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進化し続けるギタープレイと表現力。濃厚で美しい極上時間
『さかしたひかるひきがたり』ライブレポート

4月22日(月)、心斎橋・Music club JANUSでドミコのボーカルギター・さかしたひかるの弾き語りライブが行われた。前々日の4月20日(土)と21日(日)には、堺 FANDANGOで『ドミコワンマンツアー2024“異(上)”』のファイナル公演2daysを終えたばかりのドミコ。早くも5月24日(金)からは、全国6カ所で『ドミコワンマンツアー2024“異(下)”』を開催する。EP『異(上)』(今年1月リリース)とEP『異(下)』(4月24日リリース)は、ドミコがこれまで発表した楽曲からセレクトした曲を、最新アレンジで再録・ミックス・マスタリングして完全再構築した作品。さかしたのギターと長谷川啓太(ds.cho)のドラムによる変幻自在なアレンジを常に進化させ、楽曲の世界観とライブスケールを広げてきたドミコは、公演毎にレベルアップし、見る者を圧倒する表現力とカッコ良さを更新し続けている。そんな彼らのスタイルは、さかしたの弾き語りにもしっかりと表れている。既に見たことがある人はおわかりだと思うが、彼の弾き語りは一般的に“弾き語り”といって想像するものを遥かに超えてくる。今回はそんなさかしたの弾き語りライブの模様をレポートしよう。

EP『異()』を提げて行った全国ワンマンツアーのファイナル2daysを大成功で終えた翌日の夜、19時過ぎ。会場の心斎橋JANUSに到着すると、オーディエンスは既に着席スタイルで開演を待っていた。ステージにはスタンドライトと丸テーブルが置かれている。弾き語りということもあってか、会場にはゆったりとした空気が流れていた。

630M0422-87.jpg定刻になり、アコースティックギターを持ってグラサンをかけ、ふらりとステージに現れたさかした。「えー、よろしくお願いします」と一言挨拶すると早速アコギを奏で始め、『のらりつらり』からライブスタート。最初はゆったりと、弾き語りで甘い歌声を響かせる。アコギ1本ゆえに歌声が引き立ち、より生々しく空間を支配する。色気を孕みつつ、丸く転がるような歌声はうっとりと聴き入ってしまうほどの魅力。それだけでももちろん素晴らしいが、彼の弾き語りはドミコのライブ同様ルーパーを多用する。曲の後半、次第にバッキングが激しくなってルーパーで音を重ねていき、しばらくするとまた音数を減らしてハイトーンのゆらぎボイスでしっとりと満たしていった。

630M0422-13.jpg続く『WHAT'S UP SUMMER』では、ルーパーで短いフレーズをいくつも重ねていく。その様子を見ているだけでも面白いし、空間を自由に駆け巡る歌声も気持ち良い。エフェクターでギターの音がバンジョーのような音色に変化して反響し、異国感に誘われていく。まだ2曲なのにこのボリューム感。アコギ1本でこの表現力。一体どうなっているのかとただ感服してしまう。

630M0422-54.jpgかと思えば『マイララバイ』はルーパーを使わず、シンプルに弾き語る。カントリーミュージックのようなアレンジで豊穣なひと時を作り上げると、とろけるようなハイトーンボーカルと柔らかな反響が海の中にいるような情景を描き出した『ロースト・ビーチ・ベイベー』、ノスタルジックであたたかな雰囲気に包まれた『怪獣たちは』まで、ルーパーなしで歌い上げた。続く『あたしぐらいは』では、紫色の照明が星空のように灯り、ラグジュアリーな雰囲気を演出する。ゆらゆらとゆらぐフェイクも美しく、オーディエンスはひたすら聴き入る。後半はルーパーとエフェクターを使い、聖歌隊のコーラスのような神々しさと上昇感のあるギターの音色で会場全体を包んでいった。そこに絡まるさかしたのねっとりとした歌声。1曲の展開を練り上げるのはバンドでも弾き語りでも変わらない。ステージから放たれる独自の音の世界に、すっかり引き込まれていった。

さかしたは一切MCを挟まず、曲を終えると時々「ありがとう」「センキュー」と言うのみで、どんどん楽曲を紡いでいく。

630M0422-32.jpg<だらだらだら><からからから>と語感の気持ち良い『ねむれよ、ねむれ』は、少し疾走感のあるギタープレイでメロディックに歌い上げる。メリハリのきいた緩急で切なさが増し、オーディエンスは本当に子守唄を聴いているように音の波に身を任せていた。冒頭のパートを少し早口で挑戦的に歌った『なんていうか』では、たっぷりとした包容力も見せつつギターをかき鳴らす。途中、バッキングギターの上にリードギターを重ねた時の音のまとまりには完璧に魅せられた。もはや歌詞も意味をなさず、歌声も楽器のひとつとして聴こえてくる。さかしたもだんだん熱が上がり、バッキングも加速して叫ぶように声を張り上げて歌う。照明はエモーショナルに光量を増し、MAXに高まったところで再びスピードをゆるめ、楽曲をフィニッシュ。なんという美しい情景。これにはオーディエンスも「フー!」と拍手喝采。また、しばし低音でグルーヴィーにギターをかき鳴らした『深海旅行にて』では、クールな渋さも感じさせる。真剣な眼差しで歌う姿は野性的な色気が潜み、情熱的な早弾きから強弱をつけてだんだんフェードアウトしていく終わり方が、痺れるほどにカッコ良かった。

630M0422-93.jpgやがてライブも後半戦に突入。『旅行ごっこ』を経て、『プトレマイオシー』へ。喋るように歌うさかしたの歌声を聴いていると溶けそうになるし、何かを飛び越えてしまいそうになる。<桃源郷>や<大気圏>という歌詞や、目の前で起きている音楽のコミュニケーションがそうさせるのだろうか。大きなストロークからルーパーでギターを重ね、見事な音の波を作り出した『haii』は曲の繋ぎ方もダイナミックだ。ごくシンプルでメロディアスなリフを重ねたと思いきや、どこからか聴こえてくる「ゴォォォォ」という歪みサウンド。さかしたから繰り出されるサウンドは、本当に魔法みたいだ。

630M0422-11.jpgそして、ドミコのライブでも終盤に演奏されることの多い『ペーパーロールスター』を披露。1番は普通に弾き語りで歌い、ここから至極のルーパータイムへ突入する。同じフレーズの繰り返しから高音と低音が入り乱れ、そのうちじわじわと時間の感覚がなくなり始める。照明が視界を明るく照らし、ピロピロと細かなフレーズがさらに重なり、オーディエンスも没入しきったところで曲に戻り、一気に現実に引き戻す。実に7分にも及ぶ深く潜る時間。毎度のことながら、この曲はトリップ率No.1だ。曲が終わるとオーディエンスからは大拍手&大歓声が贈られた。さかしたは「じゃ、ラスト。あざした」と述べて、『くじらの巣』で本編を締め括る。喉の奥からふり絞られる歌声と荒々しいバッキングはとても身体的。後半は思い切り加速し、苦しそうな表情で高音を歌い上げた。

630M0422-22.jpgすぐさま起こったアンコールを求めるクラップに応えてステージにカムバックしたさかしたは「ありがとうございます」と一言述べて、『猿犬蛙馬』を突き刺すような歌声で弾き語る。そして『マイダーリン』をゆったりと歌い上げ、スッとステージを後にした。

さかしたの弾き語りはエレキギターを使う時もあるし、お酒を飲んでラフに歌う時もあれば、今回のようにどっしりと楽曲に対峙する時もある。即興性が高く、おそらく彼の気分とコンディションによって、毎回違った表情を見せてくれるのが大きな魅力だと思う。この日はルーパーを駆使して芸術性の高い表現力を見せる曲と、シンプルに弾き語る曲のバランスが素晴らしく、会場を後にしてもしばし余韻に包まれるような、濃厚なライブだった。

630M0422-83.jpg

524日(金)からは、さかしたの地元の岩手・WAVEを皮切りに全国6カ所で『ドミコワンマンツアー2024"異(下)"』を開催する。関西は614日(金)のumeda TRAD。刻一刻と進化し続けるドミコとさかしたの弾き語りを、ぜひその目と耳で体感してほしい。特に最近はさかしたの考えで、中高生のチケット代が無料のことも多いので、学生のうちに、生の彼らの音楽に一度触れてみてほしいと願う。

Text by ERI KUBOTA
Photo by 松本いづみ




(2024年5月23日更新)


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Set List

01. のらりつらり
02. WHAT’S UP SUMMER
03. マイララバイ
04. ロースト・ビーチ・ベイベー
05. 怪獣たちは
06. あたしぐらいは
07. ねむれよ、ねむれ
08. なんていうか
09. 深海旅行にて
10. 旅行ごっこ
11. プトレマイオシー
12. haii
13. ペーパーロールスター
14. くじらの巣

EN1. 猿犬蛙馬
EN2. マイダーリン

Live

ドミコワンマンツアー2024 " 異 " (下)

【岩手公演】
▼5月24日(金) club change WAVE
【静岡公演】
▼5月30日(木) Live House 浜松 窓枠
【熊本公演】
▼6月1日(土) 熊本Django
【福岡公演】
▼6月2日(日) LIVE HOUSE CB

PICK UP!!

【大阪公演】

▼6月14日(金) 19:00
umeda TRAD
オールスタンディング-4800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※4歳以上は有料。3歳以下は保護者同伴の元、鑑賞可能な場合は無料で入場可能。
※スタッフの指示に従って頂けない方は入場をお断り致します。
※会場内の写真や映像が公開される可能性がございますのでご了承ください。
[問]GREENS■06-6882-1224

【東京公演】
▼6月21日(金) Spotify O-EAST

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「PSYCHIC FES 2024」

【大阪公演】
BIGCAT/他
スタンディング-6000円(ドリンク代別途必要)
スタンディング-6800円(ドリンク代別途必要)
[出演]梅田サイファー/Order From Minor./ガガガSP/SuiseiNoboAz/the dadadadys/トップシークレットマン/ネクライトーキー/THE BACK HORN/PK shampoo/PURIKURA MIND/山田亮一/浪漫革命/アルカラ/かずき山盛り/加速するラブズ/小林私/TENDOUJI/ドミコ/the bercedes menz/夜の本気ダンス/LOSTAGE/KALMA/多次元制御機構よだか/TEMPLE/No Fun/Mega Shinnosuke/目やに!/RAZORS EDGE
[問]GREENS■06-6882-1224

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PEDRO 2MAN TOUR「浪漫乾杯会」

【大阪公演】
▼7月18日(木) 19:00
GORILLA HALL OSAKA
一般チケット-6000円(整理番号付、ドリンク代別途要) U18チケット-300円(当日要身分証、整理番号付、ドリンク代別途要)
[ゲスト]ドミコ
※未就学児童は入場不可。
※リフト、ダイブ、サーフ、モッシュ禁止。
※写真撮影、動画録画、録音禁止。18歳以下対象のチケット。入場時、身分証チェックあり。顔写真付き身分証明書を必ずご持参ください。顔写真付き身分証明書がない場合は、年齢が確認できる身分証明書をご持参ください。ご掲示いただけない場合はご入場いただけません。
[問]GREENS■06-6882-1224

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