インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 藤原大祐はどのような意識で音楽を作っているのか 楽器を歌として捉え、選択肢を絞って歌詞となる言葉を探す 「自分の音楽はこれからピークに向かっていく」


藤原大祐はどのような意識で音楽を作っているのか
楽器を歌として捉え、選択肢を絞って歌詞となる言葉を探す
「自分の音楽はこれからピークに向かっていく」

2022年10月に音楽活動をスタートさせ、翌年10月に1st EP「SHOW TIME」でメジャーデビューを果たした藤原大祐。そんな藤原の1stアルバム『pocket beats』がリリースされ、同作を引っ提げて10月27日には大阪・なんばHatchでワンマンライブ『TAIYU FUJIWARA POP SHOW Ⅲ “pocket beats”』もおこなう。俳優としても活動している藤原だが、「『俳優が音楽をやっている』という先入観を持たれたくない。ちゃんと音で勝負したい」とはっきり口にする。その意欲を実証するように『pcket beats』はかなり繊細な音作りがなされており、クオリティが高い作品となった。そんな藤原に音楽制作の部分について話を聞いた。

――『pocket beats』は藤原さんの音楽的なルーツ、センス、テクニックの高さが感じられる好盤だと思いました。

自分が頭のなかで思い描いていた音がちゃんと作れるようになった感覚がありました。自宅で曲を制作するときも、自分である程度アレンジをしてからアレンジャーさんに曲をお渡しするのですが、その段階で曲のビジョンがはっきりしているんです。これまでいろんな経験をして、失敗もたくさんしてきたからこそ、できることが増えてきた気がします。もともと自分が作る音への自信はあったんです。ただ、挫折も経験することで「ここはまだ足りていない」ということもしっかり認められるようになりました。それまで蓋をしていた自分の弱さにも向き合うことで、より深くまで音楽を見つめることができ、それがあらわれたアルバムになっているように思えます。

――特にメロディがいきいきとしていているところがすばらしかったです。

自分はピアノでグルーヴを作っている感覚を持っています。それが、そういう風に聴いていただけた理由の一つかもしれません。あと、楽器は全部歌だと捉えているんです。自分でピアノ、ベース、ドラムなども弾いて、合唱のように組み合わせていく。今は楽器ができなくても打ち込みで曲が作れる人が多い。もちろんそれが良い、悪いではないのですが、自分はそれだと楽器が歌えていないように感じてしまいます。楽器の生っぽさを出し、歌として捉えた上で、一つひとつの音が主役になるように音を組み上げます。僕はかなり細かく作業をするタイプなので、そういった性格が今回の曲作りには出ているかもしれません。

――確かに作業の細かさが伝わってきます。

あと自分は、一つひとつの楽器のタイム感も大事にしています。たとえばドラムにしても、抜け方、タイミングとか。チョップなんかも作為的にやっているところがあります。

――音楽好きであればあるほど、藤原さんの曲から、さまざまな名曲の影響を感じると思います。そうやって聴き手の連想やイメージをかきたてるところは、ある程度、想定できていたのですか。

それが実は、勝手にそういう曲になった感じなんです。以前からピアノを弾いても、R&Bやジャズからの影響を指摘されることもありました。でも自分としては、好きなように普通に弾いているだけでした。もちろん好きな曲はあるので、グルーヴ感がそれに近づいている可能性はあります。また、もともとは曲作りの際にはリファレンスもありました。それでも最近はそういったリファレンスもなしにして作っています。『pocket beats』は、テーマ的にも「自分のポケットから音を奏でる」というものだったので、純粋に僕が作りたい曲を詰め込みました。

――歌詞や語感も強引さがなく、メロディとの融合性が抜群です。

自分はもともと「歌詞ってどうでもいい」と思っていたんです。それよりも音を聴くタイプでした。「なぜ歌詞は必要なのか」と考えていたくらいで。もちろんライムや、「このタイミングでこの母音が大事とか」とかはあったけど、あくまで歌詞は音の一つとして捉えていました。

――そういった考え方に変化が出てきたわけですね。

曲を作り始めてから、歌詞作りのおもしろさに気づきました。ただ、安易に歌詞を重ねることはしないようにしています。「潜り込んだらその言葉があった」という感じで歌詞をつけていきます。前提にあるのは、メロディにその言葉が合うかどうか。たとえばフォークソングなどの"語る系の歌"は、そこまでメロディと言葉の融合性にこだわらなくて良いと思います。だけど自分が取り組んでいるダンスミュージックは、リズムやグルーブをしっかり聴かせなきゃいけないので、かなり細かいこだわりを持って言葉を重ねています。また言葉の選択肢は無限だからこそ、自分は韻を大事にしています。「ここにはこの母音の言葉しか入れられない」と制限を設けると、そのメロディに合う言葉の選択肢も限られてきて、歌詞が決めやすくなる。逆にそうやって自分のなかでルールを作らないと迷っちゃうんです。

――なるほど。

「Lucky Dance」のなかに出てくる「あなたのそばにいたいの One more time」という歌詞は、自分が意識していることがとてもうまくハマりました。でも『pocket beats』は自分のなかの一部分でしかありません。音楽的なストックはたくさんありますし、いろんな展開も考えています。音楽制作に関してはこれからピークに向かっていく。でもだからこそ、その一歩目となる『pocket beats』をいろんな方に聴いていただきたいです。

――そんな『pocket beats』を引っ提げたワンマンライブ『TAIYU FUJIWARA POP SHOW Ⅲ "pocket beats"』が10月27日(日)に大阪・なんばHatchで開催されますね。

このアルバムを作っている段階から「早く生のライブでやりたい」と思っていました。今はいろんなところでアルバム曲を弾き語りする機会が多いのですが、このアルバムの音がもっとも生きる瞬間はバンド編成なんです。ライブ化けできるように余白を残して作っている部分もあります。ライブでその余白を詰めることで、曲がさらに進化して聴こえるはず。

――『TAIYU FUJIWARA POP SHOW Ⅲ "pocket beats"』は、ミュージシャンとしての藤原さんの評価を高めるものになる気がします。

以前から話していることですが、どうしても「役者が音楽をやっている」という風に見られがち。でも本音を言うと、そういうところでナメられたくないんです。なにより自分にとっては、俳優業も音楽活動もすごく大切なもの。だからこそ先入観を払拭するために、ピアノ一本の弾き語りで全国を回ったりしています。ミュージシャンのときは、ちゃんと音で勝負したい。『TAIYU FUJIWARA POP SHOW Ⅲ "pocket beats"』では、自分のそういう気持ちにあらためて触れてもらえると嬉しいです。

Text by 田辺ユウキ




(2024年10月24日更新)


Check

Release

1st Album『pocket beats』
発売中 2800円(税込)

《収録曲》
01. Lucky Dance
02. Pink Pop Peach Time
03. COOL
04. ぽけっとびーと
05. マイ・ピースフル・ラブ
06. Lonely
07. Flavor
08. Bad Adult
09. Your Toy
10. おまじない
11. なにげない日常
12. Human Melody

Live

「TAIYU FUJIWARA POP SHOW Ⅲ “pocket beats”」

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:281-289
▼10月27日(日) 18:00
なんばHatch
全席指定-5500円(ドリンク代別途要)
※4歳以上はチケット必要。3歳以下でも席が必要な場合はチケット必要。
※販売期間中はインターネット販売のみ。1人4枚まで。チケットの発券は10/20(日)10:00以降となります。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

【東京公演】
▼11月9日(土) Zepp DiverCity(TOKYO)

チケット情報はこちら


オフィシャルサイト