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ジャニスの○○と○○シリーズ
柴田聡子×Helsinki Lambda Clubの
ツーマンライブレポート

9月28日に心斎橋JANUSにてライブイベント『柴田聡子とヘルシンキラムダクラブ』が開催された。柴田聡子×Helsinki Lambda Club(以下ヘルシンキ)の対バンだから、このイベント名であり、『〇〇と〇〇』シリーズは最高の対バンをテーマに開催される心斎橋JANUSの人気企画でもある。ちなみに柴田聡子とヘルシンキは初対バン!

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大阪は南堀江のレコードショップ『FLAKE RECORDS』店主DJ DAWAがレコードを回す中、柴田が登場するだけで大きな拍手が起きる。演奏メンバーは、今年2月にリリースされたアルバム『Your Favorite Things』を共同プロデュースした岡田拓郎(G)に加えて、まきやまはる菜(B)・工藤明(Dr)・谷口雄(Key)、そして、一般的にはPAとも呼ばれる客席側に設置されたミキシングコンソールを操るDub Master X(FOH)と強力過ぎる布陣。

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登場して少し間を空けて、『こんばんは、柴田聡子です』とひとこと挨拶をする。1曲目はアルバムタイトルナンバーでもある『Your Favorite Things』。アルバムではラストナンバーである曲から始まるのは、個人的に趣きを感じた。たゆたう緩やかなサウンドであり、柴田の声が気持ち良く反響する。まさしくDub Master Xの手腕としか言いようが無い音響世界...。初っ端から独自の世界を魅せられて呆気に取られていると、あっという間に曲は終わり、柴田が『センキュー』と〆る。この『センキュー』が気怠さもあり、凄みもあり、何とも言えない。

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続く『目の下』。柴田はハンドマイクでリズムを取りながら、舞台を軽く練り歩く。超満杯の観客たちは跳ねるリズムにゆらめいている。ゆらゆらとした空気感が本当に気持ち良い。『うつむき』から『白い椅子』にかけてのリズムのテンポを変幻自在に行き来する感じは、我々聴き手を良い意味で手玉に取る感じでもあり、観客からは思わず歓声も起きる。『Reebok』では、歌いながらの手振りからもグルーヴを感じて、ただただ聴き入る。舞台後方の幕が照明で青く照らされているのも綺麗であった。

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改めての自己紹介とバンドセットで来れてヘルシンキと一緒にライブが出来る事を『めっちゃ嬉しいです』と繰り返して述べ、『じゃあ、まだまだ楽しくいきましょう』と言う。全体的にほぼMC無しと言ってもいいくらいに無駄の無い簡潔なMC。そして『夕日』では先程までの青い照明が幻だったかの様に、舞台後方の幕が赤く照らされて染まる。『大人子ども おじいちゃんおばあちゃん孫 なにもかも渡って行く道路』という歌詞が、これまでの曲とはまた違う感覚で日常感があり情景が浮かぶ。そのまま、鍵盤からの浮遊音により、尚一層メロディーの緩やかさが際立つ『雑感』。チルアウトなんていう言葉じゃ表現できないほど心身委ねてしまう反響音...。そんな音に『頼りにしていた人が死んで途方に暮れている』なんていうリアリティーがありすぎる言葉が乗っかって、はからずもドキッとしてしまう...。音響と言葉の合わさり具合が尋常ではない。

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終盤に差し掛かったところでの『素直』からの『Synergy』。『オレンジ』と歌詞にも出てくるので、オレンジ色の照明がとても印象的に視界に入ってくる。『ねずみー』、『シナジー』という語尾の語感が韻を踏んでいるようで誠に心地好すぎる。柴田自身も両手を広げて、ドラムビートに乗っかり、その解放感がフロアにも見事に伝播していく。この流れでの『Side Step』は最高すぎるダンサンブルナンバー。観客たちも快くステップを踏んでいる。谷口がショルダーキーボードを弾き、ミラーボールも眩く回っている。この平熱でありながら踊れるシチュエーションは稀有であり、実に美しい...。

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『ワンコロメーター』は『夕日』で記述した様な日常を感じられる歌詞。『2丁目の吉田さんのとこのワンコのことだけど』と歌い出された瞬間から、これまたダンサンブル感が爆発しており、『Side Step』で踊っていたフロアは、さらにダンスフロアへと化していた。柴田の声もどんどん反響していき、照明も色とりどりとなり、柴田は『楽しんでやっていますか?! 私は楽しんでいる!』と煽る。谷口のショルダーキーボードによるソロも想像を絶するレベルでの威力で、ミラーボールの眩さも度合いを越えていき、これを大爆発と言わずして何と呼ぶかというくらいのハイライトシーンに。柴田も片手にハンドマイク、片手にマラカスで時折飛び跳ねながら楽しそうに踊っている。

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ラストナンバー手前で一気に大盛り上がりな状況を迎えながら、ラストナンバー『Movie Light』では一転して1曲目の雰囲気に戻るかの様なしっとりとしたムーディー感が漂う。アルバム『Your Favorite Things』で言うとオープニングナンバーであり、アルバムラストナンバーで始まり、アルバムのオープニングナンバーで終わるというのもまさに粋である。『ありがとうございました』とだけ言って、一礼して去る姿も清白だった。

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完全に場を音で魅了した柴田の後に、ヘルシンキがどのように魅せてくれるかを期待しながら待つ。登場した橋本薫は開口一番、『めちゃくちゃ良かったですね、柴田さん。リスペクトでした』。本当に我々と同じく観たばかりの素直すぎる感想のつぶやきに好感しか無いし、この素直さをまっすぐに打ち明けられるならば何の心配も無いとも想えた。1曲目『しゃれこうべ しゃれこうべ』。どっしりと安定した良いサウンドが鳴らされる。地に足がついた演奏であり、先程までの柴田の雰囲気に全く引っ張られていない。逆に自分たちの方へ先程までの良い雰囲気を引っ張っている。ミディアムナンバーながらメロディアスであり、抜群のスタートダッシュを切れている。

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続く『Chandler Bing』。稲葉航大がグルグル動きながら鳴らす低音のベースは耳触りが良くて、それに合わせて回るミラーボールの下、観客たちは楽しそうに高く上げた手を前後に振る。稲葉が観客に背を向けてドラムと向かい合いながらベースを弾く。そんなリズム隊の姿からもバンドの充実さを感じられた。そのまま祭太鼓の様なドラムが鳴り響き、『はいっ!』という威勢良い掛け声から『Golden Morning』へ。ギターのリフレインなフレーズにも高揚され、まるでサイケデリックな祭を観ている感覚に陥る。真っ赤な照明の中で演奏するメンバーは楽しそうであり、妖しげな雰囲気も醸し出していて、完全にヘルシンキが場の空気を支配できている事がわかる。

『ミツビシ・マキアート』は伸びやかで自由なロックンロール。またリズム隊は向き合って楽しそうに音を鳴らしているし、細かいことを言うとドラムはサポートメンバーだが、そんなの関係なく完璧に鉄壁のバンドグルーヴを生み出している。そのまま軽々なギターリフから『ロックンロール・プランクスター』へ。『ロックンロール・プランクスターでハイディハイディホー』と稲葉が低い声でつぶやき、そこから橋本が『クリスチャン・ルブタンの赤い魔法』と歌い出す。この最初の掛け合いだけでもフロアは楽しい空気で充満されるし、その空気はフロアの後方までしっかりと届き、みんなが笑顔で緩やかに踊っている。もはやスタンダードなロックンロールナンバーへと進化を遂げていた。

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MCで再度、橋本は柴田を大絶賛する。楽しみにしていたけど余裕で柴田が期待度を越えてきたと話し、柴田が何年か前のインタビューで『腰を振って踊ってるようにしたい』と語っていたと触れる。腰を使って踊っていると1日がポジティブというか良い感じになると、我々にも薦めてくる。『多分、腰を使って踊れる曲なんで』と間もなく配信されるという新曲『キリコ』(10月2日リリース)初披露へ。

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ドラムのビートが腰を疼く。ミディアムなビートだが腰を使って踊れるし、逆に言うとミディアムなビートだからこそ腰を使って踊れるのかも知れない。もちろん観客も初聴きだが、腰を使って踊っている。そこからドラムビートを鳴らしたままで『真っ暗なドーナツ』へ。自然な繋ぎであり、ずっとグッドミュージックが鳴らされているのは、素敵なDJみたいな振る舞いでもあり、幸せな気分になる。そして、9月にリリースの『THE FAKE ESCAPE』へ。ギターの音色も特徴的で快適な時間だが、この3曲は近年リリースされた楽曲であり、今のヘルシンキの腰を使って踊れる音楽が目覚ましく体現されていた。

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終盤にて『収穫(りゃくだつ)のシーズン』。『チューチューリーダッタ』という橋本の歌声を皮切りに、ピンクのミラーボールも回り出し、声の反響も相まって、頭も心も浮遊感でとろけてゆく...。どんどん浮遊感は増していくのに、リズムとビートは効きまくっているし、抜群にメロディアスでもあり、中盤ではギターも激しく鳴り、ぐうの音しか出ないくらいにグルーヴが続いていく...。メンバーたちの音もせめぎ合っているし、重厚なサウンドを聴かせてくれる。

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ラストナンバーはポップでキャッチ―な『シンセミア』。興奮しきった心身を浄化してくれる抜けの良さ。オレンジの照明がフロアを照らしてくれるが、その眩しさが多幸感を刺激してくれる。たまらなく幸福な気持ちにさせてくれるし、そのオレンジの眩しい照明は我々の静かに熱狂した心の中を表しているようでもあり、兎にも角にもハッピーであった。力が抜けているのにバッチリ決めてくる...、そんなライブ。

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アンコールは柴田とコラボしている『触れてみた』。両手を上げて登場する柴田に、橋本は『話すとインタビューみたいになるので曲をやります』とすぐさま『触れてみた』へ。馴れ合いの関係性では無く、緊張や敬意を持ち合わせた関係性は尊い。黄色いミラーボールが回り、柴田が歌い出すと優しくて柔らかくてという...、曲の良さが倍増するあたりが2組の相性の良さを物語っていた。

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『夜は朝までぷかぷか』

ぷかぷかという言葉がぴったりな浮遊する夜。大満足なんだけど、このまま終わるのも寂しいなと感傷に浸りかけていた。すると...。『ここで終わるつもりだったんですけど、土曜なんで、この後、クラブに行く人もいたりすると思うし、しっとり終わらず明るくいこうと思います!』

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そう橋本は伝えて、『PIZZASHAKE』へ。明るいナンバーだが、ゆったり感もあり、ちょうどラストに最適な腰を使って踊れるナンバー。最後まで腰が疼いた夜であり、言うならばダンスパーティーみたいな夜であった。馬鹿騒ぎでは無くて胸騒ぎが止まらないサタデーナイト...。

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Text by 鈴木淳史
Photo by 松本いづみ




(2024年10月 8日更新)


Check

Set List

●柴田聡子

01. Your Favorite Things
02. 目の下
03. うつむき
04. 白い椅子
05. Reebok
06. 夕日
07. 雑感
08. 素直
09. Synergy
10. Side Step
11. ワンコロメーター
12. Movie Light

●Helsinki Lambda Club

01. しゃれこうべ しゃれこうべ
02. Chandler Bing
03. Golden Morning
04. ミツビシ・マキアート
05. ロックンロール・プランクスター
06. キリコ
07. 真っ暗なドーナッツ
08. THE FAKE ESCAPE
09. 収穫(りゃくだつ)のシーズン
10. シンセミア

EN1. 触れてみた feat.柴田聡子
EN2. PIZZASHAKE

Live

●Helsinki Lambda Club/柴田聡子

「ボロフェスタ2024」
【京都公演】
▼11月2日(土)・3日(日・祝)・4日(月・祝)
KBSホール

※Helsinki Lambda Clubは2日(土)出演。
※柴田聡子は4日(月・祝)出演出演。

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●Helsinki Lambda Club

『the dadadadys×TENDOUJI×Helsinki Lambda Club TOUR2024 “君ならスターになれるよ”』
【大阪公演】
Pコード:276-007
▼10月10日(木) 18:30
心斎橋JANUS
オールスタンディング-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
学割-3500円(当日要学生証、整理番号付、ドリンク代別途要)
[出演]the dadadadys/TENDOUJI/Helsinki Lambda Club
※小学生以上は有料。未就学児童は保護者同伴に限り入場可。<学割チケット>学生証持参必須(コピー不可)。公演当日提示できない場合は差額\1,000お支払いいただきます。
[問]GREENS■06-6882-1224

<振替公演>東名阪爆上げフロアライブツアー2024 "Dragon"
【大阪公演】
Pコード:281-073
▼12月11日(水) 19:00
246 LIVEHOUSE GABU
スタンディング-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[司会]バイク川崎バイク(スペシャルMC)
※8/30(金)の振替公演。未就学児童は入場不可、小学生以上は有料。
※当日学生証の提示で\500キャッシュバックあり(大学生までOK)。
※出演者が許可した場合を除き、写真撮影、録音・録画禁止。
[問]清水音泉■06-6357-3666

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EP「月刊エスケープ」release tour "冬将軍からのエスケープ"

【北海道公演】
▼12月1日(日) BESSIE HALL
【宮城公演】
▼12月7日(土) 仙台MACANA
【新潟公演】
▼12月14日(土) GOLDEN PIGS RED STAGE
【石川公演】
▼12月15日(日) 金沢AZ
【広島公演】
▼12月21日(土) 広島Cave-Be
【香川公演】
▼12月22日(日) DIME

PICK UP!!

【大阪公演】

Pコード:281-273
▼2025年1月18日(土) 19:00
梅田クラブクアトロ
スタンディング-4800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可、小学生以上は有料。
※当日学生証の提示で\500キャッシュバックあり(大学生までOK)。
※出演者が許可した場合を除き、撮影、録音・録画禁止。
[問]清水音泉■06-6357-3666

【愛知公演】
▼2025年1月19日(日) 名古屋クラブクアトロ
【福岡公演】
▼2025年1月25日(土) LIVE HOUSE CB
【宮崎公演】
▼2025年1月26日(日) LAZARUS
【東京公演】
▼2025年1月29日(水) LIQUIDROOM

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