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自主企画『MAGIC HOUR』で実感した
サバプロの比類なきスケール感とポテンシャル

サバプロの愛称で親しまれているラウドロックシーンの盟主、Survive Said The Prophet(以下サバプロ)。2011年に東京で結成されまもなく結成15周年を迎える彼らが、2016年から行ってきた自主企画対バンライブ『MAGIC HOUR』。「ジャンルの壁を越えた奇跡的な出逢い」をテーマにこれまでwaterweedやNOISEMAKER、fox capture planらを迎えて開催してきた。1年半ぶりとなった今回の『MAGIC HOUR』は東名阪3カ所で、初日の6月1日東京はcoldrain、6月5日名古屋にはSHANKを迎え、ファイナルの6月6日心斎橋BIGCATには04 Limited Sazabysが登場。1日のうち、日の出前や日没前の太陽の光がなくても薄明るいわずかな時間をマジックアワーと呼び風景がもっとも美しく見える時間ともいわれる。その奇跡のような時間の幕が切って落とされた。

開演時間ぴったりに場内が暗転すると満場のフロアの歓声に迎えられ04 Limited Sazabysがステージに。同い年でお互いに強いシンパシーを抱いているサバプロとフォーリミ。MCは極めて少なく、まさに怒涛の勢いで曲を繰り出していく。そのさなかでGEN(vo&b)は、「愛してやまないサバプロが呼んでくれました!」と笑顔を見せ、「友達」と呼ぶサバプロへの想いを言葉にする。さらに、「こんなド平日にバカなんじゃないの?」と超満員で立錐の余地もない場内へ最大の賛辞を贈り、BIGCATに火を放つようなライブをぶち上げた。

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本日の主役、サバプロを待ちわびる場内にこんなアナウンスが。「開演1分前です。喉を温めて体をストレッチしモッシュの準備をお願いします」。最高だ。残り30秒のカウントダウンに合わせ手拍子が起こる。オープニングは重量級の『Fool's Gold』。一気に場内の温度が上昇する。「見せてくれよ、大阪。世界一盛り上がろうぜ」と放ったYosh(vo)の声をフロアの声援がかき消す勢いだ。ステージ間近まで飛んできた観客と拳を合わせ、「1人残らず飛んでこい」とYoshが手招きすると、フロアは本格的に臨戦体制に。あちらこちらでリフトが起き、そこからのダイブ、モッシュ。誰もが声を上げ、手を挙げ、身体を揺らす。

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「どれだけ喋っても音楽にならないからこの歌を」と言葉を添えた『Beauty Queen』は、サバプロらしい強靭さの中にしなやかさが光る曲。Show(Dr)は両手を広げてシャウトし、Yoshは飛んできた観客にマイクを向ける。サバプロはヘヴィさとドラマ性を掛け合わせた曲が特徴的で、それが彼らの曲に初めて触れる人にも親しみやすさを感じさせる。ラウドでありながら踊れて胸に沁みる色合いも持ち合わせた『Beauty Queen』も同様で、もしもこの夜のライブで初めてサバプロを知ったという人も、一緒に歌わずにはいられないだろう。

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Ivan(g)がギターごとフロアに乗り出すようにして「wow wow」と叫んでいた『Win / Lose』。歌詞の一語一語を噛み締めるように、絞り出すように歌った『Right and Left』。Yoshのカモン!の声にフロアが声を合わせて歌う『SPINE』。バンドはステージで、お前らの歌だと言わんばかりに鳴らしているし、フロアはオープニングからどの曲もすべて自分たちの歌としてキャッチしている。曲に出会った時の感情や今この瞬間の喜び、あらゆる思いが炸裂し全力で声を上げジャンプし手を伸ばす。曲によってはサークルも発生し、無数の人が走り回ってぶつかり合って、歓喜の雄叫びをあげる。危険なようにも見えるどの瞬間もピースフルな空気に満ちているのは、Survive Said The Prophetというバンドの持つプライドであり、この日Yoshが何度も口にしていた「love,peace & rock n roll」という信念をファンの一人ひとりも胸に刻み込んでいるからだろう。

「みなさんを手ぶらで返せない。リリースしていない新曲を持ってきました」(Yosh)と言った時のリアクションの凄まじさといったら。

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披露された新曲はイントロのギターのディレイが印象的な高速ナンバー。『NE:ONE』からの『[ ]』、そこから『Listening』へ。Ivan、Show、そしてTatsuya(g)も声を合わせる壮大なバラードが会場をすっぽりと、しっとりと包み込む。それに応えるように、「Calling out your name」のフレーズを特大の歌声でコーラスする観客にYoshは何度も頷き、「so beautiful!」と笑顔を見せた。続く『Paradox』で再びフロアを掻き回すと、「懐かしい曲を持ってきました!」と『Bandaid』。

そして次の曲を始める前にYoshがフロアにこう問いかける。「FUCKIN JAPぐらいわかるよな?」。答えは歓声に変わり『T R A N S l a t e d』へ。Yoshがくるっと指先で合図をすると、フロア後方にサークルが出現する。3、2、1の掛け声に合わせてリフトからダイブへ。クラップの音量も特大だ。本編最後の曲は『Mukanjyo』。掻きむしられるような切なさとそれゆえの激しさが同居したこの曲、メロディー、ダイナミックなサウンドが聴く者を解き放っていく荘厳なラストだ。

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アンコールに応え再びステージに登場した4人から、9月よりジャパンツアーが開催されるという嬉しいニュースが。Yoshは「もちろん大阪も来るし、なんならやべえ先輩連れてこようかな!」と未来へさらなる奇跡をつなぎ、最後に『found & lost』で花火を打ち上げるようにジ・エンド。セットリストもそこで終了だったがなんとこの後、まだまだ収まらない拍手と歓声に応えてまさかのダブルアンコールで『HI | LO』を。この時ばかりはフロアの床がぐらりと軋んだ。どこまで行ってもブレることのないYoshの歌声にドがつくほど破格の声量でフロアが応戦する。最後に"love,peace & rock n roll"と会場全体が声を合わせ、「また奇跡が起きる場所で会いましょう!」とのメッセージを送り『MAGIC HOUR』の幕が下ろされた。

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終演後の会場の外には9月以降のツアースケジュールが貼り出されていて、大勢がカメラを向ける中、「大阪と神戸どっちにも行く?」「京都にも行こう!」という声がいくつも聞こえた。ライブ本編の終盤、『Paradox』を歌う前にYoshがこう言った。「オーディエンスも音楽の一部だから。俺らが奇跡を信じなかったらもう終わるぜ?だからこの瞬間を永遠の奇跡って呼んでいこうと思う。みんなはどう?」と。ライブがあること、声をかぎりに歌い飛べることが当たり前ではない世界を知っている。同じように、奇跡は勝手に起きるものではなく、一人ひとりが信じる力が起こすものであることも知っている。

サバプロは7月3日から初のアメリカツアーを行う。各地の夏フェス、それらを経て秋のジャパンツアー。ライブハウスに収まりきらないほどのスケール感とポテンシャルにさらに磨きをかけたステージは、この夜以上に聴く者を熱狂の渦に巻き込むに違いない。そのステージに出会える日を心待ちにしている。

Photo by toya
Text by 梶原有紀子




(2024年6月12日更新)


Check

Set List

01. Fool's Gold
02. Network System
03. Beauty Queen
04. Win / Lose
05. Right and Left
06. SPINE
07. 新曲
08. NE:ONE
09. Listening
10. Paradox
11. Bandaid
12. T R A N S l a t e d
13. Mukanjyo

EN. found & lost
EN. HI | LO

Live

全国ツアー「Survive Said The Prophet JAPAN TOUR 2024-2025」

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▼9月21日(土) HEAVEN’S ROCK Utsunomiya VJ-2
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