ホーム > インタビュー&レポート > ジャニスの○○と○○シリーズ SPARK!!SOUND!!SHOW!!×おとぼけビ~バ~の ツーマンライブレポート
2009年、立命館大学の音楽サークル『ロックコミューン』に在籍していたあっこりんりん(Vo.Gt)・よよよしえ(Gt)を中心に結成されて、2011年に初の全国流通盤をリリース。2016年からは、海外でも本格的にライブを行なっている。グラストンベリーやコーチェラといった海外の大型ロックフェスにも出演...と、おとぼけのプロフィールを簡単に書いたが、何と言っても今年5月~7月のレッドホットチリペッパーズの北米ツアーに呼ばれた事で、より話題沸騰中。帰国後、初の大阪ライブであり、地元関西凱旋ライブな空気感もあり、心斎橋JANUSは平日夜でありながら、満員御礼の大盛況。
大阪は南堀江のレコードショップ『FLAKE RECORDS』店主DJ DAWAがDJをする中、定刻にメンバー4人がさらっと登場する。場内は大きな歓声に包まれて、観客が前へ前へと押し寄せ、よしえの『アーユーレディー?! カモンかほキッス!!』を皮切りに、かほキッス(Dr)のカウントと可愛らしい歌声により、1曲目『ヤキトリ』でスタート。そして、『デストロイ~!』のシャウトを始め、あっこの迫力ある歌で怒涛の50分に突入! すぐ『あきまへんか』が鳴らされるが、2曲共にショートチューンであり、一瞬で瞬殺される感じ...。先に言っておくと、この日、20曲が演奏されたが、どの曲も2分くらいで体感的には再び書くが一瞬の瞬殺。
『ドーン! ドーン!』という掛け声から『Don't light my fire』つまりは『ハートに火をつけたならばちゃんと消して帰って』へ。13年前という初期からライブを観ている身として書くが、当時からキュートとワイルドの両方を持ち合わせているのが堪らなく魅力的であった。続く『大殺界』もそうだが、楽曲もポップでキャッチ―でありながら、ハードにヘビーに瞬時に駆け抜けていく。一見、激しさを感じるが演奏のキメ合わせの的確さには繊細さも感じるし、長年観ている身としては最早、様式美すらある。一般的にはプログレッシブロックと言うと長尺主義のバンドイメージがあるが、おとぼけ楽曲は短尺だが、革新性=プログレッシブを感じるので、この日は特に個人的にではあるがプログレを大いに感じた。
MCでは『大阪~! 帰って来たよ~!!』に対しての『お帰り~!!』という観客の返しからして、凱旋であり、故郷に錦を飾る意味合いもあり、本当にワールドワイドで愛されるバンドになったのだなと感慨深くなる。エッジの効いたサウンドが格好良い『シルブプレ』では、かほキッスやベースのひろちゃんも歌う。考えたら、ひろちゃんが入って11年、かほキッスが入って6年、すっかりバンドとして鉄壁のグルーヴを手に入れている。『ラブイズショート』では改めてショートナンバーの魅力を憶えたが、『いまさらわたしに話ってなんえ』では、スサシのライブでも触れられていたが、関西弁の強み凄みが再度理解できた。自分が関西人なので、普通に受け止めていたが、早口の関西弁が速いリズムビートでブチかまされるのは痛快すぎる。
『帰って参りました~! ようやく大阪に~! 何から帰って来たのか自分でもわからないですけど!』
二度目のMCで、よしえは言っていたが、何から帰って来たかわからないくらいに世界を股にかけるバンドになったのだなと勝手に感激してしまう。縁もゆかりも無いと言いかけ、軽く縁もゆかりがあると話していた心斎橋JANUSも前回のライブが5年前。その頃も既に海外へと進出していたが、今と比べると全く状況が変わっている。心斎橋JANUSへの凱旋でもあったが、そこで披露した新曲が『インポ』というのもインパクトがデカすぎる。よしえも5年前からは考えられないくらいの観客の多さについても話し、当時の観客状況について、『ジジイジジイジジイ.........、ひとつ飛ばして可愛い娘ちゃん!』などと言いながら、ネクストソングは勘違いジジイへの『ジジイ is waiting for my reaction』へ。なんちゅうタイトルではあるけれども、このモノ申す感覚をユーモラスも含めて、スピーディーにぶっ放すのが愉快すぎる。この時にあっこにステージ後方からライトが当たっていたが、どこか神々しさすらあった...。
よしえは『台風まだ来ませんな!』という時事情報MCから、物販を詰め込んだスーツケースを2個抱えて電車に乗って来たと言うと、申し訳なさそうに気を遣うあっこ。『あっこちゃんの申し訳無さを拭うためには、どうしたらいいですか?!』というよしえの問いかけに、あっこも『みんなが買ってくれたら!』とひとこと。ライブにおいて物販の告知も重要になってきているものの、どうしても冗長なものが多いが、まぁ簡潔な事、その上、ライブ後の尋常じゃ無い物販大長蛇の列も最高であった。その後も『PARDON?』終わりに、ライブ中の聴き返すポーズモトネタを野々村議員と明かしたりと細かい小ネタも絶好調! 海外ツアー行きまくりのおとぼけだが、11月には待望のJAPANツアーも控えているので、是非とも未見の人は必ず行って欲しい。
『携帯見てしまいました』では、携帯で撮影している観客がより際立って見えた。携帯の曲を携帯で撮影するという不条理な光景も観れた後、少しだけ観客が静かな時間があり、思わず『シーン』と言うあっこに、すかさず『まるで朝のお寺のようでしたね!』というよしえ。もしかしたら、わざわざ書くほどの場面では無いかも知れないが、この返しは今日イチのやり取りで、これだけ空気を読めるバンドは、日本語が通じない海外でも絶対ウケると変な確信を持ってしまった。以降も、わりと新曲だという『家電』など、こんなテーマをロッケンロールにするかと目の付け所のシャープさに感嘆すらしてまう。『サラダ取り分けませんことよ』での『サラ! サラ!』は、フラメンコの『オレ! オレ!』みたいだしとイチイチ興奮している間に、変幻自在なライブは気が付くとラストナンバーへ。
初めて聴いた時に言語感覚の素晴らしさに感服してしまった『あなたわたし抱いたあとよめのめし』では、マイクを上に向けて吠えるあっこが格好良すぎる...。いつのまにやら、よしえは客の上にダイブしてギターを弾いている...。あっこがマイクを頭に叩きつける鈍い音が聴こえて、そのマイクをステージに叩きつけて、何事も無かったかのように去っていく...。最後の最後まで目が離せないライブと呆然としていたら、よしえはギターを観客の上に放り投げている...。めちゃくちゃライブで暴れる姿があっても、めちゃくちゃライブに誠実な姿があるからこそ成り立つな訳で...。メリハリが効き過ぎた圧巻のライブ。
おとぼけライブ終わり、スサシライブまでに、心斎橋JANUSのベランダで両者の記念撮影が行われた。以前、フェスでライブレポートを担当した事はあるが、挨拶は出来ていなかったので、そこで初めてスサシに挨拶をする。タナカユーキ(Vo.Gt)の『「オアシスの再来か?!」と書いといて下さい!』の一言に、関西特有の誉め言葉としてのアホさを感じつつ、また本番直前にも関わらず、観客フロア後方にあるDJブースで、タナカがDAWAにレコードについて聴いていたのもミュージックラバーを感じて好感が持てた。いざライブが始まっても、『我々レッドホットチリペッパーズも頑張りますので!』と1曲目『By the Way』を曲フリしたりとオチョケ全開だったが、『おとビと一緒です! ダンスバンドです!』という自己紹介はシンプル過ぎて素敵だった。その言葉だけで、どんなバンドかが即座にわかるし、おとぼけファンも嬉しかったはずである。
真の1曲目『akuma』からして、ひとつひとつの音が大きいだけでなく、しっかりと重い。タナカの元にタクマ(Gt)とチヨ(Ba)が寄ってきて、音をブチ鳴らしていたが、バンド一丸となって立ち向かっている感じが物凄く感じられた。続く『STEAL!!』からダイバー続出! 霆(いかずち)という歌詞もあったが、まさに霆ズドーン!!な感じで大熱狂! 『JUNGLE BUN DEM』ではブレイクビーツ的な爆盛り上がり感がとてつもなくて、引き続き続出するダイバーを、タナカがステージ中央で迎え入れる様に威風堂々と立つ姿も誠にクールであった。で、『ウチのドラムがかっこいいダンスをやりますので!』のフリからイチローがダンスを披露するが、これがまた格好良すぎないチャーミングな振り付けで、メンバー全員も横並びで煽り、まだ3曲目やというのに大フィーバー!!
タナカは大接近中の台風より危ない危険なライブハウスなので保険に入っていない人は帰って下さいと言っていたが、心斎橋JANUSは、そんな危険なライブハウスを愛する観客で大満杯。『おとビとスサシでソールドするんですか?! 絶対しないと想っていました! 時代来ています! メインストリームじゃない2組、千鳥言うところのクセが凄い2組でJANUSソールドしますんで新しい時代を、このムーヴメントを祝福しましょう!』
このタナカの言葉は、まさにと頷くしかない2組を顕著に表現した言葉であった。カウンターカルチャーの2組がフェスシーズン真っ最中で、しかも平日の夜に地元ライブハウスをソールドアウトさせるのは最狂すぎる。観客フロアの真ん中を空けて、観客たちがぶつかりあったりと最狂のダンスフロアと化していた...。『だいぶ声が出ていますが、一緒にバラード歌って下さい!』と全くバラードじゃないエレクトリックなダンスナンバー『感電!』がブチかまされたが、『新時代』という歌詞が心に響きまくる。『踊らない』と銘打たれたナンバーやのに、聴いたら踊るしかないダンスナンバーから、ダンスアンセムとして鳴りまくった『YELLOW』の流れはバカみたいに盛り上がりまくった。何よりも最高に明るくて最高にハッピーな時間。
『マジで全然ソールドすると想ってなかったから凄い...。完全に初めての組み合わせでやっているのに、お好きですね?! ラウドロックやメロコアの界隈の人たちとやる事が多いですけどウケなくて(笑)、クセ系の人とやる時はソールドする! 予言しますけど、新しい時代来ます!』
タナカは度々、新しい時代を強調したが、こんなに真っ直ぐに馬鹿正直に新しい時代を宣言するバンドマンも今日日珍しいので、90年代からカルチャーの新しい時代を信じてきたジジイライターとしては本当に胸がドキドキして嬉しかった。チヨが自身の姉とひろちゃんが似ていて3ショットを撮った事もあるとも明かしていたが、初顔合わせとはいえ相思相愛なのもわかり、抜群のマッチングが遂に実現したとも言える。こういう関係性が見えるだけで、それぞれのファンも取っつきやすくなる。タナカは、スサシの方がおとぼけよりおとぼけしているので、おとぼけの曲は耳が痛いとも話して、海外の人たちは歌詞の内容を把握しきれないはずなのに、あんなにブチかましていると驚きを漏らす。関西弁の女の子の痛快なリリック意味合いが海外でも理解されたら、もっと海外におとぼけがバレるという賞賛も、同じバンドマンでありながら潔すぎて清々しかった...。自分たちと観客の力で『クイーンに押し上げましょう!』というのもバンドマンシップとして美しかったし、救急車の後ろに付いていたら早く着くといった言い回しで後続を面白おかしくアピールしたのも関西人らしいオチで可笑しかった。
その名も『NU ERA』でもダメ押しで新時代を宣言した後に、まさのAKB48『ヘビーローテーション』カバーから『ヘビーローテンション』へと繋げたのも魅せ方の巧さに恐れ入った。10月31日には、 "15th Anniversary Show"と題して、Zepp Osaka Baysideでライブを開催される事から、『俺らみたいなガチャガチャうるさいバンドがZepp埋まっていたら!』と語ったが、よく考えたらスサシとおとぼけ共にキャリア15年であり、共にガチャガチャうるさいバンドがライブハウスを埋めまくっているのは素晴らしすぎる。量産型の音楽が多い中、この2組の存在は貴重すぎる。
ラスト3曲『good die』→『♰黒天使♰』→『南無』の流れで余計に感じたのだが、スサシは、みんな一緒に歌える...、要はシンガロングできる楽曲が多いので一体感が異様に増す。タナカも観客フロアに降りているし、最高速度でサークルモッシュも起きている。タナカが天井のパイプを辿りながら観客の上を歩いていき、天井の鉄柵を掴んで、ぶら下がったシーンは完全に最高潮であった。終わり、大満足していたら、DAWAのDJからオアシスの『Don't Look Back in Anger』が聴こえてきた。タナカの『オアシスの再来』を想わぬ回収が出来たが、それにしても日本の心斎橋のライブハウスでオアシスやレッチリにも全く引けを取らぬロックを聴けたのだから、我々は幸せ過ぎる...。
Text by 鈴木淳史
Photo by 松本いづみ
(2024年9月 3日更新)
01. ヤキトリ
02. あきまへんか
03. ハートに火をつけたならばちゃんと消して帰って
04. 大殺界
05. シルブプレ
06. ラブイズショート
07. いまさらわたしに話ってなんえ
08. 新曲
09. 脱日陰の女
10. ジジイ is waiting for my reaction
11. アイドンビリーブマイ母性
12. あなたとの恋、歌にしてJASRAC
13. PARDON?
14. 携帯見てしまいました
15. 新曲
16. サラダ取り分けませんことよ
17. リーブミーアローンやっぱさっきのなしでステイウィズミー
18. 孤独死こわい
19. 一級品の間男
20. あなたわたし抱いたあとよめのめし
01. akuma
02. STEAL
03. JUNGLE BUN DEM
04. HAPPY BIRTH DIE
05. 感電
06. MILK
07. 踊らない
08. YELLOW
09. NU ERA
10. ヘビーローテンション
11. SE 悪魔降臨
12. MAD AGE
13. MAD HYMN
14. good die
15. 黒天使
16. 南無
「おとぼけビ~バ~ JAPAN TOUR 2024」
▼11月12日(火) 19:00
磔磔
全自由-4000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児入場不可。小学生以上チケット必要。
[問]SMASH WEST■06-6535-5569
【名古屋公演】
▼11月13日(水) 池下CLUB UPSET
【東京公演】
▼11月15日(金) LIQUIDROOM
【福岡公演】
▼11月22日(金) 福岡Queblick
【札幌公演】
▼11月28日(木) cube garden
【仙台公演】
▼11月30日(土) SENDAI BIRDLAND
【金沢公演】
▼12月6日(金) 金沢GOLD CREEK
▼12月14日(土)・15日(日)
味園 ユニバース
全自由-4500円(ドリンク代別途必要)
※未就学児入場不可、小学生以上チケット必要。
[問]SMASH WEST■06-6535-5569
「15th Anniversary Show~Zepp Series~」
▼10月31日(木) 19:00
Zepp Osaka Bayside
1Fスタンディング-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要) 2F指定席-5500円(ドリンク代別途要)
[共演]THE ORAL CIGARETTES
※未就学児童は入場不可。
※公演延期・中止以外の払戻しはお受けいたしかねますのでご了承ください。
※転売禁止。
※危険行為・迷惑行為の禁止。
※購入者以外の入場はお断りさせていただきます。
※開催時の情勢により、客席のレイアウト、レギュレーションなど変更になる可能性がございますのでご了承ください。
※いかなる場合もスタッフの指示には必ず従ってください。
[問]GREENS■06-6882-1224