ホーム > インタビュー&レポート > いかにも四星球らしい時代錯誤なおもしろさ まさかの2枚組24曲収録『音時計』は“時間いっぱい”が逆に新しい 「自分たちはタイパとはかなり縁遠いバンド」
――CDを買うということが少なくなった昨今。2枚組CDという形態がそもそも珍しいですし、しかもタイパ重視の時代にこのトラック数と収録時間は異例。でも『トップ・オブ・ザ・ワースト』(2022年)もベストアルバムとはいえ収録時間が80分。そういう長さこそが四星球なのだと感じます。
北島「逆に言えば、そういう時代だからこそ"時間いっぱい"が新しいと捉えることもできる気がします。たとえば今の10代の間では、周りまわってフォーク調の曲が流行っていると聞いたりもしますし。古いものが新しく感じられる時代。しかもそういうものを、時間軸を題材としたアルバムで表現できた。それはすごく意味があると思っています。あと最近、数やボリューム感についてよく考えるんです。アイドルのライブを見ると、メンバーの人数の多さがすごい強みに映ります。12人組とか、単純に数に圧倒されるし。でもよく見るとフォーメーションが緻密。そういう"数の暴力"みたいなもののすごさを、逆にバンドとして4人でも見せることができたら強いだろうなって」
まさやん「たしかに僕らはタイパとはかなり縁遠いバンドですよね。前に『ライブではお客さんを満足させすぎない方がいい。ちょっと物足りないくらいで止めた方が次も来てくれるんじゃないか』と言ってもらったことがあったんです。それってつまり、僕らのライブはめちゃくちゃお腹がいっぱいになるってことなのかなって。初めてのワンマンライブでも、3時間、4時間もやっちゃいましたし。最初からバンドのスタイルとしてそういう感じだったのかも」
モリス「アルバムを2時間半も聴いたら『分かりました、もう好きです』と言うしかないところもありますよね。強引でもそう言わせるというか、好きになるしかないというか。もちろん『好き』と言ってもらえるだけのアルバムをちゃんと作ったつもりですけど、そういう『好き』のさせ方もあるのかなって。本来の意味とは逆のタイムパフォーマンスですし、あと自分自身、無駄の良さ、無駄の情緒が好きなので。余計なことをやった方が楽しく感じますね」
U太「タイパを気にした曲を作ろうと思ったら作れるはずですし、実際に短く聴かせる曲もありますが、でもバンドのスタンスとして他と同じことをしていないというか。どこか捻くれてやってきたので、その名残とか、そこでしか得られない満足感が癖づいています。結局、良くも悪くも『四星球ってアホやな』と笑ってもらえたら勝ちかなと思います。そういう意味でも『音時計』は自分たちに合った作品なのかもしれません」
――みなさんがお話してくださったことはまさにずっと感じていて、四星球にとって「時間」は実はキーワードの一つのように思っていました。ですので「ついにそれを主題として表現してきたか」という気分になりました。
北島「時間という部分では、ライブの体感時間は短くしていくことは意識しているかもしれません。わざとダラダラしているように見せたり、時間が押している風にやってみたり。でも実は時間ぴったりとか。制限時間内に詰め込むだけ詰め込んで、数をたくさん打てばどれか引っ掛かるだろうし、満足感につながるかもしれない。そうやって時間のことを考えるようになったのは、年齢的な理由があるかもしれません。オリジナルアルバムとしては『ガッツ・エンターテイメント』(2021年)から3年半空いて、その間に40歳になり、『あと何年できるんだろう、あと何枚のアルバムを出せるんだろう』と考えることが増えてきたんです。30代後半から、理由は分からないけどなんかやるせなさもありましたし。その気持ちが『時間』というテーマに出ているかもしれません。だけど、年齢に合った歌を作れたり、そういうライブができたりするのってバンドマンだけが許されることだと思っているので、そうやって老いとうまく付き合うことで悩みが解消されていく気がします」
モリス「僕は12月に40歳になるので、数字的に気になるところは確かにいろいろあります。人と会っても『なんか1年が経つのが早い』という話ばかりになってきて。『40歳まで生きてきたけど、この倍となると80歳なのか』とか考えたりして。良いか悪いかは別として、時間が経つことに対して興味が湧いてきました。若い頃は全然考えていなかったですけど」
まさやん「僕は人より自己肯定感が高くて、20代の頃と比べると体重も15キロくらい増えちゃったので、裸になってもかなりお腹ぽっこりで。でもそういう歳の取り方や姿の変わり方が嫌いじゃないんです。やっぱりライブがあるから、前向きになれているんだと思います。こういうスタイルのバンドだから、なにか変わったことがあったらそれをステージでそれを出しちゃえば、ちゃんとネタになる。曲を作るきっかけにもなるかもしれない。だから年齢を重ねてもそこまでネガティブな感覚にはならないんです。あと僕らより上の世代のミュージシャンが、何歳になってもみんなかっこいい。若い頃はその良さがあり、今は今の良さがある。『歳を重ねるのって良いことなんだ』と、先輩たちから教わっている気がします」
U太「自分は2023年に40歳になったことが、気持ち的に大きなものがありました。自分の人生をちゃんと考えるようになり、自分にとって嫌なもの、やりたくないことってなんやろうとか、全部を見つめ直してみたんです。そのなかでバンドについても考えることがありました。今の自分のスキルや発想がこのバンドの役に立てているのだろうかとか。辞める、辞めんとかじゃなく、『ここにいるべき資格があるのだろうか』とか思うようになって。もし足を引っ張っていると自分で感じるなら、40歳だし人生を考え直すべきじゃないですか。バンドを長く続けるのってかっこいいけど、それは更新し続けてのこと。続けることが目標になるのは今は違う気がしてまして。そういう意味で、『音時計』は本当に大きい意味があったんです。『ベーシストとしてもっとやりたい。それをこのバンドで生かしていきたい』という意欲が湧きました。今は『40歳を過ぎてもまだやれるな』という気持ちですね」
――そんななか、PM盤の11曲目「ワンハンドレッドエイトビート」の歌詞で「もっとおもろなりたい...」と歌っていらっしゃいます。四星球にとって将来性を感じさせる言葉ですね。
北島「2枚組のトータルで24トラック中、23トラック目にその言葉が来ていることに実は意味があって。このアルバムのゴールが見えてきたからこそ『次は、この作品よりもっといいものを作りたい』と言いたかったんです。あと人間的にも、歳をとっても法被とブリーフで歌っていたらおもろいし。やっぱりそれに尽きます。『変わらんなあ』というおもしろさですよね。そういえばこの前、Scoobie Doとの対バンのとき、ローラースケートを履いてライブをやったんです。前から頭のなかではなんとなく『おもろいやろうな』と思っていたことで、それを実践したら自分ら的にめっちゃ良かった、そういうのが大事なんですよね。頭に浮かんだおもろいをどんどん実現させていったら、きっとこの先、あっという間なんやろうなと思います」
モリス「それって、四星球だからおもろくなるってことでもあると思う。たとえば誰かとネタが被ったとしても、自分らだと面白く感じてもらえるというか。そういうのを目指したいですよね。それをずっとやり続けていたら大人の味わいもおもしろさに加わってくるというか。あと個人的には、ドラマーとしてみんなが出してくれる案をもとに、いろいろやっていきたい。ドラマーとしてのおもしろさも追求していきたいです」
まさやん「この前『MONSTER baSH』に出たときも、僕らの出演時間だけ大雨だったんです。想定していたライブができた、できないの次元じゃないくらいの大雨。でも見てくれた人たちは『おもしろかった』『感動した』とおっしゃってくれて。一歩間違えたら『こんな大雨のなか、かわいそう』になりかねないけど、僕ら4人がそういうなかでステージを駆けまわれば『おもしろかった』と言ってもらえる。すごく自信がつきましたね。たとえば出川哲朗さんって、歳を重ねても体を張っていて、でもそれがかわいそうには映らない。めちゃくちゃおもしろい。そういう年の重ね方が理想ですよね。出川さんは本当にすごい」
U太「僕はおもろいタイプの人間じゃないから、どっちかというとその環境作りに徹したいですね。ただ、『次はこういうメイクをやろう』となったとき、それは全力で取り組みたい。たとえば今は髭が生えているけど、扮するキャラクターに髭がなければ躊躇なく剃ります。そういう役作りは入り込んでやりたい。自分でおもろいを作り出すというより、与えられたおもろいを全うするポジションでいたいです」
――『音時計』は曲のバリエーションも多彩ですし、10月14日(月・祝)に大阪で開催されるライブ『風雲!大阪城温泉〜ワチャの湯〜』や、11月23日(土・祝)のBOATRACE鳴門(UZU HALL)でのワンマン『令和6年度 四星中学校文化祭』、11月24日(日)の同書での『四星球企画 ふざけてナイト』のセットリストにも、新しいエッセンスを加えてくれそうですね。
北島「このアルバムからできるだけ曲をやりたいと思っています。あと、昔からの曲とどうやって絡めていくか。新しいアルバムを出したら、やっぱり『ライブが良いように変わった』と感じてほしいですし。あといつか『音時計』だけでライブを構成してみたいです。ライブを一本、成立させられるアルバムって今まではなかったですし。いろんな可能性が膨らむアルバムになりました」
――それこそ「24時間」というアルバムの題材になぞらえて、「24時間ライブ」を期待したいです。四星球であればそれをおもしろく成立させられそうな気が!
北島「......24時間(笑)。そういうチャレンジ系は好きです。24時間をどういう風にライブとして表現するかが課題になりそうですね。今の自分らって、『これまで上げてきたハードルをどのように越えていくか』という活動になっている。だからこそ、おもろさだけで押し切っていきたいですね。逆に『24時間ライブ』と言いながら、24時間で終わらないとか」
まさやん「お客さんから『もう寝てくれ』じゃなくて、『もっとやれ』と言われるようなものができたら、いける気がする。めちゃくちゃ長いギターソロとかやって、その間にメンバーもお客も寝てもらったり」
モリス「ちょっと待って。『24時間ライブ』をやる前提で話が進んでいる気がするけど、やらないよね? できればやりたくないんですけど(笑)」
U太「でもなんか不思議と考えちゃいますね。『そっか、24時間ライブか...』って」
北島「いや、おもしろい! やるかどうかは別として、なんかいろいろ、インタビューのなかでアイデアが出てきた気がします。そもそも2枚組アルバムを作るという話も、そういうフリをもらってできたところがあるんです。だからもしかすると、いつか僕らなりに考えた『24時間ライブ』が実現するかもしれません」
Text by 田辺ユウキ
(2024年9月30日更新)
Album『音時計』
2024年10月30日(水)発売
【通常盤】(CD2枚組)
3980円(税込)
【VOS限定盤】(ライブDVD:DVD『su-xing-cyu at MONSTER baSH 2024』+リバーシブルタオル付き)
5980円(税込)
https://victor-store.jp/special/suxingcyu2024
《DISC AM》
01. エラ-むかしむかしあるところに-
02. ミッドナイトレインボーピーターパン
03. ちょんまげマン
04. 旅BEAT
05. FLAG
06. 6:00a.m.-ちょんまげマンアラーム-
07. 刹那くんおはよう-86400歩のパンク-
08. アドベンチャー
09. そういう生き物
10. 10:00a.m.-帰ってきたちょんまげマンアラーム-
11. 僕らの絵描き歌⭐
12. UMA WITH A MISSION
《DISC PM》
01. Yeah!むっちゃ武者修行
02. なんでもかんでもランキング
03. ロックンロールケーキ
04. もしも君が生き返ったら
05. カーネーション
06. DONDON BOWLING
07. ドレミファ暮らし
08. ふざけてナイト
09. 9:00p.m.-レッツ・エンターテイメント-
10. がんばっTENDERNESS
11. ワンハンドレッドエイトビート
12. エラ-めでたし めでたし-
▼10月1日(火) 19:00
LIVE HOUSE B-FLAT
全自由-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※小学生以上は有料、未就学児童は入場可。(保護者付添必須)
※出演者が許可した場合を除き、写真撮影、録音・録画禁止。
※販売期間中は1人4枚まで。
[問]清水音泉■06-6357-3666
【高知公演】
▼10月3日(木) 高知X-pt.
『JUNE ROCK FESTIVAL 2024』
▼10月5日(土) CLUB CITTA’
『南相馬・騎馬武者ロックフェス2024』
▼10月5日(土) 南相馬市馬事公苑
『TOKYO ISLAND 2024』
▼10月12日(土) 東京・海の森公園 森づくりエリア
『少年少女秘密基地 FESTIVAL 2024』
▼10月13日(日) ダイアモンドホール
『風雲!大阪城音泉~ワチャの湯~』
▼10月14日(月・祝) 大阪城音楽堂
超能力戦士ドリアン ツーマンライブツアー「 お友達に興味あるー!2024 」
▼11月6日(水) Fukuoka BEAT STATION
BOAT RACE鳴門 PRESENTS 四星球ワンマン「令和6年度 四星中学校文化祭」
▼11月23日(土・祝) ボートレース鳴門
BOAT RACE鳴門 PRESENTS「四星球企画 ふざけてナイト」
▼11月24日(日) ボートレース鳴門
【神奈川公演】
▼12月5日(木) CLUB CITTA’
【東京公演】
▼12月13日(金) Spotify O-WEST
10月12日(土)一般発売
Pコード:279-873
▼2025年1月9日(木) 19:00
BIGCAT
オールスタンディング-3900円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※NEW ALBUM「音時計」のジャケット持参で特典あり。小学生以上は有料、未就学児童入場可。未就学児は親子スペースにて鑑賞。
※出演者が許可した場合を除き、撮影、録音・録画禁止。
[問]清水音泉■06-6357-3666
10月12日(土)一般発売
Pコード:279-873
▼2025年1月10日(金) 19:00
246 LIVEHOUSE GABU
オールスタンディング-3900円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[共演]有
※NEW ALBUM「音時計」のジャケット持参で特典あり。小学生以上は有料、未就学児童入場可。未就学児は親子スペースにて鑑賞。
※出演者が許可した場合を除き、撮影、録音・録画禁止。
[問]清水音泉■06-6357-3666