ホーム > インタビュー&レポート > 七組七様の弾き語りスタイルを披露した 超秋晴れの服部緑地野外音楽堂! 『語りのバンドマン2024』ライブ&トークレポート
定刻通りに開場すると、多くの観客が向かったのはステージ前方のかぶりつきエリア。通常のライブではスタンディングエリアになっており、人がひしめき合いながら爆音を浴びる場所だ。しかしこの日は弾き語りゆえこのエリアにも椅子が並べられ、全席着席でステージ前方エリアの椅子に座れたならばラッキーという仕様だ。開場時には気持ちいい風も吹いていたが、時間と共に暑...と感じるほど日差しが強くなる。さぁ『語りのバンドマン2024』、スタートだ。
颯爽とステージに登場したのは、このイベントのMCを務める中島ヒロト。「今日のテーマは語りだからね、俺も語っちゃうよぉ」と笑っていたのは開演直前のバックステージでの話。もちろんステージ上でも「アーティスト紹介をしつつ、トークパートの時間をしっかりと取っています。なぜなら僕がいるから(笑)! 」としっかりアピール。「盛り上がる準備はできていますか? ゆっくり最初から楽しんでいってもらえたらと思います」と開演を宣言した。
◾️金井政人&東出真緒(BIGMAMA)
このイベントのトップを飾ったのは金井政人と東出真緒、BIGMAMAのふたり。金井がつまびくギターの音が優しく柔らかく響く「Sweet Dreams」で幕開け。中盤から東出がエレキバイオリンの音を重ねると、グッと力強さが増す。そして曲はバイオリンがメロディーを紡いだインスト曲「CPX」、2人の奏でる音に普段のバンドスタイルが見えてくる「神様も言う通りに」へ、ここまでの3曲でまったく表情の異なるふたりの音を提示する目まぐるしい展開だ。
そして曲が作詞・金井/作曲・東出の共作「悩みの種に花が咲いたら」へと切り替わる。葛藤の先にある光を描いたこの楽曲こそ、オーガニックなギターの音とグッと地に根を張るようなバイオリンがマッチして美しく響く。「来月発表する新しい曲を、今日に合わせてアレンジしてきたので聴いてください」(金井)と「Mirror World」を初披露し、日本では年末によく聴かれる「交響曲第九番」、通称「第九」を巧みにマッシュアップした「No.9」へ。弾き語りというとアコースティックギターの柔らかい音が鳴り響くパフォーマンスを想像しがちだが、エレキバイオリンをプラスし力強さと生命力が感じられる金井&東出ならではの "強い弾き語り"を見せた。
◾️accobin
続いてステージに登場したのはaccobin。エレキベースを抱え、前方に置かれたテーブルの上にはPCも見える。「徳島からやってきました、accobinです」と大きく手を振りステージが始まる。今回はPCから出す音に演奏するベースの音を重ねてパフォーマンスするという。「主催者にOKをもらったので、この演奏方法で行かせてもらいますね(笑)」と1曲目に選んだのは「Change」。美しい緑の中を駆け抜けるような気持ちのよいサウンドと、透明感あるaccobinの歌声。会場の空気感にマッチしていて、今日がいい天気でよかったなぁと思う。
「以前はチャットモンチーというバンドをやっていました。2020年からは徳島に住んでいて、のんびりした生活をしています。徳島に帰ってからは葉っぱの造形に涙するようになったりして、そういう場所でのんびり曲を作っています」と徳島の夜の街の雰囲気を落とし込んだ「Particle」、そして徳島の雨の音をサンプリングしたという「New Rain」を披露。彼女が根を張る街の気配や空気感、匂いまで感じられそうな手触りの曲が続く。そして最後に...と届けられたのはお子さんがお腹にいた時に録音していたという心音、そして笑い声や話し声も耳に届いてくる「Heart Beats」。現在のaccobinについて、曲を通して理解していくような全4曲。1曲ごとに飾らない言葉でMCをする姿もとても柔らかな雰囲気で、今の彼女の充実度を示しているようだった。
◾️Name the Night(2P Style)
リハの時点で本域の歌声を響かせていたName the Nightは、ボーカル&アコースティックギター・山森大輔とエレキベース・MIYAによる"2P Style"でのパフォーマンス。「こんにちは、Name the Nightといいます。鎌倉からやってきました」との言葉と共に「Marginal」を演奏。曲の中盤では山森が口笛でもメロディーを奏で、気持ちよさに拍車をかける。「この天気にぴったりのビートを持ってきました」と、曲は程よく力の抜けた山森のラップにゆったりと寄り添っていくMIYAのベースラインが際立った「No Stress」へ、そして"真昼の月"をキーワードに作られた「Mid Day Moon」へとつなぐ。
「本当に天気がよくて、ミュージックラバーのみなさんと僕らの行いのよさでこんないい日になりましたね」と山森。Name the Nightとは聴く人の夜を彩っていきたいとの想いを込めて名付けたそうで、その想いが示すように彼らの楽曲は日常に明かりを灯すような持ち味がある。そんな彼らがネクストソングに選んだのは「Radio LaLaLa」。この曲のテーマは"愛"。バンドが伝えたいことの本質がこの曲にあると披露された愛の歌だ。力強いメッセージとリズムに、観客が手拍子で華を添えていく。そして曲は鎌倉の海の景色が描かれた「COASTLINE」、「Strange World」まで、自然の風景を散りばめた歌詞とオーガニックな空気感を持ったサウンドがどこまでもこの日のこの会場にピッタリだった。
◾️TALK①
「ライブの写真撮影はNGだけど、僕は撮っていいんだよ? 撮ってよ(SNSにあげてね♡)!ハッシュタグは"司会がおもしろくてよかった"でお願いします」と登場したのは中島ヒロト。ここからはここまででパフォーマンスを終えた3組のアーティストが登壇するトーク前半戦。中島ヒロトがライブの感想を聞くと、全員が口を揃えたのは「めちゃめちゃ気持ちがよかった」という言葉。そして中島ヒロトが「accobinと(東出)真緒は古い縁なんだよね?」と聞くとaccobinが「チャットモンチーのデビュー前から知り合いなんです!」と答える。なんでもチャットモンチーデビュー前、公演を行ったライブハウスに泊めてもらっていたそうなのだが、宿泊していたライブハウスのスタッフが東出だったという旧知の仲だという。
そして話題はGREENSの公式Xや「となりのバンドマン」の公式Xでもプロモーションとしてアップされていた、今日の出演メンバーのプロフィール帳の話に。その自己紹介項目のひとつに、あなたのMBTI診断は? というものがあり、登壇していた5人+中島ヒロトはこの診断自体が「ちょっとよくわかんないです」のテンションで盛り上がりきらず...。
盛り上がったのは「今欲しいもの、マイブーム」について。山森のブームは「ガーデニング、欲しいものは芝刈り機ですねぇ」、MIYAも「マイブームはDIY、欲しいのはよく切れるノコギリ」とプライベートが透けて見えてくる回答。そして金井は...「最近スクールバスを衝動買いしまして。最終これを移動のコーヒーショップにしたいと思っていて。欲しいのは、ここで店長をしてくれる人です!」というびっくり回答に笑いが起こっていた。
◾️HARUNA(SCANDAL)
『語りのバンドマン』後半戦のトップに登場したのは、初のソロライブとなるSCANDALのボーカル&ギター・HARUNAだ。ビビッドな赤が目にも鮮やかなセットアップで現れたHARUNA。今日のライブは楽器を持たずピアニストの宗本康兵に演奏を委ね、シンガーとしてパフォーマンスするスタイルだ。ライブは旅立ちの風景が描かれた「HARUKAZE」、ジャジーなイントロに手拍子が始まった「NEON TOWN ESCAPE」から。ピアノの音に乗っていくHARUNAの歌声は切なさをたっぷりと含んでいるように聴こえてくる。
「明後日でデビュー16周年を迎えるんですが...そのキャリアの割にひとりで歌う機会がなかったので、素敵な機会をいただけてうれしいです」と笑顔を見せながらも、緊張して喉がカラカラ! と水をゴクゴク。そしてせっかくの機会なのでと披露されたのはMy Little Loverの「Hello Again〜昔からある場所〜」。ノスタルジーなメロディーとHARUNAの伸びやかな声が、陽が少しだけ傾いてきた会場の中にふんわりと浮かんでゆく。そこから歌詞を大切に紡いだ「プリズム」、雰囲気をガラリと変え会場のクラップを誘った「Sisters」まで、楽曲のセレクトと歌い方の細部にまでにこだわりが感じられた全5曲。ピアノだけのシンプルな調べが声の美しさと歌詞を際立たせ丁寧に楽曲を届けた、HARUNAの記念すべき初ソロパフォーマンスだった。
◾️Ito(PEOPLE 1)
そしてこちらもソロ初パフォーマンスとなるPEOPLE 1のボーカル&ギターのItoが登場。HARUNAに続き、ビビッドな赤が目をひくコーディネートだ。『語りのバンドマン』というタイトルながら、アコースティックギターのみのザ・弾き語りスタイルを披露したのはここまででなんとItoが初めて! 美しい高音がギターの音に溶けるような「紫陽花」、「ライカ」で始めていく。「普段はサポートも入れて5人でステージに立っているので...。めっちゃ緊張してますってSHE'Sの井上さんに話したら、きっと楽しいよ! って言ってもらいました」とまだソワソワが残る表情を見せつつ、ライブではあまりやらない曲を...と「ゴースト」を届ける。
アコースティックゆえに大きな動きこそないものの、情感たっぷりのギターと豊かな表現力を見せるパフォーマンス。はー、と何度も息を吐き3曲歌ってもなお緊張が解けない様子の中、一度も歌ったことのない曲をと「怪獣」を歌い始めると手拍子が起こる。緊張という言葉を何度も使うが、何かを解き放つように歌を歌う人だ。自らの歌声にそっとギターを添えるような始まりが印象的な「常夜燈」、そこからシームレスにつないだ「魔法の歌」、そして「結局最後まで緊張した...でもいい経験になりました! またリラックスした姿も見せたいし、PEOPLE 1のライブも見に来てもらえるとうれしいです」と笑顔も見せたラストに「ラヴ・ソング」を披露。初のソロの初々しさと、類稀な歌唱力の両面を見せたItoのファーストステージだった。
◾️井上竜馬(SHE'S)
「始めます〜いい日になりそうな予感です」と笑いつつ「Chained」でライブを始めたのはSHE'Sの井上竜馬だ。まずはピアノの弾き語りで、ステージの世界観を創ってゆく。美しいファルセットで会場にいる耳を虜にしてしまうそのスキルと表現力は唯一無二だ。そのままピアノの弾き語りで、切ない恋を綴った「Clock」を歌い終えると語りだす。「大阪出身なんです、僕。ここ豊中でしょ? 隣の吹田にずっと住んでたんです。今日は弾き語りなので、ゆったりしたセットリストを持ってきました...なんか酒飲みたくなっちゃった。いいですか?」とビールを飲む余裕も見せる。飲んじゃうよ〜とおちゃめな一面を見せながらも、続いて披露した「Letter」のノスタルジックな歌詞とメロディーが作り出すまるで映画のようなストーリーに観客は釘付けで耳を傾ける。
彼の弾き語りが初見だという人は、MCと曲のコントラストに驚くのではないだろうか。曲が終わるとピアノを離れ、アコースティックギターに持ち替える。弾き語りの時には毎回カヴァーを演奏する井上がこの日のために選んだのは、エド・シーランの「Thinking Out Loud」。夕刻と夜の間、少しずつ表情を変えてゆく空に放たれる伸びやかな歌声が沁みる。そしてラストにはまたピアノの前に戻り、「Amulet」で余すことなく柔らかで優しい歌の世界を見せてくれた。地元・北摂での弾き語りは彼の心に、どんな気持ちを残しただろうか。それも知りたくなる井上のパフォーマンスだった。
◾️古舘佑太郎
ステージにライトが灯った17時半前、ライブを始めたのは古舘佑太郎だ。ハーモニカの音が鳴り響き「ラララレルレロ」が歌われると、観客が「おぉー!」。見つめる人々の期待の高さがうかがえる。「僕は雨男だけど、今日は晴れだったから誰か強めの晴れ男か晴れ女がいるんだろうな」と言いつつ、つまびくギターと語りかけるような歌い方が哀愁を連れてきた「雨降りのベイサイド」「Sixteen years old, Seven years ago」へと移っていく。トリを任されちゃって緊張しているんですけど自由に聴いてもらえたらと話し、ギターをジャカジャカ。力強さを含んだ歌声がストレートに心に響いた「ラヴ・ソング」、ハーモニカ×ギターの音に客席から手拍子が鳴り響いた(ラストではカラスもグッドタイミングで鳴いた)「フリーマーケット」、そしてキュートなワードチョイスで切ない恋を歌った「トマトキャンディ」へ。秋の夜空に実直な歌声が舞う。
トークコーナーが後であるから...と多くは語らず、「金木犀が好きだからこの曲やります」と、秋にピッタリのワードが散りばめられた「FALL FALL FALL」がラストソングに。なんでこんなに切なくなってまうんや...と、情緒をグラグラにするとんでもない歌声にほろり。振り返ればThe SALOVERS・古舘佑太郎ソロ・THE 2の楽曲からいろいろセレクトされていたこの日のセットリスト。ライブが終わり心にジワーッといいライブ見たなぁと広がった締めくくりだった。
◾️TALK②
このイベントのラストパートともなる、トーク後半戦は古舘の「バンドマンによる弾き語りなのに、僕はバンドを解散していて...」という一言と、中島ヒロトが緊張しっぱなしだったItoへのツッコミを入れて会場が湧くところからスタート! トーク前半戦ではあまり盛り上がりを見せなかったMBTI診断の話題では、男性陣はピンと来ていない中で意外にもHARUNAが「すごく好きなんです」とかなり詳しく、小盛り上がり。このタイプはこういう人らしい...とHARUNAがすらすら話を進めたことで、最終的には興味のなかった古舘も「ちょっと帰りの新幹線でやります」と前のめりに。
そして欲しいもの・マイブームへ話が移るとItoの「マイブームが特になくて困る、欲しいものは特になくて焦る」という回答に焦点が当たる。中島ヒロトや他の面々が掘っていくと「電動歯ブラシが欲しい」と言い出し、井上が「あるじゃん!」と食い気味に叫ぶシーンも。
そしてトーク後半のハイライトは、なんといっても古舘のマイブーム・ホットヨガの話題! 某チェーンホットヨガスタジオに通っているという古舘は、Itoに向かって趣味がないなら一緒に通いましょうよ! と誘うほどのハマりよう。ハマった理由が、やっている1時間中にめちゃめちゃ汗をかけて無になれることだそう。そのおかげで体温も上がり「今も全然寒くないんですよ!」と、ホットヨガ愛を語りまくる古舘の姿は、ものすごく意外な一面を見せてくれた。
アーティストたちの歌声を、じっくり楽しめる秋の1日となったこの『語りのバンドマン』。当然ながら普段のバンドスタイルでの演奏とは全く異なるアレンジで、知っているあの曲の表情が違って見えたのはいい発見だった。さらに言うと、弾き語りのスタイルがアーティストそれぞれかなりバラエティーに富んでいたことに驚いた(弾き語り=アコースティックギターとしか思っていなかった私は、発想が貧困なのだな...と思い知らされた)。ここから年末に向けて、各アーティスト出演ライブやイベントが目白押しだ。そちらで見ることができるバンドスタイルも、また楽しみだ。
(2024年10月30日更新)
東名阪ツアー「■■■■■■■■」
【大阪公演】
▼2025年2月15日(土) 18:00
梅田クラブクアトロ
通常-5500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
学生-3300円(当日要身分証明書、整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。小学生以上は有料。
※学生チケットは入場時に在学を証明出来る身分証明書の提示が必要です。
※ダイブ・モッシュ等危険行為は一切禁止です。
[問]GREENS■06-6882-1224
1stワンマンライブ「満月の夜、僕らは大きな羊に出会った」
【大阪公演】
▼11月16日(土) 18:00
心斎橋JANUS
スタンディング-4800円(1ドリンク代別途必要)
[出演]Name the Night
※未就学児入場不可
[問]GREENS■06-6882-1224
【東京公演】
▼12月15日(日) 渋谷CLUB QUATTRO
山本彩×ライブナタリー Zepp TOUR「SYnergy」
【大阪公演】
▼11月29日(金) 19:00
Zepp Namba(OSAKA)
立見-6500円 2F指定-7000円
[出演]山本彩/SCANDAL
※3歳未満入場不可/3歳以上はチケットが必要です。ドリンク代別途必要。体調不良等、止むを得ず出演者の一部が急遽変更になる場合があります。一部出演者の変更を理由としたチケットの払い戻しは行いません。主催者が中止および延期の判断をした場合を除き、お客様個人のご事情やガイドラインの詳細変更を理由とした払い戻しは行いません。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888
SCANDAL「BEST★Xmas 2024」
「SHE’S Tour 2024 “Memories”」
【香川公演】
▼11月3日(日・祝) 高松オリーブホール
【広島公演】
▼11月4日(月・祝) 広島クラブクアトロ
【宮城公演】
▼11月9日(土) 仙台Rensa
【札幌公演】
▼11月24日(日) ペニーレーン24
【鹿児島公演】
▼11月29日(金) 鹿児島CAPARVOホール
【熊本公演】
▼11月30日(土) 熊本B.9 V1
【大阪公演】
▼12月3日(火) 19:00
Zepp Osaka Bayside
1Fスタンディング-4950円(整理番号付、ドリンク代別途要)
2F指定席-5450円(ドリンク代別途要)
※未就学児入場不可。小学生以上有料。
※再入場不可/撮影・危険・迷惑行為禁止。
※客席を含む会場の映像・写真が公開されることがあります。
[問]サウンドクリエーター■06-6357-4400