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“10年目の新しい名刺ができた”
KOTORIらしさが表れた、充実のセルフタイトルアルバム

今年結成10年のバンド・KOTORIが、4枚目のフルアルバムで、初めてのメジャー&セルフタイトル作品『KOTORI』をリリースした。より自分たちの音楽を広げていくために飛び込んだメジャーというフィールドで最初にドロップしたのは、横山優也(vo&g)が“これまで聴いてきた人もこれから聴く人も、KOTORIが大体わかる”と自信たっぷりに語る、KOTORIらしさがギュッと詰まった傑作。今回は横山に『KOTORI』についてたっぷり話を聞いた。作品について生き生きと語る横山の瞳は印象的で、ポジティブなエネルギーを感じさせてくれた。7月5日(金)にはリリースワンマンツアー『KOTORI pre. JAPANESE SUPER PERFECT Tour』で心斎橋BIGCATへ戻ってくる。横山29歳の初ライブと、KOTORIの現在地をぜひ見届けたい。

"この良い音楽がもっと広まっていいんじゃないか"と思った


ーー今回メジャーレーベルからのリリースということで、これまでもメジャーのお誘いはあったのかなと思いますが。

「なかったですね」

ーー意外ですね。

「これまではレーベルとマネジメントと流通会社の機能が一緒になったところから出していて、いつも決まったリリースの流れだったので、もうちょっと広げたいというところで、メンバーの中でメジャーという選択肢が出てきて。周りからは"(インディーズに)こだわってるんですか?"と言われたんですけど、本当にお誘いがなかっただけなんです。」

ーー実際移籍していかがですか?

「レーベルがメジャーになって、広げる専門の人がいることの大事さを実感してます。今までも面白いことをしようとしてましたけど、パンチを残すだけで終わってた。ちゃんと実績も込みで、"一緒にやっていこう"と引っ張ってくれるパワーがあるので、すごく助かってます」

ーー"3rdフルアルバム『We Are The Future』(2021年リリース)である程度やれることはやった"と過去のインタビューでおっしゃっていましたが、次のフェーズに進むために広げていきたい、みたいなところはあったんですか?

「『We Are The Future』を作って、"なんで広がらねえんだ"となったんですよ」

ーー自信作なのに。

「そう。僕ら的にもかなり潜った作品だったので、"この良い音楽がもっと広まっていいんじゃないか"という、本当にそこですね。出し切ったからどうというよりかは、"あれ?良い作品ができたのに広がらないな"というので、不完全燃焼だった」

ーーなるほど。ライナーノーツにポニーキャニオンのディレクターさんから"心の布をめくってみてほしいと言われた"とありましたが。

「今作のレコーディング中に、"もう少し僕のパーソナルな部分が歌詞に出てくるといい"とアドバイスをもらって。そこから、まだ今作で歌詞ができてない曲もあったので、隠してる部分をさらけ出すことを意識して歌詞を書きましたね」

ーー自分をさらけ出すことに抵抗があったんですか?

「恥ずかしいっすもんね。全裸で人前に立つみたいな感じです。でも、結果そこまでしなきゃ、その人の本当の人間性はわからない。出さないのがカッコ良い人もいるけど、多分僕は全部出した方が合ってるんだろうなと。それからはあまり気にせずに歌詞を書くようになりました」

ーーそれは、くるりの岸田繁さんプロデュースのシングル『こころ』(2022年リリース)を経たからこその変化もありますか?

「岸田さんには、"自分を責める歌が多いから歌詞書くの大変やろ。そんなに自分を削ってまで書かなくていいんじゃない?"と言われて。"もう少し余裕をもつというか、歌詞を書く上で言葉遊びをするといい"というアドバイスをもらいました。"あまり力んだ歌詞にしたら聴く人も重くなるし、余白がないと聴く側の想像力までいかないから、自分以外の人の目線で物事を見てみて。それがフィクションでもいいけど、自分の言葉を入れればリアルなノンフィクションになるから"というところで、結構書きやすくなって。それがあったからめくりやすくなりましたね」



10年を経て気付いた"KOTORIらしさ"


ーー感謝と愛を届ける対象がしっかり見えたのも今作だと思います。

「今までは誰かのために歌ってるようで、結果自分のことを歌ってたんです。今回はお客さん含めいろんな人の顔を思い浮かべながら、人のために書いた歌詞が結構ありますね」

ーー10年やってきて、ある程度歌い切ったみたいなところもなくはないですか?

「まあ~、ネタは切れますよね。でもパーソナルな部分は今まで使ってなかったので、歌うことは割とあります。今のモードは前向きですね。多分俺はそっちの方が合ってるし、前向きな曲の中にちょっと後ろめたさみたいなものがある方が刺さるんだろうなと思うし」

ーーそれは制作しながら感じたことですか?

「前作の会場限定EP『Good Luck』(2023年リリース)はインディーズ最後ということで、メンバー内で"KOTORIらしさを出していこう"と話してて。『We Are The Future』はちょっと背伸びしたんですよね。やりたいことは明確にあるんだけど、気持ちと技術が追いついてなくて、しかも消化しきれずに出してた。作品で言うと1stフルアルバム『kike』(2017年リリース)が、いわゆるKOTORIらしさがあるんだろうねと話して。それで『Good Luck』は、KOTORIらしさを意識して割とまっすぐな感じになって。それと同時進行で、今作のアルバムの曲を作っていました。だから今作も『Good Luck』のモードのまま、"らしさ"大事で作った感じがある。言葉的には"背伸びしない"というのが1番合ってるかなと思います」

ーー原点回帰というか1番最初に戻るんですね。

「自分の武器がわかる感じで、戻るまでに年数はかかるんじゃないですか」

ーー周りから言われるイメージもありますよね。

「結果、周りから言われてることの方が武器だったみたいな感覚があって、それを認めるまでの時間がかかるんだと思います。"ああなりたい、こうなりたい"が邪魔すると恥ずかしくなっちゃう。でもいろいろやっていくと、"やっぱり周りから言われたあれなんだな"って本当にわかってくるし、年数を重ねてそれを許せる自分になれた感じがします」



4人でしか生み出せないノリやグルーヴを形に残すことがレコーディング


ーー『Good Luck』と並行しての制作ということは、今作の制作期間はいつ頃ですか?

「2022年から作ってましたね」

ーーレコーディングが終わったのは?

「今年の3月です。去年の夏に半分以上録って、9月から今年の1月まで『Good Luck』のツアーがあったので終わるまで制作できなくて、ツアーが終わって2月に制作して、3月にレコーディングでした」

ーー制作期間をちゃんと取るタイプなんですね。

「最近取り始めました」

ーー前はツアーしながら制作してた?

「そう。だからもう全然曲ができなくて。今までレコーディングに曲が全部揃ってたことがなかったんです。今回はちゃんと準備してやりました。成長です(笑)。これが普通なんですけどね。でも実は『東京』(M-4/2023年4月シングルリリース)もレコーディング中に作った曲で。俺が居残りで1日スタジオに泊まって作って、次の日の朝みんなに聴かせて録ってみたいな。意外と追い詰められてる時に名曲が生まれがち(笑)。時間に余裕があると迷うので選択肢が増えるんですけど、追い詰められると勝手に引き算できてるから、切り捨てる部分がない。メンバー的には、ギリギリに曲ができて録るのは絶対嫌でしょうけどね(笑)。今回はじっくり考えながら引き算をしていきました」

ーー今までのKOTORIの曲の作り方はオケ先で、『こころ』は歌先だったということですが、今回はどちらが先でしたか?

「曲によりますね。歌先で作ったのは『東京』だけかな。これは『こころ』をやった経験があるからできたんですけど。他は基本オケベースで、あらかじめメロディーを想定したというか。いつもはオケだけですごいのを作ろうと思ってたので、歌の余白はあまり考えていなかったんですけど、今回は歌もあるし、あまり詰め込まない感じにしましたね」

ーー歌を大事にされたんですか?

「うん。『Over The Rainbow』(M-2)はそれが顕著に出てるかな。シンプルで余白が多い。歌もメロディーも頭にありながらオケを作っていきました」

ーー聴かせるところもありますもんね。

「歌だけになるって、メロディーがめっちゃ大事になってくる。そこは今まであまりやらなかったところですね」

ーーより良いメロディーを意識して書いていったんですか。

「そうですね。やっぱりわかりやすさはメジャーにいく上で大事だと思ってるので。誰にでも迎合するわけではなく、可能性を広げるという意味でのわかりやすさ。ロック、ギターロック、ロックンロール、パンク、歌モノみたいな音楽性がある中で、今までは『We Are The Future』だったら洋楽アンサンブル、『REVIVAL』(2019年リリース)だったらエモという、作品ごとにすごく狭い1本のラインだけで広げようとしたんですけど、発信する僕らがこの幅を広げなきゃいけないなと思って。ひとつの作品にいろんな音楽性が入ることで受け取り手の幅が広がるというか。そういうわかりやすさをみんなで共有して、全体的にやった感じはしますね」

ーーなるほど。でもどんなジャンルでも、KOTORIの4人が演奏すればもうKOTORIの音楽になるという前提で作っていったと。

「そうですね。そこまでいくのが大変なんですよねー」

ーー大変。

「バンドを組んだ最初の方は、とにかくただバンドが好きでやっていて。でも"この4人である"という理由に気付くまでは、ある程度活動を続けなきゃわからないと思っていて。それが10年ぐらいなのかなという感覚はありますね」

ーー10年経ってやっと見つかってきたと。

「なんとなく、これがKOTORIだなって感じ。そいつしか弾けない弾かない、思いつかないことがあるだけで、そいつが弾く理由はあると思う。バンドって、みんながみんな上手かったらそれだけで売れるわけじゃないし」

ーー人間関係が音に出ますもんね。

「ちょっと引っかかりがないと面白くないなと思いますね。演奏で言うとヨレみたいなところ。レコーディングってみんな綺麗に整理しようとしがちですけど、綺麗すぎると"そのメンバーでやる意味は?"となるじゃないですか。4人でしか生み出せないノリやグルーヴを形に残すことがレコーディングだと思うので。いつもはミスをめっちゃ細かく直したりするんですけど、今回は"カッコ良ければOK"みたいな感じでした」

ーーそれは今までなかなかできなかったことじゃないですか?

「できないですよ。結婚式とか、スーツでピッとして行くじゃないですか。レコーディングってあの感じです。綺麗におめかししなきゃ人に出せるものじゃないと思ってたんですけど、今回は"このカジュアルな格好が俺たちなので"という感じでレコーディングしましたね」

ーー今横山さんにとって、メンバーさんはどんな存在になってますか?

「昔より頼れるし、信頼できますよね。あと普通にみんな上手い。本当に信用できるし任せられます」



誰かが覚えていれば、音楽も存在も消えることはない


ーーアルバム1曲目の『LOVE』と2曲目の『Over The Rainbow』は、自分たちが羽ばたいていくイメージを歌に込めたかったということで、シンプルかつエモーショナルな幕開けですね。

「『LOVE』に関しては、俺は音楽ロマンと言ってるんですけど、バンドをやらなかったら出会ってない人がめちゃくちゃいるなと思って。音楽には引き合う力があるんだろうなというのと、もしかしたら何十年後、何百年後、今俺たちが作ってる音楽を聴いた奴が救われる日がくるのかなと思ったら、めちゃくちゃロマンがあるし、そうなりたい。そんなロマンが音楽愛だし、という色んな意味の"LOVE"です」

ーーなるほど。

「人って忘れられたら死ぬと言いますけど、音楽もそれだと思ってて。でも何かをキッカケに思い出してくれたらそれでいい。横山って奴がやってたバンド・KOTORIの曲で思い出してくれても、KOTORIの曲で俺を思い出してくれても嬉しい。そういう全てのキッカケに音楽がある。だから音楽ってすごく良いなと思います」

ーー良いですね。

「俺のロマンは、CDでもレコードでもいいんですけど、100年後にお店に自分たちの音源が残って売られてること。それが結構夢です」

ーー今も100年前の音楽が売られていますもんね。

「でもどれだけ残ってるかって話ですよね。当時すごく流行ってたくさん売れたとして、商業的には残れるかもしれないけど、歴史には残れないと僕は思っているので、文化的に残りたいです」

ーー残り続けるにも、大前提として広がることは大事になってきますよね。そこからの『Over The Rainbow』ですよ。

「これはもうメジャーで飛び立つぞと。テーマとしては、<飛ぶ>とか<風>とか<羽>とか、意識的に鳥を連想させるワードを入れたつもりです」

ーー『秘密』(M-3)の冒頭の<風になる僕ら>も、はからずも繋がっている気がして。

「実はこれは、風の意味が違くて。ラジオで"『Over The Rainbow』の風って追い風ですよね"と言われて"確かに!"と思ったんですけど。俺、<風>と歌っていて、向かい風を想像したことがないんですよ。それは多分めちゃくちゃポジティブな考え方ですねという話に落ちたんですけど、『Over The Rainbow』の風はどちらかというとレーベルやマネジメント、お客さん、周りが支えて押し上げてくれる風で、『秘密』の風は僕の死生観。アニメ『アンダーニンジャ』のタイアップ曲なんですけど、テーマが死や残酷さだったんですよ。"俺には残酷なことは書けねえな"と思って、"生と死"に焦点を当てて書いて。<風>="死ぬ、消え去る"ってことなんですけど、さっき言ったように思い出に残ってれば生き続けられる。誰かが覚えていれば消えることはないから、世界には隠せないという意味の風になる」

ーー風という単語ひとつとっても、深いですね。

「わははは(笑)。『Over The Rainbow』はあったかい気持ち良い風で、『秘密』の風はちょっと冷たいというか、温度がある感じ。やっぱ風、好きっすね~」



新しいチャレンジをした『DAWN』と『Heartbeat』


ーー『DAWN』(M-5)と『Heartbeat』(M-6)はサウンド面で新しいことにチャレンジしたそうですね。

「この2曲は上坂(仁志/g&cho)が作ったんです。『DAWN』は、歌詞ができない自分に対して歌ったんですよ」

ーー歌詞を書けない時期があったんですか?

「この曲の歌詞ができなくて。ちょっとメタ的ですね。ループしてるんですけど、この曲ができないことに対して"なんでだよ"と思って歌ったのがこの曲の歌詞という」

ーー書けないことをネタにするって面白いですね。

「意外とヒントは身近に転がってて、書けない自分を奮い立たせようという。<わかっているのに わかっているそれだけ わかっているのは わかっていることだけ>というのは、諦めないのに努力しないという」

ーーうわ〜、わかります~!

「これ誰でもあると思うんですけど、諦めきれないのにそこまでやる気が出ない。まだ時間あると思っちゃって。でもそこを"ちゃんとしろ!"と言ってるのがこの4行です(笑)」

ーー<朝焼けに目をこすりながら>とありますが、夜明けに書いていたんですか?

「想像ですね。"また今日も歌詞できねえや。起きたらまた歌詞書かなきゃいけない"ってなってる。結果何も変えれてない自分がいるだけ。周りのせいにするなということですね(笑)」

ーー『Heartbeat』はわかりやすくオートチューンが使われていますね。

「いつも大体みんなでオケを作ってから僕が家で声を入れて、メロディと歌詞を作るんですけど、その時にオートチューンが合いそうだなと思って、俺が勝手に入れてみたんですよ。それで"めっちゃ良いやん"となって。なにか新しいことをしようと思ってオートチューンを入れたわけじゃなくて、この曲がすごく広がりそうだなと思ったので、手段として入れてみたらハマった感じです」

ーーやってみて新たな発見はありました?

「オートチューンって、オートチューンの歌い方があるんです」

ーーへえ~!

「オートチューンというのは、音階に対して近い音を当てるエフェクトなんですよ。普通、ボーカルをレコーディングする時にピッチ修正をするんですけど、音階をピッタリ合わせるとロボットみたいな声になるんです。俺は"ケロケロボイス"と呼んでるんですけど、それをわざとやってるのがオートチューン。レコーディングの時はシステム的にかけたものが聴こえないから、かかってる体での歌い方をしてました」

ーー難しそうですね。

「難しかった(笑)。だからわざとしゃくったりしました。ラッパーとかもよく使ってますけど、音符が短くてメロディーが上下してる方がかかりやすいんですよ。普通に喋った時は勝手にトーンができてるので、全部"ケロケロケロ"ってなるんです。でも歌で音符が長いと、伸ばしてる間はかからないんです。だからフロウは作る時に意識しました。今まであまりやってこなかったメロディーラインな気がします」

ーーボーカリストとして幅が広がったなどありますか?

「フロウの歌がリズムに乗る感じは『秘密』から来てて。専売特許なんですけど、僕が作るメロディーは音符がめっちゃ長いんですよ。例えば『素晴らしい世界』(2017年リリース『kike』収録)だと、<さーいきーんうまくいかなーいーなー>って全部音符がちょっと長いんですよ。『秘密』もサビは細かいけど、繋げたら波になってる。千弘に"もうちょっとフロウ意識したら気持ち良いんじゃない?"と言われて、リズムに合わせてメロディーを作るのを結構意識しましたね」



大好きなくるりをリスペクトしてできた名曲


ーー『chocolate』(M-8)はグッドメロディーすぎて、めちゃくちゃ良いです。

「僕ら、"サビだ!"というサビをあんま作りたくねえなと思って。いわゆる邦楽は、イントロ・Aメロ・Bメロ・サビ・インター・2A・2B・Cメロ・落ちサビ・サビみたいなパターンがあるじゃないですか。俺、型にはまるのが嫌だから、基本作る時は意識しないんです。『chocolate』は洋楽で言うバースとコーラス、ブリッジ、それだけですね。もはやサビかAメロかみたいな。くるりが結構得意な構成というか、洋楽的な作り方をしてるんですけど、それはメロディーが最初から強くないとできないんですよね。『chocolate』は誰が聴いてもくるりを意識しただろうって感じの曲ですけど」

ーー岸田さんにプロデュースしてもらってから、より意識するようになったりしました?

「いや、僕はもともとずっと意識してたので。だからやりたいことが一致したというか、ワム! の『ラスト・クリスマス』をくるりで解釈したら『chocolate』になったんです(笑)」

ーーなるほど!? それで冬の曲になってるんですね。

「そう、冬の曲を作りたかったんですよ。スタッカートを基準にして、エイトビートでだらっと作りました。コード進行はマジで『ラスト・クリスマス』です。1音目から雪の降る景色が思い浮かぶようにしたくて、グロッケンも入れたりして。最初は暗めのアルペジオの絡み合いの曲を作ろうと思ってたんですけど、気付いたら名曲感が出てました」

ーー最後の<日が暮れる前に帰ろうよ>のハモリがグッときました。

「おおー。これもくるりですよね。コーラスはメイン入れて3声かな。岸田さんほど理論はちゃんとしてないので、感覚ですけど。この曲の歌詞を書いてる時、東京は2月ぐらいで雪が降ってて、実家の犬がもういつ死んでもおかしくないみたいな状態で。<花びらのしるし>は肉球なんです。僕歌詞で遊べるようになっちゃって(笑)。犬を飼ってる人からしたらグッとくるんじゃないかな」

ーー<おひさまみたいに温かな うしろ姿>と言われると、浮かびますもんね。私の場合は猫ですけど。

「猫もいいですね。猫でもいけますね。これ結構皮肉っぽいこと言ってて。<本当の気持ちが知りたいな ありふれた言葉で教えてよ>って、動物は何考えてるかわからないじゃないですか。でもなにか伝わるところがあるのかなという」



"今までよりも芯がある。4人がこの中にいる感じがする"アルバムに


ーー最後の『オーバードライブ』(M-10)と『ラストチャンス』(M-11)はシンガロングも入ってエモーショナルに終わりますね。

「『オーバードライブ』はもう歌ってることそのままなので、何も言うことはないですね。『ラストチャンス』は本当に良い歌ですよね~。ラスサビのとこ鳥肌立ちますもん。"よくこの歌詞とメロディーを入れたな、お前は"と言いたい。<最後の勇気は君のために使うから>が、ディレクターさんが"1番自分をめくったね"と言ってくれたポイントで、自然とめくれましたね。この1行だけで結構グッとくるものがあります。<いつかこの言葉を 君に言おうと思ってた>というのは、結果言えてないという話なんですけど、これがエモなんですよ。エモはナードなので言えないんです。そういう気持ちをずっと抱えたまま生きていく。その気持ちを音楽にするのがエモ。今まではジャンルとして落とし込もうとしたんですけど、ここで本当のエモとして吐き出したという」

ーーそれは意図せずですか?

「意図せずですね。上坂に"シンガロング入れて"と言われて、先にシンガロングができて、どうしようかなと思ったらこの歌詞が出てきて。"じゃあ何を言おうとしたんだろう?"というところから逆算で歌詞を書いていきました」

ーー<星に願うのはもうやめて オレンジの空に>というのも良いですね。

「<星に願う>は『Good Luck』に『星降る夜』という曲があったんですけど、そこからの脱却というか、次のステップという意味です」

ーーKOTORIを追ってきた人にとっては、いろいろな伏線が散りばめられていますね。

「あんま深く考えてないですけどね。<オレンジの空>はどういう場面で歌ってるのかわかりやすくしたくて、1個風景を入れたいなと。歌詞で遊ぶというか、必要だからちゃんと狙って入れたというか。歌詞を書く上でできるようになったことのひとつですね」

ーー改めて今作は、KOTORIにとってどんな1枚になりましたか?

「1番わかりやすいのは、まじで今の僕らの名刺。これまでやってきたことが全部入ってるつもり。入り口としてすごくデカいのができたし、かつアルバムとして面白い。今までよりも芯がある感じ。本当に中身が詰まってて、4人がこの中にいる感じがします。自分たちで気付いた、"これがKOTORIでした"という感じです」

ーー最後に7月5日(金)の心斎橋BIGCATのワンマンへの意気込みをお願いします。

「俺、前日が誕生日で、29歳1発目のライブですね。一皮剥けた姿をお見せします(笑)。僕らはショーとライブの違いが圧倒的にあって。ライブはどうなるかわからない結果をみんなで見るもので、ショーはやる側が完璧な芸術を見せて、お客さんが納得するものだと思ってて。ショーもその日じゃなきゃできないこともあるし、今回のツアーではそこを合わせたい。熱量があって荒いだけじゃなくて、ライブハウスでもショーみたいなことができるんじゃないかなと。最低限、曲の良さを伝えることがショーかな。勢いじゃなくて、音楽で身体が乗って気持ちが熱くなるような方向にしたいです。あともちろん全部歌ってほしいです。バラードでも歌ってくれ! 聴く時は聴いてくれ!」

Text by ERI KUBOTA




(2024年6月28日更新)


Check

Movie

Release

KOTORIらしさを全面に出したセルフタイトルアルバム

Album『KOTORI』
発売中

【CD+DVD盤】
3960円(税込) PCCA-06287
【CD only盤】
2970円(税込) PCCA-06288

《収録曲》
01. LOVE
02. Over The Rainbow
03. 秘密
04. 東京
05. DAWN
06. Heartbeat
07. Anthem
08. chocolate
09. 悲しみの先
10. オーバードライブ
11. ラストチャンス

Profile

2014年、埼玉県越谷市にて結成された4人組バンド。日常を繊細に綴り、高らかに叫ぶ、横山優也(vo&g)のエモーショナルな歌声と、強靭なリズムが生む、生々しくも卓越したパフォーマンスで、フロアを圧倒するロックサウンドをひたすらに鳴らし続ける。止まない歌が鳴り響き、オーディエンスに歌い継がれていくKOTORIの音楽は、2024年を迎えた「今」、バンドシーンにおいて同世代の大きな共鳴を起こしうる最重要バンド。結成10年を迎え、初のセルフタイトルアルバム『KOTORI』をリリースした。現在ワンマンツアー『KOTORI pre. JAPANESE SUPER PERFECT Tour』の真っ只中。

KOTORI オフィシャルサイト
https://kotori-band.com/


Live

JAPANESE SUPER PERFECT Tour

【宮城公演】
▼6月28日(金) 仙台MACANA 【SOLD OUT】
【大阪公演】
▼7月5日(金) BIGCAT 【SOLD OUT】
【福岡公演】
▼7月7日(日) LIVE HOUSE CB 【SOLD OUT】
【宮崎公演】
▼7月9日(火) LAZARUS
【北海道公演】
▼7月13日(土) SPiCE 【SOLD OUT】


Japanese Super Perfect Tour LOCAL

【石川公演】
▼8月8日(木) 金沢vanvanV4
[共演]ANORAK!
【京都公演】
▼8月9日(金) KYOTO MUSE
[共演]ENTH
【福島公演】
▼9月6日(金) LIVE STAGE PEAK ACTION
[共演]すなお
【栃木公演】
▼9月7日(土) 宇都宮HELLO DOLLY
[共演]ひとひら
【香川公演】
▼9月20日(金) DIME
[共演]Maki
【徳島公演】
▼9月21日(土) club GRINDHOUSE
[共演]Maki

『LuckyFes 2024』
チケット発売中 Pコード:268-956
▼7月15日(月・祝) 10:00
国営ひたち海浜公園
大人1日券-12800円
中高生1日券-6400円(公演当日要身分証明書)
[出演]新しい学校のリーダーズ/石崎ひゅーい/Ink Waruntorn/edhiii boi/n.SSign/KISS OF LIFE/CANDY TUNE/KOTORI/Conton Candy/Chevon/シャイトープ/Juice=Juice/四星球/杉山清貴&オメガトライブ/Da-iCE/高嶺のなでしこ/高橋優/TETORA/Def Tech/トンボコープ/NEWS/Novel Core/FRUITS ZIPPER/bokula./ヤングスキニー/RAISE A SUILEN/ROTTENGRAFFTY/他
※中学生以上はチケット必要。小学生以下は保護者同伴に限り保護者1名につき2名まで無料での入場可能。出演者は予定のため変更の可能性あり。雨天決行。他に2日通し券(Pコード:781-299)、3日通し券(Pコード:781-300)あり。お車でお越しの際は、駐車券が別途必要となります。販売に関しては、LuckyFes特設サイト(https://luckyfes.com/ticket)をご確認ください。会場内でテント使用は、混雑回避のために予約制(有料)となります。詳細はLuckyFes特設サイト(https://luckyfes.com/ticket)でご確認ください。公演内容に関する詳細はluckyfes_info@lucky-ibaraki.comまで。
※チケットは、インターネットでのみ販売。 店頭での販売はなし。1人7枚まで。発券は7/6(土)10:00以降となります。

『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2024 in EZO』
▼8月17日(土)
石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
17日券-19000円
[出演]ammo/泉谷しげる/indigo la End/打首獄門同好会/奥田民生/Omoinotake/小山田壮平/木村カエラ/9mm Parabellum Bullet/クリープハイプ/Kroi/Cody・Lee(李)/ゴスペラーズ/KOTORI/ZION/Saucy Dog/SHE’S/SIX LOUNGE/SHANK/ズーカラデル/スガ シカオ with FUYU/菅田将暉/スピッツ/XIIX/東京スカパラダイスオーケストラ/THE BACK HORN/Bialystocks/ヒトリエ/Billyrrom/the pillows/04 Limited Sazabys/Furui Riho/フレデリック/HEY-SMITH/Hedigan’s/My Hair is Bad/YONA YONA WEEKENDERS/LiSA/ReN/Laura day romance/WEEKEND LOVERS 2024 “with You”/LOSALIOS/The Birthday/村越弘明/イマイアキノブ/斉藤和義/YONCE/他
※8/16(金)開場10:00・開演14:00、8/17(土)開場10:00・開演12:30。雨天決行。小学生以下は保護者同伴に限り無料。出演者は都合により変更の可能性あり。出演者変更に伴う払戻し不可。チケット購入前に必ずオフィシャルHP(https://rsr.wess.co.jp/2024/)をご確認下さい。

『TORI ROCK FESTIVAL 2024』
▼10月29日(火)・30日(水) 18:30
CLUB CITTA’
タンディング-4500円(ドリンク代別途必要)
[出演]KOTORI
[問]スマッシュ■03-3444-6751

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