ホーム > インタビュー&レポート > “若い才能はそれだけで尊い。嬉しかったし泣きそうになった” Name the Night、専門学生と作り上げたMVを初お披露目 『Radio La La La』MV完成披露試写会&ミニライブレポート
Name the Nightは、山森大輔(vo.gt/SKA SKA CLUB、ROCK'A'TRENCH)、畠山拓也(tb.sampler/SKA SKA CLUB、ROCK'A'TRENCH)、伊地知潔(ds/ASIAN KUNG-FU GENERATION、PHONO TONES)、MIYA(ba)からなる、鎌倉を拠点に活動する4人組バンドで、2023年1月に結成された。それぞれ多彩なキャリアを持つ同世代のミュージシャンが「全ての夜に名前をつけていく」をコンセプトに、夜を彩るグッドミュージックを奏でるべく活動中。毎月満月の夜にSNS上でオリジナル楽曲を1曲公開し続けている。
9月19日(木)に配信リリースされた10thシングル『Radio La La La』は、ボーカルの山森が2018年にソロ名義で発表した同名の楽曲を、Name the Nightとしてセルフカバーしたもの。そして同曲のMVを手がけたのは、ライブ・映像・俳優のプロを育成する放送芸術学院専門学校の学生たちだ。SNSでは、7月にメンバーが同校に足を運び、MV撮影を行った様子が投稿されていた。満を持して公開されるMVは、一体どんな作品に仕上がったのか。
完成披露試写会の会場も、もちろん同校だ。校内にあるライブスペースには、抽選で選ばれたぴあ関西版WEBの読者25組50名と、MV制作に関わった学生たち、またこの日行われていたオープンキャンパスの参加者が入場。皆どこかそわそわとした様子で席についていた。
いよいよ完成披露試写会がスタート! ステージには同校の卒業生で、現在ナレーターとして活躍中の川口詩織氏がMCとして登場し、場の空気を高めていく。大きな拍手に迎えられて「こんにちは〜」とゆるり登場した山森、畠山、伊地知、MIYAの4人。そして『Radio La La La』MVの監督をつとめた、放送芸術学院専門学校 CG&映像ディレクターコース4年生の溝口仁之助氏も呼び込まれる。溝口監督は照れくさそうにはにかみつつも、誇らしそうな表情でステージに登場。メンバーはそんな彼をあたたかな眼差しで見つめて歓迎しつつ「イエ〜イ」とガヤを飛ばしていた。この場面だけでもお互いの信頼関係と和やかな雰囲気が伝わり、MV制作が良いものだったことが感じられた。
トークパートでは『Radio La La La』のMV制作の裏話を語っていく。まず、今回のコラボが実現した経緯について山森が説明。月イチで満月の夜に新曲を出すという企画を始めたName the Night。しかも出すだけではなく、全部にMVをつけようという「鬼のスパルタ計画」を実施していた。最初はDIYで楽しく作っていたが「そろそろ他の才能の人とコラボしたいね」という話になり「僕らもまだ始まった若いバンドだから、若い人とコラボしたら面白いことができるんじゃないか」という意図のもと、山森が過去にFM802でラジオパーソナリティーをつとめていた際のご縁などが巡り、大阪で、放送芸術学院専門学校の溝口監督と繋がった。
名前を出されて顔をほころばせた溝口監督は「入学当初からずっとMVのディレクターになりたいという夢があったので、卒業制作として4年間の頑張りを凝縮した作品になればいいなと思いました。人生2回目のMV制作で、ヴィンテージのフィルムちっくなMVを作りたかったので、それが叶ったと思います」と力強く語った。プロミュージシャンとの仕事で勉強になった点については「撮ってて全部カッコ良い。"こんな感じにしてください"と言ったら、ついニヤけてしまうような、イメージよりも上乗せした画を撮ることができて、"アーティストやな"と感じました」と撮影時のことを回顧した。
Name the Nightのメンバーは、学生とのMV制作をどう感じたのか。伊地知は「まさかあんな服を着させられるとは。服というか、つけ胸毛がたくさん用意されていて、"これはやったことないな"と思った」と意味深発言。続けて「(相手が)プロの監督だったら断っていたかもしれないけど、溝口くんだから楽しくやれました」と笑顔。するとすかさず「めっちゃうまいこと言うやん(MIYA) 」「(伊地知が)一番ノリノリだった(畠山)」と裏側を暴露して爆笑をさらう。さらにMIYAは「机の上に乗って転げ回るシーンがあって、溝口くんに"もっと!"と言われてめっちゃ転げたのに、使われてないんです。あれはどういうこと!?(笑)」とエピソードを明かして笑わせていた。
MVの見どころについて山森は「ラジオの曲なので、ラジオブースで番組を進行しているシーンがあるんですけど、そこで読んでいる原稿はちゃんと番組内容が書いてあるんです。それに感動しました。世界に浸らせてもらって、楽しく撮影できました」と嬉しそうに語る。なんと架空のラジオ番組『今夜はName the Night(ねむらない)』を設定し、架空のリスナーからのメールメッセージも用意したそうで、細かく作り込まれた世界観をうかがい知ることができた。畠山は「結構ライブシーンが多い映像なんだけど、ちゃんと溝口くんが物語を作ってくれて。芯があって気に入ってます」と述べ、溝口監督は「実はファーストカットに主人公的な少年を映してるんですけど、そのシーンは僕の家で撮影していて。そのために模様替えまでしました。僕的にはそこが見どころかな」と笑顔で語っていた。
トークパートでより高まった期待値と高揚感、そして少しの緊張感のもと、宇宙初公開となる『Radio La La La』のMV。メンバーも後方から一緒に試写会を見守る。
MVは、バンドの演奏シーンやラジオブース(同校の設備だそう)でのシーン、メンバーが様々な衣装にテンポ良く着替えていくシーン、エキストラも入れた大迫力のライブシーンなど、見どころ満載。映像の質感やカメラワークは、ハイクオリティに仕上がっていた。とにかく百聞は一見に如かず。ぜひ、現在公開中のMVをその目で見ていただきたい。
ここからはお待ちかねのミニライブ。嬉しいことに全編撮影OKとのアナウンスがされ、オーディエンスは歓喜に湧き立つ。当然ながらこの日のライブの音響や照明スタッフも、放送芸術学院専門学校の学生たちだ。リハーサルでは、舞台監督や先生の指示を真剣な表情で聞きながら、テキパキと自分たちの役割をこなしていた。
Tears for Fearsの『Rule The World』が流れ、照明がピカピカとステージを彩るとメンバーがスタンバイ。やがて伊地知のアッパーなビートが叩き込まれ、山森が「Name the Nightです、どうぞよろしく!」と挨拶。ライブハウスみたいにしようよ、と煽ってオーディエンスを立ち上がらせ、のっけから会場全体を巻き込み熱量をぐんと上昇させた。1曲目は1stシングル『COASTLINE』。自然に発生したクラップとハンズアップに、メンバーは心底嬉しそうな笑顔を浮かべる。タイトで安定感抜群の伊地知のビートに、最高のギターソロと歌声を響かせる山森。畠山は頭を振り乱してサンプラーを操り、MIYAは楽しそうにステージでジャンプ! 1曲目から各々のキャリアに裏打ちされた演奏力を惜しげもなく披露し、疾走感たっぷりに駆け抜けてゆく。目の前で展開される"生のライブ"を、学生たちはキラキラした瞳で見つめていた。
続いてはグッと雰囲気を変え、4thシングル『No Stress』でチルに踊らせる。ハンドマイクでゆらゆらとラップ調のボーカルを繰り出す山森。3人のコーラスも気持ち良く、オーディエンスも波に乗るように身体を揺らしていた。さらに「僕の中で、Name the Nightど真ん中の曲です(山森)」と言葉を添えて、3rdシングル『Marginal』へ。山森の弾き語りで始まった楽曲は、じわじわと上質なバンドアンサンブルへと変化していく。楽曲の雰囲気を拾うように柔らかな広がりをみせる照明も素敵で、会場は心地良い空気に包まれていった。
MCで山森は「MV見てもらいましたね。良かった?」と問いかけると、大きな拍手で応えるオーディエンス。山森は嬉しそうに「若い才能ってそれだけで尊いし、ジェネレーションを巡っていくごとに一段階上のものになってくなといつも思っていて。めちゃくちゃ刺激をもらったし、嬉しかったし、泣きそうになるような気持ちがあって」と、若きクリエイターと制作を共にできた感動を口にする。
自分たちが音を奏でる役割を果たせているのも、ライブステージに関わるスタッフがいてこそ成り立っていると述べ「すごく嬉しいし、若い着実なものが育っている放送芸術学院専門学校、すごいね(笑)」と賞賛を送る。「あと、関西ぴあを購読してイベントに応募してくれるミュージックラバー、アートラバー、エンターテイメントラバーの皆さんがいて。その3つがぐるぐる回って、お互いに絡みあって日本のアートシーンは続いていくんだろうなと思っています。今日は本当に嬉しいです。貴重な機会をありがとうございます」と充実した表情で感謝を伝えた。
そして「重要なミッションがありまして。報道官の方から告知を」とバトンを渡されたMIYAは、この日の20時にMVが公開されることを受けて「溝口くんがあれだけ頑張って作ってくれためちゃくちゃ良いMVだから、1人でも多くの人に見てもらいたいと思ってまして。今畠山さんがスマホを触ってると思うんですけど、今からネムナイのアカウントで呟こうとしてるんですよ」と、ステージ上でSNS投稿作業をしている畠山に言及。畠山が告知を完了すると「じゃあ皆さんリポストしてください、今。僕たちもやります」と、まさかの告知タイム。その場にいるほぼ全員がスマホを触るという、なかなか不思議な光景が広がった(笑)。それもメンバーのクリエイティブへのリスペクトと愛情からくるもの。きっと、溝口監督や学生たちの喜びもひとしおだったのではないだろうか。
ひとしきりリポストが済んだところで、音楽に人生を彩られたミュージックラバーたちに向けた「愛の歌」こと『Radio La La La』を披露した。山森はギターをつま弾きながら、バンド名の由来を話し始める。「Name the Night、夜を名付ける。"僕らの音楽で夜を名付けたいな、こういう夜だったと彩りたいな"、そういう気持ちを込めてつけました。ベーシックには僕の想いがあって。暮らしの中で当たり前だと思ってしまっているシンプルなことを、もっとくっきり見てほしい。2024年夏は観測史上最高に暑くて、仕事に行くだけでもうんざりしました。冷房は自律神経を苦しめてくるし。でも、帰り道に空を見てみたら、大都会でも綺麗に月が見える夜もある。人との付き合いが希薄になってる時代かもしれないけど、そうではないかもしれない。SNSで繋がってる関係だけど、今みたいにリアルなものがあると思う。一番肝心なこと」と述べ、紡ぐ言葉を歌へと変化させていく。やがてパワフルなビートが響きわたり、エレクトロ・サウンドが全身を包み込む。先ほど見たMVの中で流れる音楽とはまた違う、ライブアレンジを盛り込んだ生音の、力強くもあたたかなグルーヴ。<La La La>では学生たちも高まったのか、たまらず手を挙げる。ギターソロもバッチリキマり、曲を終えると山森はガッツポーズを見せた。
そのままクラップを継続させ、「最後はもっと近付いていきたい! 声聴かせて」とコール&レスポンス。力強い歌声の応酬が会場に広がるも、まだ足りないとばかりに煽って一体感を増幅させ、2ndシングル『Strange World』で締め括った。浮遊感のあるシンセサウンドの中で響く山森のボーカル。後半はスペーシーなサウンドの塊に飲み込まれていく。ぐんとステージ前方に躍り出た山森と畠山は会場の熱を引き上げ、長尺のコール&レスポンスでフロアとの距離をまたひとつ近付けた。メンバーの全力プレイに牽引されたオーディエンスはこれまでで一番高くジャンプし、思い切り手を挙げて応える。最初は遠慮がちだった学生も、笑顔で飛び跳ね手を伸ばす。音楽に心が動かされる瞬間を見て、思わず胸が熱くなった。ラストに起こった大きなシンガロングは、間違いなくこの日のハイライトシーンだった。
全5曲という曲数でもしっかりと山場を作って盛り上げたライブ展開は、さすがの一言。メンバー紹介を経て「また会いましょう!」と笑顔を浮かべるメンバーに、会場からは惜しみない拍手が贈られた。短いながらも濃厚な時間を過ごしたオーディエンスは、皆ほくほくした顔で帰路についていた。
こうして、Name the Nightと放送芸術学院専門学校によるMV完成披露試写会とミニライブは大成功で幕を閉じた。最後にメンバーと溝口監督、MVとステージ制作に関わった30名超えの学生スタッフで記念撮影。皆本当に良い表情を見せており、その様子からは今回の企画がいかに素晴らしく、意義深かったか伝わってきた。お互いの健闘をたたえ合い、がっちり握手とハグをする溝口監督とメンバーの姿も印象的だった。
山森は「嬉しい縁をありがとうございます! 僕らも自分たちの道を突き進んでいって、また何年か経って皆が社会に羽ばたいた後に、"あの時一緒にやってたんですよ"と声をかけてくれるのを楽しみにしています。これからも一緒に頑張りましょう! また会いましょう!」と学生にメッセージを送っていた。
なお、Name the Nightは11月16日(土)に心斎橋Music Club JANUSで1stワンマンライブ『満月の夜、僕らは大きな羊に出会った』を開催する。ぜひ『Radio La La La』のMVを観て会場に足を運び、夜を彩るグッドミュージックに浸ってほしい。
Photo by ピー山/Takafumi Yamashita
Text by ERI KUBOTA
(2024年10月 9日更新)
01. COASTLINE
02. No Stress
03. Marginal
04. Radio La La La
05. Strange World
Name the Night(ネームザナイト)…2023年1月結成。山森大輔(Vo&Gt)、畠山拓也(Tb&Sampler)、伊地知潔(Dr)、MIYA(Ba)からなる、鎌倉を拠点に活動する4人組バンド。多彩なキャリアを持つ同世代のミュージシャン達が、「全ての夜に名前をつけていく」をコンセプトに、夜を彩るグッドミュージックを奏でるべく集結。メンバーの自宅兼プライベートスタジオである”Bedroom Studio”で、全ての楽曲制作を完結させ、デザインや映像制作などもメンバー内で行う、既存の枠にとらわれないDIYスタイルを基本とし、満月の夜にオリジナル楽曲をアップしている。 2023年11月、麦ノ秋音楽祭2023 #Seedsでの初ライブを機に本格始動。
▼11月16日(土) 18:00
心斎橋JANUS
スタンディング-4800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。
[問]GREENS■06-6882-1224
【東京公演】
▼12月15日(日) 渋谷CLUB QUATTRO
「Autumn Leaves 2024」
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