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各々の個性と魅力が発揮された珠玉の弾き語りライブ
ジャニスの○○と○○シリーズ
『さかしたひかると横山優也
supported by サウンドクリエーター』レポート

心斎橋Music Club JANUSの毎月恒例イベント『〇〇と〇〇シリーズ』。1月28日(火)に行われたのは、ドミコのさかしたひかる(vo.gt)と4ピースロックバンド・KOTORIの横山優也(vo.gt)による、『さかしたひかると横山優也 supported by サウンドクリエーター』。今回はJANUSと関西のイベンター・サウンドクリエーターによる共同企画で、さかしたと横山の弾き語りでの競演は初となった。どちらもバンドセットとは違う表現と音の彩りで、個性豊かな時間を生み出した素晴らしい夜となった。

この日のJANUSは椅子ありで、ステージには絨毯が敷かれ、レトロな電気スタンドとアコースティックギターが置かれている。平日の夜だったが、客席はほぼ満席。仕事終わりや学校帰りとおぼしきオーディエンスは、ゆったりとした空気の中で開演の時を待っていた。

先攻はKOTORIの横山優也。開演時間の2分前にフーディーとジーンズ姿でふらりステージに現れると「まだ時間あるんですけど、声出して良いですか?」と、andymoriの『愛してやまない音楽を』をワンフレーズ弾き語り。そして「じゃあやろうかな。あけましておめでとうございます。弾き語りでこんなに人いるの、なかなかないからヤバいです。好きに聴いてください」とはにかんで挨拶し、2024年5月にリリースされたセルフタイトルを冠したアルバム『KOTORI』から、TVアニメ『アンダーニンジャ』EDテーマ『秘密』を歌い始める。バンドの時とは違う柔らかなアコギの音色に乗って、横山の歌声は変わらずにまっすぐに届いてくる。早速ピュアで伸びやかな歌声が、心地良く会場を満たしていった。

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『〇〇と〇〇シリーズ』は、いつもJANUSの吉田店長が企画しているが、今回はサウンドクリエーターの木本起成氏がこの組み合わせを提案した。2019年にKOTORIがドミコをツアー(『KOTORI REVIVAL TOUR』@新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE)に呼んだことがあったものの、その後はほとんど繋がりがなかったらしく、両者が繋がったら面白いのではないかということで、木本氏が再び両者を結びつけた。

横山は「今日は木本さんが最高の日を用意してくれたので」と、『星降る夜』を力強く歌い上げる。さらに"星つながり"で、ライブで演奏されることの少ない『彗星』を紹介すると、客席からは歓喜の声が湧いた。先に披露した2曲よりもテンポを落とし、まっすぐな瞳で、呟くように語りかけるように、一言に想いを乗せて、人間の感情と人生を歌う。生々しく温度を宿した歌声は、より心に染み渡った。

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お酒を飲みつつ、和やかな雰囲気で進行するライブ。現在制作期間中だという横山は「今"どんな曲が好きだったっけな"って、色んな曲を聴き返すモードになってて。スピッツを聴いてたんですよ。全部良い曲でヤバいっすね」と、スピッツの『正夢』をカバー。歌い終わってもしみじみと名曲であることを噛み締めつつ、今度は自身作の名曲を披露した。アルバム『KOTORI』から、横山の実家で飼われているトイプードルの"チョコ"について歌った『chocolate』だ。横山曰く「俺の中で1番の隠れ名曲」だそう。メロディーの良さに加え、横山の郷愁の想いと愛犬への愛情がダイレクトに伝わってきて、あたたかな気持ちになる。「曲を書いた時チョコは寝たきりで、"次もう会えないかもしれないかも"と思ったけど奇跡的に回復して、今も元気です」との嬉しいエピソードも明かされた。

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お酒も回り、ほんのり赤く染まる顔もいい感じ。横山は「1人でずっと部屋で作業してると、"他の人良い曲多いな~"とか、"俺らには何が足りないんだ"と自問自答するんですけど、俺らが今までやってきたことは間違ってないわけで。それを"好き"と言ってくれる人が今日もライブを観に来てくれる。こんな人間でも大切に思ってくれる人がいて、僕が作った歌も、KOTORIもすごく幸せ」と想いを吐露する。<もしも僕に才能があったら 少しは楽になれるだろうか>という衝撃的な歌詞から始まる『人間』は、横山が1番落ち込んでいた時に書いた曲だという。等身大の悩みを吐き出しつつ、<どうせ生きているなら せめて優しい人間でいたい>と、心からの優しい願いを叫ぶように歌う横山の姿は、胸に迫るものがあった。

日常や人生、頭に浮かんだことを楽曲に昇華する横山。上京5~6年目の頃に「久々に素のままで書けた曲」と言葉を添えた『ラブソング』も、上京10年目の頃に書いた『東京』も、その時の彼の瞳に映ったもの。時を刻んで視点や感覚が変わることも愛おしい。<パーパパパ>というフェイクも交えて大切そうにグッドメロディーを響かせた。

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ここからはラストスパート。さかしたとお酒を飲んで仲良くなりたいとして「ひかるさんに向けて歌います」と『光』を熱唱し、最後は「今日は静かな感じで歌ったんですけど、ライブはめちゃめちゃ元気なので、観たことない人はぜひ観に来てもらってもいいですか?ドミコとも一緒にできたら良いなと思うので、引き続きよろしくお願いします。世界で1番良い曲歌って帰ります!」と『Masterpiece』をパワフルに投下。ここまでしっとりと目を閉じたりして歌っていたが、とびきりの笑顔で思い切り歌声を前に放つ。「歌おう!」との言葉で、客席も木本氏もシンガロング。最高のハーモニーで会場をひとつにし、さかしたにバトンを渡した。

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後攻はドミコのさかしたひかる。JANUSでの弾き語りライブは、2024年4月以来約9ヶ月ぶり。ゆらりステージに現れて軽くギターを奏でたさかしたは、早速『旅行ごっこ』を歌い始める。ささやかなバッキングに相対して放たれる、すさまじい声量のうねるような歌声。のっけからあまりの存在感に圧倒され、客席から「すっげえ」という声が聞こえるほどだった。

歌い終わると、ステージの電気スタンドを指して「JANUSで弾き語りやると、絶対この照明があるんですよ。毎回ここにしか置かないっていうこだわり感。前も1回(弾き語りを)やったんですけど、気に入って今日もオファーを受けて来ました。照明に拍手を」と冗談も交える。さかしたの弾き語りライブは、その日その時によって全く違う表情を見せてくれる。前回のどっしりと濃厚な弾き語りワンマンに比べると、今回は穏やかな雰囲気。しかしながら確かな実力を惜しげもなく提示したライブだった。

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『のらりつらり』ではスーパーギターテクが炸裂。大きく緩急をつけながら奏でられるギターに、少し喉を締めたようなハイトーンボーカルをねっとり絡ませる。さらに『ローストビーチベイベー』では、AメロからBメロにかけてのエッジーな低音ボイスと、サビのハイトーンボイスの落差が気怠げで、色気を感じさせる。ギタリストとしてはもちろん、ボーカリストとしても幅の広い表現力で独自のサウンドスケープを描き出した。

ここからは、さかしたの弾き語りの真骨頂を発揮する相棒のルーパーを使用。『幽霊みたいに』では、ピック弾きでベンベンと低音を鳴らすと、ディレイをかけた高音、数種類のバッキング、リフ、ギターのふちを叩いて繰り出すリズム......と何重にも音を重ね、バンドの役割をギター1本で表現して音に厚みをもたせていく。さらにはブレイクを入れたり、音数を増やしたり減らしたり......非常に複雑なサウンドが目の前で構築されていった。アウトロではさかしたがしゃがみこんでエフェクターボードを触り、最高にスペーシーな雰囲気も漂わせて没入空間に誘っていく。そしてドミコのライブでもよくあるように、セッションパートから歌に戻る構成で楽曲を終えた。

高音のフェイクがセクシーな『あたしぐらいは』では、後半にブルージーなギターリフを重ねると、和楽器の笙のような上昇感で会場をトランス状態に導いていく。さらにカントリー調のギタープレイが印象的な『マイララバイ』は、電子音のようなサウンドとソプラノコーラスをルーパーで追加するなど、前回の弾き語りよりも進化したアレンジで圧巻のパフォーマンスを魅せてくれた。

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ピンクとブルーの妖艶な照明の中で、色気と野生味を感じさせた『血を嫌い肉を好む』を経て、いよいよ残り2曲。『深海旅行にて』では、前半はうねるボーカルとブルージーなバッキングで心地良くも力強くトリップさせると、後半はギタープレイで聴かせてゆく。そこから徐々にスピードを加速! 刺激的な展開に、オーディエンスは大盛り上がりで歓声をあげる。真っ赤なライトの中で激しくギターをかき鳴らすさかしたの佇まいは痺れるほどカッコ良く、観る者全てを惹き込む圧巻のプレイをバッチリ提示した。

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さかしたは「横山くんとJANUSありがとうございました。ラスト1曲お願いします」と述べて『鯨の巣』を披露。早口ボーカルが滑らかに耳を潤すと、やがてスピードを緩めて、溜めるようにゆっくりと歌い始める。頭のてっぺんを引っ張られるような高音ロングトーンに思考力が奪われ、ラストは一気に加速! 徐々に眩しくなる照明も相まって完全に没入させたかと思えば、再び曲に戻りフィニッシュした。さかしたは「あざっしたー」とラフに挨拶し、スッとステージを去る。弾き語りライブのイメージをいとも簡単に塗り替えていく上に、着実にレベルアップしていくさかしたの練り込まれたパフォーマンスは最高の一言。言わずもがな贈られた大喝采は、なかなか鳴り止まなかった。

あたたかみのある歌声で真っ直ぐ心に届くピュアなライブを魅せてくれた横山と、スキルフルなギターとボーカルで圧倒しつつ音そのものを味わうライブで熱狂させてくれたさかした。それぞれの個性と魅力が存分に発揮された、最高の時間だった。

Text by ERI KUBOTA
Photo by キラ




(2025年2月18日更新)


Check

Set List

●横山優也

01. 秘密
02. 星降る夜
03. 彗星
04. 正夢(カバー)
05. chocolate
06. ラブソング
07. 人間
08. 東京
09. 光
10. Masterpiece

●さかしたひかる

01. 旅行ごっこ
02. のらりつらり
03. ローストビーチベイベー
04. 幽霊みたいに
05. あたしぐらいは
06. マイララバイ
07. 血を嫌い肉を好む
08. 深海旅行にて
09. 鯨の巣

Live

●横山優也

KOTORI pre. 「DREAM MATCH 2025」

PICK UP!!

【大阪公演】

▼5月16日(金) 19:00
GORILLA HALL OSAKA
スタンディング-4300円(ドリンク代別途必要)
※未就学児入場不可。
[問]サウンドクリエーター■06-6357-4400

【名古屋公演】
▼5月26日(月) ダイアモンドホール
【東京公演】
▼6月17日(火) Zepp Shinjuku(TOKYO)

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「TENDOUJI presents "OTENTO'25"」

PICK UP!!

【大阪公演】

▼3月1日(土) 17:00
GORILLA HALL OSAKA
STANDING-5555円(整理番号付、ドリンク代別途要)
U20 STANDING-2000円(当日要身分証、整理番号付、ドリンク代別途要)
[共演]KOTORI/Hump Back/ベランダ/SIX LOUNGE/他
※4歳以上は有料。U20チケットは入場時に生年月日を確認できる身分証必須。2004年3月2日産まれまでが対象。
[問]GREENS■06-6882-1224

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●さかしたひかる

「ドミコ」

PICK UP!!

【大阪公演】

▼4月1日(火) 19:30
味園 ユニバース
オールスタンディング-5000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※2/11(火)の振替公演。4歳以上は有料。3歳以下は保護者同伴の元、鑑賞可能な場合は無料で入場可能。
※スタッフの指示に従って頂けない方は入場をお断り致します。
※会場内の写真や映像が公開される可能性がございますのでご了承ください。
※再入場時1Drink代別途要。
※飲食物持ち込み不可。
※飲酒される方は年齢の分かる身分証を必ずご持参下さい。
[問]GREENS■06-6882-1224

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次回のジャニスの○○と○○シリーズ supported by サウンドクリエーター

林萌々子(Hump Back)と奇妙礼太郎 supported by サウンドクリエーター

PICK UP!!

【大阪公演】

▼4月7日(月) 19:30
心斎橋JANUS
自由-4000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[出演]林萌々子/奇妙礼太郎
※小学生以上有料。未就学児童は1名まで無料。
[問]サウンドクリエーター■06-6357-4400

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Link

KOTORI Web Site
https://kotori-band.com/

ドミコ Web Site
https://www.domico-music.com/