インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 恒例の京都磔磔『響都ノ宴』で実感! 新体制の怒髪天、聴くなら今! 


恒例の京都磔磔『響都ノ宴』で実感!
新体制の怒髪天、聴くなら今! 

2008年秋より京都・磔磔で毎年開催している怒髪天の恒例企画『響都ノ宴』。「いいものはいい」をテーマにドリームマッチを繰り広げ、これまでも斉藤和義、ホフディラン、The Birthday、木村充揮、ウィルコ・ジョンソン、人間椅子、女王蜂などなどなど錚々たるミュージシャンと共演。また、10周年の2017年には10日間にわたって開催、2019年4月30日・5月1日には平成最後と令和最初のワンマンライブを行うなど、磔磔と一体となって数々のインパクトを残してきた。2024年は『磔磔50周年記念×怒髪天 presents 響都ノ宴 "押せば生命の泉谷湧く"』と題して5月15・17・18日に開催。初日には、怒髪天結成40周年にして初めての泉谷しげるとの対バンが実現した。

命の源泉が湧いたー! 泉谷しげるが圧巻のライブで魅了



6301_1NB_9168.jpg
5月15日。この日、磔磔内は開演前から熱気が漂っていた。開場SEにじっと耳を傾けていたところ、「あ? これもう入ってる?」と怒髪天・増子直純(Vo)の声がスピーカーから聞こえてきた。磔磔に集う人々の頭上にビックリマークが一斉にともる。何事か!?と思っていたところ、「泉谷さんたっての希望で開演15分前から楽屋トークをすることになりました」とのアナウンス。ほどなくして「バカヤロー!」と泉谷の第一声が響き、笑い声と拍手に包まれた。「老人だからって頭ごなしに声が出ないとか、プレイができないとか思わない方がいい」と泉谷。開演時間になると「こうやって出ていくのも初めての経験」と言いながら、そのまま磔磔の階段を下りてきた。

6302_1NB_9212.jpg6303_1NB_9245.jpgフロアに降りる前には深々と一礼し、「こんちは、こんちは」と観客に挨拶しながらステージに向かった。「やっちゃいますよ!!」と一言放つと、「怒髪天が大好きでーす!」といたずらな笑みを浮かべてからの『業火』熱唱。得体の知れぬパワーがメラメラと立ち込める。その気配は怒髪天との親和性の良さも物語っており、もっと早くに実現していてもおかしくなかったなと思った。が、このタイミングが正解なのだろう。2024年5月15日だからこそ実現したドリームマッチだ。4曲目の『眠れない夜』ではアコースティックギターからエレキギターに持ち替える。音の厚みがぐっと増す。ギターをかき鳴らし鋭い眼光でフロアを見つめる泉谷。続く『Dのロック』でも強烈な熱を放出、その姿はまさに枯れることを知らない命の泉、しかも温泉。熱湯注意、頻繁に間欠泉のごとく噴出するから気が抜けない。ドラムの板谷達也と二人、観客全員が束になってかかっても、いとも簡単に突っぱねるような音圧で存在感を見せつけた。

6304_1NB_9532.jpg6305_1NB_9607.jpg

「頑張りますよ、私も。一番年寄りだけど」とつぶやき、最後の曲『春夏秋冬』を。深い水の底にもぐりこんだような静けさが一瞬にして漂う。観客の誰もが「一音も聞き逃すまい」と聴き入っているようにも見えた。「お前らもよ、ここに来るまでよ、いろいろ大変なことがいっぱいあったろ。これからもよ、厳しいことがいっぱい待ってるかもしれない。だからよ、だからよ、せめて今日を自分の今日にしろ。自分だけの今日に向かって、そっと歌え」と泉谷が煽る。すると、ぼそぼそと小声によるサビの合唱が始まった。小さな声でつぶやくように歌う観客の後姿はまるで祈りを捧げているようだ。シャツの白さも相まってステージの泉谷が聖職者に見えた。

6306_MK4_3208.jpg


泉谷しげるとの共演...怒髪天の夢が叶った夜



怒髪天の出番だ。サポートメンバーを迎えた新体制の音を聴くのは初めてだったので、最新の彼らが全く想像できなかった。ステージに増子、上原子友康(G)、坂詰克彦(Dr)、そして"本日のサポートメンバー"亜無亜危異・寺岡信芳(B)が並んだ。

『男の華』で『響都ノ宴』での"新生・怒髪天"一発目の音を轟かせた。ギッチギチに締め上げた寺岡の力強いベースが唸り、フレームから飛び出すように増子がせり出してくる。坂詰のドラムがはずみ、上原子のギターが煌びやかな色を塗り重ねる。そして、今さらながら増子のだみ声も"バンドの音"であることを思い知る。それは初めて"バンドの音"を聞いたような衝撃でもあった。

6309_1NB_9976.jpg時間は流れ続ける。それでも前に進む。アンセム『酒燃料爆進曲』ではさらにギアを思いっきり上げて進んでいく。増子の握りしめた拳に力が入る。サビで声を合わせると増子はギュッと目をつむり、親指を立てる。一体感と信頼感。観客との阿吽の呼吸。それはいつもと変わらぬ怒髪天だが、どこか新しい。その鮮度にいつにない手ごたえを感じ、言葉にならない高揚感を味わった。今の怒髪天を聴いてほしい。この職人集団の凄みを、ライブハウスで体感してほしい。怒髪天はおもしろくて、最高にかっこいいバンドだ。

63011_1NB_0329.jpg

MCでは改めて寺岡を紹介。2カ月で54曲を覚えたとのこと。この3日間でさらに10曲プラス。「気軽に」と言われてサポートメンバーになったが、この量だ。「詐欺に合ってんのかな?」と懐疑的になる寺岡。「ベースが変わったことで、曲の解釈も異なる。昔の曲も新鮮」と増子。本当にその通りで、曲が生まれ変わったように思う。が、どの時代の曲も怒髪天であることも確かだ。その変遷を見続けていられることに奇跡を感じた。
そして「俺の憧れ。あんな素敵なダンディーはいない」と泉谷との対バンに声を弾ませる増子。「楽屋ではすごくおしゃべりで、德永英明だった!」ととく。その心は「壊れかけのRadio」。今宵も増子は舌好調。

図らずも今の怒髪天を表すものとなった最新曲の『ザ・リローテッド』。メンバーの解雇という晴天の霹靂に「結成40年にして、こんなことあるんや...」と一時は言葉をなくしたが、この日、どんな形になろうとも前進することを決め、再装填した怒髪天を見た。「立ち止まる」という選択を取らなかったことは、本当に頭が下がるし、感謝の念に堪えない。今、持ち合わせている気概を力強い音で示す怒髪天。ライブが進むにつれ、サウンドは共鳴と反発を繰り返しながら、ますます熱を帯びていった。

63012_1NB_0471.jpg泉谷を再びステージに迎えた。ステージに上がった泉谷は突如、上原子とギターの打ち合わせを始める。嬉しそうな笑顔で応じる上原子。やがて泉谷がくるっとフロアの方に向き直り、満面の笑みを浮かべた。さあ、準備は整った。増子が「リハで涙腺緩んだ」という、どうしても歌いたかった泉谷の曲、『土曜の夜君とかえる』を。上原子は泉谷に目を配りながらギターを鳴らし、坂詰のドラムも心なしか慎重で丁寧だ。寺岡のベースは一転、優しい音色となって下からぐっと支える。サビで泉谷と声を合わせた増子は、汗か涙か、間奏中に親指で左の目頭をぬぐった。そして「最高です!」とキラキラした表情で喜びをあらわにし、「右を見たら泉谷さんと亜無亜危異! 後ろを向いたら食いしん坊!」と、奇跡的な一夜を笑いに変えた。

63013_2NB_7228.jpg

泉谷の『翼なき野郎ども』では、泉谷と増子の声が徐々にシンクロしていく。憧れの人を前にして怒髪天の3人は少年に戻っているようだ。最後は「泉谷さいこ~!」「増子さいこ~!」と両者ともに称え合い、坂詰もスタンディングオベーションでリスペクト。泉谷は「また一緒にやりましょう!」と約束し、ステージを去った。

この日の最後は、増子のありったけの咆哮で始まった『ド真ん中節』だった。怒髪天という星を見上げていれば、暗い森の中でも迷うことはないと信じている。怒髪天は、私にとって北極星のごとく指針となる存在だ。その光を見つけられたことを幸せに思う。拳を振り上げながらそれぞれのど真ん中を突き進む、渾身の一曲で締めた。



『響都ノ宴』最終日は怒髪天ワンマンで臨界点を越えたー!



続いては楽日である5月18日の模様をレポートしよう。「よく来たー!」と、増子のおなじみの挨拶からスタート。1曲目の『あおっぱな』から増子と寺岡が向かい合い、紙相撲のようにとんとんとステージを飛び跳ねる。この躍動感も妙に新鮮だ。つられてこちらもテンションがぐんぐん上がっていく。そして疾風の勢いで10曲目の『GREAT NUMBER』までなだれ込んだ。

63014_MK4_3571.jpg初日と同様、磔磔は熱気を帯びていく一方だ。『響都ノ宴』が始まって今年で16年、それ以前も含めると磔磔と怒髪天の関係は20年近くになる。そのすべてを観てきたわけではないが、祝杯を交わす瞬間もあれば、献杯する夜もあった。直近で言えば、磔磔築100周年の3年後にコロナ禍が訪れ、人が集まるべく場に集まれないという未曽有の出来事もあった。怒髪天も磔磔のフロア全体をステージにしての無観客配信ライブを行った。今思えば、それはそれでレアなライブ体験ではあったが、やはり今、目の前に広がる光景がすべて。人がいてこそライブハウスだとつくづく感じた。人と建物は呼応する。無数の声を無尽蔵に吸い込んでいく磔磔は、いつにも増して生き生きしているように見えた。

63010_1NB_0113.jpgステージとフロアの共鳴が臨界点を超えたのが、『GREAT NUMBER』だった。人生を航海にたとえて歌ったこの楽曲、ステージの向こうに荒れ狂う大海原が現れた。船長の増子を先頭に、その荒波を全員で突っ切っていく。会場のかけ声が一つになり、目の前に広がる難局を力の限り乗り越えていく。私は会場の一番後ろにいて、観客の声はステージの方に向かっているというのに、その気迫に圧倒されそうだった。拳を振り上げ、声を出す。それはもう「歌に合わせてノル」という次元を超え、原始的な祈りでもあった。人の数だけ人生があり、怒髪天の歌にそれぞれの生きざまを重ねる。『GREAT NUMBER』に限らず、私が見た光景は終始、磔磔に居合わせた全員が作り上げたモザイク画であったと思う。

4008_2NB_7048.jpg『杉並浮浪雲』に続いては、泉谷との対バンでも披露した『翼なき野郎ども』を。初日とは打って変わって、開放感に満ちている。3日目にして完全にものにしている感じに、カバー曲が熟成されていく醍醐味を味わった。サビの歌詞に合わせて小指を立てる増子もなかなか珍しい。

ステージが茜色に染まると、静かなレクイエムの『サンセットマン』が始まった。直前の思い出話が尾を引いてか、歌い出しからまもなくして「ああ...」と言葉につまる増子。すると会場から歌声が自然発生し、冒頭のワンコーラスを導いた。怒髪天のファンを表す"界隈"。それは界隈と怒髪天の確かな信頼関係が音になった瞬間だった。曲中、ブルージーなギターが磔磔の空中を漂い、ドラムとベースが静かに足元を流れてゆく。今にも泣きだしそうな増子の声が胸に迫る。喜びも悲しみもハレもケも混然一体となっているのが怒髪天だ。さっきまで振り上げていた拳で目元を覆う。

63015_1NB_0880.jpgさて、宴もたけなわ、感情豊かな怒髪天のライブも大団円へ。上原子の寸止めギターでおなじみの『サスパズレ』で組んづ解れつ、てんやわんやの大騒ぎ。増子はこれでもかというほどのどや顔でフロアを練り歩き、界隈に囲まれてどこにいるのか見えないほどだ。界隈たちはギリギリまで延ばしたマイクのコードを点々と頭上にかかげて増子の道を確保する。ワイヤレスの時代になんてアナログなんだろうと笑えてくる。そうやってみんなでえっちらおっちら、世知辛い世を乗り越えていきたい。

終演SEは転んでもタダでは起きない『どっこいサバイバー』だった。この曲もまた今の怒髪天を表す最たるものだろう。SEが流れる中、磔磔の階段半ばで立ち止まり、フロアとステージに向かい体を直角に曲げて黙礼する増子。約30秒、その胸にはどんな思いが去来していたのだろうか。知ろうとするなんて無粋の極みか。またライブハウスで会いましょう。合言葉は「生きてまた会おうぜ」。

Text by 岩本
Photo by 渡邊一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)
写真は2024年5月15日の模様。




(2024年5月29日更新)


Check

Live

「ザ・リローデッド TOUR 2024」

【東京公演】
▼6月20日(木) 渋谷CLUB QUATTRO

PICK UP!!

【大阪公演】

▼6月22日(土) 17:45
umeda TRAD
オールスタンディング-5900円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可(小学生以上のご入場される方全てにチケット必要)。
※写真撮影、録音・録画禁止。
[問]清水音泉■06-6357-3666

【愛知公演】
▼6月23日(日) 名古屋クラブクアトロ
【北海道公演】
▼6月26日(水) BESSIE HALL
【新潟公演】
▼7月6日(土) GOLDEN PIGS BLACK STAGE
【福島公演】
▼7月7日(日) Hip Shot Japan
【宮城公演】
▼7月15日(月・祝)仙台darwin
【石川公演】
▼7月20日(土) 金沢AZ
【長野公演】
▼7月21日(日) 松本ALECX

※下記公演の詳細は後日
【群馬公演】
▼10月5日(土) 高崎Club JAMMER’S
【和歌山公演】
▼10月9日(水) 和歌山CLUB GATE
【広島公演】
▼10月11日(金) セカンド・クラッチ
【岡山公演】
▼10月14日(月・祝) 岡山ペパーランド
【北海道公演】
▼11月2日(土) ペニーレーン24
【北海道公演】
▼11月3日(日) ペニーレーン24
【大阪公演】
▼11月16日(土) 心斎橋BIGCAT
【東京公演】
▼11月23日(土・祝) Zepp Shinjuku (TOKYO)
【沖縄公演】
▼12月7日(土) Output
【沖縄公演】
▼12月8日(日) Output


「怒髪天 presents 中京イズバーニング 2024 "我ら発狂目覚ましくるくる楽団"」

【愛知公演】
▼8月11日(日・祝) 池下CLUB UPSET
[共演]the原爆オナニーズ
【愛知公演】
▼10月25日(金) 池下CLUB UPSET
【愛知公演】
▼10月26日(土) 大須演芸場


「怒髪天 presents BAKA CLASICO 2024」

【神奈川公演】
▼8月30日(金) F.A.D YOKOHAMA
【神奈川公演】
▼8月31日(土) F.A.D YOKOHAMA

チケット情報はこちら


Check!!