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CHiCOインタビュー
自分自身と歌い続ける覚悟を詰め込んだ
1stアルバムを引っ提げ初ソロツアーへ

クリエイターチーム・HoneyWorksとのコラボユニット・CHiCO with HoneyWorksのボーカリストとしてその声で数多くのアニメ主題歌を彩り、全国の若い世代をとりこにしてきたCHiCO。彼女は2023年春にユニットの活動を一時休止し、同年夏からはソロシンガーとして新たなスタートを切った。そして今年7月31日、待望の1stアルバム「CONTiNUE」をリリース。さらに現在は同作を携えたツアーを開催中だ。そんな今勢いに乗るCHiCOにデビューから今日までのこと、ニューアルバムのことを語ってもらった。

――8月6日にアーティストデビュー10周年、そして7月15日にソロ活動1周年。ここまで順風満帆に見えますが、ご自身としてはどうですか?

「デビュー前は普通の学生だったので、ぶっつけ本番というか(笑)。『世界は恋に落ちている』(CHiCO with HoneyWorksのデビュー曲)をリリースするにあたって、取材を受けましょうとかラジオに出ましょうとか、歌うだけじゃなく曲を伝えるためのトーク力や言葉のスキルもちゃんとないといけないんだ。この世界は歌うだけじゃダメなんだ......みたいな。それはデビュー前にはわからないじゃないですか。だから当初はそういう壁もあったし、ステージもまだ4曲ぐらいしか持ち歌がないのにCHiCO with HoneyWorksの2回目のライブは代々木第一体育館で。1万人近くが入るイベントだったんですけど、なんだこの広い会場は?っていうところからのスタートだったので、デビュー後は勉強しつつ自分の気持ちが落ち着かないまま、常に階段を駆け上るような状態でした。デビューから3年間ぐらいは我武者羅で、自分に足りないものがいっぱいあると思ったし、何かをするたびに自分はまだまだ頑張んなくちゃいけないなって。スタージ上のパフォーマンスも、とにかく言われたことをやりきらなきゃ!っていう。ただ5周年ぐらいからはやっと自分の周りを見れるようになって、CHiCO with HoneyWorksっていうアーティストが視界に入ってきたというか。(落ち着くまでには)結構かかりましたね」

――では、5年周年以降は楽しみも増えたのでは?

「ちっちゃなことからやってみたいことに意識が向いていって。たとえば衣装とかライブの演出とか。この曲のこのシーンはスポットライトを浴びたらかっこいいのかな?って。なので自分からこうしてみたいんですけどいいですか?って相談をしたり、こうしたいですって提案をするようになりましたね」

――やりたいことが浮かぶようになり、ソロ活動もしたくなった感じですか?

「7、8年目ぐらいからいろんな方と仲よくなって。それは音楽活動以外の人......たとえばゲームが好きなんでゲームの配信者さんとか。で、いろんなお話を聞いていくと、この人は私と年齢もそんなに変わらないのに私以上にいろんな知識があるなとか、自分ってこういう活動をする人間として世間知らずなんじゃないだろうか?とか、音楽活動をするなかで今のところ歌しか歌えてないのかもしれないって......作詞はちょっとさせてもらってるけど、常に書いてるわけではなかったし。CHiCO with HoneyWorksの10周年も、アーティストデビュー10周年も見えてきた段階で、このまま続けていって自分は胸を張ってみんなの前で歌えるのかな?って疑問に思えてきて。そこで自分のスキルアップのために、このタイミングでソロ活動をさせてくださいっていうことで、去年からソロ活動をスタートさせました。自分のやりたいことが生まれるようになって、それをもっといかせるように行動を起こさないといけないなって」

――そしてソロ活動は先月1周年を迎えました。

「この1年間はソロとして新たな景色を見て、CHiCO with HoneyWorksとはまた違う壁にぶつかって勉強した時間でした」

――CHiCO with HoneyWorksの活動と一番違う部分とは?

「CHiCO with HoneyWorksは、HoneyWorksの音楽やイラストレーターのヤマコさんが書いてくださったアーティストイメージがあって、私だけじゃない世界で私がボーカリストとしてどう音楽を届けるかに気持ちを置いていたんですけど、ソロ活動は自分がどう届けたいのか、どういう歌を歌いたいのか、どういうビジュアルを見せたいのかっていう。まず私が考えないといけない点で、自分ってどんな人間なんだろう?って自分と向き合うことがすごく増えて、自分って意外と自分のことを知らないんだなって。思い返すとたしかにそういうのが好きだ。それも自分の個性だったのか......みたいな」

――自分と向き合って発見したことが多かったんですね。

「レコーディングとか、その場で感じて気づいていたはずなんですけど、頭の中ではすっぽ抜けてるというか。たとえば、レコーディングの時に○○って言って褒められるのはなかなかないですねって、マネージャーが話してくれて、うれしい!って思ったことを覚えてるはずなんですけど、その(頭の中の)メモを忘れてしまうというか。あと、シンプルで体のラインをシュッと見せられるシンプルな服装が好きなんですけど、そのファッションスタイルをアーティストとしてのビジュアルに反映させるのも......(忘れてしまう)。自分の好きなものがアーティストとして見せたいものにリンクしないというか。自分が好きなものはあくまで自分の趣味で、アーティストとして届けるのはどうなんだろう?って。でもCHiCOさんってこういうの好きですよね。それはCHiCOさんの個性じゃない?って言われて、あ、たしかに!という。そういう気づきがありましたね」

――素の自分とアーティストとしての自分が乖離していた?

「別物として考えてることが多かったです」

――でも、あっけらかんとしていていいですね(笑)。

「わりと許容範囲が広いというか、なんでもやってみましょう!みたいな。フットワークが軽めなのは自分のいいところですね」

――では次にアルバム「CONTiNUE」について。まずは一枚を通して届けたかったものとは?

「(今年2月7日リリースの)1st EP『PORTRAiT』は、こういった楽曲もあるんですよっていうCHiCO自身の引き出しで、ソロ活動の名刺代わりとしてお届けしたんですけど、今回のアルバムはそれも踏まえたうえで、CHiCO with HoneyWorksでも歌ってきたロックな曲やキュートな曲の応用というか。たとえば2曲目の『インパーフェクト』みたいなゴリゴリロックなバンドサウンドもいけるんですよとか、キュートな曲でも歌い方が変わる表現とか。あとツアーを想定したアルバム制作だったので、そういう(ライブを盛り上げる)表現もできたんじゃないかなと思います」

――バラエティ豊かな全12曲は、多くのアーティストやボカロPが楽曲提供。それぞれの個性が際立ち、CHiCOさんのボーカルも曲ごとに変わって多彩です。個人的にはボカロP・jon-YAKITORYさんが手がけた7曲目の「Noise Cancel」のダークな部分が印象に残りました。

「jon-YAKITORYさんとも事前に打ち合わせをさせてもらいました。jon-YAKITORYさんはいろんなジャンルの楽曲を作られる方ではあるんですけど、Adoさんに提供した作品のように、自分の感情を吐き出してぶつけるメッセージ性が強い楽曲が多いので、今回のアルバムでは自分自身のマイナスな感情を歌う楽曲があってもいいよなと思ったんです。毒を吐きたいんだけど、立場的にも自分の性格的にもうまく吐けないので、心の中でうわーっ!て言ってる感情を、jon-YAKITORYさんに書いていただきました」

――痛快な歌詞ですよね。

「余計なお世話!って思うことあるじゃないですか。自分はこう思うんだけど、なかなかそれを表に出さない、出せないっていう。そういうお話もjon-YAKITORYさんとして、難しい塩梅だけど毒が入った楽曲を作ってもらえませんか?って。それにアップテンポというよりはミドルテンポでっていうようなお話もさせてもらいました」

――細かな話もしたんですね。

「そうですね。この楽曲のAメロの部分が好きなんですけど、そのAメロのうしろのバンドサウンドはこうで......とか、全体的にはさわやか系にしてほしくて......みたいなお話もしました」

――そして「Noise Cancel」の次の曲で、同じくボカロPのひびね。さんが担当した「Goin Goin」の無機質な歌声も印象的。あの歌い方は過去にも?

「まったくやってきてないわけではないですね。CHiCO with HoneyWorksの『醜い生き物』のAメロとか。ザラザラした感じはちょこちょこあったんですけど、久しぶりにああいった感じで歌いました。自分自身もボカロ楽曲が好きなこともあって、その点でも自分の新たな一面を見せ、中毒性があるあえて感情を出さないキャッチーな楽曲が欲しかったので、ひびね。さんにお願いして試行錯誤して作っていただきました」

――ほかに楽曲提供者にはどんなお願いを?

「みなさんの色をふんだんに出した楽曲をいただきたいですっていうリクエストをさせてもらいました。たとえば『インパーフェクト』のSPYAIR(MOMIKEN・UZ)さんには、あのかっこいいSPYAIRさんのロックがいいです!っていうお話をしたり、『Noel』のsumika(片岡健太・小川貴之)さんとは、sumikaさんのさわやかなバンドサウンドがすごく好きです!って。そういう感じで進めていったので、各楽曲にはみなさんの色が詰まっています。

――曲を託され、12通りのイメージを膨らませて表現するのは、とても難しいと思うのですが、どうやってやっているんですか?

「CHiCO with HoneyWorksで鍛えられたんだと思います。もともとは抑揚が少なく素直に歌うタイプだったんですけど、デビュー曲からずっと、うれしいとか悲しいとか怒ったようにとか。あと、すねたようにとか......なんやねんそれ!みたいな(笑)。そんな感じで感情をつけることを続けてきたんです。ほかにも、ちょっとエッジのきいたガラッとした感じにしたいから練習しといて!とか(笑)。自分が思ってる以上にオーバーに歌わないと表現がつかないっていうのを繰り返してきたので、そこから50%ぐらいで出せばこの世界観に合うかなとか......。もちろんディレクションのなかでいっぱいキャッチボールもします。自分でも提案をして、このくらいですかね?って加減は一緒に決めますね」

――そういうコミュニケーション能力も高そう。

「CHiCO with HoneyWorksの9年間が、ここに来て本当にすごく力になってます」

――ただ、いろいろと求められるものを繊細に感じ取って的確に表現できるゆえに、自分のスタイルを見失いそうになることは?

「その点ではソロとしてCHiCOの楽曲は等身大というのを掲げて歌っていて、自分が共感した楽曲に自分の気持ちを投影することを心がけているので......(見失わない)。でもCHiCO with HoneyWorksでは、やっぱり(ユニットとしての)世界がもとからあって、それをいかに私が歌で色をづけていくかなので、そういう意味では......でも、自分の憧れや理想もあったので、むしろ背中を押してもらう感じですね。根本的に自分に自信がないネガティブ人間なので(笑)、こうやって発言できる曲の主人公がうらやましいから、自分もこうなりたい!っていう気持ちで歌を届けてました。自分の感情が追いつかなくて、自分は今どこにいるんだろう?って迷子になることはあったけど、歌で表現するにあたって迷子になることはあまりなかったですね。このニュアンスもマスターできたから、ちょっとレベルが上がった(ニヤリという表情)!っていう気持ちでした。なんでも歌えるようになっちゃうんじゃないの⁉みたいな(笑)」

――ユニットでもソロでも表現することは常にモチベーションで自身の軸がブレることはないが、表現方法や視点がユニットとソロでは違うんですね。「CONTiNUE」ではその違いも楽しんでもらいたいですね。

「全曲、自分が憧れていた方や、ご縁のあった方に楽曲をお願いさせていただいたので、本当に私自身が詰まったアルバムになっています。今ソロ活動ができているのはCHiCO with HoneyWorksの活動があったからで、みんなが今まで応援してくれたから。それを受け止めて、このデビュー10周年のタイミングでこれからも自分は歌い続けていくんだ!っていう覚悟も込めた『CONTiNUE』というタイトルなんです。まだまだやってやるぜ!っていう思いも届けばいいなと思います」

――では最後に現在開催中の「LAWSON presents CHiCO 1st Zepp tour 2024 "CONTiNUE"」の話を。すでに初日の東京公演を終えられましたが、いかがでしたか?

「初日の8月6日は10周年記念日ということもあって、たくさんの方にお祝いしていただいた記念すべき日でした。ライブはほぼ半分ぐらいが初披露の曲だったので、私も含め、みんながライブをどう楽しもう?っていう手探りのスタートではあったんですが、まだまだこの先が楽しみだぞ!って思いましたね。今後みんなと一緒にツアーで曲をライブ仕様にして、各公演でレベルアップしていくのがすごく楽しみです」

――事前に今ツアーではギターを弾きます!という宣言もされていましたね。

「はい。初日はデビュー日だったんで初日限定でデビュー曲をアコースティックギターで弾き語りしました。今後は別の楽曲でギターを弾きます」

――有限実行。すばらしい。

「みんなの前でギターを弾くのは6年以上ぶりだったので、みんなが固唾をのんで見守ってくれるという(笑)。その緊張が伝わってきました。関係者も緊張してるし、誰もリラックスしてない。緊張してないのはうちの親ぐらいでした(笑)。親にはギターを弾くって言ってなかったので、CHiCOは何するんだろう? お前うまくできんのか⁇みたいな感じだったと思いますね。でも今までの練習のなかで一番上手にできたと思います。ほかの公演でもギターを弾く姿を楽しみにしてもらえたらうれしいです」

Text by 服田昌子




(2024年8月16日更新)


Check

Release

Album『CONTiNUE』
3300円(税込)
SMCL 905

《Track List》
01. エース
02. インパーフェクト
03. Noel
04. fam!
05. TRUE BLUE SKY
06. Butterfly Night
07. Noise Cancel
08. Goin Goin
09. エンパシア
10. HiGHLiGHT
11. 我物語
12. 光のありか

Profile

第1回「ウタカツ!」オーディションでグランプリに輝き、10代に絶大な人気を誇るクリエイターチーム・HoneyWorksとのコラボユニット・CHiCO with HoneyWorksとして「世界は恋に落ちている」で2014年にメジャーデビュー。「アオハライド」、「まじっく快斗1412」、「銀魂」シリーズ、「ハイキュー!! TO THE TOP」、「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」、「理系が恋に落ちたので証明してみた。r=1-sinθ」、「彼女、お借りします」など数々の大人気アニメの主題歌を担当。全国の10~20代女性を中心に絶大な支持を集めている。2023年4月8日のZeppツアーファイナルをもって、CHiCO with HoneyWorksの一時活動休止を発表。同年7月15日の1stデジタルシングル「光のありか」をもってソロ活動を始動し、デジタルシングルを続けてリリース。11月8日にリリースしたCHiCO 1stシングル「エース」はTVアニメ「シャングリラ・フロンティア」のエンディングテーマとして起用された。これまではライブでしか見られなかったビジュアルも公開し、新たな表現にも挑戦。等身大の思いや気持ちを歌う新・CHiCOとして、国内外のクリエイター・コンポーザー・アーティストと楽曲制作を開始。2024年7月31日にはソロ1stアルバム「CONTiNUE」をリリースした。

公式サイト
https://www.chicoxxx.com/


Live

「LAWSON presents CHiCO 1st Zepp tour 2024 "CONTiNUE"」

【福岡公演】
▼8月17日(土) Zepp Fukuoka

PICK UP!!

【大阪公演】

▼8月18日(日) 17:00
Zepp Namba(OSAKA)
1F全自由-7200円(ドリンク代別途要)
2F指定席-7200円(ドリンク代別途要)
※3歳以上はチケット必要。2歳以下のお子様は、保護者1名につきお子様1名のみご入場可能。「ご来場のお客様へのお願い」はオフィシャルHPをご確認ください。再入場不可。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

【愛知公演】
▼8月31日(土) Zepp Nagoya
【神奈川公演】
▼9月16日(月・祝) KT Zepp Yokohama


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