ホーム > インタビュー&レポート > 「90年代からやりなおしていこうかと思っている」 2000年以降マイペースに進んできたSCAFULL KING、 フロントマン・TGMXが語る“今動き出す理由”
同じメンバーで
また楽しめるようになってきた
インタビュー開始よりかなり早い時間からお客さんがやってきていたTANK酒場。それに合わせるかのように、今日のフード出店・スパイスカリーハルモニアも早めの販売をスタート。いつものPARCOの地下には漂わない、芳醇すぎるスパイス香にさっそくお腹がグゥ(スタッフ全員、開始前から香りに負けて"腹減った..."と連発していた)。開始時刻が近くなってくると、ラフなファッションのお客さんに混ざるかのように、周辺のOL&サラリーマンがお昼を食べに来る姿もチラホラ見受けられる。ジャスト12:00、登場したTGMXの「今日はありがとうございます! 酒飲みたいです!もう飲んでますけど! ビールを!ありったけのビールを!じゃあかんぱーい!」という景気のいい掛け声でインタビューがスタート。飯室がTGMXにインタビューをしたのは何年も前、それもSCAFULL KINGではなくFRONTIER BACKYARDでした、と切り出す。
TGMX「FRONTIER BACKYARDはアルバムを出すたびにFM802に出させてもらっていますけど、SCAFULL KINGは2000年に活動が止まったのでプロモーションをしていないですからねぇ。本当にこういう機会はあれ以来じゃないかなと。月曜日の昼間からありがとうございます!」
飯室「とはいえ、今年に入ってからSCAFULL KINGはライブをされていてうれしいです」
TGMX「年明けに豊洲PITで『BAD FOOD STUFF Originals』という友達同志のイベントに出て。BACK DROP BOMB、BRAHMAN、LOW IQ 01&THE RHYTHM MAKERS PLUSと僕らで出させてもらいました。あとは福岡でBACK DROP BOMBとツーマンをやったり。夏は新代田FEVERの15周年にも出ましたね。実は『BAD FOOD STUFF』は、今回出演した4つのバンドで始めたイベントなんです。うちのギターのケンジが勢いで"みんなでやりたい!"って。だからこのイベント、僕たちは『ケンジNIGHT』って呼んでいたんですよ。それが後々BACK DROP BOMBの手によってちゃんとしたイベントに育っていきました。今回はスタート時の4バンドでやりましょうと」
そしてこのトークイベント開催前日、出演予定だった『RUSH BALL2024』が台風の影響により中止となったことにも触れる。
TGMX「あの台風、名前がサンサンっていうらしいですよ。可愛い名前なのに、なんであんなに動きが遅かったのかなあ。そうそうアレですよ! ここではぶっちゃけた話をした方が絶対盛り上がると思うのでお話ししようかなと思うんですけど、実はSCAFULL KING、『RUSH BALL』に何度も誘っていただいていたんですよ。でもなかなかタイミングが合わなくて、やっとタイミングが合って出られる! となったら台風が来てしまって。今後、出演条件として、「台風が来ないなら出ます!」とでも言おうかなぁ(笑)。対策として泉大津フェニックスの会場全体に大きな屋根をつけてもらったり、地下開催にしてもらったりしたらいいよねぇ(笑)ちなみにあとでGREENS『RUSH BALL主催イベンター』のみなさんに聞いてみようかと思っているんです。『RUSH BALL』の今回のメンツそのままスライドする形ですかぁって」
飯室「『RUSH BALL』のメインプロデューサーは非常にアツい方なので、それに近いことをやってくれるんじゃないかなと思っちゃいます」
TGMX「でもどうしよ、うちのメンバーはみんな忙しいからなあ! あ、あと今日のトークイベントもね、なんで月曜日の昼間なの!? っていろんな人にネットで言われてね。まあ『RUSH BALL』の出演翌日だったからっていうことなんですけど、『RUSH BALL』が開催されていたら燃え尽きて僕はここに辿り着けていなかったかもなとも思いますね(TGMXはこの日、このイベントのために大阪入りしたのだとか!)。みなさん、わざわざお越しくださってありがとうございます!」
そして話題は11月に開催がアナウンスされているSCAFULL KING東名阪ワンマンツアーの話題へと移っていく。
飯室「大阪公演は11月23日の土曜日・祝日にアメリカ村BIGCATで、東名阪ツアーは8年ぶり! 大阪でのワンマンに関しては...なんと17年ぶりです。17年ぶりにワンマンってどういうことですか!? ヤバいです!」
TGMX「前回大阪でのライブは2016年で、BRAHMANとのツーマンだったんですよ。来てくれた人ってここにいます? (何人かの手が挙がる)あ、来てくれたんですね! ありがとうございます。あれもすごく楽しかったんですけど、もう8年前っていうのは信じられないくらい時が経ってしまっていますね」
そこで飯室が投げた質問は、なぜ今ワンマンツアーを行おうと思ったのかについてだ。
TGMX「90年代には結構ライブをやっていたけど、2000年以降全然やらなくなってしまったんですよ。やっても年に3回とか4回とか。それぐらい牛歩みたいな活動をしてきていたんだけど、実は最近ライブが良くなってきたので、もうちょっといろんなところに行ってみたいなと思っているんです。ただメンバーもそれぞれ忙しくて合うタイミングがなかったんですけど、今年の11月には意外に時間が合うぞとなって盛り上がっちゃって。それなら東名阪行こう! と。実は僕ら、アルバムを3枚しか出ていなんです。それこそ枚数が少ないので、どの曲もそれなりにうまく演奏できるんですよ。ずっと同じ曲をやっているので(笑)。なので2000年に活動を止めて...24年経ってだんだん熟してうまくできるようになってきたという感じなんですよね」
飯室「我々的には90年代から人気のバンドの中でもSCAFULL KINGの演奏力は抜群ですよ。でも今、自分たちの演奏がよくなっていると実感できているなんてうれしいことですよね」
TGMX「うん。同じ曲をやっているのもあるんですけど、ちょっとライブや活動を楽しめるようになってきたっていうのもあります。 2000年頃は、僕が嫌になっちゃったんですよ。ライブやることもつまらなくなってしまって。でも今は次のライブを入れたくなってきているという。ライブやリハのひとつずつに反省をしたり、次はこうやりたいって話したり、新しいライブを入れたくなってきている感じですね。あとは僕、今52歳なんです。メンバーが元気なうちにやりたいことをやろうかなっていう気持ちも芽生えています。メンバーとはタイミング次第で会えたり会えなかったりするので、コンスタントに練習できていない分、ひっそりと長いスパンでリハをやり続けているんです。1年くらいかけて本番に向けて練習するようなスケジューリングで。」
気になるのはバンドの状態はもちろん、東名阪ツアーでどんな曲が披露されるかということではないだろうか。
TGMX「さっきもお話ししましたけど、我々のアルバムは3枚なんですよ(笑)。しっかりとそのあたりからやろうと! 今日このトークが始まるまで、会場のBGMにSCAFULL KINGの曲をかけてもらっていましたけど、自分たちの音源を聴いたのは本当に久しぶりでうれしいけど恥ずかしいみたいな感じでしたねぇ。あ、あと大阪のFLAKE RECORDSのDAWAさんがDJで出ます! 今僕、これは先走って言ってます。大丈夫かな。これが正式なオファー兼発表ですということで。KENJI(RAZORS EDGE(Vo)/この日フード出店していたスパイスカリー ハルモニアの店主でもある)は当日、僕らのケータリングでカレーを作りに来てくれたら嬉しいな〜って。」
飯室「それこそRAZORS EDGEとの縁っていうのは?」
TGMX「BRAHMANのTOSHI-LOWが紹介してくれたんです。雑な言い方で言うと、単純に飲み仲間です(笑)。とにかくみなさんにBIGCAT来てもらいたいですね! みなさんチケットの準備はいいですか? (はーい! とお客さんが手を振る)お友達連れやカップル、ご夫婦で来てもらう感じで。最近はお子さん連れの方もいて、うれしいです。僕ら最近でこそライブはやっていませんでしたけど、当時の大阪ではベイサイドジェニー(2006年に惜しまれつつ閉店した、天保山にあったライブハウス)によく出てましたね。お客さんの激しさがスゴいライブハウスっていうか」
飯室「今日来ている人は、ベイサイドジェニーに行っていた方も多いと思います」
TGMX「ね、めちゃいいハコでしたよね。上の階もあって、目の前が海で。大阪にもいいスカバンドがいっぱいいますしね。GELUGUGUとか横綱ichibanとかとやったり。ただ、僕らは東京のスカバンド...RUDE BONESとかと一緒に来ていたことが多かったので、大阪のバンドとはあまり一緒にやれてはいないんです。大阪は大阪でスカのシーンは独特な盛り上がりをしていた印象でした。東京のシーンで言うと、RUDE BONES、SHOULDER HOPPER、DUCK MISSILEとかとよく一緒にやりました。他にもスカパンクバンドが豊富でしたよね」
飯室「そうですねぇ! あの頃はSNSもなかったし、音楽雑誌やフライヤーで必死に情報を集めていました」
TGMX「僕らも当時はメンバー全員でフライヤーを配ったりしていましたね。それもあってこれ、今回久々に紙のフライヤーを作ったんですよ! それこそ2000年以降は作っていなかったし、今は紙のフライヤーを作っても誰ももらってくれないかなぁとも思ったんですけど。今日はぜひ持って帰ってもらえたらうれしいですね」
3枚のアルバムの
1曲1曲を大切にしたい
スカコア、メロコア、ハードコアにスカパンク...さまざまなジャンルの音楽が入り乱れて爆発的に支持されていた90年代~2000年代前半。激動という言葉がピッタリとハマる音楽シーンに身を置いていたTGMXだからこそ見えている景色がたくさんある。
TGMX「SCAFULL KINGとしては普段コンスタントな活動はしていないし、昭和のバンドだと自分たちでもよくわかっているから、逆に若い人とやらせてもらったりすると"ごめんね~おじさんたちが"っていう感じでいっちゃいますね。ただ僕らのバンドのメンバーや、当時『AIR JAM』に出ていたようなバンドの方たち、みなさんと一緒にいると、僕らもアガるんですよね。またそういう人たちと一緒にやりたいなというか、青春からやり直すじゃないけど、そういう気持ちでやりたいと思っていますね。きっと来てくれるお客さんも、青春を一緒に思い出すんだろうなと。僕らもあと何年やれるかわからないけど、90年代に特化してやり直していこうかと思っているんです。僕らは完全におじさんなのでライブに関係なくずっと体は痛いし、元気な時があんまりないけど(笑)。ただライブの仕方みたいなものは全然変わっていなくて、僕はライブ中もお酒飲みますし! こういうことを強く思ったのが、今年最初にあった豊洲PITでのライブだったんです。僕らを含めた4バンドで出た時に、来ていたお客さんがすげえ楽しそうだったんですよ。これはまたやろう、こういう感じでやりたいと思えたのは大きかったと思います」
飯室「そういう景色を我々にもたくさん見せて欲しいです!」
TGMX「ただ、お客さんへのホスピタリティとか全然考えてないですよ? 自分から楽しんで勝手にやってくださいね〜みたいな感じになっちゃうかもしれないけど、元々そうだったなぁと思うし。お客さんも楽しそうだったし、僕らも勝手に楽しませてもらったし、それでいいと思えました!」
SCAFULL KINGが、今後ライブのペースを上げていく可能性があるような気もしてくる話だ。
TGMX「どうなんですかね? やりたいことはまだあるんですけど...今のメンバーじゃ年齢的に無理でしょう(笑)! 若い人を見ると羨ましいし、あぁだったなあと思うんです。今は若い人を羨むのではなく、同世代の友達を大事にする。これを大事にしていきたいなと思います」
飯室「でも活動をしていく中で、新曲が生まれたりするのでは? という期待も生まれます」
TGMX「実は何曲か新曲らしいのはあるといえばあるんです。けど、新曲は必要?ってなっちゃうんですよね。何年もやっている僕の好きな海外のバンドが新曲を出したけど、あまり響かなかったんです。ならば僕らは、新曲を出すよりは、好きな曲をカヴァーした方がいいかなって思ったりもして。僕らはアルバムが3枚も出ているので、1曲1曲を大切にしたいなと思っています。まぁ出した時点で1回音楽的に完結しているので、次に何か新しい事やるならワールドミュージックをやるとか、オーセンティックなレゲエやソウル、ファンクをやるとか変わったことしたいですね。ファンのみなさんに"ライブはもういいから新曲を!"って言われたら、ポロッと出てくることはあるかもしれないです」
今後のライブも楽しみなSCAFULL KING。この日のお客さんに対する「これからどんな対バンが見たいとか、リクエストはありますか?」という飯室の投げかけに、真っ先にあがってきたのはBRAHMANの名前だ。それは見たいですねーと飯室も首を大きく縦に振った後「世代が違うバンドとの共演は?」とTGMXに投げかける。
TGMX「そうですね、HEY-SMITHとかやった事ありますね。若いバンドの人も楽屋に来て"実はSCAFULL KING、好きです」ってこっそり言ってくれるですよ。そういうふうにこっそり言われる感じも僕ららしいというか。ありがたいことです。世代が下のバンドからお誘いを受けることもあるんですけど、ちょっとこちらが及び腰というか。まずは同世代のバンドとね、やっていこうかなと今は思ってます。そのメンバーで大阪にも来たいですよ! これからそういう機会があればいいなと思いますけどね、まずは来年の『RUSH BALL』のステージにガッチリ屋根をつけていただいて! とは言いつつ、僕らはもちろん周りの友達たちも元気なうちにいろいろやった方がいいなとは思いますよね」
飯室「日頃の体のメンテナンスは大事ですね。健康大事! といいますか」
TGMX「みんな体は気を遣っていますね。うちのバンド以外は。健康情報、みんなめちゃくちゃ詳しいですよ。ただ、うちのメンバーからはあんまり聞かないです。ここが痛いとか言うけど、じゃあこうしたらいいよ! はない。田上、飲み過ぎだよとも言われない(笑)。みんな好きに生きろよっていう感じなんでしょうね。でも健康は大事ですよ。元気ならみんなライブにも来られるしね。まずは11月のBIGCAT、元気に遊びに来てくださいね!」
Text by 桃井麻衣子
Photo by ピー山/Takafumi Yamashita
(2024年9月20日更新)
Pコード:271-097
▼11月23日(土・祝) 18:00
BIGCAT
スタンディング-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※小学生以上は有料。未就学児童は保護者1名につき、1名入場無料。
[問]GREENS■06-6882-1224