ホーム > インタビュー&レポート > 降ったり止んだりの雨も、上等! Sorry Youth、DOPING PANDA、the band apart 3組が作り出す骨太なサウンドに脳が痺れた 『SMOOTH LIKE GREENSPIA 2024 with Mellow Fellow』 ライブレポート
【拍謝少年 Sorry Youth】
雨足が強まる中、ステージに現れたのは維尼(ウェニ/g)、薑薑(ジャン・ジャン/b)、宗翰(チュンハン/ds)からなるオルタナティブロックバンド・ Sorry Youth。活動拠点である台湾から来日を果たし、ジャパンツアー開催中でのゲスト出演だ。なんと彼ら、7日間という短い滞在中にライブ出演が6本(うち4本が大阪公演!)という怒涛のスケジュール。しかし疲労の色も全く見せず、「噪音公寓」でライブをスタートさせる。エモーショナルなメロディーライン+3ピースながらどっしりとしたそのサウンドに、彼らの楽曲の何よりの特色である台湾語の歌詞が乗って...めちゃくちゃ斬新かつめちゃくちゃアジアの風を感じるロックだと脳が痺れる。
ジャン・ジャンが日本語で「コロナ中にthe band apartと配信で共演したことがあったのですが、やっと今日会えました。the band apart、DOPING PANDAと共演できてすごく光栄でうれしいです」と流暢に挨拶(スタッフ情報では、来日中にメキメキ日本語が上達したとのこと)すると、観客の大きな拍手を受けつつ「踅神夢」「歹勢中年」を次々と披露していく。中国語とはニュアンスの異なる台湾語で歌うのが彼らの特色だと先述したが、メンバー全員がそれぞれボーカルを取るのも彼らの持ち味。1曲の中でもボーカルが変わっていくと歌のニュアンスが変わってくるので目が離せない。
そしてウェニが「ここはとても美しい会場です。みんなが楽しんでくれたらうれしいし、今日をハッピーにできたら」と英語で話し、フワーッと広がっていくシンバルの音があわい揺らめきを感じさせるなぁと思っていたらどんどん音が骨太になる「暗流」を演奏する。会場を取り囲む緑に溶けこむサウンドに、雨模様もいい感じに味方となっている。演奏を終えたチュンハンが「日本語はあまり上手に話せません。だから私たちは音楽に語らせます。ここで演奏ができて幸せです」。この言葉に大きな拍手が湧き、その後に日本語で放たれた「みなさん、おつかれさまでした! さいこうです!」という言葉にもより大きな拍手が。そしてラストソングとなった「你愛咱的無仝款」を終えると「しゃしん、OK?」と聞くジャン・ジャンに、会場から「オッケー!」と大声が飛んでいたのもいい瞬間だった。
【DOPING PANDA】
雨、止んだ? と思った途端にまた降ってくるということを繰り返している間に、いよいよ響き渡るSEの音。その弾むビートに合わせて手拍子が起こり始める。颯爽と現れたHayato Beat(ds)とTaro Hojo(b)はバンドのタオルを頭上に掲げてステージへ。そしてYutaka Furukawa(vo&g)が飄々と登場し、いきなり3人の音が放たれる。「Crazy」で幕を開けたライブは、音を切らすことなくダンサブルなリズムが光るロックチューン「beautiful survivor」、骨太なベースの音が体を貫くように響いた「Lost & Found」まで空間に音の余白を許さないほど怒涛の勢いで一気に3曲。ようやく息がつけたと思ったら、雨があがっていることに気づく。
「あいにくの雨模様でございます。このくらいの時間から大雨の予報でしたが、バッチリ晴れてます。the band apartは本当に雨を連れてくるバンドで、一昨年の『ITa FES』も大変なことになっていました。僕ら雨に関してはどっちが勝つかなみたいなところがあったけど...引き分け(笑)」とFURUKAWA。喋りすぎて雨が降ってきてもアレなんで、6月にドーパン×バンアパでリリースしたスプリットEP『MELLOW FELLOW』から「goodbye to the old me」が放たれる。2022年に再結成されてからドーパンの楽曲制作意欲には目を見張るものがあるが、その数ある意欲作の中から最新曲がチョイスされ、彼らの最新のモードが示される(ちなみにこの曲の日本語詞の部分が超絶沁みるので、ぜひ聴いてみて欲しい)。そして同じスプリットから届けられたのは、ドーパン・バンアパ両バンドのファンが狂喜したバンアパの「DEKU NO BOY」のカヴァー! モータウン・ビートを取り入れた軽やかなアレンジが、レインコートを着た人々を踊らせる。こういう2曲が披露されることこそ、旧知の2組が同じステージに立つ意味をグッと際立たせてくれる。
雨がまた、降ってきた。「今年はスプリットを出して、今日で決まっている『mellow fellow』が終わっちゃうのが寂しくてですね、来年も懲りずに『mellow fellow』を僕1人でも働きかけていこうと思っています。誰かがやらないとまた20年ぐらいやらなくなっちゃうから! こんなのはやったほうがいいんだよ! 7人の中で俺だけしか熱い気持ちを持っていなかったとしても構うことはない。俺は言い続けるよ!」とFURUKAWAが楽しそうに大声を出す(それをHayato BeatとTaro Hojoが笑いながら見守る図も最高だ)。そして彼は言い放つ。「もうゴタクはこのくらいで、ドーパンとバンアパが揃ったらどんな日になるか、そういうのをやらないと。ここからノンストップでいっていい? 懐かしい曲やります!」。鳴り響いたイントロに、歓声と拍手。「Go The Distance」を皮切りに"Mugendai dance time"へと突入する。Disneyの名作『ヘラクレス』の主題歌のドーパンらしすぎるカヴァーなのだが、2000年代前半に発表されたこの人気曲に心のエモスイッチがポチっ。さらにその気持ちに火をつけるかのごとく3人が作り出す音のグルーヴに痺れた『The Fire』、雨が強くなる曲の後半で客席からの歌声が会場にこだました「Imagine」、そして2002年リリース・結成初期の曲「transient happiness」へ続くとFURUKAWAは時にギターの手を止め、ハンドマイクを手に歌い、観客を煽る。「愛してるぜ、大阪!」と投げられた言葉に、歓声がわく。そこから弾むビートに会場がダンスフロアと化した「beat addiction」、「MIRACLE」まで、後半に強く降り出した雨なんてもうどうでもいい...! むしろ気持ちいいし! と思えるほど、見ているこちらの体からも湯気が出てきそうなパフォーマンスだった。
【the band apart】
サウンドチェックでメンバーが登場したところから、恐ろしくするりと1曲目の「夏休みはもう終わりかい」でライブをスタートさせたthe band apart。先ほどギンギンに会場の温度を上げ切ったDOPING PANDAからステージを引き継ぎ、荒井岳史(vo&g)の歌声にもスーッと温度を平熱にしていくようなリラックスムードが流れていく。そうかと思えばド級に重いビートと川崎亘一(g)のギターの音色に痺れた「The Ninja」で会場のムードは一変。グググッと熱が上がっていくのが肌でわかる熱いグルーヴが生まれていく。1曲目から2曲目へのコントラストが鮮やかだ。そして音の始まりと同時に手拍子が始まった「higher」では観客の体がゆらりゆらりと揺れ始め、ひと際大きな歓声で迎えられた「Eric.W」へ、人気曲が続く。
「今回8回目ということでありがとうございます! Sorry Youthがジャパンツアーの中にここを入れてくれてね。そしてDOPING PANDAがね、今年は『with mellow fellow』ということでやらせてもらっています」と荒井が話し始める。自分たちとドーパンとの関係性については「古い付き合いです(笑)。とりあえずFURUKAWAには『mellow fellow』さえ与えておけば、明るく元気にやってくれるから!」と愛あるイジりで紹介。その流れでスプリットEPから...とドーパンがこの日の幕開けに披露した「Crazy」のカヴァーが奏でられる。夜の闇をぐんぐんと進んでいく疾走感あるサウンドを聴かせたかと思えば、「Circles and Lines」や「Game, Mom, Erase, Fuck, Sleep」では体を揺らしたくなるサウンドを披露(原昌和/Ba&木暮栄一/ds)のコーラスも美しかった+川崎のギターを弾く様も圧倒的だった)し、とにかく巧みに気持ちのいい夜を演出してゆく。
そして木暮が口を開く。「みなさんお足元の悪い中、ご足労ありがとうございます! こんな悪天候の中、かっぱまで準備してきてくれるのは本当に頭が下がります。ここにきてくれているのは、共通項があるとすればSorry YouthかDOPING PANDAかthe band apartの音楽な訳ですから。誇り高い気持ちになっています」と感謝を述べ、じゃあそういう曲をと届けられたのは「夢太郎」。ドーパンとのスプリットEPに収録された"バンド・リアレンジ・ヴァージョン"で披露されるところに、今日この曲が演奏される意味を噛みしめる。この曲を聴いている間にもどんどん雨足が強くなり、本当に雨を呼ぶバンドだなぁとだんだん面白くなってくる。悪天候をもろともせずタイトなサウンドに体が揺れた「cerastone song」、このタイミングで演奏されたことが恐ろしいほどフィットする「夜の向こうへ」と、重ねるごとにパフォーマンスが高まってゆく。
そして「8回やらせてもらって、コロナ禍も休まずやってきました。GREENSとぴあ、彼らがいなかったらできないことです。来年は9回、再来年には10回になるということで。ここまでできたこと、ありがたく思います。いろんな方に支えられてやらせてもらっています。本当に今日は雨の中、ありがとうございました。最後の曲です」と、荒井の言葉に続き
本編のラストを飾ったのは、「DEKU NO BOY」。ドーパンが先に披露した同曲へのアンサーとも取れるし、『with mellow fellow』というイベントタイトルの意味を見せつけるような曲のセレクトに誰もがニヤリ。心地よいサウンドと荒井の歌声に、夜空に溶けていくようなエンディングを見せてくれた。
アンコールを求める手拍子に応えて、ステージに現れたのはビールを手にした荒井と木暮。「ありがとうございます。ちょっと浮かれて酒なんか持ってきちゃって(笑)。『mellow fellow』というスプリットが出て、当然(イベントタイトルも)『mellow fellow』なんでね? もちろんやります。むしろこれをやりにきたと言っても過言じゃないくらいで」と話しているうちにバンアパ&ドーパンのメンバーたちがステージに揃う。さぁ曲を...と準備を始めたところでFURUKAWAが忘れとりに戻るという。そうして戻ってくるとFURUKAWAの手には小さなバースデーケーキが。
「昨日なんだけど、まあちゃん(バンアパ・原)が誕生日なんで!」というと、会場から\おめでとーう!/の掛け声がかかる。FURUKAWAの歌おうぜ! という合図でハッピーバースデーと歌われ、原は観客からの歓声に笑顔でペコリペコリ。すると突然客席から飛んできた「いくつになったんー?」という声に、笑顔ながら「おめぇ誰だよ」とピシャリ。笑いが止まらない荒井の「とりあえずやる(笑)?」、FURUKAWAの「俺たちの新しいアンセムを聴いてください!」の言葉に続いてバンアパ×ドーパンの「mellow fellow」をドーン!ドラムはドーパンのHayatoが務め、木暮は身軽にタンバリンを打ち鳴らしながらステージを歩き回っていて実に楽しそうだ。
木暮だけじゃない。盟友の2組、メンバーそれぞれが実に楽しげに音を奏でている。観客も大盛り上がりで曲にノっている...かと思えば、とにかく楽しげなステージ上の男たちを見守っているという方が正しいかもしれない。曲が終わるとFURUKAWAが「この曲、もっと完成度上げてこ? 来年もやろう、『mellow fellow』」と言うと、荒井が「『mellow fellow』あれば生きていけるもんな」と即座に突っ込むナイスコンビネーション。そしていよいよ迎えた『SMOOTH LIKE GREENSPIA 2024 with Mellow Fellow』のラストソングとなったのは、「SEE YOU」。ドラムはドーパン・Hayatoからバンアパ・木暮へスイッチ(もちろんHayatoはタンバリンへ持ち替えた)、そしてFURUKAWAはギターを置き、ボーカルに徹する。来年もまた会おう!
――男たちの思いが歌に乗せて届けられた、未来が楽しみになるエンディングに胸が熱くなった。
アンコールの後、原と木暮、そしてTaroがステージに戻る。すると誕生日を祝われた原が話し出す。「今日はどうもありがとうございました! さっき声をかけてくれた方、おめぇ誰だよとか言ってすみませんでしたね。基本的には小っ恥ずかしいんですよ、こういうところに立つのは。なんとか楽器の影に隠れて羞恥心も隠してきましたけれども、ああいう時に出ちゃうんですよ。言葉の裏返しで。あれを言った瞬間から、反省反省の時間でした。僕は一言多いっていうか、すごく損をしてきた人生なんですよ。今後も損をし続けるし、あんたたちに感謝の言葉なんか述べることはないと思いますけど...だけど今日のこの一瞬だけはありがとうございました!」。吶々と話す原を木暮とTaroも笑いながら見守る。そして原が続ける。「それではみなさんの幸福を祈って、一本締めとさせていただきます。ばんざーい! よぉーーーーーーーおっ!」\パンっ!/
来年もまた、元気に集まりましょう! 願わくば、秋晴れの空の下で!
Text by 桃井麻依子
Photo by ピー山/Takafumi Yamashita
(2024年11月11日更新)
『SMOOTH LIKE GREENSPIA 2024 with Mellow Fellow』
2024.10.19 Sat at 服部緑地野外音楽堂
⚫️拍謝少年 Sorry Youth
01. 噪音公寓
02. 踅神夢
03. 歹勢中年
04. 暗流
05. 你愛咱的無仝款
⚫️DOPING PANDA
01. Crazy
02. beautiful survivor
03. Lost & Found
04. goodbye to the old me
05. DEKU NO BOY
06. Go The Distance
07. The Fire
08. Imagine
09. transient happiness
10. beat addiction
11. MIRACLE
⚫️the band apart
01. 夏休みはもう終わりかい
02. The Ninja
03. Higher
04. Eric.W
05. Crazy
06. Circles and Lines
07. Game, Mom, Erase,
08. 夢太郎
09. cerastone song
10. 夜の向こうへ
11. DEKU NO BOY
⚫️the band apart × DOPING PANDA
01. mellow fellow
02. SEE YOU
『mugendai THE CARNIVAL 2024 extended ~the answer~』
【東京公演】
▼11月11日(月) EX THEATER ROPPONGI
[ゲスト]ACIDMAN
『DANDYSMANIACS OSAKA』
チケット発売中
▼2025年1月4日(土) 17:00
梅田Shangri-La
前売5500円
デザインチケット5800円(共にドリンク代別途600円)
[問]梅田Shangri-La■06-6343-8601
『Smooth like butter tour Future & Past Vol.2』
【東京公演】
▼11月27日(水) 板橋区立文化会館 大ホール
『ASPARAGUS×FRONTIER BACKYARD×the band apart
タカヒロとOZKと川崎のメリーメリー』
【東京公演】
▼12月21日(土) 新代田FEVER
[共演]ASPARAGUS/FRONTIER BACKYARD
『SYNCHRONICITY’25 – 20th Anniversary!! –』
【東京公演】
▼2025年4月12日(土)・13日(日)
Spotify O-EAST/Spotify O-WEST/他
※出演日、出演会場は後日発表
[出演]渋さ知らズオーケストラ/SPECIAL OTHERS/toconoma/People In The Box/the band apart/The Novembers/downy/LITE/Rega/QOOPIE/JABBERLOOP/New Action!/他