ホーム > インタビュー&レポート > スチャダラパーとSTUTSによるスペシャルジョイントライブ 『スチャダラパー & STUTS Presents "オーサカ That's the Joint”』ライブレポート
開場中はANI選曲による70年代から80年代の歌謡曲が流れて、いよいよ開演5時30分。まずはSTUTSがひとりで舞台に現れて、『Renaissance Beat』をプレイする中、スチャのバックバンドであるザ・コストパフォーマンス【笹沼位吉(b)・松田浩二(key)・三星章紘(ds&per)・KASHIF(g)】と武嶋聡(sax,&fl)& 佐瀬悠輔(tr)、そしてトークボックス奏者LUVRAWも登場。最後にスチャのANI・Bose・SHINCO&サポートMCロボ宙も登場して、『ドゥビドゥWhat?』へ。東京でのライブが5曲目から2組がジョイントしたことを考えると、頭からジョイントを観れたことに大興奮したし、これだけで2組が何をしようとしてるかも伝わってきた。
『今日は、こんな感じでいろんなものが混じり合って、"That's the Joint"していきますんで!』(Bose)
そんな言葉通り、STUTSがMPCのパッドを叩いて鳴らすビートから『CHECK THE WORD』へいき、続いて観客との楽曲タイトルコール&レスポンスから『ライツカメラアクション』へ。これまた丁寧にBoseが『こんな感じで最後までジョイントします! 意図はわかってもらえましたか? スチャの中にSTUTS君が混じり合ったり、STUTS君の中にスチャが混じり合ったりします!』と改めて説明して、ANIも『シームレスで続いていきますんで!』と継ぎ目の無い事を強調する。思わずBoseが『それ(シームレス)を言いたかったのね!』と笑っていたが、いつものそんなスチャの緩やかな空感はそのままであるものの、スチャの3人と約20歳離れている1989年生まれのSTUTSが混じり合うのは本当に新鮮である。
『STUTS君が生まれてすぐくらいの曲』という紹介から『B-BOYブンガク』へ。『更に次の曲も古い曲やります』と言って、『アフター ドゥービー ヌーン』へいく前に、Boseがスチャ・STUTS共にそれぞれのライブが初めての観客を挙手で確認して、『いい混ざりだと思います!』と喜ぶ。その上で『STUTS君を初めての人は、何をやっているかわからないまま帰ることになるから!』とSTUTSが操るMPCについての説明をすることに。実際にSTUTSがMPCで実演していきながら、ドラムの音をサンプリングして各パッドに入れ込んでいる様に、スチャの楽曲もバラバラにしてサンプリングして入れ込んでいることを、Boseが本当に丁寧に話していく。機材の機能を詳しく知らなくても、凄い音楽が鳴らされている事で充分に満足できるが、こうやって丁寧に説明してもらえると、より音を楽しむことができる。誰ひとり観客を置いてけぼりにしないBoseの何気ない配慮にグッときてしまう。
5曲いい感じに混じり合ったところで、スチャ一同は一旦去り、ここでSTUTSと普段の自身のバンドでも一緒にやっている武嶋と佐瀬と共に、自らがラップする『One』へ。ターンテーブルの中から舞台前方へ飛び出していくSTUTSの姿はエモーショナルであったし、またMPCのもとに戻り、MPCを叩きながらラップする姿もエモーショナルだった。トラックメイカーであり、プロデューサーであり、いろんなラッパーと曲を作り、たまに自身も歌うことを説明して、インストナンバーも作ったりしますという流れから『Come To Me』へ。リズミカルなビートの上に、佐瀬のトランペットが鳴り響く。STUTSのライブが初めての観客にも思いきり魅力が伝わったのではなかろうか。
再びスチャ一同が登場して、STUTSの楽曲『Pretenders』からスチャの楽曲『LET IT FLOW AGAIN 』へとマッシュアップの様に繋いでいく。STUTSは共に楽曲を制作したC.O.S.A.とYo-Seaについて説明しながら、歌詞の中に『LET IT FLOW』という言葉が出てくるとも話す。Boseは『20年超えてのマッシュアップ』と返したが、20年前と20年後の楽曲による自然なマッシュアップには感動すら憶えたし、2組が自然に惹かれ合ったのもわかった気がした。
ここでヒューマンビートボックス奏者のAFRAも加わり、まずはヒューマンビートボックスがどんなものかを披露してから、『4ch FUNK』へ。AFRAのヒューマンビートとSTUTSのMPCビートが互いに鳴らし合っていく感じは、どこかバトル感もあり、ただただ魅入る。BoseとANIいわく昭和の加藤茶と西城秀樹によるドラム対決が令和に甦ったとのことだが、さっきから20歳や20年など数字の差を書いている様に、まさしく昭和と令和のジョイントだと新たに感激してしまう。そして、AFRAのビートかSTUTSのビートかわからなくなるくらいに凄まじいビートのジョイントが聴けた『トリプルショット』から、Boseが自身とSTUTSとANIとAFRAを簡単に言うとインテリとワイルドの様な感じで大きく分けて、前者と後者を比較していく『後者』へ。今回は全てに置けて丁寧という言葉がぴったり当てはまるが、敢えてライバル関係図式を作り、観客も二手に分けてコール&レスポンスをすることで、一段と楽曲のニュアンスが届いてくる。
ここで一旦STUTSが去り、スチャのターンへ。Boseの何気ない『今 何時?』という問いからANIが『そうね だいたいね』と返したりと、いくらでもふたりのやり取りは観れるのだが、そんな冗談めいたやり取りから、『(観客は)時間を忘れたくて来ているんですよ』(ANI)と『現実がしんどすぎてね』(Bose)のやり取りは芯を食った発言で胸を打たれた。もちろん本人たちがそんなつもりで言っていないのもわかるし、続く『ジャンクリートコングル』・『MORE FUN-KEY-WORD』でも感じたが、自然に何気なく重厚さや硬派さを醸し出しているのはシンプルに格好良かった。
STUTSが戻ってきて、それまでの流れを汲み『FUN-KEY-WORD』へ。曲終わり、STUTSは約20年前の学生時代にHIPHOP雑誌を読んでいたり、HIPHOP好きな友達がいなかったので『B-BOYブンガク』を教室のベランダでひとりMDから聴いていた事を明かす。Boseは『我々もみうらじゅん好きな人いなかった。お客さんもそうだから。変わった人、尖った人ばかりだから』と話す。すかさずANIが『普通だよね!? 気さくだよね!?』と返していたが、確かに自分も含め普通のつもり気さくなつもりでも、結果、変わっていたり尖っていたりして、音楽に救われた人ばかりが集まっていたのではと思えた。そんな中、STUTSによる『ファンキーというか元気な人!』という紹介でラッパーのKMCがファンキーに元気に登場! KMCの『STUTSにはいつもデカいステージに連れて来てもらえて、偉大なスチャダラパーともやれて、ラッパー冥利に尽きます!』というひとことは、ファンキーや元気という言葉だけではおさまらない誠実で真摯な感謝の姿勢を感じられた。STUTSとKMCによる楽曲『Rock The Bells』からスチャの楽曲『リンネリンネリンネ』のマッシュアップは、この日一番の爆発を見せていたように思う。
渾身の力でやりきったKMC...。ここで再びスチャ一同が去り、そのまま『STORM』で前のめりにまくし立てていく。特に『思い知らせてやる これがHIPHOPだ』というリリックには、KMCが伝えたかったこと全てが込められている気がした。嵐の如く現れて去っていくKMCの後は、STUTSよりもまだ若い90年代後半生まれの鈴木真海子(chelmico)が可愛らしく小走りで登場。涼やかな曲をいうフリから冬の曲である『0℃の日曜』へ。鈴木がクールなラップを聴かせていると、気持ち良い風が空気を読んだかの様に吹き、本当に涼やかな気分になる。そんな季節の楽曲からSTUTSが『いろいろな季節があるということで、季節は変わっていくという歌を歌います』と『Seasons Pass』へ繋げていく。チルアウトと言うと簡単な表現すぎるが、まさに心が落ち着いていくナンバー。
ここでスチャ一同が再び登場して、STUTSがMPCを叩きながら歌う姿を弾き語りならぬ叩きがたりと絶妙な言い表しをするBose。STUTSも全寮制の中高に通っていて、携帯持ち込みは禁止だったが、楽器持ち込みはOKで、MPCを持ち込んでいた話をする。自分でビートを作り始めた時にスチャのアルバムを聴いていたので、SHINCOの影響を受けているとも話す。スチャは人生観への影響もあったと凄く熱く一生懸命語るSTUTSに、Boseは『面白い子が育って良かった...』と漏らし、こちらもしみじみとしてしまう...。そこからMPCでスチャの楽曲をばらばらにしてサンプリングで組み直したという『サマージャム'95 』を一緒に披露して、STUTSと鈴木による楽曲『Summer Situation』へ移行していく。その移行の流れが誠にニクくて、ANIの『こんな曲 流れたりすんだ』というリリックから入っていき、最後は『サマージャム'95 』の『夏のせい』というリリックで〆られた。このジョイントのテーマでもあるが約20年の時を経て時空を超えて、2組がジョイントしていく光景は本当に堪らない...。
いよいよ終盤だが、KASHIFのギターリフから心のベストテン第一位なこんな曲『今夜はブギー・バック』へ。どっしとクールに低音に歌う鈴木のパートも、STUTSのビートにSHINCOが合わせていくのも、全てが印象的で素敵なジョイントという言葉しか思い浮かばない...。1994年の『今夜はブギー・バック』から30年を迎えて、今年2024年に新しく作られた『ぶぎ・ばく・べいびー』へ。曲終わり、Boseが『満足度高い! コスパも良い!』と言っていたが、この日の観客全員は心からそう思えたはずだ。『去年ここで一緒にやって、曲を一緒に作ろうかとなって。その曲をやって終わりでいいですか!?』というBoseの言葉から、今年5月にリリースされたばかりの『Pointless 5(feat. PUNPEE)』へ。その前にBoseが『スチャダラパー&STUTS&あなた』と言っていたのが、心に深く残っている。楽曲を作るのは、ライブをするのは、当たり前の如く演者なわけだが、それを聴いている我々が存在することで、音楽が出来上がると言ってもらえた様にも勝手ながら感じた。そんな良いことばかりだった素晴らしい本編が終わる。
『STUTS君の曲にウチらが加わってやるというね。みんな大好きな曲なんで、そこに邪魔しないように入ります!』
Boseがこう言って、アンコールへ。松たか子主演ドラマのエンディングナンバーであり、様々なラッパーが参加して、松自身が歌ったことでも話題になったナンバー『Presence』。曲終わりにSTUTSも『新しいバージョンみたいで!』と嬉しそうに感想を話し、『後乗せで自分がラップした後に、松さんが歌うの良いよね~!』(Bose)・『感無量だよね!』(ANI)とスチャ御両人も充足感に満ち足りていた。真のラストナンバーは出演者全員が集まって、30年前にリリースされたパーティーチューン『GET UP AND DANCE』! 当時、ロボ宙といった同世代の仲間たちとマイクリレーしたナンバーを、そのロボ宙だけでなく、当時はまだ幼かったり、まだ生まれていなかったりという若者たちとマイクリレーしていく光景は感慨深さしかなかった...。『宴もたけなわ おあとがよろしく』というリリックもあったが、まさしく、そうとしか言えないラストナンバー。最後は全員で『That's the Joint!』と掛け声をかけて記念撮影! なかなかにぎやかなジョイントであったが、まだまだこれからも観たくなるジョイントでもあった。
取材・文/鈴木淳史
写真/ピー山 @pyama_17
(2024年8月 5日更新)
「スチャダラパー & STUTS Presents “オーサカ That's the Joint”」
2024.6.30 Sun at 大阪城音楽堂
<SDP & STUTS>
01. Renaissance Beat(ドゥビドゥWhat?)
02. CHECK THE WORD
03. ライツカメラアクション
04. B-BOY ブンガク
05. アフタードゥービーヌーン
<STUTS>
06. One
07. Come 2 Me
<SDP & STUTS>
08. Pretenders(LET IT FLOW AGAIN)
09. 4ch FUNK
10. トリプルショット
11. 後者
<SDP>
12.ジャンクリートコングル(Ring,Ring,Ring)
13.MORE FUN-KEY-WORD(Funky Sensation)
<SDP & STUTS>
14. FUN-KEY-WORD
15. Rock The Bells(リンネリンネリンネ)
<STUTS>
16. Storm
17. 0℃の日曜
18. Seasons Pass
<SDP & STUTS>
19. サマージャム'95→Summer Situation
20. 今夜はブギー・バック
21. ぶぎ・ばく・べいびー
22. Pointless 5
<SDP & STUTS>
EC1. Presence(EQ)
EC2. GET UP AND DANCE
『ビショップ音楽祭』
チケット発売中 Pコード:275-979
▼9月15日(日) 11:00
メリケンパーク
自由(一般)-9500円
自由(大学生・専門学生・高校生)-8500円(要学生証提示)
自由(中学生)-5000円(要学生証提示)
自由(スペシャルチルエリア付き)-30000円
[出演]ウルフルズ/大橋トリオ/KREVA/スチャダラパー/chelmico/CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN/TENDRE/tofubeats/他
※天災時等、やむを得ない理由により中止となった場合、チケットの払戻し等は致しません。出演者のキャンセル・変更に対してのチケットの払戻しは一切行いませんので予めご了承下さい。
※小学生以下無料(保護者同伴のみ入場可)。雨天決行(荒天の場合中断、中止させて頂く場合もございます)。【大学生・専門学生・高校生】【中学生】は、リストバンド引換時、要学生証提示。当日ご提示いただけない場合、一般料金の差額をお支払いいただきます。チケットをリストバンドに交換してのご入場となります。リストバンドの破損・紛失については、いかなる理由にかかわらず、再発行は致しません。本公演では、客席を含む会場内の映像・写真が公開されることがございます。当日会場で車椅子を利用される方は、チケットをご購入の上、事前にお問合せ先までご連絡下さい。
※販売期間中はインターネット販売のみ。1人4枚まで。チケットの発券は9/8(日)10:00以降となります。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888
『KOYABU SONIC 2024』
チケット発売中 Pコード:264-874
▼9月16日(月・祝) 10:30
インテックス大阪 4号館・5号館
1日券 前売 大人-13500円
1日券 前売 中学生-5000円
1日券 前売 こども-3000円
1日券 前売 大人-13500円(フォートナイトエリア付き)
1日券 前売 中学生-5000円(フォートナイトエリア付き)
1日券 前売 こども-3000円(フォートナイトエリア付き)
[出演]スチャダラパー/TOKYO No.1 SOUL SET/tricot/FRUITS ZIPPER/ヤバイTシャツ屋さん/Lucky Kilimanjaro/礼賛/オズワルド/ガクテンソク/カゲヤマ/そいつどいつ/滝音/ダブルヒガシ/チュートリアル/ニッポンの社長/ネルソンズ/ヒコロヒー/フットボールアワー/マユリカ/ロングコートダディ/笑い飯/兼光タカシ(オープニングアクト)/キャプテンしょーた(フォートナイトステージ)/bykn(フォートナイトステージ)/Pols(フォートナイトステージ)/Minipiyo(フォートナイトステージ)/らいふがーど(フォートナイトステージ)/LiaqN(フォートナイトステージ)/むーこにっく(フォートナイトステージ)/フォートナイト新喜劇メンバー(フォートナイトステージ)/他
※未就学児入場無料。こども料金は小学生が対象。中学生の方は、ご入場の際、学生証要提示
※16歳未満の方は保護者(18歳以上)同伴のみ入場可(同伴者もチケット必要)
※雨天決行(荒天の場合中断、中止の場合あり)
※出演者はキャンセル・変更になる場合あり。変更・払戻不可
※録音・録画・撮影・配信禁止
※会場内では、配信動画撮影が行われる予定です。お客様の映り込みの可能性がございます
※入場制限実施の可能性があります
※車椅子スペースご利用の場合はFANYチケット問合せダイヤル [TEL]0570(550)100(10時~19時/年中無休)にてご予約承ります。車椅子のお客様1名につき、お付添いのお客様1名まで、所定のスペースにてご覧頂けます。
[問]FANYチケット問合せダイヤル■0570-550-100