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「自分の言葉を届けたいなら歌、ライブだなって」
俳優として、歌手として活躍し続ける南野陽子が
夏をテーマにビルボードライブ大阪で名曲から洋楽カバーまで披露!
『南野陽子 To Love Again Ⅲ 〜GAUCHE』インタビュー

 ’85年にデビュー以来、TVドラマ『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』(’85)『アリエスの乙女たち』(’87)や、映画『はいからさんが通る』(’87)などに多数出演し、『話しかけたかった』(’87)『はいからさんが通る』(’87)『吐息でネット。』(’88)ほかヒット曲を連発。俳優として、歌手として、幅広いフィールドで活躍し続ける南野陽子が、コロナ禍の’21年よりスタートさせたライブシリーズが『南野陽子 To Love Again』だ。初回は冬編の“SNOWFLAKES”、昨年は春編の“GELATO”、3回目となる今年は夏をコンセプトに『南野陽子 To Love Again Ⅲ 〜GAUCHE』を開催。その関西公演が、7月13(土)・14(日)ビルボードライブ大阪でいよいよ行われる。自身の名曲群や多大なる影響を受けた洋楽カバーetcを、日本のポップス界の巨匠・萩田光雄のアレンジの元、レジェンドミュージシャンが集った豪華バンドセットで贈る最高のひとときに向け、南野陽子が語るインタビュー。90年代以降は俳優業を中心に活動してきた彼女にとって、音楽とは、そしてライブとは? 『南野陽子 To Love Again』が生まれた理由から、ファンへの思い、当時の懐かしい裏話まで…自分の興味に飛び込みボーダレスに人をつなげてしまう、ひらめきを形にする縁と行動力。来年はデビュー40周年。今でも南野陽子は魅力いっぱいだ。



もうリハで泣けました


――四季を感じる楽曲を自らセレクトした『Four Seasons NANNO Selection』('21)をリリースしたのをきっかけに始まったコンセプトライブ、『南野陽子 To Love Again』も今年で3回目になりますね。

「私は来年でデビュー40周年なんですけど、活発に音楽活動をしていたのは最初の5~6年で、その後はしばらくお芝居がメインで。でも、コロナ禍にいろんなニュースを見聞きして、"ファンの方は今頃どうしているんだろう? 孤立している方はいないかな?"と気になって。そういう方たちが行ける場所があればいいな...みたいなところから、ライブをしたいなと思ったんです。あとは、普段は忙しいミュージシャンの友人がコロナ禍でお家にいたとき、私に曲を作ってくれて。"これを形にしたい、歌いたい"と思って始まったのが『南野陽子 To Love Again』なんですよね」

――『南野陽子 To Love Again』の根底には、そんな思いがあったんですね。

「お芝居を見に来ていただける機会は増えたんですけど、自分の言葉を届けたいなら歌、ライブだなって。デビュー30周年のとき、"歌はもうやりません"みたいなことを言ったんですけど、それは40代にもなってフリフリのドレスを着て、初恋の歌とかを歌ったらダメだろうと思ったからで(笑)。だから、セットリストの半分は、洋楽とか子どもの頃に聴いていた思い出の曲を訳したり、時には勝手に詞をつけて歌ってみたり(笑)。残りの半分は、アレンジもあまり変えず、当時を思い出してもらえるような自分の曲にして。アイドル時代のスタッフも定年で時間があるから、"ライブをやるならみんなに声を掛けてみるよ"と言ってくれて、音楽プロデューサーの萩田光雄さんやレジェンドミュージシャンの方たちが集まって...それこそ、コロナ禍じゃなかったら、普段は大御所のツアーでアリーナを回っているような方たちを集めることはできなかったので」

――そのメンバーが始まって、'21年の冬にライブが実現したときはどう思いました?

「もうリハで泣けました。レジェンドミュージシャンたちは初見で弾けちゃうから、リハも4時間×2日でせいぜい2回ずつしか演奏しないんですけど、そこで自分の後ろから聴こえてくる生音を久しぶりに聴いて...感動で鳥肌が立ちました。そこから本番までは家で自分でぶつぶつ歌ってみたり、"こんな話をしようかな、やっぱり曲順を変えようかな"とか考えて間際までドキドキなんですけど、いざステージに上がったら2曲目ぐらいからは、"あの人、また来てくれている。一緒に歌ってくれているな"とか、お客さまの顔が見えて楽しくなってくる。やっぱりライブはいいですね。お芝居はみんなの顔を見てはしないので」

――見てくださった方が喜んでくれたからこそ、昨春、そして今年の夏へと続いたわけで。

「実は最初にやった冬で、一回で終わると思っていたんです。ここまでのメンバーもそうは集められないし。でも、たまたま去年の春にスケジュールがハマったので、"じゃあ今年は夏、次は秋だ!"って」


遠くに心が通い合う人がいるのは素敵なこと


――昨年は『明日への虹』('23)という曲も作られましたが、これはどういった流れで?

「35年前の'89年に『24時間テレビ「愛は地球を救う」』でカンボジアに行ったときに出会った、当時10代の子たちが40を過ぎた今でも交流があって。あと、私は兵庫出身で、阪神・淡路大震災のときは県外の方が来てくれたし、東日本大震災が起きて東北にボランティアで行ったら、そこで家族みたいな気持ちになれるお友達ができたり...遠くに心が通い合う人がいるのは素敵なことだな思っていた中で、外務省の方から外交関係樹立70周年にカンボジアの親善大使のお話があって、お友達の井筒節さんと作った曲が『明日への虹』なんです」

――なるほど、そういういきさつがあったんですね。

「その話にプラスすると、私はご飯が好きで朝昼晩にお茶碗4杯は必ず食べるので、いつかお米を作ってみたいなと思っていたら、『大切な人』('21)という曲を書いてくれた宗本康兵くんから2年前に、"京都の舞鶴に空いている田んぼがありますよ"と誘われて。昨日も、休日課長(ゲスの極み乙女/DADARAY/ichikoro/礼賛)さんとか、ももいろクローバーZの玉井詩織ちゃんと、室牛(むろじ)という場所で田植えをしたんです。そこの方たちがすごくいい人で、景色もとてもきれいだし、この思いを歌にしちゃおうと宗本くんと『飛揚−Hiyoh−~再会の似合うまち舞鶴~』という曲を作って。去年、舞鶴市浜の赤れんが博物館前広場で海上自衛隊舞鶴音楽隊と演奏したその曲を舞鶴市に寄贈したら、この4月から毎日夕方に無線放送で流れるようになって」

――自分の興味に飛び込んでボーダレスに人をつなげてしまう。ひらめきを形にする縁と行動力が素晴らしいです。

「それも準備して企画書を持っていくとかじゃなくて、昔からその場で決めていく感じで...だから、偶然できたものも多いんです。例えば、『話しかけたかった』の振り付けは、音楽番組『歌のトップテン』のリハーサルでカメラマンさんに、"タリー(=オンエア中であることを示すランプ)がついたらちゃんとそっちを向いてください"って言われたとき、私が膨れたのが話のネタになり(笑)、カメラに抜かれるようになって、彼を目で追っているようにも見える位置にカメラがズレたことで生まれたんです。『はいからさんが通る』の最後の振り付けとかも、"あれ、時間が余っちゃった。でも、まだカメラに映っているよね?"みたいなところから首を動かして(笑)。振り付けの先生も基本いなくて、当時は時間がなかったので移動中の車の後部座席の左側でいつも振り付けを考えていたから、(スペースのある)右手の動きが多くなって...あとは顔で伝えようと(笑)」


どっちがなくなると困るかを考えたら、やっぱり音楽かな


――今年のライブは『南野陽子 To Love Again Ⅲ 〜GAUCHE』ということで、『Four Seasons NANNO Selection』だとDisc1の後半に収録された夏の8曲を中心としたメニューに?

「分かりやすい夏のタイトルの曲は入ってきますよね。あとは意外とライブで歌ってこなかった曲とか、シングルで言えば『風のマドリガル』('86)、『パンドラの恋人』('87)とか『あなたを愛したい』('88)、『トラブル・メーカー』('89)、『耳をすませてごらん』('90)...いろいろあるのでどれにしようかなって」

――ここまで音楽の話をしてきましたが、南野陽子さんの表現方法としてはお芝居と音楽の2つがあって。今となっては音楽はどういう位置づけなんでしょう?

「どっちがなくなると困るかを考えたら、やっぱり音楽かな。自分が歌わなくても、私の日常には朝から晩まで音楽が鳴っているし、お家にいたらテレビをつけていてもずっと音楽を聴いちゃうので。性格も音楽に影響されて、ハッピーな歌を聴くと楽しいし、ちょっと歩幅が大きくなる感じ。テンションの高いお芝居をした後も、クールダウンするのに映画『愛情物語』('56)のテーマ曲『To Love Again』(=カーメン・キャバレロが原曲であるショパンの『ノクターン(夜想曲)第二番』をアレンジ)を聴いて、自分をフラットに戻すので。朝の目覚めも帰りの車も『To Love Again』で、人生で一番聴いてきた曲が『To Love Again』なんです。そういう思い出の曲、何度も聴いた大好きな曲しか歌わないから、ライブをこのタイトルにしたんです。それでいて、私自身が他人のライブに行ったとき、CMとかでも流れるような曲のアレンジを変えられ過ぎても嫌だし、知らない曲を歌われると寝ちゃうので(笑)。だから『南野陽子 To Love Again』は、みんなが知っている曲を歌うのがこだわりです。選曲するときも、私より年上から20代まで、"この曲、聴いたことある?"って聞いて。知っている曲だと倍楽しめると思うので」

――アイドルから俳優になる方は多いですけど、南野陽子は思いのほか音楽の人だったんですね。

「昭和で歌番組がなくなったとき、もう音楽活動はちょっと違うのかなと思ってお芝居をやってきたんですけど、"あの曲を聴いてました"とか、"『はいからさんが通る』を今でもカラオケで歌います"とか言われると、そこを閉じちゃうのはもったいないのかなって。もしかしたら今は、お芝居よりもそっちの方が楽しんでもらえるのかなと思って」


みんなが楽しければそれでいい


――6月26日には往年の音楽番組『ザ・ベストテン』の出演映像を完全収録したBlu-ray BOX『南野陽子 ザ・ベストテン Collection』が発売されました。YouTubeに上がっている関連映像だけでも、とんでもなくかわいいですね。

「10~20代はキラキラした時代がみんなにあると思うんですけど、その昭和な感じがギュッと全曲に、だから、歌詞が出てこなくて丸々8小節歌わなかった事件も入っています(笑)。裏では、司会の黒柳徹子さんが歌詞を見せるためにADさんのジーパンのポケットから台本を抜いて持ってきてくれようとしたんですけど、生放送で映っちゃうからみんなに羽交い絞めにされて...余計に歌えないですよね(笑)。あと、『ザ・ベストテン』の何がすごいって、順位が上がると曲のテンポも速くなるんですよ。一時間の生放送で7~8曲入れなきゃいけないんで、"一分押してます!"ってなると尺を管理する人がパッと計算して」

――それができるのも生演奏だからこそですね、まさにプロ。そんな裏話を聞くと、見るのがとりわけ楽しみになります。よく映像が全て残っていたし、それを集めてパッケージ化できる出演回数と曲数、求められるバリューがあるアーティストじゃないと出せないですから。

「でもね、これが出たから振り付けをちゃんとやらないと...(笑)」

――そうか、みんながBlu-rayを見たら、"あの曲の振り付けはこうだった"って思い出しちゃう(笑)。ビルボードライブ大阪公演も迫ってきましたが、これまでステージに立ってきた印象や、関西のお客さまの反応はいかがです?

「関西のお客さまは、おいしいものもいい音もいっぱい知っているし、何より楽しみ方を知っている。ちょっとした同窓会みたいな雰囲気もあるし、お客さまの顔もステージから全員見えるんですよ。そういう意味でもちょっと緊張はしますけど、一緒に楽しんでいる感じがあります」

――そして、いよいよ来年はデビュー40周年ですね。

「5年もてばと思ってデビューしたんですけど、本当に皆さんの応援のおかげで続けられたと思っています」

――お話しして応援される理由が分かりました。トークもクリエイティブも会うたび知るたび発見がありそうで。

「興味がとっ散らかっていますから(笑)。だから、何でも屋さんですね。肩書に俳優とだけ書いた方が分かりやすいかもしれないですけど、みんなが楽しければそれでいいかなって。私がビルボードライブに他のアーティストを見に行ったときもそうなんですけど、おいしい料理をいただきながら好きな音楽を待つ時間も楽しいですし、始まったらいい環境で生の音が聴けるわけで。私の曲を知らずに来てもらってもいいし、私のファンじゃない方にも来てほしいです。みんなが知っているカバー曲もたくさん用意しているので。だまされたと思ってぜひ来てみてください!」

Text by 奥"ボウイ"昌史




ライター奥"ボウイ"昌史さんのオススメ!

「当然、存じ上げていた南野陽子さんですが、取材に向けて調べたら全曲作詞作曲したアルバムもあったり、当時の衣装の手配や振り付けも自ら行っていたりと、掘れば掘るほど、話を聞けば聞くほど、クリエイティブな面が分かってきて、ちょっと新鮮な気持ちでした。トップアイドルとして一時代を築き、その後も39年芸の世界で生き抜いた理由が、話していてひしひしと伝わる。もういろんなことに納得。そして今でもチャーミング。これまでずっと応援してきた方はもちろん、僕のように改めて気付いちゃった方も、今の南野陽子さんの魅力をぜひこのインタビューで、ビルボードライブ大阪で味わってほしいですね...。ハマりそうです(笑)」

(2024年7月12日更新)


Check

Release

四季にまつわる名曲を自らセレクト
コンセプトライブの軸となるアルバム

 
Best Album
『Four Seasons NANNO Selection』
発売中 3600円
ソニー・ミュージックダイレクト
MHCL-30704~5

<Disc1収録曲>
~春~
01. 空を見上げて(新曲)
02. 吐息でネット
03. 春景色
04. 話しかけたかった
05. シンデレラ城への長い道のり
06. 黄昏の図書館
07. 桜詩集
08. One Way For Graduation
09. すみれになったメモリー
~夏~
10. 誰が為に地球はまわる
11. 8月の風
12. それは夏の午後
13. 雨のむこうがわ
14. パンドラの恋人
15. SPLASH
16. ムーン・ランデヴー
17. 白夜のひまわり


<Disc2収録曲>
~秋~
01. 曲がり角蜃気楼
02. 神様がいない月
03. 秋のIndication
04. 真夜中のメッセージ
05. 秋からも、そばにいて
06. Lonely Night(夜想曲)
07. それぞれ
08. 優しいたそがれ
~冬~
09. 僕らのゆくえ
10. 12月、風の糸で
11. メリー・クリスマス
12. ガールフレンド
13. Dear Christmas
14. 冬の色
15. そして、またイヴがきて…
16. 宝石だと思う~ノエルの丘で~
17. 大切な人(新曲)

往年の音楽番組『ザ・ベストテン』の
出演映像を完全収録したBlu-ray BOX

 
Blu-ray
『南野陽子 ザ・ベストテン Collection』
発売中 16500円
ソニー・ミュージックダイレクト
MHXL-138~40
※Blu-ray Disc 3枚組/
三方背BOX付豪華デジパック・ケース仕様/
南野陽子インタビューブック(50P)

Profile

みなみの・ようこ…’67年6月23日生まれ、兵庫県出身(伊丹大使)。’85年の18歳の誕生日にシングル『恥ずかしすぎて』でデビュー。同年にドラマ『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』で主人公の2代目・麻宮サキを演じ、「おまんら許さんぜよ!」の決めゼリフも流行、注目を集める。’87年公開の映画『スケバン刑事』で『第11回日本アカデミー賞』新人俳優賞を受賞。同作の主題歌『楽園のDoor』(’87)を皮切りに、『話しかけたかった』(’87)『パンドラの恋人』(’87)『秋のIndication』(’87)『はいからさんが通る』(’87)『吐息でネット。』(’88)『あなたを愛したい』(’88)『秋からも、そばにいて』(’88)とヒット曲を連発。8曲連続オリコン週間チャート1位を記録し、トップアイドルとしての地位を確立。俳優としても、NHK大河ドラマ『武田信玄』(’87)、ドラマ『アリエスの乙女たち』(’87)、映画『はいからさんが通る』(’87)、ドラマ『熱っぽいの!』(’88)、映画『菩提樹 リンデンバウム』(’88)など多数出演。90年代以降は俳優業を中心に活動し、’92年公開の映画『寒椿』『私を抱いてそしてキスして』で『第16回日本アカデミー賞』優秀主演女優賞を受賞。

南野陽子 オフィシャルサイト
https://www.southern-field.net/

Live

シリーズ3回目となる今年は
夏をテーマにビルボードライブ大阪へ

 
『南野陽子 To Love Again Ⅲ 〜GAUCHE』

【神奈川公演】
▼7月6日(土)ビルボードライブ横浜

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中
※座席位置によりご相席になる場合がございます。
▼7月13日(土)・14日(日)15:00/18:00
ビルボードライブ大阪
BOXシート31300円
S指定席15100円 R指定席14000円
※ディナープレート&グラスシャンパン付
カジュアル指定席10500円
※グラスシャンパンorドリンク付

[共演]伊藤史朗(ds)/角田順(g)/
ミッチ長岡道夫(b)/エルトン永田(p)/
田代修二(key)/加藤JOE(vl)/
増渕東(MA)/萩田光雄(Arr)
ビルボードライブ大阪■06(6342)7722
※未就学児童入店不可。18歳未満/高校生は成人(高校生不可)の同伴が必要です。

【東京公演】
Thank you, Sold Out!!
▼7月20日(土)・21日(日)COTTON CLUB
【東京追加公演】
Thank you, Sold Out!!
▼7月27日(土)COTTON CLUB