ホーム > インタビュー&レポート > “まっさらな気持ちで、自分が信じたものを選んで進んでいこう” androp・内澤崇仁が、SHE’S・井上竜馬との楽曲制作を語る ツアーファイナルは思い出の場所・BIGCATで開催
日常の何をしている時でも、曲作りになっている
ーー12月でCDデビュー丸15年ということで、おめでとうございます。個人的に最初CDショップに『anew(2009年12月リリース)』が並んだ時のインパクトを今でも覚えています。15周年というのは、そもそも作品を作り続けないと達成できないことですよね。
「ありがとうございます! そうですね」
ーー15年の時代の流れの中で、音楽を発表するフォーマットも変化してきましたが、それについてはどんなふうに感じてらっしゃいますか?
「最初僕らはやっぱりCDで聴いて耳で判断してもらいたいという想いで、CDという媒体を目指していましたけども、今はサブスクに変わりましたね。曲作りの方向も、サブスクでの聴かれ方に対してどうアプローチしていくかということで変わってきました。それこそ楽曲提供をする時も考えることなんですけど、昔はCMで30秒とか10秒の間に聴けるものを考えていましたけど、今はTikTokだったりで、2秒以内にインパクトを残さないと次に飛ばされるという聴かれ方になっているので」
ーー視聴機だと1分くらいは聴いていた気がしますが、今は2秒ですか! その2秒でガツッと心を掴むメロディーを作るのは、得意な方ですか?
「得意ではないですけど、考えますね。楽曲を提供する方の活動領域がTikTokメインで強い方だったりすると、そこでも勝負できるものにしなければならないので」
ーー日頃からTikTokを見られているんですか。
「いや、お話が来た時に研究する感じですかね。女優さんだったら女優さんのフォーマットで、TikTok界隈の方だとその部分を研究しますし、声優さんや2.5次元ならその界隈でどうアプローチすればいいかを考えます」
ーー内澤さんは、研究がお好きなんでしょうか。
「音楽に限ってなんですけど、研究と分析は昔から好きですね。色んな音楽があるのでそれを知りたいし、どんなジャンルにも対応できる音楽家でありたいなと思ってます」
ーーだからこそ15年活動を続けてこられて、しかも幅広いジャンルの方に楽曲提供もされているんですね。内澤さんにとって楽曲はどんな存在でしょう、子どもみたいな感じですか?
「あぁそうですね、子どもみたいな感じです。親元を離れて独り立ちしていくというか、独り立ちするまで育てあげるみたいな感覚が強いですね」
ーー楽曲提供とandropの曲だと、また感覚は違いますか?
「違います」
ーー楽曲提供はお嫁にやるみたいな感じ?
「まさにそうです。andropの曲は自分の中にあるので自分で責任を取れるんですけども、提供する場合はそれこそ本当にお嫁に出す感覚。外に出してしまったら自分では責任が取れないので、お嫁に行ってもしっかりできるものにしたい。楽曲を提供した方がずっと歌い続けていけるようなものにしたいという想いはありますね」
ーー責任感が強いのが伝わってきます。
「CDもサブスクも、できてしまったら後で変えようがないというか、後悔を残したくないんですよ。やっぱり昔の音源を聴くと、"ここ、こうしとけば良かったな"と思っちゃうんですけど、そういう後悔をなくしたい。ただそれはある意味で、自分の成長の証なのかなと思ったりしますけど」
ーーちなみにandropの楽曲は今何曲ぐらいありますか?
「多分リリースされてるものは130曲ぐらいかな。ストックも、レコーディングしてまだ出てない曲もありますね」
ーー1日の中で、曲作りに割く時間はどのぐらいですか。
「どのくらいでしょうね。でも、言ってしまえば、ずっとですね。何をしている時でも曲作りになっているというか。それこそサウナに行っている時でも、考えていれば曲作りになりますし。」
ーー実際、サウナの中で曲は浮かぶんですか?
「浮かびますね。『Vidro(2024年7月配信リリース)』という曲は、どこのサウナだったかな......名古屋かな~」
ーー地方に行かれた時に?
「そうですね。どこかのサウナでメロディーができて。これは初めて言いますけども、裸でボイスレコーダーで録った記憶があります(笑)」
ーー浮かんだメロを忘れないうちに。サウナで身体をあたためている途中にメロディーが浮かんだら、サウナを出るんですか?
「全然出ます。曲優先です。そういうことは多いですね」
ーーサウナを出て、ロッカーを開けてスマホを取り出して録音して、ロッカーを閉めて、またサウナに戻る。
「そうそう(笑)。隠れてやったりします。佐世保のサウナで歌詞を考えたこともありますね」
ーーさすがサウナー。でもお風呂って曲が浮かびやすいと言いますよね。
「僕、結構家でもシャワーとか浴びてる時に曲ができることが多いですね。自分の周りのミュージシャンからもそういう話をよく聞きます。おそらくシャワーとか水の音がホワイトノイズに似てるんですよ。ホワイトノイズは色んな音が含まれてるらしいんですけど、それで浮かぶんじゃないかなと勝手に思ってます」
ーー集中力が高まるのはわかる気がします。私はYouTubeで大雨の音を流しながら原稿を書くのが一番集中できます。
「おー! 面白いですね。初めて聞きました。それを流しておけば、お風呂に入らなくてもいいかもしれませんね。やってみます、面白い!」
andropとSHE'Sは、音楽で目指す方向が似ている気がする
ーー8月にリリースされた最新シングル『Massara』は、SHE'Sの井上竜馬(vo.&key)さんを迎えた楽曲です。親交は2018年頃からあったと『TOKYO ISLAND』のコメント動画で竜馬さんがおっしゃっていましたね。
「SHE'Sの対バンツアー(『SHE'S Tour 2018 "Wandering"』)に呼んでもらったのがキッカケだったと思います」
ーーどういう経緯で楽曲を作ろうとなったんですか?
「もともと竜馬くんと"一緒に曲を作ってみたいね"って話はしてたんですけども、今回我々が15周年ということで、自分たちも面白くやれて、聴いてくれる人も面白がってもらえるものがいいなと思った時に、竜馬くんとやるのはどうかなと」
ーーとても爽やかで華やかで前向きな楽曲ですが、竜馬さんとやるならどういうテーマにしようというのは、決まっていたんですか。
「ある程度方向性は自分の中で決まっていました。andropとSHE'Sは音楽性が......細かく言えば違うけど近いところもあるし、音楽で目指す方向が似ているような気がしていたので、その共通の部分を一緒に歌うのはどうかなと思っていて。僕の中では"コンパス"というテーマで、"人それぞれ目指した方向は違うかもしれないけど、自分が信じた方向に進んでいこう"という内容で作りたいなと思って、竜馬くんに話をしたんですよね。それで、"なんたらかんたらコンパスを~♪"というのはどうかなって軽く歌ってみたら、"めっちゃダサいっすね"と言われて(笑)」
ーーズバッと言いますね(笑)。
「そこが竜馬くんの良いところなんですけど(笑)。その後イベントで一緒になった時に、竜馬くんがマッサージを受けてる横で、僕がギターを持って"ふふふん♪"と歌って2曲ぐらいメロディーを作って、それを竜馬くんに投げたんですけども、何となく自分の中で腑に落ちないところがあって。結局直前で『Massara』の原曲を作って、"やっぱりこれでどうかな"と送って、そこから竜馬くんがちゃんと仕上げてくれた感じですね」
ーーしっくりこない部分があったんですか?
「その2曲は、何か形式ばってしまっていたような気がしてて。竜馬くんとやることを前提にしたフォーマットが自分の中で作られていて、そのフォーマットに則った曲を作ってしまったんじゃないかという。"本当にこれがやりたいことなのか?"と自分自身に問いかけた時に、"ほんとにいいのかな"という気持ちがどこかにあったんですよね」
ーー竜馬さんは、その2曲について何とおっしゃったんですか?
「"こういう方向もできますし、良いですね"という返しをしてくれてました。でも、それに対して僕が返せなかったんですよ。パッと返せないのは納得できてないからかもな、と思って。そこからずっと曲を考えて『Massara』の原曲を送ったら、竜馬くんも受け取りやすい曲だったみたいで、お互いにアレンジがスッとできていきました」
ーー送られた原曲が、冒頭の<未完成なままでどこいこう>ですか。
「そうですね。その部分のデモでした」
ーーお風呂やサウナで出てきたんですか?
「これはどこだったかな~。流れ的にお風呂ということにしときますか(笑)」
ーー内澤さんの中でもピンときたフレーズだったんですか?
「これを竜馬くんと一緒にやったら面白いだろうなと思えたんですよね」
ーーいつも歌詞とメロディーは同時ですか?
「同時の時も、同時じゃない時もあります。でも自分の中での優先順位は、同時が1番強い気がしてます。メロディーが先で歌詞が後だと、歌詞がどこかで窮屈になってしまってるんじゃないかと思いますし、歌詞先だと逆にメロディーが窮屈になってるんじゃないかと思っちゃう。同時に両方出たものが良いような気がします。『Massara』の冒頭は同時に出てきました」
本来1人で悩むところを、竜馬くんと半分こできた
ーー歌詞は共作になっていますが、おふたりでどんなふうに広げていかれたんですか。
「ワンコーラスを作った時、ある程度歌詞も入った状態だったんですけども、2コーラス目を竜馬くんに作ってもらおうと思って、"こういう想いがある"とか"こういう曲にしたい"と書いた、すごい文字数の"断片"を竜馬くんに送りつけて。そこから竜馬くんがいろいろ拾って2コーラス目を作りつつ、アレンジもさらに変えていって、ピアノも入れてくれて、できあがっていきました」
ーー誰かと一緒に曲を作る時は、いつもその"断片"を送られるんですか?
「普段はあまりやらないですね。ここまでゼロから誰かと一緒に曲を作ったことがほとんどなくて、今回が初めてくらいなんですよ。やるとしても曲が完成した時にメンバーに渡す用とか、会社のプレスリリース用、MVを作る人やデザイナーさん用に作るくらいです。オケのレコーディングには竜馬くんも来てくれて。その時はまだ歌詞もちゃんとできてなかったんですけど、竜馬くんに直接"断片"を見せながら、"今こういう感じなんだよね。これ後で送るね"と説明しました」
ーーオケは先に完成していたと。
「先にオケをフルで作りました。歌詞ができて歌い分けが決まったのは、ボーカルレコーディングのちょい前くらいですかね。僕はAメロBメロでボーカルが変わっていくスタイルが良いかなと思ってたんですけど、竜馬くん的には僕がワンコーラスを歌った後の2コーラス目に竜馬くんが出てくる形式が良いと言っていたので、そうしようとなりました」
ーーお互い自分が作詞を担当した部分を歌うというわけでもないですか?
「でもないですね。"ワンコーラス目はある程度自分で"という感じはありましたけど、それも竜馬くんが作り変えてくれて、さらにもう1回、僕が歌うところも"こうしたい"という感じで変えたりしてました」
ーー前向きな言葉も、自然に2人の中から出てきたものですか?
「そうですね。1番初めに自分の心の声を信じて、すごく肯定的な曲にしたいと竜馬くんに伝えて。その想いを汲み取って、竜馬くんが色々と変えてくれた感じです。自分1人だと悩んだりしてすごく時間がかかるのを、今回竜馬くんが入ってくれたことによってめちゃくちゃ早く進んだので、本当に助かりましたね。実は当時、竜馬くんもSHE'Sのアルバムの制作真っ最中だったんですよ。でも寝ずにレコーディングの現場に来てくれたり、忙しい大変な時だったんですけども、一生懸命考えてくれたんだと思います」
ーーなるほど。信頼関係が見えますね。
「本当に。本来だとお互い1人で悩むところを半分こできたので、すごく助かりました。それに、僕が"こうしなくていいかな?"と言ったら、"いや、大丈夫です。こっちの方がいいと思います"とちゃんとバッサリ言ってくれるので、それも"なるほど"という感じでやりやすかったです」
ーー資料の内澤さんのコメントにあるように、今は不安や批判に立ち向かって生きる人たちがとても多いと思います。内澤さんも日々の生活でそういう感覚を感じたりされますか?
「そうですね。自分らしさすら強要されている気がするというか、理想の自分を勝手に決めつけられて、自分はそれにならなければならないんじゃないかと思ったりもしていたので、そうではなくて本当にまっさらな気持ちで、自分が信じたものを選んで進んでいくようなメッセージにしたいと思っていました」
土地ごとに、思い入れのあるセットリストを組んで廻る15周年記念ツアー
ーーサウンド面はイントロも華やかで、それこそフェスやライブで真っ直ぐ届きそうですよね。<誰かが言ってた 君らしいって何か>の前のブラスとキメと、ギターソロが気持ち良くて。
「この間奏のフレーズも竜馬くんがアレンジしてくれたんです。すごく気持ち良いですよね。"テテレテレ"というフレーズは竜馬くんのピアノです」
ーーピアノは全て竜馬さんが弾かれたんですか?
「2番のAメロとかは竜馬くんで、それ以外は自分が入れたものですね」
ーーなるほど、混ざっているんですね。コーラスも入っていて、ライブではシンガロングできそうですね。
「最初からライブをイメージして作ってはいました。レコーディングで竜馬くんが、"SHE'Sだと何十テイクもコーラスを重ねる"と言ってて。僕もコーラスは入れていたけど、竜馬くんほど多くは入れてなかったので、今回は竜馬くんの案で2人でいっぱいコーラスを重ねました」
ーーやってみて、新たな発見はありましたか?
「物量が増えてるので、シンプルに大変でしたね。でも音の層が厚くなって、楽しかったです(笑)」
ーーライブ向けのサウンドを意識されたのは、昨年8月にリリースされた13thフルアルバム『gravity』から続くものがありますか?
「今回のツアーは4人だけでステージに立って、初心を思い出して届けようというテーマなんですけど、『gravity』以降も4人でしっかり鳴らせるものを意識してずっと曲作りをしています。なのでギターの強い曲が多いんですけど、そういうのは意図的にやってますね」
ーー今回はブラスも入っていますね。
「ブラスは竜馬くんの案です。音はSHE'Sのレコーディングやライブでよくブラスを演奏されてる方にお願いして入れてもらいました。これも竜馬くんと一緒だからできたことかなと思います」
ーー聴いてくれる人には、どんなふうに届いてほしいですか?
「さっき言ったように、"自分のことを信じて進んでいく"というメッセージを届けたいです。あとはお互いのバンドを好きになって、楽しんでもらえたらいいなという想いがありますね」
ーーそして現在廻られている15周年記念ツアー『-15th. Anniversary tour-』ですが、約半分を過ぎて感触はどんな感じですか?
「今のところ、全箇所でセットリストを変えてるんです。先ほども言ったように、今回は7年ぶりに4人だけで立つステージで、かつセットリストも思い入れのあるものを、その土地土地で変えていくスタイルにしています」
ーーしかもファイナルは11月1日(金)、大阪心斎橋BIGCATです!
「andropの初めてのツアー(2011年『angstrom 0.3 pm』)の初日が、大阪のBIGCATだったんですよ。なので、この15周年のタイミングでBIGCATで最後を飾りたいという想いがすごく強かったんです。思い出の地なので、ファイナルは集大成的なものにしたいなと思っています」
Text by ERI KUBOTA
(2024年10月31日更新)
01. Massara feat.井上竜馬(SHE'S)
視聴はこちら
androp(アンドロップ)…内澤崇仁(Vocal&Guitar)、佐藤拓也(Guitar&Keyboard)、前田恭介(Bass)、伊藤彬彦(Drums)による4人組ロックバンド。2009年12月に1stアルバム『anew』でデビュー。メジャデビューから3年で国立代々木競技場第体育館で1万人を動員する単独公演を開催。数々の映画やドラマ主題歌、CMソングを手掛けるなど楽曲の注目度は高く、ミュージック・ビデオもカンヌ国際広告祭(フランス)、One Show(アメリカ)、Webby Awards(アメリカ)ほか、国内外11のアワードで受賞するなど、その映像世界やアートワークでも世界的な評価を得ている。映像・音響・照明が三位体となったスペクタクルなステージパフォマンスも大きな注目を集めているほか、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」、「SUMMER SONIC」、「RISING SUN ROCK FESTIVAL」等、大型フェスへの参加も多い。2016年にレーベル「image world』を設立。2021年に約4年ぶりとなる通算6枚目のフルアルバム『effector』を発表。2022年7月に新曲「SummerDay」をリリース。9月、東京日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)公演を成功させ、9月11月にデジタルシングル「September」、「Neo Tokio Stranger」、12月14日に12th album「fab」をリリース。2023年5月にデジタルシングル「Happy Birthday,New You」、そして7月「Arata」「Black Coffee」をリリースし、8月23日に13th album「gravity」をリリース。全国ツアーを経て、2023年12月にdigital single「Image Word(New Recording Ver.)」をリリース。2024年3月13日にFODオリジナルドラマ「愛してるって、言いたい」主題歌『Story』をリリース。そして7月1日にドラマ「タカラのびいどろ」エンディング主題歌『Vidro』をリリース。8月にはSHE'Sの井上竜馬とのコラボ曲「Massara」をリリース。今年CDデビュー15周年を迎え、9月7日から全国ワンマンライブツアーを廻っている。10月14日に東京にてandrop初のフェスティバル「androp 15th Anniversary day」を開催、大成功で終了する。11月1日(金)にはツアーファイナルを大阪心斎橋・BIGCATで迎える。
公式サイト
https://www.androp.jp/
▼11月1日(金) 19:00
BIGCAT
スタンディング-5900円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。小学生以上はチケット必要。【U-18割引】
※公演当日、小学生以上18歳以下の方は会場にて身分証掲示で\2,000キャッシュバック。
※身分証は、コピー及び、写真データは不可となります。有効期限内の現物をご持参ください。
※キャッシュバックは公演当日のみ、会場に来場された方に限ります。
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