ホーム > インタビュー&レポート > 大盛況の中、完走した全国ツアー 「Laura day romance tour 2024 crash landing」、 11/7(木)にZepp Shinjukuで行われた最終公演の模様をレポート
Laura day romanceが秋の全国ツアー「Laura day romance tour 2024 crash landing」を全国6ヶ所で開催し、11月7日(木)のZepp Shinjukuでファイナルを迎えた。2024年は年初から現在のバンドのモードを明確に示すデジタルシングル「Young life / brighter brighter」、「透明 / リグレットベイビーズ」、「渚で会いましょう」、「Amber blue」の4タイトルを春夏秋冬にわたってリリース。年が明けて2025年2月5日には3rdアルバムの前編『合歓る -walls』をリリースすることも発表され、まさに次のフェーズに向けて活動中だ。前出の今年の4タイトルを軸にどんなライブを展開してくれるのか注目が集まる中、年内最後のワンマンライブには多くのリスナーが詰めかけ、過去最大のキャパシティは見事にSoldoutと相なった。
場内が暗転すると飛行機のポーンというサイン音に続きジェット噴射の音、忙しなくカセットテープを早送りしては止める音、アナログ電話のコール音のSEが流れる。ツアータイトルの「crash landing」=不時着がイメージされる演出は見知らぬ私たちが歌舞伎町の真ん中に不時着したような感覚に誘う。鈴木迅(Gt)、礒本雄太(Dr)とサポートメンバーの内山祥太(Ba)、小林広樹(Gt)、西山心(Key)が拍手に迎えられてステージに登場、少し遅れて井上花月(Vo)も現れると、ゆったりとしたビートがループする「リグレットベイビーズ」が滑り出す。音楽で繋がることを信じる孤独な一人ひとりをイメージさせるこの曲でライブをスタートしたことに胸の奥が温まると、井上が短く挨拶をして、ピアノのメロディがライブアレンジで加わった「rendez-vous」。自然と体が揺れるこの曲がエンディングを迎えると、喝采がバンドを包んだ。じっくり演奏に対峙するオーディエンスの感銘の大きさは拍手の長さが物語っている。そして鈴木のまろやかなリフのイントロにビビッドにフロアが反応して「sweet vertigo」へ。Aメロでの井上の囁くような生声とオクターブ上のコーラス、セクションごとに音色を変える鈴木のギター、そしてアウトロで景色が一変するアレンジ。端正な演奏でありつつ、タイトル通り甘い眩暈を覚える構成と音色の変化に意識が飛ばされる。イントロの天才と呼びたい曲が多い中でも「sweet~」、印象的なベースラインとギターリフを持つ「透明」と続けられると、一瞬も見逃したくない・聴き逃したくない気持ちが強まるのだ。それにしても鈴木の足元の夥しいエフェクターには眼を見張る。パッと聴きシンプルなポップソングを一編の映画のような奥行きを与えるライブアレンジの秘密を見る思いがする。
グッとBPMを落とし、序盤はギターとドラムのみの隙間の多いアンサンブルでスタートした「well well | ええと、うん」は次第にウォール・オブ・サウンドを形成し、幻惑的なサイケデリアが立ち上がる。さらに「wake up call | 待つ夜、巡る朝」ではステージ上は暗く、フロアにも伸びる白いライトが4つのミラーボールを照らし光の粒を振りまく演出が見事。甘く囁くような井上のボーカルが、姿が見えない分、どこか遠くから聴こえるような効果を生んでいたし、際立つ音の一つひとつに没入させてくれたのだ。
序盤ですでにローラズの世界に肩まで浸った気持ちになったところで、井上がSoldoutに謝辞を述べ、「最後まで楽しんで行ってください」と話す。なんら奇を衒うところのない彼女の様子はこのバンドの核だ。ここまでの没入感から一転、デビューアルバム『farewell your town』から続けて2曲「worrying things」「lookback&kicks」をセットしたことで音楽性のレンジを垣間見せてくれたのも楽しい。シャッフルの楽しいナンバーでありつつ、グランジテイストのリフが飛び出した「worrying things」、ポストパンクなタイトなビートの上を駆けるような井上と鈴木のツインボーカルが清々しい「lookback&kicks」が久しぶりにライブでこれらのレパートリーを聴くファンを揺らしていた。普遍的なグッドメロディや60年代っぽい空気を孕んだポップスを思い出させながら、彼らがリアルタイムで吸収した00年代以降のビートやギターの音色が懐かしさに終始しない音像に着地する様子が、ライブだと手に取るようにわかるのだ。そしてリフもビートも歌メロのフロウも同調してグルーヴを作る「アイデア」では短いソロ回しも盛り込んで、プレイヤーに視線が送られる。
セットリストの折り返しを過ぎても井上は1曲が終わる時、それも時々「ありがとう」と言葉を発する程度で、長いMCもなく演奏に集中している。それはフロアも同様で「次はなんだろう」という無言の期待がいい緊張感をもたらしているからだ。そこに「winona rider | ウィノナライダー」の歌と演奏が同時に走り出す。井上の少し舌足らずなボーカルの中に"乳白色の思いが"とか"誰かにもらった綺麗な靴では"といった抽象と具体が、はっきりとはしないけれど思い出を過去のものにしていく。間奏の高音弦のベースフレーズが切ない。そしてアウトロに向かってピアノやギターの不安な旋律が重なり音も厚くなっていく様はちょっとくるりのロック曲のアンサンブルを想起させた。ローラズの合奏のカタルシスの意外な側面でもあると思う。礒本のスネアとリムショット両方を活かしたプレイが耳を引く「waltz | ワルツ」も合奏のカタルシスを十分に発揮。ハチロクの大きなグルーヴに乗って鈴木が弾いた泣きのギターソロではフレット上を動くきゅっという音すら聴こえ、ピークに達すると背景の黒い緞帳が強い光に照らされステージ上がモノトーンに変化。見る人それぞれに感情を動かされる素晴らしい演出だった。そこから今年のシングルで、人や街に対する視線にタフさが加わった「Young life」に繋げていく曲順も秀逸。シューゲイズな音の洪水を経て揺蕩うようなメロディとテンポの「brighter brighter」へ。エレクトロニックな音楽での重低音めいたベースがノスタルジックな曲調ながら現実に向き合っていくこの曲のアンビバレンツを表現しているかのよう。ここの2曲で改めて彼らの胆力を思い知った。意志の力を受け取った後、おとぎ話のような「little dancer | リトルダンサー」を届けてくれたことで、張り詰めていた緊張が解けた。
続くセクションは旧知のファンがイントロで沸いた「fever」でオルタナティヴなフォークというべき親しみやすいメロディを奏でる。続く「sad number」で明快な8ビートがグングン歩みを進めていく印象を与え、深呼吸するような大きなメロディがスライドギターの滑らかさの上に乗っていく「happyend | 幸せな結末」まで、ローラズのメロディの強さを体感させてくれた。その前のセクションののめり込むようなアンサンブルとは対照的なウォームさで、ライブが始まった時間から旅を経てきた果ての安堵感のようなものに包まれた。
本編ラストは「渚で会いましょう」。ギターの残響音だけでなんとなく海を想起してしまうのは曲全体を知っているからではあるが、もし海が思い浮かばなくても世界観のあるギターサウンドではある。イントロで井上が「これで最後の曲です」と告げると、残念そうな声も上げづらい。礒本のトライバルな打音と鈴木の低音弦のリフ、そしてフックのある井上の歌メロのなんと中毒性の高いことか。ライブでの再現が難しそうなこの曲が完全にバンドのものになっているのも驚きだが、テンポを落としたセクションから転調するCセクションまでの構成の見事さ、その複雑な構成を弛緩させないメンバー全員の曲の理解に感銘を受けてしまった。1時間半が経過していたが、体感はその半分ぐらいだ。
ひたすら拍手だけでアンコールを求めるオーディエンスもローラズのファンの特徴を物語っているが、再登場したバンドもまずは演奏。フィードバックノイズがサイレンのような出だしから「大停電」が始まると拍手と歓声が上がり、曲の途中で「夜のジェットコースター」に繋げていく。初期からのファンには特に嬉しい選曲だったはず。ツアーファイナルでもあり、メンバーがやっとMCらしいMCを始める。井上は過去最大キャパがSoldoutしたことに対してオーディエンスに感謝が止まらないと話し、「元々はフジロックに無料で行きたいという邪な気持ちで始まったんですけど」と結成の経緯に遡ると、鈴木は「フジロックに無料で行きたい望みはまだ持ってるんでいつでも声かけてください」とオチをつけた。流行にとらわれない自分たちの音楽が支持されていることへの素直な感謝を表す井上は歌っている時の姿勢同様清々しい。そしてアンコールに新曲「Amber blue」を持ってくる強心臓(!?)ぶりも素晴らしいが、この曲のビートルズの「サージェント・ペッパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド」を想起させるアイデア豊富なアレンジ、パレードのような楽隊感にまた新しいローラズを感じさせたことはもっと素晴らしい。そして締め括りには東京公演ならではの「東京の夜」を披露して、街に散っていく私たちを送り出してくれたのだった。
なお、すでに発表されている通り、2025年4月26日(土)には大阪城音楽堂、4月29日(火)には東京国際フォーラムホールCにて「Laura day romance oneman live 2025 wonderwall」が開催される。
Text by 石角友香
Photo by SHOTARO
(2024年11月22日更新)
01. リグレットベイビーズ
02. rendez-vous
03. sweet vertigo
04. 透明
05. well well | ええと、うん
06. wake up call | 待つ夜、巡る朝
07. worrying things
08. lookback&kicks
09. アイデア
10. winona rider
11. waltz
12. Young life
13. brighter brighter
14. little dancer | リトルダンサー
15. fever
16. sad number
17. happyend | 幸せな結末
18. 渚で会いましょう
En1. 大停電(⼀節)
En2. 夜のジェットコースター
En3. Amber blue(新曲)
En4. 東京の夜
配信中
1. Amber blue
配信リンク
https://lauradayromance.lnk.to/Amberblue
2025年2月5日(水)発売
Digital
[Track List]
01. 5-10-15 I swallowed|夢みる手前
02. Sleeping pills|眠り薬
03. Amber blue|アンバーブルー
04. 深呼吸=time machine
05. 転校生|a new life!
06. mr.ambulance driver|ミスターアンビュランスドライバー
07. subtle scent|微香性
08. プラットフォーム|platform
09. smoking room|喫煙室
10. 渚で会いましょう|on the beach
▼2025年4月26日(土) 17:30
大阪城音楽堂
全席指定 一般-5800円 全席指定
U-22割-5000円(2003年4月2日以後に生まれた方対象)
※小学生未満膝上鑑賞可。ただし、座席が必要な場合はチケット必要。U-22割の方は、年齢確認のできる写真付き身分証明書1点、写真がない場合は2点(学生証・健康保険証など)を入場時にご提示ください。
[問]GREENS■06-6882-1224
【東京公演】
▼2025年4月29日(火) 東京国際フォーラム ホールC
オフィシャルHP
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