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美しき轟音と熱きロックが鳴り響いた、最高の夜
ジャニスの○○と○○シリーズ
『No Busesと揺らぎ』ライブレポート

12月20日(金)、心斎橋Music Club JANUSにて『No Busesと揺らぎ』が開催された。本公演は毎度お馴染みとなった『JANUSの〇〇と〇〇シリーズ』で、JANUSの吉田店長が“今見たい”組み合わせでブッキングを行うもの。今回はNo Busesと揺らぎが対バンした。双方が奏でる音楽の波に圧倒され、オルタナティブを存分に体感する夜となった。

2024年も残すところ11日となった金曜日の夜。会場のJANUSはオーディエンスでパンパンだった。皆静かに開演を待つが、その様子からは確かな熱が感じられ、ライブへの高揚感がよく伝わってきた。

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先攻は、2015年に結成された滋賀県発の揺らぎ。青く染まったステージにmiraco(vo.&g&piano)、Kntr(g&syn)、Uji(ba.&cho)、Yusei(ds.&sampler)がスタンバイ。シャワワワン......とシンバルの音が鳴り響く。メンバーの姿はスモークに霞み、シルエットが確認できる程度だ。やがてノイジーなギターが重なり、ドラムのカウントから『Sleeptight』へ。全身をビリビリと揺らす轟音と、浮遊感のあるボーカルで会場を一気に包み込む。「揺らぎです。今日はよろしくお願いします」とmiracoが挨拶した後は『Falling』『Underneath It All』と続けて演奏し、独自の世界観へと誘っていく。

miracoの神秘的な歌声が爆音の中で揺らいでいく様はとても美しかった。ディレイのかかったmiracoのギターボーカルから始まった『I Want You By My Side』では、バンドアンサンブルがより躍動感を増す。白と黄色の照明もダイナミックな演出で楽曲に奥行きを与える。サウンドは上昇感を伴いつつも力強く、アウトロのではギターの残響音が心地良く鼓膜を震わせた。

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改めて挨拶したmiracoは「今日はJANUSが毎月やっている、私も好きな企画『JANUSの〇〇と〇〇シリーズ』に呼んでいただいて本当にありがとうございます」と感謝を述べる。実はmiracoは、階段から落ちて足の靭帯に怪我を負ったことから、この日はハイチェアに座るスタイルでギターを奏でていた(歩けるそうで、大事をとって&転倒防止のためとのことなのでご安心を)。

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そしてNo Busesとの対バンは約6年ぶりだと、当時のことを思い返す。「揺らぎの企画で、下北沢THREEで揺らぎ、No Buses、羊文学の3マン(2019年2月23日『WEARING THE INSIDE OUT』)をやったんですよね。"あれから6年経ったんだなー"という気持ちと、揺らぎもNo Busesもバンドを取り巻く状況が変わってると思うんですけど、6年続けてるから久しぶりに一緒にやれたんだなと考えて、じーんとしております。今日は良い夜だと思います。JANUSありがとう」と述べて、2025年1月24日にFLAKE RECORDSからリリースされる3rd フルアルバム『In Your Languages』とツアーのアナウンスを嬉しそうに行った。

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そんな3rdアルバムから、先行リリース中の『Love You My Dear』を披露。プリズムのようにきらめくライトが会場を照らす中、透明感のある歌声と、軽やかであたたかな音色がサウンドスケープを描き出す。オーディエンスは皆うっとりと世界観に浸り切っていた。ここから雰囲気を一転、迫り来る音の塊で『Here I Stand』を思い切り叩き込み、『Oppressed』でダークに染め上げる。少し低めのボーカルに分厚く重なる楽器隊。ストーリー性を感じるような曲展開やフレージングで魅了して、ラストは『Path of the Moonlit Night』をプレイ。miracoの神々しいまでのファルセットが響きわたり、広がる壮大なサウンドに全身が飲み込まれてゆく。ピークから徐々に音数が少なくなり、ポーン......ポーン......というギターの単音が遠くなって静寂が訪れたかと思いきや、再び爆音! サウンドの激しさに呼応してメンバーも大きく身体を折り曲げ、一心不乱に楽器を奏でる。

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クライマックスはまるでオペラ歌手のようなハイトーンボイスで魅了し、最後はリバーブがきいたドラムの一打で完璧に締め括った。終始高い集中力で、静と動をダイナミックに行き来するライブに身体を預けていたオーディエンス。贈られた鳴り止まぬ拍手が、ライブの素晴らしさを物語っていた。来年は結成10周年を迎える揺らぎ。次なる彼らの音楽表現にもニューアルバムにも期待が高まる、素晴らしいライブだった。

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後攻は、この日が2024年最後のライブとなるNo Buses。サウンドチェックから板付でライブをスタートした近藤大彗(vo.&gt)、後藤晋也(gt)、和田晴貴(gt)、杉山沙織(ba)、サポートドラムのイチカワくん(後述のMCを参照あれ)。早速1曲目の『Number Four or Five』をエネルギッシュに放ってゆく。さらに『Sleepswimming』で勢いを加速。近藤は咆哮しながらステージを動き回ってギターをかき鳴らし、ガレージ感のあるロックサウンドをこれでもかとぶつけてゆく。

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音は鳴り止まぬままで「ありがとう、No Busesです。よろしくお願いします」と一言挨拶を挟み『Alpena』へ。ギター3本という編成ゆえの音の重なりの面白さ、繊細かつハイクオリティなプレイ、タイトなリズム隊のビートが耳と身体を喜ばせる。インプロビゼーションのようなギターのサウンドメイクから始まった、UKロックのニュアンスを思わせる『In Peace』では、近藤のボーカルがさらなる熱を帯びていき、『Having a Headache』では、冒頭のサイレンの音をギターで表現するというテクや反復するフレーズ、ボトムを支えながらも際立つベースラインと細かなドラミング、それぞれの楽器が複雑に絡み合うエッジーなアンサンブルを目の前で浴びて、演奏力の高さに舌を巻く。

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MCで近藤は「こんばんは。来てくださってありがとうございます......嬉しいっす」と感謝を述べて、「揺らぎカッコ良かったっすね。新しい曲良いっすよね。揺らぎと前一緒にやったの6年前とか言ってたっけ。『Number Four or Five』はそれこそ6年前に揺らぎと対バンをした頃に作った曲」と振り返る。そしてここでサポートドラマーを紹介。「野良で社会人をやっている友達を召喚しました。前一緒にバンドやってたんですけど。久々の市川くんです」と近藤。そう、この日のサポートは2022年2月までNo Busesのドラマーとして活躍していた市川壱盛だ。急遽お願いしたゆえに2018〜2022年までの過去曲中心のセットリストだったが、バンド脱退後もこうして関係性が続いていて、ピンチの時には駆けつけてくれる。そんなメンバーの絆に胸があたたかくなる。オーディエンスも歓喜して、その想いを歓声と拍手に乗せていた。

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中盤は、近藤のがなるボーカルと激しいサウンドで最大風速を吹かせた『Sunbeetle』、生々しくもクールなギターリフが印象的なギターロックナンバー『Rubbish:)』、3本のギターの重なりと複雑な楽曲展開が痺れる『Imagine Siblings』と連投し、No Busesのライブ力の高さとカッコ良さを存分に提示した。

2度目のMCで近藤は「僕、ソロアルバム出したんですよ」と、ライブ当日の12月20日にCwondo名義でリリースしたアルバム『Memoride 1』と物販についてアナウンスしつつ、メンバーへの愛が溢れ出るトークを展開した。彼にとってNo Busesというバンドと仲間の存在がいかに大事かが伝わってくる、本当に素敵な時間だった。

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ライブもいよいよラストスパートへ。『Playground』でわななく後藤のギターは熱を帯び、さらに『I'm With You』、ミドルナンバー『Untouchable You』と畳み掛けるように連続で披露すると、ラストは初期曲『Girl』を疾走感たっぷりにプレイした。すぐさま発生したアンコールを求めるクラップに応えてステージにカムバックしたメンバー。近藤は来場者とメンバーに感謝を伝え、「皆に幸あれ」と言葉に想いを乗せて『Medicine』を披露。全身全霊でぶつけた歌声と演奏は、爆発力とエモーショナルさを伴って会場を揺らす。高まったオーディエンスも拳に感情を込めて、踊りながらNo Busesへの愛を叫んでいるようだった。バンドというものは変わり続ける生き物だが、2024年最後のライブをこのメンバーで締め括ったことの意味はきっと大きいのではないだろうか。圧倒的な存在感とサウンドで魅了した5人の姿は、とても眩しく輝いていた。

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No Busesと揺らぎ、それぞれの表現方法で放たれたオルタナティブを全身に浴びた、最高の一夜だった。音楽に没入して酔いしれたオーディエンスは、皆満足そうな表情で帰路についていた。

Text by ERI KUBOTA
Photo by 松本いづみ




(2025年1月23日更新)


Check

Set List

●揺らぎ
01. Sleeptight
02. Falling
03. Underneath It All
04. I Want You By My Side
05. Love You My Dear
06. Here I Stand
07. Oppressed
08. Path of the Moonlit Night

●No Buses
01. Number Four or Five
02. Sleepswimming
03. Alpena
04. In Peace
05. Having a Headache
06. Sunbeetle
07. Rubbish:)
08. Imagine Siblings
09. Playground
10. I’m With You
11. Untouchable You
12. Girl
EN. Medicine

Live

●揺らぎ


"In Your Languages" Release Tour 2025

【東京公演】
▼2月15日(土) Shibuya WWW
[共演]The Novembers
【名古屋公演】
▼3月8日(土) 新栄シャングリラ

PICK UP!!

【大阪公演】

▼3月9日(日) 18:00
Live House Anima
一般スタンディング-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
学割スタンディング-3000円(要学生証提示、整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。小学生以上は有料。
[問]SMASH WEST■06-6535-5569

チケット情報はこちら


『SYNCHRONICITY’25 -20th Anniversary!!-』

【東京公演】
▼2025年4月12日(土)・13日(日) 13:00
Spotify O-EAST/Spotify O-WEST/Spotify O-nest/duo MUSIC EXCHANGE/clubasia/LOFT9 Shibuya/SHIBUYA CLUB QUATTRO/Veats Shibuya/WWW/WWWX/TOKIO TOKYO

1日券-8800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
2日通し券-16800円(整理番号付、ドリンク代別途要)

[12(土)出演]
東京スカパラダイスオーケストラ/THE SPELLBOUND/SPECIAL OTHERS/THA BLUE HERB/envy/Boris/The Novembers/world's end girlfriend/downy/LITE/Rega/fox capture plan/揺らぎ/mudy on the 昨晩/ドミコ/MONO NO AWARE/Cody・Lee(李)/Helsinki Lambda Club/TENDOUJI/NOT WONK/Enfants/どんぐりず/SUSHIBOYS/QOOPIE/the engy/Billyrrom/muque/荒谷翔大/Emerald/First Love is Never Returned/Blu-Swing/goethe/brkfstblend/HALLEY/luvis/LAUSBUB/高井息吹/幽体コミュニケーションズ/pavilion/Simmer Pine/New Action! …and many more!!

[13(日)出演]
渋さ知らズオーケストラ/ZAZEN BOYS/おとぼけビ~バ~/SOIL&"PIMP"SESSIONS/踊ってばかりの国/DYGL/奇妙礼太郎BAND/TENDRE/BREIMEN/kiki vivi lily/NIKO NIKO TAN TAN/DÉ DÉ MOUSE/toconoma/the band apart/People In The Box/MASS OF THE FERMENTING DREGS/tricot/jizue/JYOCHO/kurayamisaka/モーモールルギャバン/SuiseiNoboAz/Khaki/luv/トリプルファイヤー/saccharin/浪漫革命/Nao Kawamura/POLYPLUS/JABBERLOOP/ひとひら/雪国/yubiori/171/the bercedes menz/aldo van eyck/Qoodow/life crown/北村蕗/New Action! …and many more!!

※揺らぎは12(土)に出演予定

※小学生以上有料/未就学児童無料(保護者同伴の場合に限る)。
※開場・開演時間は変更となる可能性がございます。
※アーティストのキャンセルや変更等による料金の払戻しはございません。
[問]SYNCHRONICITY■info@synchronicity.tv

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