ホーム > インタビュー&レポート > BIGMAMA・金井政人インタビュー 「音楽で感動させることを最後まで諦めない」 配信曲「Mirror World」から新たに始まるストーリー
"もの作りはエモーショナルだ"!
音楽は人を感動させられないと意味がない
――前回のインタビューから約1年ぶりです! 2024年は活発に活動されていましたね。
「体感としてはもっとやれたかなとも思うし、もっとやりたかったなと思います。どうやったらバンドと楽曲を届くべきところに届けられるだろうと1年間ずっともがいていましたね」
――手ごたえ的にももっと行きたかった、と。
「出来上がりやバンドのコンディションはいい状況にあるので満足していますけど、音楽には際限がないですからね。特に新しくメンバーが入ってからの楽曲には、きちんとチャンスに巡り合わせてあげたい気持ちがあるんです。そこに対して鬱屈としているというか、執着している感じもあります」
――その鬱屈としている原因は見えていますか?
「シンプルにもっと活躍したいし、もっといろんなところに音楽とライブを届けたいというところの理想と現実の間にギャップがあるというところなのかな。そこに関してはコロナ禍でのメンバーが替わったことで、一度限りなくゼロに戻っていることが大きいと思うんです。今の自分たちでどうヒストリーを積み重ねていけるかが、これから大事になると感じています」
――なるほど。今日は昨年配信されたシングル「Mirror World」のお話を伺うのがメインのインタビューなのですが、その前に(取材日は)年末ということで1年を総括していただけたらと思います。2024年で思い出深かったことというと?
「それこそ大阪での話になるんですけど、FM802のDJ 大抜卓人さんの朝の番組『on-air with TACTY IN THE MORNING』(毎週月〜木曜日 6:00 - 11:00)があるじゃないですか」
――はい、ありますね。
「大抜さんが海外に行かれるということで、1日代打を務めさせていただいたんです。5時間の生放送で、人生の中で他に代え難い経験だったなと思います」
――5時間の生放送! オファーが来た時はどう思われました?
「FM802やスタッフさんたちは常に楽しい思い出をくれるので、自分が何か力になれることがあるならばなんでもするということを、ある種の自信に契りのような決め事にしているんです(笑)。つまりイエスしか選択肢がない中で、どうイエスにするかだなと思いました。違う業種のプロフェッショナルを1日体験させてもらった緊張感は忘れませんね。オンエア中のスタッフさんたちの素晴らしい動きも含めて、プロの仕事を体験させてもらいました」
――でも5時間の生放送...想像するだけでも緊張でどうにかなりそうです。
「緊張はしましたよ! あと朝の番組なので、まさに動き出していく人もたくさんいるでしょうから気分よく送り出して欲しいと思うんです。だからとにかくラジオの向こう側にいる人たちを想像しながら話をするようにしました。自分はロックバンドで好きなことを好きなやり方で表現することをメインにやらせてもらっていますから、そうではない世界を見せてもらった気がしました」
――それは大きな経験でしたね。そして2024年といえば2023年に発表したアルバム『Tokyo Emotional Gakuen』のリリースツアーや、このアルバムから派生した楽曲のリリース&追加ツアーなど『Tokyo Emotional Gakuen』のアフターストーリーを積極的に描いていかれた1年という印象もありました。
「『Tokyo Emotional Gakuen』でやりたいと考えていたことはかなりやれたし、何かひとつ自分の中で後にも先にも見つけやすいものを作ることができたのかなとも思います」
―― "見つけやすいもの"というと?
「僕らの数あるアルバムの1枚ではあるけど、わざわざ学園もの的なアルバムタイトルをつけて、あの時こういうことをやったよねという思い出ポイントがすごく大きく濃い作品になったのかな。その思い出の中にZeppツアーがあって、そこにスクールバスが置かれていて...思い出としてすごく残りやすいものにできたと思います。それは思うにアルバムテーマの力だし、歌詞の力だと思うんです。それだけ学校・青春をテーマにすることが自分の中で表現欲求としてあったんだなと気付かされました。そこにまた追加履修という形でリリースを重ねたらまたテーマが強化されていく感じがあって、この時代にこういうやり方が出来ることが楽しいですよね」
――すごくストーリーがありますよね。
「今音楽を発表しようとするといろいろなやり方があるので、ちょっとでも楽しいやり方をしたくて。追加パックみたいにテーマが拡張していく...って、ゲームでは結構あるじゃないですか。マップが追加されていくとか。ああいう感覚でアルバムに新曲が追加されてくことはそこまで革新的に見えないかもしれないけれど、自分の中ではすごく楽しい出来事でしたし今後の自分にとってもいいチャレンジでした。ひとつの作品を長く遊ぶことが、今大事になってきていると思うんです。そう考えると『Tokyo Emotional Gakuen』はしっかりと遊び切れてあげられたのかな」
――つまり追加履修という形でのリリースの方法は『Tokyo Emotional Gakuen』を制作している時にはアイデアとしてあった?
「ありました。アルバムにテーマを設ける時点でリリース時期やツアー、ライブハウスの日程も出ていて、これにどんな冠をつけてどうハンドリングしていくかも僕のさじ加減に委ねられた部分があったんです。だからアルバム制作中にテーマからこぼれた科目の楽曲をどうしようかということはずっと考えていました」
――ライブのタイトルの入り方しかり追加履修としてのリリースしかり、この青春・学校というテーマがここまで長く遊べるロングプロジェクトになるなんて、『Tokyo Emotional Gakuen』のインタビュー時には想像していませんでした。
「そうですね。言い方が若干キツいかもしれませんが、曲を作り捨てることに今は若干抵抗があるというか...。コロナ禍では曲を作っても演奏してあげられなかった曲もあったけど、当時リリースは絶やしたくないという気持ちがあって出し続けていました。でも人前で演奏できないまま次に行った曲もあったし、そういうことも含めてしっかり作品を作って繋げるというのが自分の中でとても大事なことになったんじゃないかな」
――やはり人前で披露してこそ、曲の制作の到達点に辿り着くというイメージをお持ちですか。
「というよりも僕は人に心から勧めることができるものを作るというか、これがいいと思うんだという音楽をまず作って、好きだと思ってもらえる人と確かめ合うのは必然だと思っていて。それが音楽制作の動機としてあるんですよね」
――なるほど、それもすごく自然なことですね。ちなみに前回のインタビューでは "エモい"という言葉が世の中で1人歩きを始めていて、その言葉と希少になってきたエモーショナルロックという音楽のジャンルを繋ぎとめつつ攻めたいというお話をされていました。その考えに変化は...?
「答えになっているかわかりませんけど、僕、人間の価値はエモーショナルということが大切になっていくと思っているんです。AIや人工知能ではなく人間にしかできないことこそ、エモーショナル=感情的になることだと思うんですよ」
――確かにそうですね。
「逆に感情以外のこと...機械的な判断や労働は人間以外でも可能になっていくけど、人間の特権としては感動することやエモーショナルな部分しか最終的に残らないと思うほどです。でもこの感情的な部分が人間に残された唯一機械より敏感でいられるところなのかな。なので、エモーショナルというキーワードはこの先の自分の表現においてもコアにあるべきものだと思っています」
――その気づきは前作の制作中だったのか、作品に続くストーリーを描いている時だったのか、どうでしょうか。
「音楽制作の現場でもよくAIの話になるんですよ。うまく付き合うこともとても大切だけど、じゃあ最終的に人間にしかできないこととは? と思わざるを得ないというか。 ある時を境にというより、常々考えていたことです」
――アルバムのテーマだったエモーショナルという言葉が、音楽制作においての軸になってきている感じですね。
「もう漠然と"もの作りはエモーショナルだ"ぐらいに捉えています。音楽は人を感動させられるかどうか、そうでないとあまり意味がないというか。むしろそこにしか価値がないので、どうやったら感情の揺らぎを生み出せるだろうということにこそ僕らの職業価値が見出せる。それを自分の中でしっかり言葉にできるようになりました」
「Mirror World」は東出真緒が奏でる
バイオリンのリフのための曲
――前回のインタビュー時に、サウンド的なエモさに関してBIGMAMAにおいては東出(真緒)さんのバイオリンがあれば表現できるとおっしゃっていました。『Tokyo Emotional Gakuen』はもちろん「Mirror World」まで聴かせていただいたところで、BIGMAMAの楽曲に感じるエモさとは金井さんの歌声と東出さんのバイオリンは大前提で、メロディーの豊かな抑揚にエモさを感じるんだ...! という発見が個人的にはあったんです。今更ではありますけども。
「メロディーがいかにエモくなるかは意識して作っている部分でもあるんです。定義するのは難しいんですけど、どうやったら人が感動してくれるだろうと考えている時点でエモいですし。音楽を聴いていて心地がいいとか感動するって、どこかに絶対あるはずなんです。それをずっと諦めていないし、曲作りの段階でその感動ポイントのひとつを大きくしていくのか、それをラストのサビに用意するのか、いくつか伏線を貼って回収させるのかということをずっと考えています。感動の仕方はいろいろあると思うので、それは曲を作るときに最後まで諦めない点ですね」
――「Mirror World」は冒頭から全開で文句なしのエモさを感じたし、メロディーが駆け上がっていく感じやバイオリンの入り方も含めて、エモーショナルという要素が随所に散りばめられた楽曲だと感じました。
「音楽的にちょっと不安定とか刹那的みたいな感じが、心をぎゅっと掴むことを魅力に表現できたのかなと思います。今回の場合はバイオリンのリフと元の構成している音の関係性に耳を持っていかれるような感じにしたいという意図がありました。この曲はその意図したフレーズが鳴った瞬間に全員が東出を見る、または東出にパンとスポットライトが当たるようなイメージです」
――バンドの音がふっと止まって無音になった瞬間に鳴り響く、あの印象的なバイオリンですね。
「それです! 僕はもうあのバイオリンのリフのための曲だと思っていて。彼女がステージでこの部分を弾き切る姿をイメージして、そこから逆算するように前後の部分がどんどん仕上がっていきました。あのリフから鏡というワードが頭に浮かんで、歌詞が仕上がっていくということが自分の中で起こったんです。とにかくあのリフをどう感動できるものにするか。その一点突破を目指した曲ですね」
――曲の出発点があのフレーズなんですね。
「はい。最初に部屋でギターを弾きながらバイオリンのリフが出てきた時に、何かこれは新しいBIGMAMAを象徴するワンフレーズになると感じました。じゃあ、そこからリフにふさわしいメロディーを見つけていこうという作り方でした」
――なるほど。ちなみにバイオリンのリフから鏡というワードが導き出されたというのは?
「なんていうかな...あのリフから鏡を連想する、それが僕の作詞家としての存在意義かなと。あのリフが僕にはキラキラ輝いて反射しているようなイメージが見えたのは大きかったです」
――鏡というキーワードに関して、サウンド面でメンバーに何かリクエストはされましたか。
「あんまりうるさく言いすぎずに任せるのが信条です」
――だとすると、サウンド面でも肝になるのは東出さんのように思えます。
「そうですね、彼女にもある程度委ねました。ただバイオリニストじゃない僕が作ったバイオリンのリフとして、面白みを感じてくれていたようには感じました。やっぱりプロのバイオリニストからしたら出てこない音の運びだったと思いますしね。そこからもう少しこうした方がいいみたいなことのやり取りはしました」
――ちなみにどういったやりとりがあったのでしょうか。
「音の長さやキレの部分、指の運び方の修正ですね。この方が弾きやすいとか。やっぱり弾きやすいことがステージ上でのいいプレイに繋がると言われたらやっぱりね。ステージ上でかっこよく弾いて欲しいですから」
――その他にも制作のハイライトというと思い出されることはありますか?
「マニアックなことを言うとサビ前のバイオリンのリフで、 そのタラララララララと音が繋がっているところが一瞬切れて、その直後に僕が息を吸う呼吸音が入るんです。そこに自分の好きなポイントが集約されていると思います。なんなら"呼吸の歌"とまで思っているというか」
――そういう演出もエモ感に繋がっている気がしますね。
「本当にそうで、繊細なバイオリンリフから息を吸ってそのままサビに入っていくみたいなところに自分の音楽制作の好きな部分が詰まっていたり、かけがえのない価値を感じているんです。ハイライトって...一番照らしたくなりますよね(笑)」
――そりゃそうですよ! ちなみにこの曲以降、NTTドコモ・スタジオ&ライブとレーベルパートナーシップを組んでいくということなのですが、具体的にはどうなっていくのでしょうか。
「新しい座組なのでこれからどうなっていくかな? と未知な部分もありますが、この曲をきっかけに新しいクリエイトチームが生まれていて、僕の頭の中にあるマスタープランみたいなものを実現していきましょうという話をしているところです。「Mirror World」を含めて、また新しい世界...空想世界や仮想世界を作りたいという夢と親和性があると思っています」
――今後の展開として今お話できることというと...?
「1月末に次のシングルが出ます。あくまでも「Mirror World」はその作品への扉なんです。次はその扉の中にある曲のイメージ...というか連続性のあるものを作りましたし、それがまた大きなところに繋がっていきます。今、この時代ならではの音楽制作をしたいんです。1曲ずつだと点になるけど、作品同士がリンクしていたり作品が繋がって大きな何かを描いている方が楽しいと思うんです」
――なるほどなるほど。そして2月には東名阪のワンマンツアーも控えます。これまたツアータイトルの表記が『■■■■■■■■』となっていて、意味深です。
「実はこのツアータイトルがまた次の作品のタイトルに繋がっています。少し先の話ではありますけど。なのでとりあえず伏せとくか、と(笑)。また新しいものを作っています。それは学園ものを経て、自分たちの中では限りなく"エンタメ寄り"というか。東名阪3本の後はまた母の日に大きな企画をしているので、ぜひ東京へ御足労いただけたら嬉しいです!」
――そして2月というと、24日に開催される『大阪マラソン2025』にアーティストランナーとして参加されることも発表されていますね。...本当に走るんですよね?
「走りますね。YouTuberでもあるうちのバケツ(Bucket Banquet Bis/Dr)も走るので、カメラを持って一緒に走って彼の一部始終を収めます。...ちなみに東名阪ツアーの名古屋公演の翌日なんですよ」
――わぉ。
「でもバケツはマラソンを走り切った後にドラムを叩けるか!? という動画を撮りたいと言っています(笑)。それに最後まで付き合いますよ。大阪マラソンはすごく沿道の応援が近い感じがするのがすごくいいんです。僕は人に見られていないと頑張らないタイプなので、本当に励みになります。見かけたら応援、よろしくお願いします!」
取材・文/桃井麻依子
(2025年1月10日更新)
配信中
AAR-002
ALL ACCESS RECORDS
配信リンクはこちら
BIGMAMA(ビッグママ)…“バイオリンとバケツを擁するロックバンド”。2006年より本格的に活動を開始。 ロックとクラシックを融合させたコンセプトアルバム『Roclassick』を発表するなど、日本のロック界に革命を起こし、毎年さまざまなフェスへ出演を果たしている。バンド名にちなみ、母の日とクリスマスには特別なイベントを開催。そして2017年秋に開催した初の日本武道館公演はソールドアウトとなり、話題となった。2021年にはドラマーのBucket Banquet Bis(通称・ビスたん)が正式メンバーとして加入し、新たなスタートを切るべく事務所を移籍。 2023年に現メンバーで初となるアルバム『Tokyo Emotional Gakuen』をリリースし、“青春”をテーマに掲げたツアーを開催。その後『追試&留年』というコンセプトのツアーを追加で開催し日本を3周回る。 2024年、3周目のツアー中に“追加履修”と称し3カ月連続でシングルをリリース。 5月12日の母の日に『卒業試験』公演を行い、無事に卒業となった。 そして11月にNTTドコモ・スタジオ&ライブとレーベルパートナーシップを組んでALL ACCESS RECORDSよりシングルをリリースし、バンドはまた新たなフェーズへと突入している。
▼2月15日(土) 18:00
梅田クラブクアトロ
通常-5500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
学生-3300円(当日要身分証明書、整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。小学生以上は有料。
※学生チケットは入場時に在学を証明出来る身分証明書の提示が必要です。
※ダイブ・モッシュ等危険行為は一切禁止です。
[問]GREENS■06-6882-1224
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