ホーム > インタビュー&レポート > DENIMS&フレデックのライブとの出会いが あなたの“何かの理由”になりますように! 『TOYOOKA MUSIC DAY’24』ライブレポート
11月9日は、とんでもなく気持ちのいい秋晴れに恵まれた。JR豊岡駅から車で5分ほどの豊岡市民会館、その駐車場には小さな公園が隣接していて横には川が流れるとてものんびりとした環境だ。開演前に公園でぼんやりしていたら、川の向こう側から歌声が聴こえてきた。声の主はSoulflexの一員でもあるシンガーソングライターのZIN。彼もまたこの日、『BAG FES. in 豊岡 Vol.0』というイベントのゲストとして豊岡を訪れ、ライブを行なっていたのだ。そして翌日には豊岡市民会館のすぐそばでKeshi Tanaka×村松拓(Nothing's Carved In Stone )のライブも行われるなど、この週末は町に音楽が溢れる2日間となっていたらしい。ふと目を凝らすと、フレデリックのロゴが入ったパーカやTシャツ姿の人々が散策する姿が目に入る。iPhoneを片手に何やら楽しそうな姿を見る限り、このライブのためにわざわざ豊岡を訪れた人たちなのだろう。ライブを通して、訪れた町もまるっと楽しむ。企画の出発点は「豊岡の皆さんに生のライブエンターテインメントを届けたい」という思いからだと聞いているが、ライブがあるからこそ豊岡を知る人もいるといういい面もある。
開場時間になるとお客さんがどっとホール内へ流れ込んできた。この日はホール公演としては珍しく全席自由というスタイルが採用されており、「ぜひ前の方で!」と気合いの入った人々も数多く見受けられた。それだけDENIMSとフレデリックが来ることを待ちわびていたのだろう。順調にお客さんは入ってゆき、いよいよ開演。『TOYOOKA MUSIC DAY'24』の幕開けだ。
●DENIMS
先行はDENIMS。SEが鳴り響いてステージに現れた釜中健伍(Vo&Gt)、岡本悠亮(Gt)、土井徳人(Ba)、江山真司(Dr)の4人に、お客さんが総立ちで拍手を送る。「DENIMSです、よろしくー! 豊岡のみなさんお元気ですかー?」という声を合図に「Life Is Good」、「Goodbye Boredom」でライブをスタートさせる。会場の温度を確かめるように、みなさんのゴキゲンを伺うようにライブ定番曲で豊岡のみなさんへのご挨拶だ。曲が進むごとに、手拍子が大きくなっていく。特に「Goodbye Boredom」の♪オー、ララララ〜と誰もが口ずさめるフレーズを会場中が手をあげて歌い始めたあたりから、空気が変わる。そのまま勢いを増幅させるグッドナンバー「わかってるでしょ」へとつなげるDENIMS、パワーソングを続ける。この曲が演奏されている間に衝撃が走った。彼らが演奏する音とリズムに合わせた照明のパッ、パッ、パッという超効果的な切り返しで作り出す光の演出だ。終演後、この日のライブを見ていた関係者の中で「あの照明、すごかったですね」と話題にのぼるほど曲にビタッと合った照明で、ライブを"見る"楽しさをお腹いっぱい味わうことができた。できれば映像でお見せしたいほど!個人的にはこの日のハイライトのひとつだ。
11:54:13
「豊岡最高じゃないですか! お邪魔します! 初めて来ました」という釜中に、客席から「ようこそー!」と声が飛ぶ。すると岡本も「どんな空気感かわからんかったけど、めっちゃパーティーっすね、いいね! ほんじゃいつも通りライブしますね!」と岡本が言うとさらに大きな拍手が聞こえる。なおも岡本が続ける。「豊岡の歴史資料館的なところに行ってきたんですけど(意外な? 訪問先に会場がザワァ)、見たい人は連絡して鍵を開けてもらうシステムで、鍵開けてもらったんです。ずっと後ろに立って待たれていて(笑)、しっかり資料を見させてもらって。すごくこの町を好きになりました」との言葉にまた拍手。この反応を見ていると、お客さんの多くが地元の人なのかなぁ? そんなふうにも思えてくる。そして曲はワルツのリズムで始まる「虹が架かれば」へ。ズンチャッチャという音に合わせ、観客も手拍子でリズムを奏でる。この1曲で作り上げた雰囲気と空気感を大切に、釜中が奏でるキーボードの音色が優しく響く「Pray To The Moon」へ。開演前の公園で見上げた空には真昼の月が出ていた。ライブが終わって外に出たら、きっと綺麗な月と星空が見えるんだろう。光が溢れる大阪市内で見るより、美しいに違いない。
続いたMCの中で「DENIMS、初めてっていう人?」と問いかけた釜中の言葉に、次々と手があがる。「ほとんどやん! 初めまして!!」と岡本。ここまでの盛り上がりを見ていると、まさかここまでDENIMS初体験の人が多いとは思わないノリだったことに驚かされる。フレデリックとは付き合いが長いものの、対バン自体は2回ほど、それも最後は10年以上前だったというDENIMS。久々の共演への喜びと、このイベントを企画した豊岡市民会館の人々へのリスペクトを述べた上で、釜中が「芸術を盛り上げようとする動きが素晴らしいと思う。今日のライブを見て、何かやりたいと思って売れたらうれしいです。ぜひ何かを持ち帰ってください」とメッセージを送る。そしてラブソングをやります、と届けられたのは「おたがいさま」。後半、♪オー、ララララとみんなで歌うことで会場がひとつになっていく。そこからは、怒涛だった。
「fools」(曲の途中でフレデリックの「オドループ」をマッシュアップする粋な演出に会場が湧いた)、「Journey To Begins」、「Song For You&Me」と1曲ごとにすこーしずつアクセルを踏んでいくような展開を見せ、そしてラストソングに据えたのは超爆発的オルタナティブ・ファンクソング「たりらりら」。アクセルを踏み切るほどに会場のテンションを上げ、フレデリックへとつないだDENIMS。この後にフレデリックが構えているからこそのセットリストなのだろう。特にラストの「たりらりら」では客席の人々の体が揺れ、手があがり、跳び跳ねている人がたくさんいた。DENIMSを初めて見る人がほとんどだったこの会場で、だ。釜中が言っていた「何かを持ち帰って欲しい」という"何か"を、見せてもらったような気がする。「ありがとうございました、DENIMSでした。またライブハウスで会いましょう!」というシメの言葉も、"俺らのいつものとこにも遊びに来てな〜"という誘いが見えるいいメッセージだった。
●フレデリック
DENIMSの「たりらりら」でぶっ放された熱を上空にふんわりと残したステージに、三原健司(Vo&Gt)、三原康司(Ba)、赤頭隆児(Gt)、高橋武(Dr)、フレデリックが現れる。歓声と拍手、客席からの歓迎ぶりが伝わってくる。健司が「フレデリック、始めます。どうぞよろしく!」と放つと、この日の夜を最新曲の「CYAN」でスタートさせる。タイトルにちなんださまざまなニュアンスの青い照明も、曲に溢れる疾走感を増幅させていく。その「CYAN」で心に芽生えた興奮をさらに揺さぶる「銀河の果てに連れ去って!」へ。複雑に絡み合って高まっていくメロディー展開に、観客の拳があがり続ける。その細かな音の動きに合わせて激しく美しくフラッシュする照明。DENIMSのライブ中にも感じたが、この日のライブは、とても照明で作り上げられた視覚効果が目をひく。ホールという広い空間でライブを見るからこその、目を楽しませる演出がとても巧みだ。耳と目を完全に奪われたフレデリックのスタートダッシュ。勢いをゆるめぬまま、曲は「スパークルダンサー」へ続く。ホールの客席なのにまるでダンスフロアのように熱狂していく様が痛快なのはもちろん、観客の手の振りに合わせるようにフロントの3人がステップを踏む姿も目に楽しい。
ようやくひと息つくことができたところで、客席から「隆児、おかえり!」の声が上がる。ギターの赤頭の出身地はこの豊岡からもほど近い、兵庫県朝来市とあってこの日は凱旋的な意味合いも強い。話を始めた健司は「豊岡、初めて来ました。初めて来たのにこんなにアツいの最高やないですか。ありがとうございます!」と上機嫌。そして続ける。「赤頭が地元なんですよ。だからいろんな気持ちを抱えながらアツいライブをしたいと思っていて」。曰く、日々たくさんの出演オファーをもらう中でもバンドとして大切にしているのは"自分たちがそこで音楽を鳴らす理由"があること。そう考えた時に、今日は出演しない理由がないとこの日に込める強い気持ちを語る。「今日せっかく音楽でつながってここにフレデリックを呼んでくれたからには、あなたが何か変わるきっかけを作りたいと思っています。あなたの理由になりに来ました」とのメッセージに大きな拍手が起こる。そのメッセージを歌で表した「夜にロックを聴いてしまったら」、グッとタイトでディスコティックなバンドの音に体が揺れた「シンセンス」へ、強い思いが込められた曲が続く。そして突如空間を歪ませるようなギターの音、そこに重なっていく健司の美しいロングトーン。「ペパーミントガム」という一見ポップな曲のタイトルとは対極の、心の内や欲求を吐き出すような1曲。会場の空気が変わる。
「今日ごっつ、ごっつ楽しいです! ありがとうございます。......いやー、どうですか? 地元?」。健司が、赤頭へ話題を振る。「俺、朝来市出身で。17歳で大阪に出て、バンドも今年結成15年だから人生の半分を過ごしたところやん? 人生の半分を過ごした人たちを地元に連れて来れてうれしいねん」と語ると、観客が拍手を送る。「今日ちょっと浮かれてるよな」と指摘したのは康司だ。「楽屋にこっちの名産の差し入れをたくさんいただいたんだけど、"いっぱい食べや〜"とか言ってきて」(赤頭の言い訳としては、いただく数が多いからみんなに食べて欲しかったそうで「DENIMSにも渡しに行ったよ」)。赤頭が「今まで一緒にやってきたスタッフもDENIMSも連れて来れたのがうれしいと思っていて。これからもよろしくお願いします! あ、みんなようこそって言って?」と客席に振ると、お客さんたちの\ようこそぉ!/の声が響き渡る。メンバー曰く、"この日の隆児は演奏もいつも以上に気合が入っている"そうで、笑いながらホンマ? 伝わってる? と赤頭も照れ笑い。そして健司が言った「カマチュー(DENIMS・釜中)も言っていましたけど、何か残して帰ろうと思っているし、何か拾って帰ってくださいと思っているので、絶対にあなたが何かをする理由になって帰ろうと思っています」という言葉が耳に残る。
そして届けられたのはサイケな雰囲気にも包まれた「スキライズム」(曲の中盤では健司の「本日、ギターソロを務めます朝来市出身・赤頭隆児です、どうぞ!」という言葉の後の赤頭の演奏には本当に痺れた)、「豊岡、ご自分の幸せはご自分で勝ち取ってください!」という曲紹介もイカしていた「Happiness」、そして本編ラストソングとなったのはフレデリックらしいメロディーが興奮をくれた「名悪役」。本当に最後まで、常に何かインパクト(爪あとともいう?)を与えることを意識していたかのような9曲のセレクトと構成。何度も書くが、本人たちの演奏はもちろん、照明で"魅せる"ことも意識し続けたステージだったことに、とにかく心を掴まれた。
再びステージに現れたフレデリックが、アンコールに選んだのは"もちろん"大名曲「オドループ」。YouTubeの再生回数1.6億回を超えた、この曲でホールの客席にまるでライブハウスで巻き起こるような熱狂を呼び起こして『TOYOOKA MUSIC DAY'24』は幕を下ろした。
このイベントに関して、主催者側のホスピタリティーに溢れているなと思えたことがまだある。まずは料金設定。豊岡市民会館の文化ホールは、しっかりとした大きなホールだ。写真を見てもらってもわかると思うが収容人数もかなり多く、個人的には「『NHKのど自慢』が豊岡で開催されるなら、ここだろうな」と思えるようなホールなのだ。そんなホールでのチケットが前売り4000円(高校生以下に至っては3000円)である。コロナ以降、ライブチケットの値上がり具合を見ていると、邦楽のアーティストでも1万円に届こうかという公演も少なくない中、まさにライブハウス価格での公演となっていたのは主催者側の狙いかどうかは定かではないけれど、驚きのひとつ。
そしてもうひとつは一時保育と称した託児所が備わっていたことだ。生後8カ月以上の未就学児を対象に、ライブ中子どもを預かってもらえる子育て世代に至れり尽くせりのサービスがあった。子どもを持つことで意図せず遠のいてしまうのが生のエンターテインメントに触れることだと思う。音楽、映画、演劇など平日も休日も夕方〜夜開演かつ小さな子ども同伴では楽しめないため、行きたくても諦めざるを得ない。そんな人たちに手を差し伸べる一時保育付きライブ。少子化対策を考えるなら、こういう政策だってすごく支持できるなと思えたアイデアだった。
『TOYOOKA MUSIC DAY'24』、DENIMSとフレデリックがライブを届けるということ以上のものをたくさん残したイベントになったのではないかと思う。この日、2組のライブを目にしたことであなたは何かの理由を得られただろうか。私は単純に、もっとライブを見たい、ライブを見ようと思えた。家にいては聴けない、見られない、感じられないものが世の中にはまだまだある。自分の体を使って体験すること。時間を惜しまず、心を豊かにしてくれる経験を重ねたい。そんなふうに思える2組のパフォーマンスだった。このような試みが、たくさんの郊外の町へも広がればいいなとも願わずにはいられない。
取材・文/桃井麻依子
撮影/渡邊一生
(2024年12月13日更新)
⚫️DENIMS
01. Life Is Good
02. Goodbye Boredom
03. わかってるでしょ
04. 虹が架かれば
05. Pray To The Moon
06. おたがいさま
07. fools
08. Journey To Begins
09. Song For You&Me
10. たりらりら
⚫️フレデリック
01. CYAN
02. 銀河の果てに連れ去って!
03. スパークルダンサー
04. 夜にロックを聴いてしまったら
05. シンセンス
06. ペパーミントガム
07. スキライズム
08. Happiness
09. 名悪役
EN1. オドループ
『ええあそびばtour』
【滋賀公演】※SOLD OUT
▼12月21日(土) くわくわ診療所
[共演]烏兎 -uto-
[DJ]yup
▼2025年1月13日(月) 18:00
CONPASS
オールスタンディング 一般-3800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
オールスタンディング 22歳以下-2000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※22歳以下のチケットをご購入の方は来場当日に年齢確認のできる身分証明書をご持参ください。
[問]elevatormusic■info@elevatormusic.rgr.jp
「FM802 35th ANNIVERSARY“Be FUNKY!!” ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2024ーレディクレ15th-」
▼12月27日(金)11:00
インテックス大阪
チケット情報はオフィシャルHP(https://radiocrazy.fm/ticket/)参照
[出演]imase、奥田民生(GOZ)、カネヨリマサル、go!go!vanillas、サバシスター、ザ・クロマニヨンズ、Chevon、シャイトープ、ストレイテナー、Tele、DISH//、10-FEET、なとり、にしな、ハンブレッダーズ、Vaundy、羊文学、フレデリック、BRAHMAN、HEY-SMITH、マキシマム ザ ホルモン、Lucky Kilimanjaro
[OPENING HEAVY ROTATION ACT]ammo(2024年1月ヘビーローテーション)
[ZONe ENERGY LIVE HOUSE Antenna]CLAN QUEEN、シンガーズハイ、jo0ji、moon drop、紫 今
[問]RADIO CRAZY 公演事務局 ■06-7732-8787
【福岡公演】
▼2025年1月25日(土) 福岡・みずほPayPayドーム福岡
[出演]クリープハイプ、go!go!vanillas、ゴールデンボンバー、Saucy Dog、sumika、Da-iCE、10-FEET、BLUE ENCOUNT、ヤバイTシャツ屋さん、UNISON SQUARE GARDEN、WurtS
Official Web Site
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