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Hakubi・片桐の自己肯定感の上げ方
「なんだかやれそうな気がする、でいいと思うんです」
新体制第一弾曲「クロール」から感じ取れるポジティブさ

2024年9月、メンバー脱退による新体制で新たなスタートを切った2ピースバンド、Hakubi。11月6日にリリースされた新体制第一弾曲「クロール」には、勢いあふれるギターロックサウンドと前向きなメッセージが詰めこまれ、バンドの“今”をあらわすにふさわしい内容となった。そんな同曲をひっさげ、2025年1月まで全国ツアー『Hakubi Tour 2024 “underwater”』も開催中。Hakubiはどんなところが変化し、どんなところが変わらないのか。Vo.&Gt.の片桐の話を訊いた。

ーー「クロール」はHakubiの楽曲のなかでも特にキャッチーな印象を覚えました。

歌詞面でも、サビで同じ言葉をこれだけ繰り返すことはこれまであまりありませんでした。そういった点で新しいアプローチができた楽曲になりました。また、Hakubi"これから"を連想してもらえる、推進力のある内容になり、自分たちとしてもこの曲をきっかけにより前を向くことができた気がします。

――いわゆるAサビを終えて、そのあとの歌詞「死んだように生きてることに 気づけなくて年だけとって」までの間奏の"ダンダンダンダン ダンダンダンダン"という展開が素晴らしいです。そこまでの、押せ押せのムードが変わり、一旦グッと堪えるみたいな。だからこそ「死んだように生きてることに〜」の歌詞が際立って聴こえます。

その箇所は、実はデモ段階ではなかった展開部分なんです。私がデモを作ったとき、ベースの(ヤスカワ)アルくんが「キャッチーで、ポップで聴きやすい曲だけど、それだけで終わってしまう気がする。それはHakubiの方向性とはちょっと違うんじゃないか」という意見をくれて、そこで新たな要素を加えてみようとお互いに色んなリファレンスを挙げながらインスピレーションを得て、これまでなかったコード進行やアレンジにトライしました。あの"ダンダンダンダン"あたりは、そうやって自分たちのルーツのさらに奥のところまで掘り下げていって、そしてアイデアを出し合ってHakubiらしい世界観を築き上げていったんです。

――「クロール」はそういったサウンド面も、そして歌詞面もとても前向きです。振り返れば「大人になって気づいたこと」(2020年)も、当時のHakubiとしては珍しくポジティブなメッセージを乗せた楽曲で、インタビューでも片桐さんは「そういった曲は珍しい」とおっしゃっていました。

「大人になって気づいたこと」は音像的には、どちらかというと"陰"。そのなかで「どうにか光を見出して、進んでいく」というポジティブさを出しました。逆に「クロール」は音像が"陽"。それはHakubiとしてトライしたところでもあるんです。とは言っても、Hakubiの曲本来が持つ、ちょっと落ち込んでいる人、ちょっと考え込んでいる人に重なるような部分をなくしたわけではありません。根底ではいずれの曲もつながっています。「クロール」もそうなのですが、前向きに聴ける人もいれば、そうではない人もいるだろうし、なにかを発見するきっかけになる人もいると思います。そうやって、よりいろんな捉え方をしてもらえている曲が作れているんじゃないかなって。

――「クロール」の歌詞「死んだように生きてることに 気づけなくて年だけとって」や、「大人になって気づいたこと」のタイトル然り、片桐さん自身が大人になって気づくことが増えてきたんじゃないかって。そういう気づきが歌詞に出ているように思えます。

自分のなかでモヤモヤしているものが、いつもどこかにあります。それを吐き出すのが自分にとっての音楽の形の一つ。そういう"悩みポイント"が創作の原動力にもなっています。違和感、疑問、自分の嫌な部分などを曲にしてきました。そう考えると、弱点を歌にしてきたところもあるかも。だからこそ、リスナーの皆さんからの「こういう気持ちを言葉にしてくれてありがとう」「自分も共感できました」という感想に救われます。「自分は一人じゃないんだ」と気づけるんです。Hakubi の曲はそうやって、私自身の歌だけど、みんなの歌でもあってほしいです。

――「クロール」の歌詞「わりと大きな声って出ないもんだなあ... 馬鹿になっていい!」は、片桐さんの性格をうかがうことができます。このフレーズはつまり、「なにかやってみよう」といざ前に乗り出したものの、その"やり方"が分からなかったり、忘れていたりしている風に捉えられます。「いざ」という場面で出てしまうそのぎこちなさが、片桐さんっぽくもあるのではないでしょうか。

実はこの言葉は、デモのときからまったく変わっていない箇所。一方、自分のなかでチープさを感じていたところでもあるんです。というのも、いわゆる詩的な言葉ではなかったから。つまり、思ったことをそのまま書き連ねていったもの。その分、シンプルに自分の気持ちが出ているんです。ただ、私の場合は歌詞を何度も書き直していくとあまり良い方向にならない。そのとき感じたことをストレートに表現するのはちょっと恥ずかしいけど、それが自分の本当の言葉。だからこの箇所は、おっしゃるように自分の性格がそのまま出ているかもしれません。

――ただ「なにごとも遠慮せずにやっていこう」という意気込みも伝わってきます。誰かに迷惑をかけなければ、思いっきりやっていいんだよって。

それこそHakubiはもともとライブハウスシーンを中心に活動していて、自分たちもそこにアジャストしていた部分がありました。そこでやっていくための音楽を作り、そのためにメンバーそれぞれの好きなものやルーツを融合させていました。でも新体制になって、かつての自分たちのスタイルをもっと良いものにしていこうと思ったんです。ライブハウスシーンはもちろんのこと、音楽シーン全体にアプローチできるようにしたいなって。そこで、なにかに遠慮したり誰かに合わせたりとかではなく、「自分たちが好きなことや、かっこいいと思うことを素直にやってみよう」という目標を掲げたんです。「クロール」はまさにそういう気持ちが出せたと思います。

――あと「悩みなんてない!」「"らしくない"ことをやってみよう」という歌詞も良いですよね。そうやって自分に言い聞かせて鼓舞することが、自己肯定感を上げるための最適な手段です。

私自身が何事もネガティブに考えがちな人間で(笑)、それこそ同じところをぐるぐると回って、悩んじゃう。自己肯定の上げ方をずっと探しているんですけど、それでも好きな音楽がやれていることは、自分肯定に繋がっています。あと"自分のことが好きな自分"になれる努力は、やっているつもりなんです。元々は本当に自分に自信がなかったので、メイクをがんばってみたんです。そうしたらちょっとだけ、人の顔を見ることができるようになりました。そうやって自分なりに武器を見つけることが大切ですよね。

――私ごとで恐縮なのですが、実はひげ脱毛を始めまして。ただそうやって、お金、時間、身体的苦痛などが伴うものの、その分しっかり成果が現れる物事はやっぱり自己肯定感が上がりますよね。

その通りだと思います。「なんだかやれそうな気がする」「大丈夫な気がする」となりますよね。「気がする」でいいと思うんです。「クロール」でも言っていますよね、「なんかやれそうなんだ」って。それが前に進む力になるはず。そのなかで周りから「あ、それいいね」と褒めてもらえたらもっと嬉しくなりますし!

――そういった「クロール」も聴くことができる『Hakubi Tour 2024 "underwater"』が2025年1月17日まで開催されています。

私は、誰かに自分の気持ちをうまく伝えられなかったので、それを音楽に昇華する生き方をしてきました。言葉にしたいことを伝えるために、音楽があったんです。だけど「もっと音を楽しむことをやりたい」という気持ちが芽生え、「クロール」を作りました。また新体制になったことで、良い意味でサウンドアプローチを変えるなどしているので、このツアーでは進み続けているHakubiをお見せできているのではないでしょうか。それでも伝えたいことの根底は決して変わっていません。

――12月11日には大阪・心斎橋BRONZE、2025年1月11日には京都・KYOTO MUSEでも公演があります。

大阪公演では、ずっと仲がいいTETORAとの対バン。"今までの私たち"を知っているTETORAに、"の私たち"でぶつかっていきたいです。この日しか起こらないことが、きっとあるはず。京都はまだ情報解禁されていませんが、自分たちがこれから戦っていきたいシーンとどう対峙するかがテーマ。そこでさらにHakubiのギアを上げていきたいです。

Text by 田辺ユウキ




(2024年12月13日更新)


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Release

Digital Single「クロール」

配信中

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Profile

Hakubi(ハクビ)…Vo.Gt.片桐、Ba.ヤスカワアルからなる、京都発ロックバンド。2017年11月にYouTubeにて公開された「夢の続き」のミュージックビデオが、⼀年足らずで100万回再生を突破し話題となる。2021年9月、メジャーデビュー。デビューアルバム「era」はCDショップ大賞2022に入賞。日本テレビ「バズリズム02」『これがバズるぞ 2022』でも5位にランクイン。ライブにおいても全国各地の大型フェスに次々と出演し、2023年11月にはZepp Haneda公演となんばHatch公演を成功させる。2024年9月、メンバー脱退を経て現在の2人編成となり、同年11月に新体制第⼀弾となる新曲「クロール」をリリースする。飾らない言葉で綴られた内省的な歌詞と、弱さを押し隠す力強い歌声。繊細さと激情を併せ持つ楽曲とライブパフォーマンスが多くの支持を集めている。

Live

Hakubi Tour 2024 “underwater”

【福岡公演】
▼12月14日(土) LIVE HOUSE OP’s
【香川公演】
▼2025年1月10日(金) DIME

PICK UP!!

【京都公演】

▼2025年1月11日(土) 18:30
KYOTO MUSE
整理番号付き自由-4000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。
※出演者が許可した場合を除き、写真撮影、録音・録画禁止。
※会場内は大変混み合います。軽装でのご来場にご協力お願いいたします。
[問]清水音泉■06-6357-3666

【千葉公演】
▼2025年1月17日(金) 千葉LOOK

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