターを重ねて演奏。

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このイベントとの出会いを振り返り、2019年に初参加してから5年になること。同イベントが「たくさん繋げてくれた縁があり、仲良くなったアーティストもいる」そんなみんなと「遊んだことを書いた曲」というエピソードを明かしていた。『ほろよい』では「手拍子もらっていいですか」と促してフロアとの一体感がさらにアップ。

ラストは「(自分を)音楽の世界に引っ張ってくれた曲」と紹介してBASIの『愛のままに』を披露し、会場全体の雰囲気をより高揚させた。その繊細な歌声は生で聴くとより一層感動的で、聞き手の心に忘れられない余韻を残していった。

●ZOMBIE-CHANG

次に登場したのはZOMBIE-CHANG。ステージ中央のテーブルに置いた機材操作してハイな空間に塗り替えていく。無機質な電子音とは対照的に浮遊感あるやさしげな響きのボーカルが耳をくすぐる。ほぼノンストップで次々とトラックが進行していく合間を縫って、「ありがとうございます。ZOMBIE-CHANGです!よろしくお願いします!」と挨拶し、「みんなもっと盛り上がっていきますか」と会場を沸かせた。

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中盤あたりになるとZOMBIE-CHANGがハンドマイクで歌う『これからもよろれいひ』のユーモラスな語感につられて体が揺れ続け、フロアから歓喜の声が飛ぶ。そしてラストは軽快な曲調の『ラブリーおはよう愛してるよ!』を披露し、フレンドリーな一体感を生み出していった。

●PES

日が暮れ始めた16時半頃、吹き抜けの赤い鉄骨の下に設置されたDJステージ<RED FRAME>に現れたのはRIP SLYMEPES

PESと申します。楽しんでますか? 黄昏時にやらせてもらって光栄です。楽器一個(アコースティックギター)と私でできることをやっていきたいと思います!よろしくお願いします」と挨拶する。冒頭からRIP SLYMEの『One』や『黄昏サラウンド』を披露。「みんなRIP SLYME知ってる?」と謙虚に声をかけると、大きな歓声が上がり、ステージ前に集まってきた多くの観客から口々にリクエストが飛び出す。

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「流しっぽくていいですね。なんかたまたま(ここに)きたおじさんみたい」と笑いを誘った。そして披露したのはRIP SLYMEのキラーチューン『熱帯夜』。ライブ終盤の楽曲では各々が自由に体を揺らす光景が広がるハッピーな雰囲気に。彼の気さくなトークと温かみがある曲調でその場を包み込んでいった。

●RAFAERO

時刻は18時を過ぎて、日も沈み外気もひんやりとしてきた時間帯、<BLACK CHAEMBER>のフロアはこの日一番と思えるほど埋め尽くされた。TOCCHI & HANGTORAUMA→電波少女→Ace the Chosen onE & RAITAMEN & サトウユウヤという流れで繰り広げる"RAFAERO"のスタートを切ったのはTOCCHI。もの凄い歓声を浴びて、「みなさん最高の日にしましょうね!」と声を上げる。好きなこと=音楽を続けている自らのライフスタイルに矜持を示し、滑らかな歌声を響き渡らせる。そんなTOCCHIの姿勢に共鳴するように、フロアからも自然と温かい合唱が巻き起こる感動的な光景が。

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「ここからしばし<RAFAERO>のライブを始めたいと思います!」とギアを上げ、登場したのはHANG。さらに熱気が高まるフロアに向けて、パフォーマンスを繰り広げていく。そして、本イベントを主催するTASOGARE COFFEEのスタッフに向けて、「好きなことに真摯に取り組んでいて、スゲーカッコイイと思っている。数少ない尊敬できる人」と熱いリスペクトと感謝の気持ちを表明し、「俺らも好きなことに真摯に向き合ってやっていこうと思います!」とオーディエンスを熱狂させた。

次にアカペラで登場したのはTORAUMA。各々が手を上げて盛り上がる観客に感謝の言葉を送る。なめらかなフロウとラップが合わさる『火光』。「大地さんとの出会いは最初に唾奇が紹介してくれまして...」と本イベントに出演した経緯を語り、「気持ち込めて歌います」と述べて抒情感漂う『椿』を熱唱する。その後も力強いパフォーマンスで圧倒し、熱気が上がり続けるフロアを大きく揺らしていった。

次に登場したのは、電波少女。「今日は呼んでいただいてありがとうございます!電波少女と申します!最後までよろしくお願いします!」とハシシとNIHA-Cが前に出てエネルギッシュに煽り、一体感が増していく。心を掴む楽曲に加えて、Munchii Bear Cookiisを最後に披露した。得意のブレイクダンスも披露し、意外性に満ちたステージングでフロアを大いに沸かせた。

630LINE_ALBUM_タソガレの休日_241106_18.jpgRAFAERO>の締めは、Ace the Chosen onERAITAMEN 、サトウユウヤの3人が場内を掌握。熱い言葉を放ってヒートアップさせていく。その後も息が合ったフリースタイルの掛け合いで引き込み、「オレたちもこうやってステージに立って変わらないことをやり続けてる。オレたち世代のHIP HOPを体感してもらえたら嬉しいと思います。嫌なこと全部洗い流して聴いていってくれ」とAce the Chosen onEが思いをつなげて場内に沸き立つ熱い空気を増幅させていった。終盤には電波少女のNIHA-Cを呼び込み、ラストは先に出てきたTOCCHIHANGも合流し、Pitch Odd Mansion5 Caratを披露した。ここでしか見れないスペシャルな共演を脳裏に焼き付けて賑やかに大団円となった。


●空音

BLACK CHAMBER>のトリを飾ったのは空音。DJ Rin をバックに冒頭の『planet tree』はゆったりと力強いフロウで始まり、名村造船所跡地に立つこの場所に集うみんなに声を上げる。フロアからの歓声を浴びて続く『Circle6』から徐々にテンポアップ。なめらかで心地よいフロウ、激しくなるDJ Rinのスクラッチ音にも掻き立てられる。『Unstable』からBPMを上げ、大きく煽って突き進む。中盤になると観客との一体感はさらにアップ。

「みんなも一緒に歌おうぜ!」と声を沸き立たせのは総再生が1.5億回を超える『Hug』。「オマエらのほうが歌えるんじゃないのか? TASOGARE、歌ってみようぜ!」と煽り、ステージ上に加わったkojikojiがフロアにマイクを向けて大いに盛り上がる。さらに『月ひとつ』でも幸せな光景が広がった。後半ではDJ Rinのプレイもよりアグレッシブとなり、空音はキレの良いラップに滑らかなフロウを縦横無尽に繰り出して、大きな歓声が沸き起こる。

MCでは「TASOGAREクルーに拍手を送りたい!」とリスペクトと感謝の気持ちを送り、爽快感あふれる『Flowline』をラストに投下!最後までエネルギッシュに攻めて爽やかに走り抜けていった。

――こうして、約8時間に及んだ<BLACK CHAMBER>は閉幕。同じ頃、もう一方のステージ<PARTTITA>では唾奇のパフォーマンスが繰り広げられており、超満員で中に入れなかった観客もいたほど。両ステージを行き来できるスペースに設置されたDJブース、<RED FRAME>と<BLUE FRAME>からは間断なくグッドなミュージックが流れ、ずっとここに居たいな...と去り難い気分にさせるTASOGERE HOLIDAYの幸せな夜が続いていた。

Text by エイミー野中

【PARTITA】

●Skaai

13時20分になり「PARTITA」ステージでもライブがスタート。トップバッターをつとめたのはSkaaiだ。DJのuinが『BEANIE』を流すと、勢いよくステージに走り込んだSkaaiは笑顔を見せ、「わんさか盛り上がってくれよ大阪〜!」との煽りで一気に湧き上がったフロアに間髪入れず『PRO』を投下する。MCで「大阪は独特の熱があって、熱気でいつもやられちゃうんだよね」と語るほど、オーディエンスのレスポンスが抜群に良い。

しっかりコール&レスポンスが発生した『SCENE!』、歌声に深みを感じさせた『F.N.A.P.』、英語・日本語・韓国語に堪能な彼のトリリンガル楽曲『HOMEWORK』、6月にリリースされたA.G.Oとのコラボ曲『Secret Idea』を連続で駆け抜け、中盤も『DANCELIXIR feat. Lil' Leise But Gold,Daichi Yamamoto,Skaai』や『FLOOR IS MINE』、SIRUPとuinとのコラボ曲『FINE LINE』と、濃厚なセトリで攻めていった。波のようにうねるフロアとSkaaiが一体になって大きなエネルギーを生み出した。

残り数曲というところでSkaaiは「俺は音楽を作り始めてからパーティー人間の側面も出てきて、バイブス高く踊る曲がめっちゃあるけど、本当は23年間、暗い洞窟の中で生きてきた感じがあって。そういうテンションの曲もやっておきたい。やらせてくれ」と語り、明らかにここまでとは雰囲気を変えて、マイクスタンドでキャップを深く被り『TEMPO A』、『WE'LL DIE THIS WAY』を披露。パワフルなボーカルに感情と人生を乗せて歌い、ラストはスモークの中『Nectar.』でシリアスに締め括った。Skaaiの魂のフロウや、ステージの去り際の叫びは胸を打つものがあった。



●柊人

沖縄出身のラッパー・柊人を待つ人で溢れかえったフロア。波音が流れ、ステージに現れた柊人はマイクを握り、田我流をフィーチャリングした『忘れないで』をアカペラで歌い始める。やがて「大阪お邪魔します!」と叫ぶと大歓迎ムードのフロアを見て嬉しそうに笑顔を見せた。<TASOGARE 皆で飲んで>とリリックを変えて盛り上げたり、曲中に自身のアンセム『好きなこと』やCHOUJIの『奮闘中』をマッシュアップし、早速会場をひとつにする。

続けて『思い通り』からOlive Oil作の『あなたがいいと』で、ひとりひとりの背中を押すようなリリックを優しくも力強く紡いでいった。MCでは「皆さん人生楽しんでますか! どんな過去があろうが周りを大切にして、この先皆さんの人生が"あなたがいい"と思える人生であることを、いつも沖縄から願ってます!」と語りかけ「どんな状況でも自分を信じるのが大切だと思います。周りに感謝」とメッセージを告げて、未発表の新曲を披露。フロアの興奮は高まり、柊人の想いを身体を揺らして受け止めていた。

続いて披露された『絶景』では<TASOGARE!><8周年!>のコール&レスポンスもばっちり。Red Bullサイファー企画『RASEN #22』の自身のバースをたたき込むと、今年1月にリリースされた1st ミニアルバム『忘れないで』に収録された楽曲『やるしかない』をパワフルに歌唱。MCでは自分のルーツと想い、唾奇やCHOUJIらお世話になった人への感謝とリスペクトを込めてCHICO CARLITOのバースをキックし、最後に『好きなこと』をフルで披露。拳を上げて合唱を巻き起こし、「生きてるうちに好きなことやっていきましょう! Big up!」と熱いライブを終えた。



●さらさ

15時を過ぎて来場者が増え、より一層会場が賑わいを見せてきたところで、ゆったりとした空気を醸成したのは、湘南出身のシンガーソングライター・さらさ。本イベントは初登場となる。まずはエレキギターをつま弾き、少し低めのウィスパーボイスで『踊り』を歌い始める。ギター1本と歌声のみでフロアを満たしてゆくと、「さらさです。よろしくお願いします」と一言挨拶。伸びやかな高音も美しい『ネイルの島』、トラックにホーン隊が入る『温度』、音を置くように儚く歌った『雲が笑う時』を続けて演奏した。

MCでは「8周年おめでたいですね」とTASOGARE COFFEEを祝福して「大阪になかなか来ることがないので、皆さんにお会いできて嬉しいです」と微笑んだ。続いては『Amber』。「琥珀」という石の名前が名付けられた楽曲だ。曲を歌う前にさらさは、自身の制作のモットーは「ブルージーに生きろ」だと話す。ネガティブな出来事が起きても、それは自分と向き合うキッカケになる。ネガティブとポジティブが同じだけあって円になる感覚がある。「琥珀の石言葉の"陰と陽のバランスを保つ"に共感して作った曲」と紹介して、ロングトーンもカッコ良く響かせた。

続き『太陽が昇るまで』、『グレーゾーン』と楽曲の世界観がありありと感じられる表現力でサウンドスケープを広げ、最後の曲へ。「去年、身内の不幸や友人や恋人との別れ、つまり"死"が重なって。悲しいことが起きたからこそ見える幸福な瞬間や景色を大事にしたいと思って作りました」と今年9月にリリースされた2ndアルバム『Golden Child』から『祝福』を一言ずつ丁寧に大切そうに歌い上げて、ステージを終えた。クールな佇まいの中にある静かな熱が印象的なライブだった。



●NEWLY

4番手はNEWLY。サポートメンバーにryo takahashi(ds.)とKenT(fl.&sax)を率いたバンドセットで登場した。演奏されたのは、11月1日にリリースされたばかりの1st アルバム『Not About All』に収録されている『Until Healed』。ムーディーで、音源の印象とは違うパワーや華やかさが会場全体を包み、『Cogara』へ。Saxのソロからメロウに始まった楽曲は後半にいくにつれて力強さを増し、NEWLYが奏でるグルーヴィーなベースとドラムが相まって、フロアもNEWLY自身も一緒に身体を揺らす。

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アルバムの先行シングルでもある『Waterscape』では、Lil Summerの浮遊感のある歌声に絡みつくSaxが心地良く。NEWLYが鍵盤を奏でる『KIDS』では「友達呼んでもいいですか?」とSkaaiを呼び込み、フリースタイルのラップと演奏の掛け合いで躍動感たっぷりに跳ねまくる。緩急をつけた展開でしっとりと『INTRO』を響かせた後は『Poppy Field』へ。フルートの美しい旋律が抜けるように会場に広がり、照明の逆光がドラマチックな雰囲気を作り上げた。

会場全体を巻き込んだBASIの『かさぶた』を演奏した後は、いよいよラストチューン。こちらもアルバムに収録の新曲『Freefall』をプレイした。それぞれのソロの見せ場もばっちりキマり、黄昏時から夜に向かう時間帯に没入できる極上サウンドで堂々たる世界観を提示したNEWLYバンドだった。



●Mina Okabe

トリ前はデンマーク在住のシンガーソングライター・Mina Okabeが登場。TASOGAREチームが熱望して来日が実現した。そんな熱い想いを受けて日本にやって来たMinaを一目見ようと、会場は後ろまで満員状態。オーディエンスの高揚感と熱量が充満していた。バンドメンバー(Gt.、Ba、Dr.)と共にステージに現れたMinaは自身もギターを持ち『Waiting Is A Waste』、『I'm Done』と美しく滑らかな歌声を響かせる。浮遊感のある歌声はもちろんだが、安定感と繊細さのバランスが素晴らしいバンドメンバーの演奏に早くも酔いしれた。

「Thank you so much」と笑顔で挨拶したMinaは、aikoの『カブトムシ』のカバー曲を披露。日本にルーツを持つ彼女は邦楽もよく聴いていたそうで、『カブトムシ』は大好きな曲とのこと。まさか聴き慣れたメロディーと歌詞が聴こえてくるとは思わず、オーディエンスは驚きと歓喜の声をあげる。原曲そのままの歌詞とMinaなりに書き直した英詞が混ざり合い、新鮮な気持ちで聴くことができた。歌い終わり、大きな拍手に包まれたMinaは照れ臭そうに笑顔を浮かべ、今年8月に配信リリースされた最新曲『Strong』、ギターのリバーブが幻想的な世界観を作り上げた『Miss Those Days』に続けて、昨年フジテレビ系月9ドラマ『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』の主題歌にもなった、小袋成彬プロデュース、Daichi Yamamotoフィーチャリングの『Flashback』を連続で歌い上げた。

「I love you Mina!」というファンからのコールに笑顔で「Oh,love me too!」と嬉しそうに応える場面もありつつ、ラストスパートへ。世界中でヒットした『Every Second』を語りかけるように歌うと「大阪大好きです。今日ずっと回ってすっごい楽しんだ。また戻りたい」と日本語で挨拶し、最後は『Walk Away』でエモーショナルに締め括った。バンドメンバーと4人で肩を組んで何回もお辞儀をし、充実した表情でステージを去っていく姿が素敵だった。



●唾奇

いよいよ大トリの唾奇。しばらくライブ活動を休止していた彼にとって、この日は実に5年ぶりのソロライブ。その舞台に『TASOGARE HOLIDAY タソガレの休日』を選んだことからは、双方の信頼関係が感じられた。言わずもがな超満員のフロアは、唾奇を待ち構えるオーディエンスの熱気と緊張感で満ち満ちていた。「TASOGARE行くぞ!」と唾奇がステージに上がった瞬間、すさまじい熱狂がフロアから湧き上がる。"待ってました!"という前のめりなオーディエンスの熱い眼差し、ステージから放たれる低音のフロウが目の前でぶつかりあう。

唾奇の一挙一動がフロアを動かし、声と拳を突き上げさせる。ブランクなど感じさせないほどの圧倒的なカリスマ性をまざまざと見せつけられた。のっけから『RASEN』、『Ultra Jesus』、『Imposter』、『Just Thing』を立て続けに披露し、会場の温度をまたひとつ引き上げた。

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MCで唾奇は「皆さんお久しぶりでございます。TASOGAREに出たのっての5年前らしいですよ。すっごい長い助走をつけてここまで来ました。ついでにほくちゃん(hokuto)と新曲を作って持ってきました」と新曲を披露し、『Let me』、『街から街』と連続で叩き込むと、大合唱がフロアから聞こえてくる。

ライブ中盤、「5人で作った曲があるんだけど」という言葉で察したオーディエンスが歓喜に湧き「今日は"唾奇 feat.皆"でこの曲やってくんない?全員歌ってくれ!」と、変態紳士クラブのプロデューサー・GeG、BASI、VIGORMAN & WILYWNKAとのコラボ曲『Merry Go Round』を大合唱で一体に。

最後のMCのあと、晴れ晴れした顔で『Alright』をドロップ。さらに「唾奇より唾奇やってくれよ!」と煽り、『All Green』を全員で大合唱。まだ先の約束はないけれど、<俺は俺できっと大丈夫>という言葉が、お互いの未来への希望を感じさせるようでじんと胸が熱くなった。

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唾奇とhokutoがステージを去った後で会場に流れた『Lycoris Sprengeri -紫狐の剃刀- feat. VIGORMAN & TOCCHI』が終わるまで、一緒に歌いながら帰ろうとしないオーディエンス。そんな様子からも唾奇への愛情が痛いほど伝わってきた。曲が終わると、フロアからは大きな大きな拍手が贈られた。

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ーーこうして3年ぶりの『TASOGARE HOLIDAY タソガレの休日 - 8th ANNIVERSARY PARTY -』は大団円で幕を閉じた。貴重で重要なアクトもありながら、人と音楽とカルチャーの繋がりを目で見ることのできる、愛とリスペクトに溢れた1日だった。また来年もこの場所で出会い繋がれることを楽しみにしていよう。

Text by ERI KUBOTA




(2025年2月 3日更新)


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TASOGARE COFFEE

住所:大阪市西区南堀江1-16-11 RE-008 1F
アクセス:大阪メトロ各線四ツ橋駅から徒歩6分
営業時間:10:00~19:00、土日祝9:00~18:00
定休日:不定休

公式HP
https://tasogarecoffee.jp/

公式Instagram
https://www.instagram.com/tasogare_coffee_jp/