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伝説のロックンロールバンド、BCG ROCKERSのリーダーで
2019年からソロ名義で活動する愚図ケンジ率いる
愚図ケンジ&ショットガンロッカーズインタビュー

1981年に結成された伝説のロックンロールバンド、BCG ROCKERSを経て、2019年からソロ名義で活動する愚図ケンジが愚図ケンジ&ショットガンロッカーズとして初めてリリースするニューアルバム『火の玉ロックンロール』。新曲2曲とBCG時代の未発表曲やセルフカバーなどで構成された全14曲となる今作を提げて、リリース当日の12月7日(土)に心斎橋AtlantiQsでファン待望のライブが開催される。今回ぴあ関西版WEBでは愚図ケンジ & ショットガンロッカーズ(ダイサクとカツミ)の3名を直撃! 新作リリースまでの経緯と“ロックンロールはスピード感が命!”という緊張感みなぎる唯一無二のライブに向けての意気込みをフランクに語ってくれた。愚図ケンジの原点となる音楽のルーツやオートバイへの一途な愛、メンバー間の熱い信頼関係にグッと心掴まれるインタビューをどうぞ。

バンド時代からのモットーで演奏は一発録り
ライブでやってた音をそのままパッケージ


――愚図さんはこれまでにBCG ROCKERSのバンド活動があり、その後、アコースティック・ユニット"愚図"を結成、2009年にバンドを解散して現役を引退されましたが、2019年にロックンローラー"愚図ケンジ"として音楽活動に復帰されています。そして今年、12月7日にニューアルバム『火の玉ロックンロール』がリリースされますね。今回、愚図ケンジ & ショットガンロッカーズとしてリリースしたわけは?

愚図「基本的にはソロで活動してるんですが、今回はずっとサポートしてくれている二人(ダイサクとカツミ)と共にバンドスタイルで曲を作って、アルバムをレコーディングしたので、愚図ケンジ&ショットガンロッカーズとしてリリースすることにしました。この名義では初めてですね。ダイサクは元BCG ROCKERSのメンバーで、彼(カツミ)はキリサキジャックという自分のバンドをやっていますが、ずっとサポートミュージシャンで手伝ってもらってたんです」

――ニューアルバム『火の玉ロックンロール』はどのように制作されましたか。

愚図「2019年にソロで復活してからずっと出演していたFM大阪の番組(『第一精工舎 THE FRONTIER OF ROCK'N ROLL』)が昨年9月で一旦終了したので、次のライブに向けて新譜を作ろうということに決めて制作に入りました。新曲を何曲か書いて、バンド時代の未発表曲もたくさんあったし、その中から今世に出したい曲をこの3人でアレンジし直して。 結果的に全14曲になったんですよ。その音合わせして、アレンジして、リハ積んで、音録りしようとなったのが4月ぐらいです。そこから7月いっぱいまでかけてレコーディングして、終わったのが8月初旬ですね」

――収録曲として新しく書き下ろした曲と未発表曲について教えてください。

愚図「新曲は『フルスロットル』と『あばた』の2曲です。『ジュリア』と『愚か者の唄』はBCG ROCKERSの1stアルバム『神風』に収録している曲のセルフカバーで新バージョンになります。アコースティックの『何気ない週末』は愚図時代の未発表曲で、あとの未発表曲はBCG ROCKERS時代の曲です。ライブではやってましたが、音源化してリリースはしてないので、 BCG時代の後半にライブに足を運んでくれてはった人にとっては念願の音源化だと思います」

――削ぎ落としたシンプルな音が胸に刺さります。そんなサウンド面のこだわりは?

愚図「バンド時代からのモットーで演奏は一発録りなんです。あえて今の時代を意識せずに、自分らが何十年やってきたゴリゴリの音にしたんです。ライブでやってた音をそのままパッケージしました。綺麗にまとめるんじゃなく、ギター・サウンドのエグ味とかもほんとにライブで出してたような音を再現しようと思って」

カツミ「アルバムのコンセプトはケンジさんに任せているので、(自分達は)あくまでそれを表現する。ケンジさんが言うたように、レコーディングのために着飾るんじゃなくてライブをパッケージしてる。サウンド的にも唯一無二かなと思います」

ダイサク「僕はBCG ROCKERSで一緒にやってたんですけど、今回は愚図ケンジのソロ名義なので、もう完全に裏方に徹しようと。僕的な感覚で言えば、もうリーダー(=愚図ケンジ)がギターを弾いて歌ってる、その弾き語りの上にどれだけのせれるか。だから軸になっているのは歌とギターですね」

愚図「何十年とやってきて、やっぱシビアに自分の商品価値というのは冷静にわかってるところがあるんで。上手いとか下手とか、自分がこうありたいとか関係なくて。バンド時代からそうなんですけど、やっぱ自分の武器って歌声とギターワークなんですよね。だからそこを前面に出せれば、他の方が簡単に真似できるところはないなと」

ダイサク「ごめんな、自分で言わせて。俺らが言うたらええのに言葉がうまいこと出てこんかった(苦笑)」

愚図「いやいや(笑)、だからそこを自分もバンドの時よりもっと出そうかなっていうのは最初からあったんで。それをこいつらはよくわかってるから、ミュージシャンとしてはもう完全に黒子に徹してくれてますよね。でもそれが誰でもいいんじゃなくて、今俺が言ったことをちゃんとわかってるからこそ、(バンドメンバーとして)ここでおってくれるから。ミュージシャンって絶対に我が出るじゃないですか。自分の好きな出したい音色とかスタイルがあるから。でも、最終的に自分が奏でてるアンサンブルのサウンドを届ける先はどこかをちゃんと見てやらないと。まして、俺も自分がやりたいことをやるんじゃなくて、 自分のロックに触れてきてくれた人たちにどう刺さるかを意識しながら作っていってる。だからぶっちゃけ自分が好きなこととか、自分が気持ちいいこととか、そんなの全然考えてないですね」




反骨心を歌う70年代フォークがルーツ
エレキに持ち変えてバンドを作るまではフォーク少年だった


――そんな愚図さんの音楽的なルーツというのは?

愚図「今作にさだまさしさんの『案山子』という曲を入れさせてもらったんですけど、もう1曲、アルバムには入れてないんですけど、この3人でアレンジして やってみた曲に中島みゆきさんの曲もあって。俺のルーツがそこなんです。元々、70年代フォークから(音楽に)入ってるんです」

――愚図さんといえばロックンロールとパンクのイメージが強いのですが、実はルーツはフォークなんですね。

愚図「ギターと出会ったのが小学生の時で、当時はフォークブームだったんです。小学校3、4年生の時に親にアコースティックギターを買ってもらって、吉田拓郎とか、泉谷しげるとか、あのへんから入ったんです。そのあと中島みゆきを知って。自分が70年代フォークを好きなのは反骨心を歌ってるから。そういうイメージがわかんないかもしれないですけど、実は70年代フォークの人はものすごい社会派のメッセージを歌ってるんですよ。で、それをもっとエグい形で出してきたパンクロックが80年に出てきて衝撃受けるんです。これや!と思ってそこからエレキに持ち変えて、これをかっこよく日本語でやりたいなと。そういうアンテナを張ってる時に日本ではアナーキーとかが出てきて。これや!こんなバンド作ろうって作ったのがBCG ROCKERSなんです。だからエレキに持ち変えてバンドを作るまではずっとフォーク少年だったんです」

――フォークからパンクを経て、BCG ROCKERSが誕生したと。

愚図「そうですね、だからヒントになったのは、80年代初頭に出てきたアナーキー、ARB、ザ・ルースターズ、あのへんがドーンと出てきた時に、これやー!と。当時、ザ・クラッシュとかセックス・ピストルズとかに影響されてるバンドっていっぱい出てきたんですけど、そうじゃなくて、日本のロックバンドを作りたかったんです。日本語を大事にして、メロディーも日本のちょっと懐かしい昔の歌謡曲とかに通じるような。だから、バンドを組もうと思った中学生の時は、ARBとかTHE MODSとかアナーキーとかとか聴き漁って、ライブとかも行ったことあるんですけど、自分がBCG ROCKERSをスタートさせてからはほとんど聴いてないんですよ。で、何を聴いてたかというと、今もそうなんです70年代日本のフォークから歌謡曲です。ちあきなおみさん、中島みゆきさん、吉田拓郎とか。だから、うちパッケージはゴリゴリのロックロールやけど、音並びとか言葉とメロディーの作り方は70年代なんですよ」

カツミ「"ケンジさんのルーツはどこですか?"て、対バンの人によく聞かれたな。若い子はそういうルーツがちょっと見えないんでしょうね」

愚図「同世代でもゴリゴリのパンク畑からきてる連中は、イベントとかで一緒になっても、自分らが作るものとちょっと違うから。 "ルーツはどこですか?"と聞かれるんで、そのたびに、ルーツはフォークやと言ってます」

――ちなみに、歌詞の中ではバイク愛を歌われていますよね? 『火の玉BABY』もそうだと思いますが。

愚図「そうです! ぼやっと聞いてたら女性と絡んだ話かと思うかもしれませんけど、自分の乗ってる愛車を女性に例えた歌ですね。完全なフィクションってあんまり書きたくないです。自分が経験したことか、ほんまに知ってること、そのシーンを切り取った歌詞しか書きたくないです。だからこの『火の玉BABY』をBCG ROCKERS時代に音源化しなかった理由もそこにあるんです。景気悪くなって、一回単車を手放したから、この歌歌われへんと封印したんです。(今は)また乗りだしたからこの曲を書いたんですよ。今まで50数年生きてきた中で1番好きなものは何かって聞かれたらオートバイです」

――バイクではなく、オートバイなんですね。

愚図「(そういうほうが)なんか昭和感しませんか? もう我々は月刊オートバイを中学生ぐらいから読んでたので(笑)。我々の世代って、男の器を測るバロメーターは乗り物にどれだけ強いかと喧嘩がどれだけ強いかなんですよ。オートバイとか車乗らしてドンくさいやつはバカにされるし、オートバイと車に達者なやつはかっこいいしモテます。オートバイはひとつ(運転を)間違えたら一瞬で死ぬんですよ。だから男の子がやるもっとも危険な遊びなんです。安全運転ならまだしも、我々は飛ばすことが大前提ですから(笑)。ギリギリのところで命かけてる。そこがロックンロールと通じるんですよ」

――そういう精神が歌詞にも反映されていると?

愚図「そうです。俺、作りもんは作りたくなくて。だからメジャーとも折り合いがつかなかったんです。いろいろお話はいただきましたけど、売れる方向に修正かけないといけないから。俺は1ミリの修正も許せない」

――そういう精神で現在に至ると。

愚図「そうです」



バンドの時は失速したくない
スピード感が命!覚悟しとけよ!


――アルバムのリリース日となる12月7日(土)に心斎橋AtlantiQsで開催されるライブはどのようなステージになりますか。

愚図「レコ発のライブなので、アルバムの曲をやります。これはBCG時代から自分がこだわってることなんですけど、我々はやっぱロックンローラーなので、ロックンロールをやってる瞬間を感じ取ってもらう以外に何も必要ないと思う。だからもちろんほとんどMCもしないですしね。アコースティックの時は"俺はフォークシンガーや"って心持ちでステージに上がるので、昔ながらのフォークのコンサートの転がし方をするんですよ。ピリピリした曲ばっかりなんですけど、それでお客さんがグッと緊張しはったら、曲が終わったらもうコテコテの大阪弁で全然意味のないことを言うて、また次の曲に行ったりします。コマーシャルはしないから基本。で、バンドの時は失速したくない。ロックンロールなのでスピード感が命。例えばセットリスト10曲でライブをするとします。これは10曲やるんじゃないんですよ。10曲分のメドレー1曲でやります」

――ということは曲間は無し?

愚図「一応、一曲終わると締めて、すぐ次の曲をやります。流しっぱなしです。よくライブで、一曲終わって次の曲までの間に、照明落ちて、ボーカリストはドリンク飲んで、バックミュージシャンがチューニングしたりっていう間が空きますよね。あれが嫌なんです。オーディエンスからしたらあれでちょっとトーンダウンしませんか‏? あれはしない。意味のない間はいらない」

――演奏する方もずっとすごいテンションですよね。そこもある意味命懸けで挑む?

愚図「はい。で、俺はさすがに酸欠の問題があるので(笑)、そこはちょっと考慮して、まず演奏に入らすんです。前奏のアレンジ変えてちょっと長めにしたりする。で、そこで呼吸を整えます」

ダイサク「え、大丈夫? 先にそれを言っちゃうと、そうせざるを得なくなるけど(笑)」

愚図「うん。だからお前ら頑張ってよ! 俺はその間に休むから、お前ら前奏とかバーンと入ってんのに、俺1人ドリンク飲んで呼吸整えて休憩する。普通のワンマンライブは1時間半ぐらいやるじゃないですか。俺らはメドレー形式でやるから、ワンマンでも1時間かからないと思うんですよ。一曲3分で計算したら、アルバム収録曲14曲全部やっても42分。でもオープニングSEとか、曲間ちょっと引っ張ったりする部分があるから40、50分かな」

カツミ「僕はもういちファンで(BCG ROCKERSを)観てたから。それがすげーかっこええなと」

愚図「俺がBCG ROCKERS時代に、こいつは別のバンドをやっててよう共演とかもしてたんですけどね」

――では、12月7日(土)は"伝説のライブ復活"っていうことですね。

愚図「そう。このライブの仕方はね、同業者のライバル連中とか後輩の連中も、うちのステージ観て真似するんですけど、結局みんな続かないんです。だから、 覚悟してきてください!」

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Text by エイミー野中




(2024年11月25日更新)


Check

Release

Album『火の玉ロックンロール』
2024年12月7日(土)発売

《収録曲》
01. 火の玉BABY
02. スープ
03. ダイブ
04. フルスロットル
05. あばた
06. 東京ライダー
07. 泥の中のダイヤモンド
08. ジュリア
09. コウモリ
10. 赤いスイングトップとブルースハープ
11. 最低の夜
12. 愚か者の唄
13. 何気ない週末
14. 案山子

Profile

ぐずけんじ…人生の半分以上をロックンロールとオートバイに捧げている男。1981年にロックンロールバンド、BCG ROCKERSを結成。関西各地のライブハウスにて精力的な活動を展開。通称「城天(シロテン)」の先駆けとなって大阪城公園でのストリートライブ活動も行う。ストリートライブは、大阪ミナミのアメリカ村三角公園など、あらゆる場所にて神出鬼没のストリート・ゲリラライブを敢行。1995年、1stアルバム『神風』を発売。TOWER RECORDS心斎橋店で週間売り上げベストテンに入る。ストリート発のシンプル&ストレートなロックンロールは老若男女を問わず支持され、数々の伝説を生んだ。1996年、アコースティック・ユニット“愚図”を結成。2007年、ショットガンライダーズ創業。同年、映画『クローズZERO』に自マシンと共に出演。2009年にバンドを解散して、(ミュージシャンの)現役引退。2019年、9年振りにロックンローラー“愚図ケンジ”(ソロ名義)として音楽活動復帰。ラジオ番組、FM大阪 851(FM OSAKA) 「第一精工舎 THE FRONTIER OF ROCK'N ROLL」(毎週日曜20:30~21:00 ※2023年9月末 終了)へのレギュラーDJ出演。2024年12月7日、 愚図ケンジ&ショットガンロッカーズ名義でニューアルバム『火の玉ロックンロール』をリリース。同日、心斎橋AtlantiQsでライブを開催する。

愚図ケンジ& ショットガンロッカーズ
オフィシャルサイト

https://www.shotgun-riders.net/


Live

『火の玉ロックンロールショー』

チケット発売中 Pコード:530-410
▼12月7日(土) 19:00
AtlantiQs
スタンディング-3000円(ドリンク代別途要)
[出演]愚図ケンジ&ショットガンロッカーズ
[ゲスト]SUIREN(オープニングゲスト)

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