ホーム > インタビュー&レポート > 新年からフロアを熱狂に導いた、最高の音楽表現 ジャニスの○○と○○シリーズ 『imaiとんoon』ライブレポート
会場のJANUSに到着すると、入口には新年らしくお正月飾りが飾られていた。世間では正月休暇の最終日という人が多いであろう、1月最初の日曜日。音楽の年始めをしようとやって来たミュージックラバーたちが続々とフロアを埋めていく。レコードとCDでDJをスタートしたDAWAは、マーク・ロンソンやNew Jeansなど、R&BやHIPHOPナンバーでじわじわとフロアを盛り上げていった。
【んoon】
ステージに設置された楽器のうち、ハープがひときわ存在感を放つ。先攻は2025年のライブ始めがこの日だという、んoonだ。定刻になり、サポートドラマーの岸田佳也を迎えた編成で、積島、江頭、ウエスがスタンバイ。「新年あけましておめでとうございます、んoonです」と積島が挨拶し、柔らかく『NANA』が奏でられるとJCが登場。きらめくような楽器隊の立体的なサウンドと、JCの浮遊感のある歌声が、心地良く全身を包み込んだ。
続けて「ハーイ! あけましておめでとう~♪」とJCが軽く挨拶し『Freeway』を披露。音源やMVから感じられる、彼らの個性や変態性も格別の音楽体験をもたらしてくれるが、ライブではアレンジが加わる上にメンバーのスキルの高さが爆発するため、五感が刺激されてこれ以上ないほど至福の体験ができる。それがんoonであり、彼らの大きな魅力だ。多角的なプレイをさらりとこなしてグルーヴを生み出す積島のベース、美しくも滑らかでクールにも豊穣にも魅せられるウエスのハープ、繊細なフレーズで楽曲を見事に彩る江頭のキーボード、サウンド全体のボトムとライブ中のメンバーを支える岸田。JCのボーカリストとしての存在感も抜群で、スキャットもファルセットも最高に気持ち良い。オーディエンスはのっけから思い思いに身体を揺らし、極上の音楽に身を浸していた。
さらに『Lumen』『Age』を連続でプレイして、色気を纏いつつもソウルフルに空間を揺らすと、JCのバンド加入前に『pt.1』と『pt.2』が作られていたという『Conversation Piece pt.3』を演奏。徐々にダイナミックになるバンドアンサンブルは大迫力で、否が応でも"んoonワールド"に連れていかれる。DAWAの隣で観ていたimaiも大興奮でノリまくっていた。
MCではメンバー紹介を経て、昨年11月にFLAKE RECORDSからリリースされた1stフルアルバム『FIRST LOVE』に言及。JCは「初めての1stアルバムなんですけど、初心に返った気持ちがあって。そんな時に私たちが最初にライブをした大阪に帰ってこれて、しかも会場がJANUSだったり、DJがDAWAさんだったり、対バンがimaiさんだったりで......新年って良いな~と思って。皆も来てくださってありがとう」と喜びを湛えてライブに戻る。「新しいのを多めにやったりなんかしちゃったりして」と言っていたように、この日のセットリストは『FIRST LOVE』からの楽曲が約半分を占めていた。ライブで演奏することでアレンジを変えて曲を育てるスタイルの彼らゆえ、2月から始まるリリースツアーの前に新曲をやっておこうという意図もあるのだろう。よりツアーが楽しみになる。
『Green』『Touch』と、んoonの音世界にどっぷりと浸る2曲を経て、JCは「今日一緒にここにいる人たちは仲間ですね。2025年色々あると思いますよ。でも多分良い年になると思ってます。それは確実に」と笑みを浮かべる。きっと、フロアとステージが一体となって素晴らしい時間を共有できている嬉しさから、自然に出た言葉だったのではないだろうか。それを茶化す積島とのやり取りもんoonらしい。
さらに後半、ハッとするほどの静寂とJCの息遣い、ボーカルの迫力に圧倒された『Gum』、ハープの高音とJCのファルセット、積島のウッドベース(なんと肩からエレキベースを下げたまま立った状態でウッドベースを弾いていた)、アウトロの江頭のピアノまで、真っ白な照明の中で身体が浮きそうなほど神々しさを感じた『Kaiya』、んoonの一筋縄ではいかない部分を最大限表したような壮大な『Sniffin'』へと躍動していった。
完全に思考力を奪われた状態で呆然としていると、余韻を打ち破るように岸田のカウントから、原曲ではラッパーのvalkneeをフィーチャーした『Lobby』を投下する。ウエスの輪郭がくっきりとしたコーラスが美しい。丸さと刺々しさが共存するサウンドでフロアを満たすと、1stアルバムを締め括る『Billion』でクライマックス感を高め、ラストは『Summer Child』。間奏のダイナミズムは形容しがたい喜びと鮮やかさに溢れていて、一心不乱に踊るオーディエンスも歓喜の声を上げる。恍惚とするほどの音の波がうねり狂い、最後は岸田が立ち上がって大きな一打で締め括った。「あけましておめでとうー!」ととびきりの笑顔でステージを去ったんoon。まさに新春パーティーだ。会場のあちこちから「あけおめー!」という声が聞こえ、転換中のDAWAのDJも景気良く華やかになっていった。
【imai】
んoonの熱を引き継いでステージに立ったimaiは「深海みたいにしてもらってもいいですか?」と照明を青く暗くしてほしいとリクエスト。「ほんとにめっちゃ大好きなバンド・んoonとやれて光栄です。大阪の僕の友人たちに暴れてもらえたら大満足です。皆さんのことですよ。よろしくお願いします」とオーディエンスを"友人"と形容して距離を近づけ、ここから始まる爆アゲライブの幕開けを飾る『Wonder Drops』を流し始めた。
最初はゆったりと、やがて軽快なビートにエフェクターを重ねてじわじわとBPMを加速。華麗に機材を操って早くもピークを作り出すと、フロアは深夜のフェスかクラブさながらのテンションに。はちゃめちゃに踊り狂う。imaiは「僕にめっちゃ声ください!」と叫び、『Dragon Walker』に脳天を突き刺すような効果音やノイズを加えてガンガンに踊らせる。気持ちが通じあっていると言わんばかりに胸を叩いたimaiは「もうそのまま」と『Mad Mouse』を放ち、さらにフロアの熱を引き上げる。
自身も衝動に従ったパフォーマンスという感じで、機材を持ち上げ、頭を振り乱し、アグレッシブに全身を動かして音をぶつけていく。imaiは「ありがとう。俺が1番楽しんでない?僕より皆さんの方が楽しんだ方がいいですよ。JANUSまで来て楽しまない理由がないですもんね。学校じゃないんだから、めちゃくちゃやって大丈夫です」と投下された『Felling』でより熱狂したオーディエンスは、めいめいに拳をあげたり小刻みに身体を揺らして、なおも音楽に没入した。
前半からアゲまくったimaiは「うーん、最高!」と満足そうに笑顔を見せて中盤戦へ。パソコン音楽クラブの『UFO-mie』のリミックスや、テンポアップした『55』『XP』などをシームレスに繋いでフロアを揺らしまくる。これでもかとモジュレーションをかけたサウンドと爆速トラックの中では、ただ本能に従って踊るのみ。そんなフロアの様子を見たimaiは「すごい、100点満点」と嬉しそうに笑い、「アジカンのツアーに呼んでもらった時に手を左右に振るのやったんですよ。それすっごい気持ち良くて。やってもらっていいですか?」との言葉に応えてワイパーでひとつになると、「最高。もう全員友達だ」とマックスの盛り上がりを作り出した。
imaiは「んoonの新しいアルバムすごいですね。オリジナリティもキャッチーさも全部ずば抜けてると思ってます」と『FIRST LOVE』を絶賛し、「ドラムを叩いてるきっしー(岸田)は20年来の友達で。んoon大好きだし、DAWAさんももちろん大好きだし、JANUSさんも呼んでもらってありがとうございます」と感謝を述べて、ラッパーの79と中村佳穂を招いた『Fly feat.79,中村佳穂』をゆらり披露。さらに「最近昔の曲やってて」と、ソロを始めたばかりの時に1人で実験しながら作っていたという『WOOF』をエモーショナルにプレイした。
ここで、東京タイプディレクターズクラブ(通称TDC)が主催する、タイポグラフィに主軸を置いた国際的なコンペティションで、デザイン界隈で権威ある「東京TDC賞 2025」において、imaiがRemixを手がけたMONO NO AWAREの『かむかもしかもにどもかも!(imai remix)』のMVがグランプリを、group_inouの『HAPPENING』のMVがTDC賞を受賞したことを報告。この快挙に、もともとデザイナーを志望していたimaiは「すんごい賞なんですよ。俺、2つ獲ったんですよ!」と嬉しそう。ラストはグランプリを受賞した『かむかもしかもにどもかも!(imai remix)』をとびきり高速でパフォーマンス。大歓声で締め括られた最高のライブとなった。
クロージングDJでMONO NO AWARE、中村佳穂を流すところから、DAWAの愛が感じ取れる。至福の時を過ごしたオーディエンスは、満足そうにDJに身体を揺らしたり、物販列に並んで余韻を楽しんでいた。imaiもんoonも、2025年も素晴らしい音楽を届けてくれるだろう。そんな期待の高まる夜だった。
なお、んoonは2月28日(金) に梅田Shangri-Laでアルバムリリースツアーを行う。さらに仕上がったアルバムの世界観を味わいに足を運んでほしい。
Text by ERI KUBOTA
Photo by natsuko miyashita
(2025年2月 6日更新)
「FIRST LOVE TOUR 2025」
▼2025年2月28日(金) 19:00
Shangri-La
スタンディング-3500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。小学生以上は有料。
[問]SMASH WEST■06-6535-5569