ホーム > インタビュー&レポート > 彩吹真央「11人編成のアルゼンチンタンゴは贅沢の極み」
バンドネオン奏者の第一人者として知られている小松亮太のデビュー25周年記念コンサート『小松亮太&オルケスタ・ティピカ』が12月20日(金)、豊中市立文化芸術センターで開催される。4台のバンドネオンとヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ピアノというアルゼンチンタンゴの黄金期を象徴する楽器編成、ゲストには2011年上演のミュージカル『ロコへのバラード』で初共演して以来、コラボを重ねる彩吹真央を迎える。
2010年に宝塚歌劇団を退団した彩吹。その直後に出演した『ロコへのバラード』で、初めて本場のアルゼンチンタンゴで踊り、歌った。「この時、アルゼンチンタンゴは想像以上に耽美であることや、マニアックな規則があることなど、知らないことが山ほどありました。そういう中でも、小松さん率いるバンドの皆さんの生演奏で踊らせていただいたのは、今考えてもとても贅沢なミュージカルだったなと思います」。
宝塚では男役スターとして活躍した。退団後は、彩吹もご多分に漏れず「女性らしさとは何か」という地点からのスタートになった。その時、ひとつの答えを教えてくれたのがアルゼンチンタンゴだったと続ける。「タンゴを踊るとき、軸さえしっかりしていれば自然と男性ダンサーがリードしてくださり、女性の一番美しい姿を見せてくれましたし、これがリードというものか...とすごく勉強になりました。宝塚の男役をやっていて、これから女優として活躍したい、舞台のお仕事を続けていきたいという人によくお伝えするのですが、まずタンゴを習った方がいいと。これは私の勝手な持論ですが、アルゼンチンタンゴは女性らしくいることを自然と教えてくれるものではないかと思います。アルゼンチンでもショーを見ましたが、ダンサーは指先、足先まで本当に美しい。その表現も勉強になりました」。
情感豊かでドラマチックなアルゼンチンタンゴ。そこには男女の駆け引きもある。「男性にリードしてもらう部分もありながらも、ダンスにも歌にも女性の信念をすごく感じます。奥ゆかしさだけでなく、ひとりで立って生きていく強い女性像があって。足技でケンカみたいに見せる場面もあり、人間同士のぶつかり合いのような瞬間もあります」。
小松との出会いで、アルゼンチンタンゴの世界が開かれた。今回のコンサートも、小松からのアドバイスをきちんと表現したいと意気込む。「小松さんはセッションを大事にしたいとおっしゃいました。譜面どおりに歌うだけではなくて、心を自由にして歌うことも可能なのではと、すごく温かい言葉をいただきました。前回(2020年『小松亮太タンゴ五重奏 with 彩吹真央』)、歌わせていただいた歌もありますが、今回はそれをただなぞるだけじゃなく、そこからまた数年経った、"今の自分が歌うならこう‟という表現にトライできたらと思います」。
小松の人となりを尋ねると、次のように紹介してくれた。「少年のような方です。たまに"小松少年"とお呼びするのですが、小松さんはタンゴとバンドネオンの愛に溢れていて、バンドの皆様にオーダーされる時や、曲が始まった時の熱の入れ方、お客様にタンゴやバンドネオンの素晴らしさを語るときなど、本当に少年のようで。アルゼンチンタンゴの素晴らしさを日本で広めたいという思いをとっても熱く持っていらっしゃる方なので、私も微力ながらタンゴの良さをお伝えできたらと思います」。
そして、歌は終わりがないと話す。「宝塚の大先輩である鳳蘭さんと初めて共演させていただいた時に、「歌はずっと続けや」と言われました。鳳さんも続けていらっしゃるように、歳を重ねても、たとえ体が動かなくなったとしても、歌は歌えるはずやから歌い続けやと言ってくださったことは、ずっと私の中にあります。アルゼンチンタンゴも『ロコへのバラード』で小松さんとご一緒しなかったら、こんな贅沢なバンド編成で歌わせていただくこともなかったと思いますし、このご縁はこれからも大事にしたいなと本当に思います」。
アルゼンチンでも目にすることが少なくなったという贅沢な11人編成に、「できるなら私も歌わずに聴いていたい」と笑顔を見せる。「小松さん率いるバンドの方々はタンゴに特化しているので、各楽器の音はもちろん、それぞれがミックスした時の世界観は贅沢の極みです。聴いたことがある楽曲を生で聴けるというのもまた格別ですし、楽器それぞれにいろいろな技があるので、バンドネオンの動きと併せて、コンサートは視覚的にも面白いとも思います」。
取材・文/岩本
(2024年12月12日更新)
彩吹真央 Mao Ayabuki
大阪府出身。1994年宝塚歌劇団に入団。繊細な演技力と豊かな歌唱力を持つ男役スターとして活躍。退団後は舞台を中心に、ライブ・コンサートやラジオドラマなど多岐にわたって活動している。
主な出演作に、ジュディ・ガーランド役の体当たりな演技で観客を魅了した「End of the RAINBOW」をはじめ、「シラノ」「ロコへのバラード」「フリーダ・カーロ」「マリー・アントワネット」「チャーリーとチョコレート工場」「ロミオ&ジュリエット」等のミュージカル作品、「アドルフに告ぐ」「イヌの仇討(こまつ座)」「五番目のサリー」等のストレートプレイ作品などがある。ジャンル問わず多数の舞台に出演し、幅広いキャラクターを演じ分ける。
チケット発売中 Pコード:274-741
▼12月20日(金)18:30
豊中市立文化芸術センター 大ホール
一般-5500円(指定)
[出演]小松亮太&オルケスタ・ティピカ
[ゲスト]彩吹真央
※未就学児童は入場不可。
[問]豊中市立文化芸術センターチケットオフィス■06-6864-5000