インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > ドミコワンマンツアー2024“異”(下)ファイナル公演レポート Spotify O-Eastには一言で言い尽くせない空間が現出


ドミコワンマンツアー2024“異”(下)ファイナル公演レポート
Spotify O-Eastには一言で言い尽くせない空間が現出

既発曲をリアレンジし再録、ミックス、マスタリングした「異」シリーズ第二弾「異(下)」リリース後の全国6ヶ所ツアーのファイナル東京公演をSpotify O-Eastで迎えたドミコ。最近はあいみょんの対バンツアーに召喚されたり、USの「SXSW」やUKの「The Great Escape」に出演したり、振り幅の広い活動でファン以外にもその存在感が轟いている印象が強い。その証左としてこの日のフロアもこれまで以上に幅広い客層が集まっていた。中高生を抽選で無料招待する企画も継続しており、親子ほど年齢の違うオーディエンスがドミコのライブという求心力のもとに同じ時間を共有しているのだ。

domico240624-1.jpg

2種類のバックドロップ、低い位置に搭載された照明が目につくステージにゆったりした足取りで長谷川啓太(ds)と少し遅れてさかしたひかる(g&vo)が期待のこもった拍手に迎えられる。凄まじく粘っこいギターリフと重いキックが見えない何かを投げつけられた体感の「不眠導入剤」でスタート。明瞭な歌詞やスタッカート気味の唱法が新鮮だ。グッとハードでソリッドになった「旅行ごっこ」ではさかしたのロングトーンも冴え、ボーカリストとしてケレン味を増した今を実感。さらに「てん対照移動」の間奏では感情が自ずと叫びに変わったり、ウィルコ・ジョンソンばりのキレッキレのカッティングが1曲の中に起伏をつけていく。お馴染みのリフに歓声が上がる「ペーパーロールスター」はライブの上位打者と言えるナンバーだが、間奏のセッションが長尺化し、ホワイトブルースとフュージョンが混交したような一つのジャンルで括れないスリルが大いに加味されている。セッション中にホワイト・ストライプスの「Seven Nations Army」のリフが挟まれ、またまた随所で叫び声が上がった。なかなかのロケットスタートである。

domico240624-2.jpg

一転、トレモロアーム使いで急旋回に似た体感を与える「まどろむ」で、BPM的にはカームダウンしつつ、ヒップホップ的なビート感が自然と身体を弾ませる。照明の演出も見事で、ステージ上部と中間、下部のグラデーションによって二人が海の底にいるような幻視が起きる。そして一対になった「まどろまない?」のイントロのリフが鳴ると、またフロアの熱が一段上昇。長谷川の重いキックとさかしたのミュートカッティングのお手本みたいなプレイである。この曲もライブアレンジで間奏が引き伸ばされ、トライバルテクノ感のあるインストが少しダブの雰囲気もまとったところで、ステージ前方に横一列で並んだライトが射幕のようにフロアを覆っていく。ロックンロール?サイケ?トランス?もはや演出も相まって一言で言い尽くせない空間が現出していた。

domico240624-3.jpg

ギターの弦の金属質を感じるリフなのに、アメリカ西部の砂漠地帯を旅するようなコード感の「無人島でつかまえて」はおそらく黄金の照明が砂をイメージさせたからなのだろう。そして「異」シリーズには収録されていないが、初期ナンバー「Sea side,Morning-Hotel is fire」がグッとアジアの魔窟っぽさを増していたのは相当なリアレンジである。この曲ではステージに置かれた照明のストロボ効果が稲光を想起させ、「まどろむ」以降のヴァーチャルな旅情が極まった。全編で直感的な演出がドミコの音楽に非常に合っていた。

ゴムのように弾力のあるリフや、薄いタムが民族音楽っぽさを醸し出す「服をかして」から、アジアのディスコ/ファンクミュージック寄りでクルアンビンとの共通点を感じる「のらりつらり」へ接続していくのだが、この曲もイントロにSF映画のサントラめいたギターのレイヤーが加わったライブアレンジで、音源からさらに世界が広がっていた。そしてまた馴染みのリフがループするとフロアが沸き立つ「鯨の巣」も、空間系エフェクトを多用していたオリジナルから、アメリカのハイウェイを旅するような果てしない酩酊感に様変わり。そこからさかしたと長谷川がカマを掛け合うようなインストで対峙する「haii」。二人のインスピレーションに感応する楽しさで長尺であることも忘れたフロアはじわじわと煮上がった感じだ。

domico240624-4.jpg

domico240624-5.jpg

メロディが色気と哀愁を纏うブルース「深海マリアナ海溝旅行にて」での旨みたっぷりのギターサウンドにまた随所で歓声・悲鳴が混ざっていく。ライブで聴くとヨーロッパ調の歌メロが際立った「血を嫌い肉を好む」を経て、乾いたクラップと金属的なミュートカッティングが一体となる「びりびりしびれる」になだれ込んでいく。シンプルなロックンロールだが、カッコいいナンバーにこそ、緩急とユーモラスなフックにドミコならではのこだわりが見える。本編ラストはねちっこい音色のギターリフとメタリックなコードが攻めてくる「なんて日々だっけ?」をドロップ。ギターとドラムだけで作るアンサンブルが、時にPCで作る音の抽象的な攻撃性にも負けない新しさで我々の脳と身体を揺さぶり続けたのだった。

domico240624-6.jpg

程なくアンコールで登場した長谷川は昼まで降っていた雨について客席に「大丈夫でした?」と問うと「はいっ!」と元気な返答があり、笑いが起こる。興奮状態だがフランクなムードが心地よい。やおら出てきたさかしたが位置に着くと、メロディも歌詞も比較的聴き取りやすい「Oh Dive!!」、立て続けにちょっとホラーな音像のイントロから、歌いたくなる懐こいサビを持つ「まいららばい」、そしてプツプツとした単音リフをルーパーで背景にひくと、チョーキングと歌が艶っぽく迫る「問題発生です」のグルーヴが熱を帯び、フロアを沸き立たせたのだった。照明も上昇し、フロア全体が照らされ、ダイナミックなエンディングを演出したが、大方のファンがこの場を立ち去らない。熱いダブルアンコールに応え、二人が再登場。さかしたは自分がチューニングする間、長谷川にインプロビゼーションを命じ、そこにオリジナルテイクからガラッとBPMを上げ、爆裂8ビートに変化した「ねむれよ、ねむれ」が痛快に鳴らされたのだった。エンディングとともに老若男女の黄色い声や叫びが響く。音楽に感応する快感を誰も阻害しない、それがドミコのライブの真骨頂。ここから先、そのライブ体験はより多くの音楽好きを飲み込んでいくだろう。

domico240624-7.jpg

なお終演時間に合わせ、10月から始まる全国ワンマンツアーも発表された。次回も中高生は抽選により無料招待されるので、ぜひトライしてみてほしい。

Text by 石角友香
Photo by 元




(2024年6月26日更新)


Check

Set List

ドミコワンマンツアー2024“異”(下)
2024.6.21 Fri at Spotify O-East

01. 不眠導入剤
02. 旅行ごっこ(ぐだぐだ)
03. てん対称移動
04. ペーパーロールスター
05. まどろむ
06. まどろまない?
06. 無人島でつかまえて
07. Sea side, Morning-Hotel is fire
08. 服をかして
09. のらりつらり
10. 鯨の巣
11. haii
12. 深海マリアナ海溝旅行にて
13. 血を嫌い肉を好む
14. びりびりしびれる
15. なんて日々だっけ?

~ENCORE~
01. Oh Dive!!
02. まいららばい
03. 問題発生です

~ENCORE2~
01. ねむれよ、ねむれ

Live

「ドミコ ワンマンツアー2024」

【愛知公演】
▼10月31日(木) 名古屋クラブクアトロ
【福岡公演】
▼11月3日(日・祝) Fukuoka BEAT STATION
【宮城公演】
▼11月6日(水) 仙台 darwin
【北海道公演】
▼11月8日(金) mole
【広島公演】
▼11月14日(木) Reed
【香川公演】
▼11月15日(金) DIME
【大阪公演】
▼11月22日(金) 味園 ユニバース
【東京公演】
▼12月5日(木) Zepp Shinjuku(TOKYO)

前売チケット:4800円(税込)/中高生限定招待0円
※入場時ドリンク代が必要

7/3(水)23:59まで先行受付実施中
チケット情報はこちら


オフィシャルサイト