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古謝美佐子と勘緑が繰り広げる
沖縄民謡と文楽人形のコラボレーション
『古謝×勘緑 祈りの歌舞(うたまい)』ライブレポート

初レコーディングより60周年の古謝美佐子と初舞台から45周年の勘緑が繰り広げる沖縄民謡と文楽人形のコラボレーション『古謝×勘緑 祈りの歌舞(うたまい)』が11月23日(土・祝)にクレオ大阪東にて開催された。二部構成となっていた今回のステージ。第一部は“ご祝儀踊り”の『三番叟』をはじめとした明るい調子の曲が多く、第二部では“祈りの歌舞(うたまい)”と銘打った本公演の軸となるテーマ“反戦と平和”を強く訴えかける内容となっていた。深みと温かみがある唯一無二の歌声に癒され、音楽に共鳴し生命力を宿す文楽人形に見入った同公演の模様をお届けする。

第一部は『家路~ちんさぐの花』から幕開け。上手の位置でキーボード(佐原一哉)が奏でられ、古謝は沖縄の魂が宿る歌声を客席の隅々まで響き渡らせる。『三番叟』では勘緑が操る人形(三人遣い)が弾むようにカチャーシーを踊り観客も手拍子で加わる。「大阪の人はノリがいい。他ではなかなか手拍子は起きない」と佐原も喜んでいた。

アイルランド民謡の『ポメロイの山々』から古謝は三線を弾いて歌い、『遊び仲風』ではマイクを通さず生歌と三線だけでしっとりと聴かせる。また、曲間では初レコーディングより60周年を迎えた古謝が生まれ育った嘉手納でのエピソードを話す場面も。MCでは気さくな雰囲気で観客に声をかけ、第一部で着ていた美しいレースの衣装は1年かけて編んだ手作りだと明かしていたのも印象的だ。

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一部の締めは喜納昌吉の『花』。穏やかな歌唱が心の中の負の感情を融解させ、人形も観客と一緒に舞い踊る。場内は幸せな雰囲気で満たされていった。

15分の休憩をはさんで始まった第二部では、勘緑が「来たぞ!来たぞ!笑顔を届けにきたぞ!」と声を上げ、楽器を鳴らして客席後方から登場。ステージに上がると、15歳から人形遣いを始めたこと、文楽座を経てフリーランスで活動する唯一の文楽人形遣いであることなど、自身の生い立ちも含めて独白調で赤裸々に語った。

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そして、最も長尺の演目となったのは歌と人形と語りで展開された<昔歌メドレー>。おばあ人形が日記を読むという設定で、太平洋戦争末期の沖縄戦によって沖縄のおばあとその親兄弟が巻き込まれた過酷な体験が語られてゆく。古謝が歌ったのは『南洋小唄』『軍人節〜熊本節』『PW無情』といった情け歌。古謝がよく歌っている戦前〜戦中〜戦後の沖縄民謡のメドレーを文楽人形とコラボするはこの日が初めてとのこと。おばあの語りと歌に込められた哀惜や望郷の念に観客もじっと引き込まれていた。

『黒い雨』では戦場と化した沖縄をさまよう子供の人形で戦禍の悲惨さを表現。人形は背負ってきた赤ん坊を下ろし、顔を近づけて息絶えていることに狼狽えて体を震わせる。その繊細な動きから言葉にできないほどの恐怖や悲しみが伝播し、次に沖縄の言葉で古謝が歌った『アメイジング・グレイス』は心の奥底までしみわたっていった。

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その後は『童神』でやわらかに包み込み、本編ラストは『平和星願い歌』。昨年、15年ぶりにリリースされた古謝のオリジナルアルバム『平和星☆願い歌』に収録されているナンバーで、表題通り平和を願う祈りが込められた歌声にほっと心が癒されるようだった。

アンコールの『豊年音頭』ではこの日一番の開放的な雰囲気に包まれた。盛大な手拍子と共に人形も客席に降りてきて観客と一緒にカチャーシーを踊り、会場全体がひとつになる歓喜の盛り上がりに。こうして3時間近い渾身のステージは幕を閉じた。

Text by エイミー野中
Photo by 上原 基章




(2024年12月 4日更新)


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Set List

『古謝×勘緑 祈りの歌舞(うたまい)』
2024年11月23日 at クレオ大阪東
出演:古謝美佐子/勘緑+木偶舎/佐原一哉

01. 家路~ちんさぐの花(古謝+勘緑)
02. 三番叟(CD音源使用)(勘緑)
03. ポメロイの山々(古謝+勘緑)
04. ナークニー~かいされ(古謝)
05. 遊び仲風(生うた)(古謝+勘緑)
06. 花(古謝+勘緑)
07. 勘緑モノローグ(勘緑)

古謝+勘緑「昔うたメドレー」
08. 廃藩ぬ武士
09. 南洋小唄
10. 軍人節~熊本節
11. 南洋数え歌
12. 懐かしき故郷
13. PW無情
14. 屋嘉節

15. 黒い雨(古謝+勘緑)
16. アメイジング・グレイス(古謝+勘緑)
17. 童神(古謝)
18. 平和星願い歌(古謝+勘緑)

EN01. 豊年音頭(古謝+勘緑)

Live(古謝美佐子)

『南の島の歌姫たち』

チケット発売中 Pコード:272-417
▼12月17日(火) 18:30
兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
▼12月18日(水) 18:30
神戸国際会館こくさいホール
▼12月19日(木) 18:30
ロームシアター京都 メインホール
S席-6500円 A席-6000円
[出演]古謝美佐子/玉城千春/城 南海/石垣優
※小学生未満は入場不可。本公演は新型コロナウイルス感染症予防、及び拡大防止の対策を講じて開催いたします。最新の情報は民音公式サイト(https://www.min-on.or.jp)をご覧ください。
[問]MIN-ON関西■06-4304-9516

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スナック「み~こ」

チケット発売中 Pコード:282-744
▼12月22日(日) 18:00
ミュージックタウン音市場
一般前売-4000円(要1ドリンクオーダー)
[出演]古謝美佐子/前川守賢/佐原一哉
※出演:多幸山ハブ子/リンダ/L’espelanza/GLAN/丸市ミー子/アブラマミレ/沖縄市立高原小学校特別支援学級/ほか
※全席自由
※未就学児膝上無料
[問]ミュージックタウン音市場■098-932-1949

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古謝美佐子公式サイト