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Hedigan’sが大阪で魅せた、最高に自由でロックな姿
『“TOUR Chance” 2025』大阪公演レポート

2月16日(日)、大阪・心斎橋BIGCATにてHedigan’sのワンマンライブ『“TOUR Chance” 2025』が行われた。昨年11月に配信で、1月15日にCDリリースされた待望の1stアルバム『Chance』を記念して、神奈川・横浜BAYHALLを皮切りにスタートした、全国8都市を廻るツアー。大阪は6都市目で、残すは2月23日(日)の北海道・cube gardenと、3月2日(日)のファイナル、東京・Zepp Shinjukuだ。好きな仲間と好きな音楽を鳴らす。そのシンプルな歓びをステージでのびのびと表現した5人。最高にカッコ良いロックバンドであることを提示したと同時に、地球という星の生活者であり、人間である我々の心に、それぞれの想いを湧き上がらせるライブだったと感じた。ぴあ関西版WEBではセットリストのネタバレなしで、一部の楽曲と大阪公演の模様をお届けする。

河西"YONCE"洋介(vo.gt)、実の兄弟の栗田将治(gt)と栗田祐輔(key)、本村拓磨(ba)、大内岳(dr)からなるHedigan's。『"TOUR Chance" 2025』は彼らにとって、初の全国ワンマンツアー。初日の横浜BAYHALLからここまで、どんな雰囲気で廻っているのかとSNSを覗いてみると、各地で熱狂を巻き起こしている様子。ライブに行ったファンの投稿には「ロックバンドカッコ良い!」「楽しかった!」という言葉がたくさん並んでいた。

この日、会場のBIGCATには老若男女のファンが大集合した。年齢層の幅広さから、Hedigan'sが世代を超えて支持されていることがよくわかる。フロアを埋め尽くしたオーディエンスは、静かに開演の時を待つ。定刻を少し過ぎたところでメンバーが登場、珠玉のライブが幕を開けた。

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『地球(仮)』はアルバム『Chance』の1曲目を飾る曲。強い逆光の中で浮かび上がるメンバーのシルエットが、壮大で神々しい。ゆらゆらと揺れながら歌うYONCEと、ゆったりとサウンドを奏でる本村、栗田兄弟、大内の佇まいは、往年のロックスターのような風格を感じさせる。そして、メンバーそれぞれのキャリアに裏打ちされた安定感の中に自由さが見え隠れするのがHedigan'sの魅力だ。スロウな曲調に反して、本村はキレキレの独特な動きでベースを弾きながらステップを踏む。YONCEも全身で音楽の流れを表現するように、小刻みに身体を揺らしたり表情を崩したりする。奔放でコミカルとも言える姿を見せつつも、歌の存在感はピカイチで表現力は豊かで奥深く、バンドサウンドはめちゃくちゃにカッコ良い。スケールの大きな歌詞と楽曲に全てが包まれてゆく、気持ち良い時間だった。

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ロックンロールナンバー『But It Goes On』では、イントロから将治のギターがわななく。本村はシンセベースを操り、大内は手数の多いビートを繰り出し、祐輔は音の層を分厚く支える。そこに抜群のボーカル力で伸びやかな歌声を響かせるYONCE。自然に身体が動き出すグルーヴに、フロアもしっかり拳をあげて応える。曲中に散りばめられた将治のリフもギターソロも、実にメロディアスでクセになる。アウトロのたたみかけるようなギタープレイは痺れるほどにクールだった。さらに曲中、YONCEが魂を乗せて歌うあまり、大きく身体を仰け反った拍子にバランスを崩し、そのまま尻もちをつく形で転倒。しばし床で寝転びながら歌う場面もあった。

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曲明けのMCで本村に「痛かった?」と心配され、YONCEは「びっくりした。何が起きたかわかんなかった。(コケたのは)初めてだなあ。今日は記念すべき日だね。大阪の皆さんのおかげでコケれました(笑)」と笑顔で答えていた(怪我はなかったようなのでご安心を)。

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アルバムのリード曲『再生』は、歌メロも楽器のメロディーラインも極上。既に名曲の気配がしているが、ライブを重ねるごとにまだまだ進化しそうな曲だなとも思う。どこまでも遠く伸びていく、柔らかくて力強いYONCEの歌声にただ酔いしれ、フォーキーなサウンドに全身が包まれる。オレンジ色の照明とスモークの中での演奏も、どこかノスタルジック。この場所に集った1人ひとりに、人生があり音楽がある。だから今ここにいる。各々の音楽を再生する時の記憶が呼び起こされる。涙が出そうなグッドメロディーが後半はぐんと熱を帯び、音に飲み込まれる中でステージとフロアが通じ合う瞬間が確かにあった気がして、心が震えた。

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ツアー4本目の仙台公演から、オーディエンスに"ライブハウスに初めて来た人"と"バンドのライブを初めて見た人"のアンケートを取っているそうで、大阪ではちらほらと手が挙がる。YONCEは嬉しそうに「マジでありがとう。バンドのライブを観に、予定を空けてここに来ているという事実が、普通に意味わかんないぐらいすごいことだと思うので。ライブハウスのバンドをよろしくお願いします」とお辞儀した。そして「(Hedigan'sは)埼玉県の本庄という街から来ました。拍手を贈っていただきたい人がいます」と、栗田兄弟が本庄で経営するSTUDIO DIGのエンジニア・テリーこと伊藤広起氏にも拍手を求める。『Chance』のアルバムジャケットを手がけた林南沖氏に対してもそうだが(物販では"ジャケットの原画をツアーに訪れたお客さんに触ってもらい、その変遷もひとつの作品としたい"という林氏の願いから原画が飾られていた)、「テリーあってのHedigan's」と、仲間へのリスペクトを忘れないところが素敵だった。

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終盤に演奏された『説教くさいおっさんのルンバ』は、照明演出も含めて圧巻の仕上がりだった。青く染まるステージの上から八方に広がる赤いライト。スッと伸びた姿勢で肩をくねくねと動かしながら、生々しく歌声を響かせるYONCE。ムーディーでパワフルなサウンドに身を浸していると、<おい、お前!>という叫びを合図に会場全体が真っ暗になり、爆音のみが鳴り響く。ギターがわななき、ベースとドラムが重々しくボトムを支え、キーボードが楽曲の世界を広げる。なんという演出だ。音源では味わうことのできないライブアレンジに圧倒されたフロアは、曲が終わると感嘆の声と大拍手を贈ったのだった。

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目の前で解き放たれる音楽に五感が震え、本能が目覚めるほどに素晴らしいライブパフォーマンスで魅せてくれた大満足の1時間半は幕を閉じた。メンバーも充実した表情を浮かべ、フロアとコミュニケーションを取りながらライブの終わりを名残惜しむ。最後にはYONCEの関西弁もちらり飛び出し「バイバイ、また!」とステージを去った5人だった。

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ツアー6本目の大阪。"これがHedigan'sなんだ"、という現在地を示したライブ。息の合ったバンドアンサンブルやステージ上の5人の空気感からは、"このメンバーで音を出すのが楽しい"という居心地の良さと信頼関係がありありと伝わってきた。楽曲には混沌たる社会への皮肉も込めつつ、人生や愛という普遍的で正解のないテーマも歌う。その質感はあたたかく、私たち人間が地球で生きていることの意味や本質を考えさせられるものだった。何といっても、音源で聴いていた『Chance』の名盤ぶりがライブを経てさらに際立った。Hedigan'sの音楽に触れるたびに、きっと大切な何かを思い出させてくれる。そして、どんどん進化するであろうこれからのHedigan'sからも目が離せない。シンプルにそう思わせてくれた濃密なライブだった。

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Text by ERI KUBOTA
Photo by 末吉亮太




(2025年2月19日更新)


Check

Release

1st Album『Chance』

発売&配信中

[Track List]
01. 地球(仮)
02. マンション
03. その後...
04. グレー
05. 再生
06. Mission Sofa feat.井上真也
07. But It Goes On
08. O’share
09. カーテンコール
10. ふしぎ

配信リンクはこちら

※CDのみ収録
Live at SPACE SHOWER MUSIC Presents “EPOCHS Music & Art Collective 2023”
01. 夏テリー
02. LOVE(XL)
03. サルスベリ
04. 説教くさいおっさんのルンバ
05. 敗北の作法
06. 論理はロンリー

Live

Hedigan's "TOUR Chance" 2025

【北海道公演】
▼2月23日(日) cube garden
【東京公演】
▼3月2日(日) Zepp Shinjuku(TOKYO)

チケット情報はこちら


『RIOT』

【東京公演】
▼4月6日(日) Spotify O-EAST/Spotify O-WEST
[出演]Kroi/S.A.R./さらさ(Band set)/w.a.u (collective band set)/JUMADIBA/PAS TASTA/BREIMEN/Hedigan’s/Roka(Opening Act)

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『SYNCHRONICITY’25 -20th Anniversary!!-』

【東京公演】
▼2025年4月12日(土)・13日(日) 13:00
Spotify O-EAST/Spotify O-WEST/Spotify O-nest/duo MUSIC EXCHANGE/clubasia/LOFT9 Shibuya/SHIBUYA CLUB QUATTRO/Veats Shibuya/WWW/WWWX/TOKIO TOKYO

1日券-8800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
2日通し券-16800円(整理番号付、ドリンク代別途要)

[12(土)出演]
東京スカパラダイスオーケストラ/離婚伝説/w.o.d./SPARK!!SOUND!!SHOW!!/Suspended 4th/betcover!!/THE SPELLBOUND/SPECIAL OTHERS/THA BLUE HERB/envy/Boris/The Novembers/world's end girlfriend/downy/LITE/Rega/fox capture plan/揺らぎ/mudy on the 昨晩/sleepy.ab/paranoid void/ドミコ/法茲 FAZI (China)/MONO NO AWARE/Cody・Lee(李)/Homecomings/odol/Helsinki Lambda Club/TENDOUJI/NOT WONK/Enfants/She Her Her Hers/緩緩 Huan Huan (Taiwan)/Dos Monos/どんぐりず/SUSHIBOYS/YonYon/QOOPIE/the engy/Billyrrom/muque/荒谷翔大/Emerald/First Love is Never Returned/Blu-Swing/goethe/brkfstblend/HALLEY/luvis/LAUSBUB/高井息吹/幽体コミュニケーションズ/タデクイ/水平線/pavilion/Trooper Salute/穂ノ佳/Simmer Pine/Ko Umehara/New Action!

[13(日)出演]
渋さ知らズオーケストラ/ZAZEN BOYS/サニーデイ・サービス/Hedigan's/ALI/柴田聡子/おとぼけビ~バ~/SOIL&"PIMP"SESSIONS/踊ってばかりの国/No Buses/DYGL/奇妙礼太郎BAND/TENDRE/BREIMEN/kiki vivi lily/chilldspot/NIKO NIKO TAN TAN/DÉ DÉ MOUSE/imai/80KIDZ/ぷにぷに電気/Shin Sakiura/toconoma/the band apart/People In The Box/MASS OF THE FERMENTING DREGS/tricot/jizue/JYOCHO/kurayamisaka/蛙池 wachi (China)/モーモールルギャバン/SuiseiNoboAz/ゆうらん船/Khaki/luv/えんぷてい/柯智棠 Kowen (Taiwan)/ベランダ/Guiba /トリプルファイヤー/saccharin/浪漫革命/Nao Kawamura/POLYPLUS/JABBERLOOP/ANORAK!/ひとひら/雪国/cephalo/yubiori/171/the bercedes menz/aldo van eyck/Qoodow/life crown/北村蕗/Cosmic Mauve/こがれ/Ko Umehara/New Action!

■Hedigan'sは13(日)出演予定

※小学生以上有料/未就学児童無料(保護者同伴の場合に限る)。
※開場・開演時間は変更となる可能性がございます。
※アーティストのキャンセルや変更等による料金の払戻しはございません。
[問]SYNCHRONICITY■info@synchronicity.tv

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