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6年ぶりのカバーアルバム『カタリベ2』を引っ提げ
「ある意味挑戦的で、今だからこそできるコンサート」を開催

2016年にシングル『あいたい』でデビューした歌手、林部智史。聴く人の心に染み入る美しい歌声、歌唱力で、オリジナルはもちろん、歌手としてJ-POPをはじめ、歌謡曲、日本の唱歌や童謡を歌い継ぎ、幅広い年齢層のファンを魅了しながら精力的に活動を展開している。その中で、「最初はカバーの印象を消していきたいという思いもありました」という。そのため、2018年に発売された初のカバーアルバム『カタリベ1』以降、カバーアルバムはリリースされずにいたが、「オリジナルをたくさん出してからという思いがありました」との言葉どおり、これまで通算5枚のオリジナルアルバムを発表したこと、さらに今年のテーマである“無限”に合わせて自身の可能性を追求するための原点回帰として6年ぶりのカバーアルバム第 2弾『カタリベ2』を6月5日にリリースした。今回、この最新アルバム、そしてこの作品を手に行われる全国ツアー『∞歌で編む 無限の物語∞』について話を聞いた。

オリジナルとカバー、それぞれの良さに気づくツアーにしたい



――林部さんといえば、毎年テーマを掲げながら活動していますよね?

「6年目くらいからちょっと楽しみを見つけてやり始めました(笑)」。

――昨年は7周年ということで『虹』がテーマでした。8周年の今年は?

「『8』を横に倒すと無限や永遠という意味もあるインフィニティーマーク(∞)になるので、"無限"をテーマに活動しています。このテーマがあって、そこからどういったコンサートにしようか、そしてコンサートを行うにあたって出すCDをどういう風にしようかとか、そういうのを決めていくんですね。去年は『虹』だったので、虹の7色をコンセプトにした5枚目のオリジナルアルバム『RAINBOW』を出したんですけど、今回は無限がテーマなので、カバー曲を改めて形にすることで無限の可能性に繋がればというところで、初めてのカバーアルバム『カタリベ1』から6年越しで『カタリベ2』を出すことになりました。僕自身、カラオケ番組(THE カラオケバトル)から世の中に出るきっかけを掴んでいますし、最初はカバー、カラオケの印象が非常に強いところからプロとしてのキャリアがスタートしたわけですけど、歌い手として続けていくためにはカバーだけではダメだと思い、オリジナル曲をたくさん出し続けてきたんですね。だからこそ、10周年になる前のこのタイミングでカバーというところに原点回帰することで無限の可能性に繋がれば、という思いがあります」

――『カタリベ』シリーズは6年ぶりなんですね。

「そうですね。僕はJ-POPというかそういったジャンルの本活動と、"はやしべさとし"名義での叙情歌の活動の2本立てでやらせてもらっているんですけど、最初はカバーの印象を消していきたいという思いもあったんですね。でも、カバー曲というのは僕のコンサートの中で非常にいいポジションになっていて、お客様に僕より年齢的にも先輩の方が多いので、その年の差や曲への親しみやすさ、思い入れというところを繋ぐにはカバー曲の力が非常に大きかったんじゃないかなと思っています。コンサートでは何かしらのカバー曲は歌ってきたので、『早くカバーアルバムを出してください』っていう声はあったんですけど、やっぱりオリジナルをたくさん出してからという思いがあったので、それができて、今回ようやく『カタリベ2』を出すことができたのは嬉しく思います」

――そもそもですが、カバー曲を集めてCD化した『カタリベ』シリーズをやろうと思ったきっかけはなんだったのでしょう?

「コンサートの中でカバー曲は大事なポジションを占めていて、歌っていく中で、コンサートだけじゃなく形にすることでお家でも聴いて楽しんで欲しいという思いからですね」

――その思いも込められた『カタリベ2』。収録されている12曲は、林部さんが生まれた1988年以降の楽曲とのことですが、今回は女性ヴォーカリストの曲ばかりですね。

「そうですね。僕が今まで歌ってきたカバー曲も、半分以上というか6~8割ぐらいは女性曲が多かったです。これは面白いくらいにお客様の比率とも同じぐらいなのかなと思っていて。男性の方も増えているんですけど8割ぐらいが女性なので、やっぱり聴いて頂きたい曲、皆さんが感情移入できる楽曲というところを踏まえると、女性ヴォーカリストの曲が多かったのかなと思います。僕の声質自体はそこまで癖はないと思うので、男性の曲で同じキー、同じ声質の方のカバーは合いそうですが、そうなると原曲のイメージで歌えばいいのでやっぱり真似をするというか、カバー曲として自分の色を出すのは難しいなって思って。カラオケとして歌うならいいんですけどね。一方で女性曲に関しては、必ずキーは変えなくちゃいけないので、キーを変えて男性が歌うと、自ずと自分の色も出しやすいのかなって思いました」

――カバーはバランスが難しいですよね。

「そこがカバーの面白さであり、難しさであり、こだわったポイントでもありますね」

――なるほど。面白さといえば、原曲と聴き比べてみるのも楽しいですよね。

「そうですね。基本的に原曲と同じことをやっているんですけど、それでもけっこう印象が変わるのは面白かったですね」

――今回の『カタリベ2』の中で特に思い入れのある楽曲はありますか?

「実際のコンサートでは1960年代の楽曲でしたり70年代の曲のほうがむしろたくさん歌っているぐらいの感じはあるんですけど、今回は1988年以降、僕が生まれた年以降で、自分がたくさん聴いてきた楽曲、歌ってきた楽曲、思い入れのある楽曲たちを選曲させてもらいました。『カタリベ1』と大きく違うのは音作りですね。カラオケとカバーの違うところって、カラオケはご本人オリジナルの空オケで歌うことだと思うんですけど、カバーは歌の力をよりだせるような音作りをすることも大事な仕事だと思うので、自分からもこうしたという意見を出して、より深く作らせてもらいました。だから、『カタリベ2』はより思いの詰まった作品になりましたね」

――音にも注目ですね! 曲順については1つのストーリーになっているような感じも受けたのですが、そういう意図はありますか?

「基本的にはやっぱりコンサートを考えながら、セットリスト(曲順)を考えるんですよ。だから、コンサートで皆さんに聴いてもらう時に、例えば失恋曲の後に結ばれる楽曲があってその次に失恋曲だとストーリーはあるけど話が通じなくなってくる部分もあるので失恋曲はまとめたほうがよかったり、けっこう歌詞の内容で考えている部分はあるかもしれないです」

――最後、AIさんの『ハピネス』で終わってよかったなと思いました(笑)。

「そうなんですよ(笑)。『ハピネス』のあとに失恋曲を歌うのはやっぱり辛いので(笑)」

――ちなみに1曲目に今井美樹さんの『PIECE OF MY WISH』を持ってきたのは?

「1曲目の『PIECE OF MY WISH』は今回のリード曲でもありますし、曲の認知度はもちろん、僕が歌手デビューのきっかけを掴んだ楽曲でもあるんですね。割といろんなところでカバーしていたのですが、ようやく今回アルバムに入ることになったので1曲目にしました。僕は基本的にコンサートのことを考えながら曲順を考えるんですけど、MCが近く無いところにこの曲を入れたいなと思ったら1曲目になったんですね。なぜかというと、MCで『僕が歌手デビューのきっかけをつかんだ楽曲です』って言ったら、僕のそういう楽曲として聴かれちゃうと思うので、そうではなく、前情報がない中で皆さんに聴いて欲しいという意味でも今回1曲目にしました」

――純粋に曲を聴いてもらいたいということですね。

「そうですね。僕が夢を叶えた楽曲なんだなと思って聴いて欲しくないじゃないですか(笑)。やっぱり皆さんそれぞれのストーリーで聴いて欲しいので」

――なるほど。ただこれを読んだ方は、ネタバレではないですけど背景を知ってしまいますが大丈夫でしょうか?

「それは全然大丈夫です(笑)。」

――それならよかったです(笑)。反応が楽しみな楽曲はあったりしますか?

「カバーっていろんな見方、聴き方があると思いますし、より子さん。の『ほんとはね。』とか竹内まりやさんの『シングル・アゲイン』とか色んな楽曲が入っているので、それぞれの反響の違いも楽しみです。『カタリベ1』を出した時もすごく思いましたが、原曲を聴くきっかけにもなって欲しいなと思いますし、逆に原曲のアーティストのファンの方も聴いてくれることが多いので、そのあたりも含めていろいろな反応が楽しみです」

――今回、ご自身の原点回帰ともいえるカバーアルバムを出したことで、改めて何か見つけたものがあれば教えてください。

「それは今回のコンサートで感じたいなという思いが正直あります。小さい頃から聴いていた楽曲もあり、自然と思い入れのある楽曲になっているのがカバー曲の強みだと思うんですよね。今回はこのアルバムを引っ提げてのコンサートになり、カバー曲が中心というのも6年ぶりなので僕自身、懐かしく思うのか、どういう思いになるのか、皆様は懐かしい曲もあればまったく知らない楽曲もあると思うのでどういった心境で聴いてくださるのか、そういった反応はすごく楽しみでありますね。」

――では改めて、『カタリベ2』を引っ提げて行うツアーの楽しみを教えてください。

「カバー曲の方が多いセットリストというのはデビュー当時だとリスキーだったのでできなかったですけど、これまでオリジナル曲を出してきたからこそ、10周年に向けた新たな可能性、無限の可能性を探りたいからこそ、難しいカバー曲を選びながら出した『カタリベ2』を引っ提げてのコンサートになるので、今だからこそできるコンサートだと思います。カバー曲のコンサートって割と保守的にみられると思うんですけど、個人的にはある意味挑戦ですし、皆さんの反応や、コンサートが終わったあと僕自身がカバー曲、オリジナル曲への思いがどう変わっているのかっていうところまで楽しみではあります。オリジナル曲だけのコンサートはもちろん、こうやってカバーだけのコンサートをすることで、自分自身もそうだし、お客様もそうだし、オリジナルとカバー、それぞれの良さに気づくというツアーにしたいですね」

――ちなみに、このツアーの編成はバンド編成ですか?

「いつも通りな感じです。声がしっかり聴こえる、だけど派手な曲もできるように、ピアノ、ギター、パーカション、ドラム、ベース、バイオリンになっています。あとは同期っていう方法があったりするので、コンサートで使用していない楽器の音が聴こえてきたりとかもすると思います」

――ライブではまた違う聴こえ方もしそうですね。

「そうですね。CDの方が(サウンドが)豪華なこともあるのでコンサートではなんか違ったなっていうことがあったりしますが、それも醍醐味なので。原曲のイメージ、僕のCDのイメージもあったりとか、いろんなイメージがある中で、皆さんにお届けする当日の歌と音がどう聴こえるのかは未知だと思いますし、人によって好きな曲、そうではない曲もあると思いますけど、それもいいなって思っています(笑)」

――さて、今回のツアータイトルは『歌で編む 無限の物語』となっています。このタイトルと8周年の活動テーマの"無限"にちなんで、自身もしくは歌に感じている無限の可能性を教えてください。

「僕は未来の展望とか、歌手としての将来どうなりたいかとかはあるんですけど、言葉にしちゃう怖さもちょっとあって。将来こうなりたいっていうのを言葉にすると、僕自身(イメージや方向性が)固まっちゃうし、それを見たお客様もここを目指してるんだなっていう思いが固まっちゃうじゃないですか。固めないことが無限の可能性だと思っているので、抽象的な言い方ですけど、やっぱり一つ一つ目の前のことを真剣に向き合って、"林部智史"というジャンルが出来上がればいいなと思っています。J-POPから歌謡曲、叙情歌も歌っていますけど、そういうのを全部やって一つのジャンルになると思っているので」

――分かりました。では、ぴあ関西版WEBを見ている方へのメッセージもお願いします。

「久しぶりのカバー曲中心のコンサートができるということで、僕自身すごく楽しみにしています。もちろんオリジナル曲、そしてCDに入っていないカバー曲なども歌いながら、無限のストーリーを歌で編むように一つのコンサートを作っていきたいと思うので、それぞれカバーで感じること、オリジナルで感じることは違うとは思いますけど、楽しみながら聴いて頂けたらなと思っています」

Text by 金子 裕希




(2024年6月21日更新)


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Profile

林部智史(はやしべ・さとし)…2016年2月にシングル『あいたい』でデビュー。“今、もっとも泣ける歌”として口コミで広がり、発売後4か月で有線全国ランキング1位を獲得し、同年『第58回輝く!レコード大賞』『第49回日本有線大賞』で新人賞を受賞した。2018年秋からは“はやしべさとし”として、日本の唱歌や童謡、美しい調べを歌い継ぐ叙情歌コンサートも開始。コンスタントにコンサートツアーとリリース活動を行い、美しい歌声とオリジナルからカバーまで様々な楽曲を全国各地に届けている。2024年1月にシリーズ第5弾となる『琴線歌 其の五』、6月にカバーアルバム第2弾『カタリベ2』をリリース。

Live

「林部智史 CONCERT TOUR 2024 ∞ 歌で編む 無限の物語 ∞」

【山形公演】
▼6月16日(日) シェルターなんようホール 大ホール
【岡山公演】
▼6月22日(土) 岡山芸術創造劇場 ハレノワ 大劇場
【福岡公演】
▼6月23日(日) 福岡国際会議場 メインホール
【愛知公演】
▼6月27日(木) Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【栃木公演】
▼6月30日(日) とちぎ岩下の新生姜ホール 大ホール

PICK UP!!

【大阪公演】

▼7月6日(土) 16:00
NHK大阪ホール
全席指定-8800円
※未就学児童は入場不可。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

【静岡公演】
▼7月7日(日) 静岡市民文化会館 中ホール
【新潟公演】
▼7月12日(金) 新潟市民芸術文化会館 劇場
【埼玉公演】
▼7月15日(月・祝) 大宮ソニックシティ 大ホール
【宮城公演】
▼7月20日(土) 東京エレクトロンホール宮城
【神奈川公演】
▼7月27日(土) 相模女子大学グリーンホール 大ホール

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「林部智史 Dining&Concert 2024」

PICK UP!!

【兵庫公演】

▼8月4日(日) 17:30
神戸ポートピアホテル・大輪田の間
お一人様-28000円(当日指定)
※受付17:00~、ディナー17:30~、コンサート18:45~。未就学児童は入場不可。
[問]神戸ポートピアホテル イベント係■078-302-1117

【山形公演】
▼8月10日(土) 山形グランドホテル
【山形公演】
▼8月11日(日) 山形グランドホテル
【茨城公演】
▼8月30日(金) ホテル日航つくば
【岐阜公演】
▼9月1日(日) 岐阜グランドホテル

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