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TENDRE×Ryohu 盟友の初対バンが実現した
大阪の小宇宙・味園ユニバースの夜

「マルチプレイヤー河原太朗によるソロ・プロジェクト“TENDREが、自身にとって初となる対バン・ツアーの対バンアーティストにKroiとRyohuが決定。」 そんなニュースが音楽メディアを賑わせたのは4月のこと。え、初なの? と驚くより他なかったTENDREの対バンツアー2公演の中から、盟友Ryohuを迎えた大阪・味園ユニバースの公演の模様をレポートしたい。音楽のジャンルが全く違う2組ながら、アクの強&クセ強な会場としても名高い味園ユニバースの空間に、バチバチにハマるパフォーマンスを見せてくれた素晴らしい一夜だった。

⚫︎Ryohu

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「大阪のみなさん、ワッサァ!」。19時を過ぎた頃、ステージに現れたのはラッパー・トラックメイカーのRyohuだ。幕開けの1曲となったのは「All in One」。梅雨の湿気をしっとりと含んだこの日にぴったりのメロウな雰囲気を持った曲を歌い進めながら、会場の温度を自身の目と耳で確かめていく。曲の中に出てくる「ニューヨーク」を「大阪」に変えて届けるなど、今日ここに集まった人を楽しませようというホスピタリティが、1曲目からもううれしい。

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「大阪、楽しめる準備はできていますか? Are you ready?」。その呼びかけにたくさんの手が上がると重いビートが会場にズンズンと響き始め「True North」が奏でられる。ビートの響きがビリビリと感じられるのは会場の古さゆえか、それともバンドの気合いの表れだろうか。観客はRyohuのリリックに聞き耳を立てながら、ビートに身を委ねている。「大阪まだまだいけますか? まだまだいけますかー??」の言葉が放たれると小気味よいビートがたまらない「Foolish」へ。この曲が進んでいくごとに、フロアの温度が上がっていくのがわかる。それを本人も感じたのだろうか、歌い終わると「東京から来ました、Ryohuです」と発すると、ニコリと微笑んで見せた後「Downtown Boyz」「Shotgun Shuffle」と立て続けに挑発的な側面を見せつける2曲を披露する。

630240621-R-032.jpg630240621-R-044.jpg気づけばRyohuの世界に、飲み込まれている。ここまで5曲、たった15分そこそこで。 楽しんでいますか? をフロアに投げかけたRyohu。普段あまりMCはしないと言いつつ、この日は「僕と太朗ちゃんの話、知ってると思いますが15年くらいのお付き合いになります」と語り始める。この春、TENDREの初の対バンツアーというニュースが躍ったが、実はRryohuにとっても初となる対バンツアー。「ホストを呼ぶのはどうなのかと思いつつお願いしてもいいですか? って電話したらなんて言ったと思います? "いいよ"って! 温かくお迎えください、TENDRE!」。Ryohuの呼び込みに促され、ステージに現れたのはTENDRE。ふたりはステージ中央で軽くハグをし、TENDREがベースを抱えて奏でられたのは「GMC」だ。タイトなギターのカッティングで始まる、なんともアーバンなRryohu的ドライブソングは、バンドの作り出すグルーヴがなんとも気持ちいい。その気持ちよさを抱えたまま曲は「The Moment」へ。ゴスペルを基調にした壮大で光が満ちるようなサウンドが広がる。

630240621-R-070.jpg630240621-R-078.jpgついさっきRyohuがTENDREをゲストとして呼び込んだばかりだが、まるで1曲目からTENDREはそこにいたかのような馴染み具合が、盟友であることの証明だろう。間髪を入れずに会場に音が流れ始めるとRyohuが声を発する。「ここでもう1人ゲストを呼びたいと思います!」と呼び込まれたYONCE(Suchmos/Hedigan's)の姿に、そこらじゅうから悲鳴にも似た歓声が上がる。そう、披露されたのはYONCEとのフィーチャリング曲「One Way」だ。登場早々ギア全開のパフォーマンスを見せるYONCEの姿に、観客はもちろんRyohuのテンションもガチ上がりだ。その証拠に、それまではステージの中心でリリックを放っていたRyohuがステージの右へ左へと移動しながら動きの大きなパフォーマンスへと変わったから。曲の終盤ではRyohuがYONCEの肩を抱き、そのままふたりで最後のワンフレーズ「人生は最高なOne Way」」と放ったところで観客のボルテージは最高潮に。パフォーマンスを終えたYONCEとTENDREの握手&ハグに対してフロアからは大きな拍手が送られ、曲が終わってもザワザワザワザワ...。収まることのない興奮とため息混じりのような「本当にヤバかった」という声も聞こえてきたほどだ。 そんなざわめきにストップをかけるように流れてきたハンドクラップのリズム。フロアの誰もがハッとして手拍子を始め、曲は「Ain't No Holding Back」へ。

630240621-R-090.jpgそして会場の上がりきった温度をスーッとクールダウンさせる「The More The Better」、ゆったりメロウな雰囲気の始まりから終わりに向けてのエモーショナルな展開が観客に手を挙げさせた「Forever」へ、聴かせ方の展開が巧みで眼が離せない。そして曲は途切れることなくそこはかとなくアーバンな夜へと誘ってくれる「Blue Rose」、Rrohuの軽快なラップに体が揺れる「Level Up」と続く。Ryohuは曲を重ねていくごとに、気持ちのよいグルーヴを観客と一緒に作っていくようなラップをする人だ、と感じる。

630240621-R-086.jpg「いつもステージにTENDREがいてくれるんですけど、今日は改めて太朗ちゃんの偉大さを知った日でした。本当に太朗ちゃん、みなさんありがとうございました!」とのMCの後エモーショナルなメロディーがグッとくる「Hanabi」、ソウルフルなコーラスもラストソングとしてこの上ないほどピッタリだった「Thank You」で、ステージを締めくくりTENDREへとバトンをつないだ。

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⚫︎TENDRE

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SEをバックに黒いセットアップに身を包んだTENDREが登場。「よし、いきますか」との言葉と共に、キーボードを弾きながら「RIDE」でこの日の夜をスタートさせた。グルーヴィーなトラックにホーンが華を添える、鮮やかなステージの幕開けに期待値がグッと上がる。そしてキーボードからベースに持ち替えて、曲は「PARADISE」に始まり、ダンサブルでアダルトなビートにフロアを揺らす「JOKE」、キラキラとしたサウンドが夏を思わせる「LIGHT HOUSE」まで3曲をメドレー形式で披露しおえると、盛大な拍手がいいぞ、TENDRE! と称賛を贈っている。

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そして間髪入れず、夜の雰囲気を纏った「NEED」「DISCOVERY」が続く。特に「DISCOVERY」は、バンドメンバーひとりひとりが奏でる音が響いて渦巻いて広がるようなスペーシーな展開で、個人的に頭の中に浮かんだ言葉は"コスモ"。この味園ユニバースで演奏されるための曲だとしか思えないほどバチバチにハマった没入感がたまらない。 「なんか幸せだなぁ、ありがとうございます」。登場から6曲を披露し、ようやくTENDREが口を開く。

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この『ASSEMBLE! vol.1』は先にKroiを迎えた東京公演@Zepp Shinjukuを無事に終え、そして今回大阪へとやって来た。「Ryohuとは対バンっていう形でやることがなかったし、ヒップホップとの対バンっていうことにもすごく意味があると思うんです。彼とは歴史がめちゃくちゃ長くて、15年ともなると酸いも甘いも知っている仲ですから、改めてこうやって一緒にやれることをうれしく思います」とコメント。

630band-1.jpgメンバー紹介を挟んで、次の曲へ...とイントロが始まるも、ミスしてしまったのはなんとTENDRE本人。意外な仕切り直しに会場が盛り上がりを見せる中、披露されたのは「DOCUMENT」。軽快で洒脱なTENDRE流のシティーポップが、ミナミの(しかも昭和の)ディープスポットで軽やかに演奏される不思議...。フロアも手拍子で盛り上がりを伝えながら、「歌えますか?」というTENDREのリクエストに応える形でラララを合唱する。

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曲が終わるやいなや、リズミカルなビートが会場に響き始め続いたのは、「FRESH feat. Ryohu」。この夜、この曲を期待した人はたくさんいたに違いない。ゲストとしてステージに立ったRrohuが楽しげに飛んだり跳ねたりしながらラップする姿が印象的で、TENDREとの仲の深さを見せてくれるようでウキウキした。単純に、本当に、ふたりともが楽しそうだ。それを感じ取った観客たちから、今日イチの拍手と歓声が飛ぶ。 「すごいよね、大阪で対バンって」(TENDRE) 「ちょっとヤバいね、いいね」(Ryohu) 仲良しダダ漏れのやり取りから、「もう1曲やっていいですか?」というTENDREの言葉の後、演奏されたのはペトロールズのカヴァーアルバムに収録された、Ryohuのオリジナルカヴァー(当時、呂布名義でリリース)「誰?」だ。パーカッションの規則的で柔らかなリズムにRyohuのゆったりとしたグルーヴに寄り添って波に乗るようなラップ、そしてバンドを率いるTENDREの演奏。あぁ、これはいい対バンだなぁ。対バンって対するだけじゃなく、一緒にやれるおもしろさもあるんだよなと、知っているはずのことを再確認させてくれるステージだ。

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「Rryohuに大きな拍手! ありがとう!」 「なんかさ、これ作ったんですよ今日」とTENDREがステージの足元を指さして話し始める。実は指をさした先には、小さな花道が作られているのだ。これを作ったのは、なくなってしまうと噂がされている味園ユニバースへの寂しさをなにか形で表したかったこと。そして「いつもバンドメンバーを背に演奏しているのが、ね? ちょっとそこ行っていいですか?」と言い、花道へ歩みを進めた。花道の先に立ち、なんと客席に背を向けて(!)バンドメンバーたちと対面したTENDRE。実はこのスタイルで演奏するのが夢だったと語り、動画で撮っておいてくださいと観客の撮影もOKに。そして演奏されたのは、そのたおやかな歌い出しだけでフロアから歓声が湧いた「hanashi」。タイトル通り、話をすることの愛おしさを綴ったこの曲を、バンドメンバーと対面しながら歌うことの意味。まるで演奏を通したバンドマンバーひとりひとりとの対話を、目にしているようだ。

630240621-T-126.jpgそして何より、味園ユニバースのステージ上のド派手な照明に向かって立つTENDREの背中を見つめながら曲を聴くことの斬新さと言ったら...! 曲の盛り上がりと共に、すごいものを見ているという実感が湧いてゆく。曲が終わると大きな拍手に包まれたTENDREが言う。「どうぞ素敵な人生をお送りください」。そんな言葉で贈られたのはラストソングとなった「LIFE」。この曲は本人曰く"TENDREとして歌える人生歌"。自身初めてとなる対バンライブ、そして長く関係を紡いできたRyohuとも初となる対バンでの共演、これまでも立ってきた味園ユニバースの終焉がやってくるということ。そんないろんなことを丸っと含めてLIFEなのだと言っているようで、グッときた。その曲に添えられた「どうぞ素敵な人生をお送りください」というTENDREの言葉にも。『ASSENBLE!』。とても素晴らしい対バンだった。

630240621-T-136.jpgできるなら、まだまだ味園ユニバースのステージに立つ、TENDREを見たい。まるで、ユニバースの支配人コスプレのような衣装で、ステージで演奏する彼の姿を。 大歓声&アンコールに応える形でTENDREがステージに戻る。アンコールで披露されたのは「DRAMA」。柔らかな歌声と、スタイリッシュなサウンドを届けてこの日のステージを締め括った。...が、この夜のパフォーマンスに対する称賛の拍手が鳴り止まない。自らが用意した花道に進み出て、フロアのお客さんと握手を続けるTENDRE。「ありがとうございました」「お世話になりました」「ありがとうございました」「お世話になりました」「ありがとうございました」「お世話になりました」。ひとりひとりと手を合わせ感謝を述べること数分、「よし、帰ろう! 打ち上げ打ち上げ!」とご機嫌でステージを降りていく姿が、本人も大満足のライブだったことを雄弁に語ってくれていた。

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Text by 桃井麻依子
Photo by ハヤシマコ




(2024年7月 8日更新)


Check

Set List

●Ryohu
01. All in One
02. True North
03. Foolish
04. Downtown Boyz
05. Shotgun Shuffle
06. GMC
07. The Moment
08. One Way
09. Ain't No Holding Back
10. The More The Better
11. Forever
12. Hanabi
13. Thank You

●TENDRE
01. RIDE
02. PARADISE- JOKE- LIGHT HOUSE
03. NEED
04. DISCOVERY
05. DOCUMENT
06. FRESH feat. Ryohu
07. 誰?
08. hanashi
09.LIFE

EN.DRAMA

Live

『HONESTY2024』

【宮城公演】
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【広島公演】
▼7月26日(金) Live Juke
【岡山公演】
▼7月27日(土) 岡山・城下公会堂
【福岡公演】
▼8月17日(土) 博多百年蔵ホール
【熊本公演】
▼8月18日(日) ぺいあのPLUS’
※以上全公演SOLD OUT


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