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“めったにない”組み合わせ、君島大空×柳瀬二郎(betcover!!)
『めったにない』ライブレポート

“めったにない”組み合わせによる心斎橋JANUSの弾き語りツーマン企画…、その名も『めったにない』。小原綾斗(Tempalay)×さかしたひかる(ドミコ)、清水英介(Age Factory)×サイトウタクヤ(w.o.d.)という今までの名勝負も記憶に新しいが、今回は君島大空×柳瀬二郎(betcover!!)。

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リハーサルを少し見学したが、舞台には絨毯がひかれ、スタンドライトが置かれるなど、普段のバンドライブとは全く違う雰囲気が本番前から感じられる。開演時間になり、幕が左右に開き、どちらが先に出てくるかと観客が見つめる中、椅子に座り、既にエレキギターを弾いている柳瀬の姿が現れる。

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1曲目『炎天の日』から低く落ち着いた声が響き渡り、こういう声をドスの利いた声と言うんだろうなと思えたし、とにかく声の迫力だけでなく、全体的に異様な迫力が伝わってくる。続く『翔け夜の匂い草』はすごいカッティングから始まり、柳瀬は赤い照明に照らされているし、後方からは青い照明に照らされているし、ムーディーでありミステリアスであり、ただただ魅入るしかない...。『火祭りの踊り』は火祭りの如く真っ赤な照明で、『不滅の国』でも火を彷彿とさせる『火山が噴火する』という歌詞が頭にこびついて離れない。そこに『今度こそ逃げ延びられるだろうか』という歌詞も被さって切迫した気分に陥る。ライブで、それも弾き語りで切迫した追い詰められた気分になるなんて本当に稀有なことであり、それくらい貴重な体験ができているということでもあり...。『遠い遠い親戚』でも普段の弾き語りではなかなか無いドラマチックな展開で惹きこまれる。『鉄に生まれたら』でも弾き語りながら凄みある歪みを耳にして、『僕は一体なにをうたうことができるのか』という深みある歌詞が突き刺さってくる。そのまま繋がる様に『母船』へ。ここまでMCは一切無い。息つく暇が無いのだが、それは快感でもある不思議な感覚...。

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おもむろに8曲目『あいどる』で立ち上がり歌われることに。『ララララララ』というハミングだけで掴まれ、『ユメでよかった』という歌詞は何度も繰り返されるが、すべて聴こえ方が違うので聴き逃したくない一心で聴き入る。『ポポ』に次ぐ『異星人』では『天から与えられた役』という歌詞の辺りで急にエモーショナルに歌い出す。だが、最後は消えいる様に歌い終わる。この緩急の付け方にすっかりやられてしまうが、続く『卵』でも『あなたがいれば』と叫び歌い、『つづくかもしれない』と穏やかに歌うメリハリの付け方にまたもややられてしまった...。12曲目『葵』を歌い終わり、ここでようやく『じゃあ最後1曲やって終わりです』と本日初めての言葉を放つ。

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よく考えてみれば、別にMCが無くても、歌こそが何よりの言葉であり、何よりの語りかけなわけで、それだけで50分も我々に対峙するというのはストロングスタイルでしかない。ラストナンバー『平和の大使』。緩やかな雰囲気がある歌だが、音源では無くてライブだからこそ感じられる荒々しさがそこにはあった。顔で歌うとでも言うのか、最後まで卓越した迫力があり、その叫びながら歌う姿に飲み込まれてしまう。歌い終わり、素晴らしき緊張から解き放たれた観客たちから凄い拍手が起きる。圧倒されっぱなしだった50分...。当の本人は涼しい顔でエフェクターを詰め込んだケースにエレキギターを乗せて去っていった。

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先攻の柳瀬に圧倒された放心状態が残る中、後攻の君島へ。柳瀬同様に幕が左右に開くと君島が座っている。アコースティックギターを長く丁寧に爪弾いていくことで、我々は一気に君島の世界に魅了される。そして、『世界はここで回るよ』と歌い出す。壮大でロマンチックに訴えかけてくるものがある。より高い声で続く『crazy』が歌われるが、静かにリズムを取る観客の姿も見受けられた。その姿は『この世で手を取って踊っていたい』という歌詞ともリンクしていて、柳瀬を呆然と立ち尽くして観ていた凄みとは違う思わず踊りたくなる凄みが伝わってくる。『˖嵐₊˚ˑ༄』ではヴォーカルにエフェクターがかけられていて、ヴォコーダーみたいな声の変化に持っていかれるし、そこにギターが変則的に爪弾かれていき、独特のダンスチューンとして届いてきた。弾き語りで表現される世界では無いし、照明も宇宙空間のようで、とんでもない弾き語りを柳瀬に続いて観れているなと興奮してしまう。その場にいた全員が同じ気持ちだったみたいで、曲終わり拍手と共に歓声が起きる。

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『向こう髪』ではメロディアスなビートであり、相変わらずギターの爪弾きも変幻自在であり、躍動感のある弾き語りで、音と声が兎にも角にも迫ってくる...。『19℃』のリズムも気持ち良くて、ふと周りの観客を観てみるとゆらゆら気持ち良さそうに揺れていた。途中、『もう1回やってもいいですか!?』とライブならではのシーンもあり、『歌えなくてもいい...、そんなことはない!』と笑い飛ばしたりと、緊張感は全く途切れないのに緩和される独特な君島の間の使い方に魅かれる。『踊れなくてもいいよ 笑えなくてもいいよ』という歌詞にも、ついうっとりとしてしまった。

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『めったにない感じですよね。本当にそんな感じですよね。柳瀬君と...、それ以上の言葉は無い...』

今までも君島のライブを観たことはあるが、どの君島のライブとも、この日の君島のライブとは違った。しっかりツーマンを意識していたというか、柳瀬と真正面から対峙していたというか、だから中盤までMCは無く、喋っても端的で短く、ストロングスタイルで挑み合っているのが堪らなく嬉しかった。そこからの『都合』は、より真っ直ぐ強い歌として解き放たれている。『きさらぎ』では、その甘いロマンチックさで胸がキュンキュンしてしまい、ようやく君島の魅力を言葉として明確に現わすことができた気がした。高い声についても、『エルド』で心掴まれる声と明確に言葉で現わすことができた気がする。気が付くと『午後の反射光』に繋がっていて、続く『- - nps - -』では声自体にメロディーを感じられ、聴けば聴くほど君島の深みが心に沁みわたり、君島を表現しようといろいろな言葉が湧いてくる。本編ラストの未発表曲『Lover』では『天使』という言葉が聴こえてきて、その言葉が自分の心身に溶けていく心地良さは何とも言えなかった。

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アンコール。『柳瀬君と一緒にやりたかった気持ちがあったんですけど、今頃は終電の新幹線という鉄の塊に乗っていて!』という独特すぎる表現は、何だか君島の音楽とも繋がっていて笑ってしまった。また、ふたり共に東京の西の方と出身地が近いから同じ気持ちを共有しながら演奏ができたという感想もものすごく的を射すぎて頷くしかなかった。ラストナンバーは『沈む体は空へ溢れて』。『どうして』という歌詞での声の震えには揺らぎを感じたが、考えてみれば、ずっと君島の声の揺らぎに心を掴まれてキュンキュンしていたのだと最後の最後に納得がいく。照明も終始ロマンチックだったが、後ろから光が伸びて差してくる感じは神々しかった...。最後の歌詞である『あの人も居る?』と歌い切ったところで、ぴたっと演奏も終わるのはドラマチックでドキドキしてしまった...。

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弾き語りではあるのだが、バンドとバンドの対バンを観終わった以上の大満足感があり、かなり長い間、その興奮は冷めやらない...。真剣勝負による共鳴し合う感度は誠に得難いもので、こんなことはめったにないと自然と思えてしまった。            

Text by 鈴木淳史
Photo by 松本いづみ




(2024年7月24日更新)


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Set List

『めったにない』
2024.6.24 Mon at 心斎橋JANUS
[出演]君島大空/柳瀬二郎(betcover!!)

<柳瀬二郎>
01. 炎天の日
02. 翔け夜の匂い草
03. 火祭りの踊り
04. 不滅の国
05. 遠い遠い親戚
06. 鉄に生まれたら
07. 母船
08. あいどる
09. ポポ
10. 異星人
11. 卵
12. 葵
13. 平和の大使

<君島大空>
01. 世界はここで回るよ
02. crazy
03. ˖嵐₊˚ˑ༄
04. 向こう髪
05. 19℃
06. 都合
07. きさらぎ
07. エルド
09. 午後の反射光
10. - - nps - -
11. Lover
12. 沈む体は空へ溢れて

Live

<betcover!!>

「NAGOYA CLUB QUATTRO 35th Anniversary ”rendezvous”」
チケット発売中 Pコード:269-166
▼8月2日(金) 19:00
名古屋クラブクアトロ
スタンディング-4500円(整理番号付・別途ドリンク代必要)
[出演]DYGL/betcover!!
※小学生以上有料。未就学児童は入場不可。
※チケットは、1人2枚まで。

▼8月15日(木) 19:30
東京キネマ倶楽部
スタンディング(一般)-4000円
スタンディング(U-20)-3000円
※未就学児は保護者同伴に限り入場無料。ドリンク代別途必要。は入場時に身分証明書の確認をさせて頂きます。確認できなかった場合、一般チケットとの差額を頂く場合もございます。

GRAPEVINE/betcover!!
チケット発売中 Pコード:272-000
▼9月12日(木) 19:00
EX THEATER ROPPONGI
スタンディング-5800円
※未就学児の入場不可。ドリンク代別途必要。
※チケットは1人4枚まで。
[問]HOT STUFF PROMOTION■050-5211-6077

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