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“今の年齢感ならではの音楽を聴いてほしい”
人として、音楽家として重ねたものが昇華された1枚
荒井岳史がソロアルバム『7years』を語る

the band apart(以下、バンアパ)のギターボーカル・荒井岳史が、2017年リリースの3rdフルアルバム『will』以来、約7年ぶりに4枚目のソロフルアルバム『7years』をリリースした。the band apartとしては昨年25周年を迎え、アコースティックバンド編成のthe band apart(naked)での活動も並行しながら、制作を続けてきたソロ活動。荒井にとって今作はソロの集大成でもあり、歳を重ねたからこそ歌える内容を詰め込んだ1枚となった。荒井は収録された8曲について、“今聴いてほしい曲を集めた”と語る。彼の音楽人生において、ソロ活動はどのような意味を持つのか。楽曲制作の裏側と併せて話を聞いた。

3部作を経て、心のまま素直に制作した4枚目のフルアルバム



ーー今作はソロとしては約7年ぶりの作品になるんですね。完成してどんなお気持ちですか?

7年空いたからタイトルも『7years』なんですけど、7年も空いたんだなという感覚がすごくあります。随分久々の感じですね」

ーーその間も、バンアパやthe band apartnaked)の活動で忙しくされていたんですよね。

201712月に前作のソロアルバム『will』が出たんですけど、翌2018年はthe band apart20周年で忙しくさせてもらっていて。2019年も比較的ライブが多い中で、ソロ活動としては会場限定で手売りする2曲入りの弾き語りCDを出すぐらいで、もう全然バンドの方が比重が大きくて。そこから丸3年コロナで持っていかれて。コロナ禍は皆さん大変だったじゃないですか。the band apartもスタジオワークをやって、月に1回シングルを出したりする中で、20周年から忙しかった2年プラス、コロナの3年で、気付いたらゆうに5年以上経っちゃってた。世の中が戻り始めてきて、時間的に若干いけるかなというタイミングが出てきて、さすがに新しい作品を作りたいなという気持ちになって、今作を作った感じですね」

ーーあまりソロの制作をする時間が取れなかったんですか。

「やっぱりthe band apartの活動が活発で、コロナ禍も無観客配信ライブをやったりと結構積極的に動いていたので、制作の時間はそんなになくて。でもコロナが始まってすぐの頃から『Fanicon』というフォーマットで個人の配信を始めて、それでソロ活動のモチベーションをキープしていました。全く時間がなかったわけではないんですけど、ソロでアルバムまで作るモードじゃなかったかもしれないですね」

ーーバンドの方が割合を占めていたと。

「そうですね。やっぱりそういうふうになっていました」

ーー2013年から10年以上ソロ活動を続けておられますが、ソロも荒井さんにとっては大切な活動になってきていますか?

「そう思いますね。制作に関しては、バンドもソロもやるとなると忙しくなって時間的な制約はあるけど、単純に活動を複数やるメリットとして、気持ちに余裕ができますよね。俯瞰でもう片方を見れるようになる。それは結構良いことだと思ってます。1個しかないと、そこで自分の色んな気持ちを全部賄わないといけなくなるというか。ソロをやることでフラットになって、より純粋になっていくし、バンドのモチベーションにもなると思います」

ーーソロとバンドは意識的に分けていらっしゃると過去のインタビューでおっしゃっていましたが、そこは変わらず、今は住み分けもされている感じですか?

「さすがに10年ぐらいやってたら、自然と住み分けはできるようになりましたね。今までミニアルバム1枚、フルアルバム3枚出して、今回出したのが4枚目のフルアルバムなんですけど、3枚のフルアルバムは曲調もアレンジも含めて、かなり意識的に"いかに違うことをやるか"を念頭に置いて制作したんですよね。そこから7年空いた今振り返ると、この3枚は"色んなことにチャレンジした3部作"ということで、一旦区切りをつけてもいいなという気持ちになって。だから4枚目の制作は、そこまで"違うものをやろう"みたいな気持ちが先行して作ったものではなかったです。出てくるものを形にするというか。あとやっぱりthe band apartの一員としてのフィルターから外に出てくるものと、ソロでドラムの一瀬(正和)さんとベースの村田シゲにサポートしてもらうフィルターから出てくるものの違いはすごくデカいので、似たりよったりのものができる気が全くしなかった。自分の中でその確信があったので、あまり違うことをやろうとは考えてなかったです。だからもう素直に作りましたね」



7年間で、聴いてもらう人のことを意識するように



ーー今回収録されている8曲は、いつ頃制作されたんですか?

「半分ぐらいは既存曲というか、7年の間にできた曲で、もう半分は2023年の夏以降から年明けぐらいまでの数か月で作りました」

ーー具体的には?

「『blueM-1)』『夜明けまで(M-5)』『バカと飾り(M-7)』『リフレイン(M-8)』の4曲が、2023年後半から年明けにできた曲ですね」

ーーこれまでは□□□の三浦康嗣さんがプロデュースをされていましたね。

「今回に関してはセルフプロデュースですね」

ーー作詞作曲も全て荒井さんが?

「ほぼ。1曲、the band apartの『disappearing man』のセルフカバーがあるんですけど、それもオマージュぐらいの大胆なカバーをしていて、歌詞も英詞から日本詞になって、かなり意訳っぽい感じになってるので、クレジット上自分ということにしちゃってます」

ーー新たな旅のイメージということで作られたそうですね。

2013年に1番最初に自主で出したミニアルバム『sparklers』の感じで作りたかったというか。ミニアルバムの後のフルアルバム3枚を、色んなことに挑戦した3部作とすると、原点に立ち戻ってまたイチから新しいものをやっていくみたいな感覚ですね」

ーー区切りがついたということですか?

「単純に、時間がすげえ空いたというのはデカいと思います」

ーー色々考える余裕ができた?

「考える余裕と、ソロをやってることに対しての受け止め方が7年前とはだいぶ違うので、そこに対しての気持ちですかね。7年の1番大きな変化は、もちろんバンドにも通ずることなんですけど、聴いてもらう人のことを意識するようになりました。それは決して"皆こういう曲が好きなんじゃないの?"ということじゃなくて、もちろん自分が良いなと思うものだけを作ってるんですけど、自分が良いと思うものを聴いてくれる人がいることのありがたみですよね。そこをすごく意識して制作しましたね」

ーーなるほど。

「候補の曲は8曲以上あったんですけど、ただ曲をいっぱい入れるというよりは、"今これを聴いてほしい"という曲を選ばせてもらいました。誤解を恐れずに言えば、アルバムとしてだらだら長いものを作るのも、ちょっと嫌だったんですよ。僕もそういう節がありますけど、今は時代的にも長いものを聴くより、ある程度スパっと聴けて、でももう1回聴きたくなるものを作りたかったので、曲を限界まで削らせてもらいました。聴いてくれる人への俺なりの配慮かもしれないですね」

ーートータル26分ですが、体感15分ぐらいで聴ける1枚でした。

「ありがたいですね」

ーー"今これを聴いてほしい"と曲を選んだ観点は、何かありましたか?

「歌詞の内容はもちろんですけど、僕は今年46歳になる年で、今の歳だから歌えるようなことが多くなってきたなと感じる部分があるので、そこを聴いてほしいなと。あとは、7年の集大成的なものにもしたかったんです。ソロのライブでよくやる定番の曲がこの7年の中で出てきたりして、そういうものはやっぱり収録したい。集大成的な意味合いで聴いてほしいというのと、今の自分の年齢感ならではのものを聴いてほしいという、この2つですかね」



世の中を憂いても、それだけで終わっちゃダメだよなという感覚を持っていたい



ーーリード曲の『blue』は爽やかな幕開けの楽曲ですね。

「『sparklers』というミニアルバムを思い出した時に、1曲目(『駆け抜ける蒼』)がこういう疾走感のある曲だったので、それになぞらえてじゃないですけど、"これ1曲目っぽいかな"と思って1曲目に配置しました。曲としてはもうほんと素直に、何も考えずに作ったらできた感覚です。歳をとって、"今、相当激動の時代を生きてるんだな"と思うようになった時に、何となくそれを抽象的なイメージでキャッチして、バーッと言葉を繋げて歌詞を書いた曲ですね」

ーー<言えない言葉多すぎて>とか。

「例えば今はテレビでもSNSでも、公の場での発言をすごく制限される世の中というか。元々言っちゃいけないことはあると思うけど、SNSが色々溢れてる割には荒れるから、僕を含め、普通に暮らしてる人の言葉にものすごく制約がかかるのは、不思議な状態だよなという。色んな人が発言できるからこそ制約がかかるという意味はわかるんですけど、すごく違和感を感じる。その言葉を書いたのは、そんな気持ちだと思います」

ーー炎上を気にして発言しないといけないというか。SNSを見てるだけでも疲れますよね。

「僕はニュースをネットで見ることが多いので、それでSNSを活用してますけど、それでもちょっと嫌になる時はありますね。変な話、やめてもいいと言われたらやめるかもしれないぐらい」

ーーニュースを見にいっても、それ以外の言葉が入ってきてしまいます。

「それでわかることもあるっちゃあるんで、そういうものに関しては我慢してるというか、あまり重く受け止めないようにしてます」

ーーその中で<今はradio聴かせてよ>という一節が気になりました。

「歌詞を考えた時に、パッと思いついたんです。僕、割とラジオ聴きながらジョギングしたり家事したりすることが多くて。走ってる時や家事してる時に、余計な心配事を考えてモヤモヤしたくないじゃないですか。つまり"自分は何も考えたくねえな"ということの表れというか。あと動画を見出しちゃうと、目を持っていかれることが多いから」

ーー動画は情報量が多いですもんね。

「そうなんですよ。ラジオが良いなと思ってるのは、情報過多になるのをちょっと避けてるところもあると思うんですよね。別にラジオに媚び売ってるわけではないんです(笑)。いちリスナーとして、好きで聴いてるだけの感覚です」

ーー世の中のどうしようもなさを憂いながらも、<それでも何かを見出した><このストーリーから降りないで>と、希望が感じられる歌詞でもありますね。

「結局自分で何の救いもないものを作りたくないんです。やっぱりどこかに救いがあってほしいと自分自身が願ってる。なので、世の中を憂うことはもちろんあったとしても、それだけで終わっちゃダメなんだよなという感覚をどこかに持ちたいんですよね」

ーー今作は結構そういうニュアンスの歌詞が多いですね。

「多いと思いますね。短期間で作ってるのもありますけど、あまりどの曲もテーマを決めて書き始めなかったんです。今まではそれこそプロデューサーの三浦康嗣と一緒に、"ベタベタな歌謡曲っぽくしてみよう"とか、言葉遊びみたいな曲を作ってたんですけど、1人でバッとガッと作った時に、ふと降りてきたものを自分でキャッチして組んでいったというか。歌詞は78割書いたら微調整して、辻褄を合わせていく作業をやってましたね」



"曲が降ってくる"という感覚



ーー『夜明けまで』はちょうど真ん中に位置するアコギの弾き語りの曲で、荒井さんの歌い方がパワフルで、感情が乗っていますよね。

「これは1番最後にできた曲なんですけど、音作り的な都合もありつつ、便宜上"せーの"で一気にギターを弾きながら歌録りをやらなかったんです。ギターと歌を別々に弾いて録ったんですけど、ほんと1回ずつぐらいしかやってない」

ーーへえー!

「多少サウンドメイクの修正は入ってますけど、何回も弾いたり歌わないようにして、こなれる前に録っちゃおうと。そのスリリングな感じをお楽しみください、みたいなことです(笑)。この曲はちょっと生々しい感じにしたくて、多少乱暴なぐらいがちょうどいいと思って録音してたんです」

ーーそれはどうしてですか?

「弾き語りが1曲欲しいなとは思っていて、"弾き語りの曲"ということぐらいしか考えずに作ったんですけど、レコーディングエンジニアの速水直樹さんがサウンドメイクをかなりこだわってくれたので、アルバムの中では弾き語りと思えないぐらいガッとくる感じになってる。良いアルバムの折り返し地点になりました」

ーー存在感がありますね。

「唯一この曲だけドラムもベースも入ってないんですけど、サポートメンバーの2人からもすごく好評でした」

ーー歌詞で言いたかったことはありますか?

「この歌詞こそあまり考えずに勢いでバーッと作ったところもあって。昔マイケル・ジャクソンがインタビューで、"曲が降りてくる"みたいなことを言ってて、"そんなことあんのか"と思ってたんですけど、本当に不思議なもので、自分はあんなに偉大なシンガーソングライターじゃないけど、10代の頃から弾き語りをやり始めたと考えれば、もう30年近く曲を作ってる。そうなると、脳の回路で考えているというよりは、急にポンっと降ってきたように感じる感覚があるんです。この曲を作ってる時にそれに近いものを感じて」

ーーまさしく曲が降りてきたと。

「最近よく思うんですよ。"俺、何でこんなこと思いついたんだろう"って。自分が1番不思議。メロディーも歌詞もそうなんですけど、はっきり言って、すっげえ熟考してないんですよ。ある程度の言葉尻とか、音節や母音の関係とか、辻褄をあわせる緻密な作業はあるんですけど、大枠を作る時はもう全然深く考えてない。そういうモードになってる時は、バーッと言葉が出てくるんです。皆さんも普段慣れた作業をやってると、反射というか、考えなくても脳が自動的にその動きをするじゃないですか。別に天才とかじゃなくて、それに近いんだと思う。野球選手がバットを振る時に言葉で考えてないのと同じ。それが良いか悪いかは置いといて、いち作詞作曲家としては一応メロや言葉が出てくる。そんな感覚なんです。だから深層心理的なものが歌詞に出てる可能性はすごく高いです。普段の思考の何かが漏れ出てると思います。『夜明けまで』という曲は、漠然とした世の中に対するイメージですかね」

ーー歌い方に少し怒りのようなものを感じました

「これも憂いの一種というか。さっきも言ったように世の中を憂いてはいるけど、何の希望もない曲を作りたくないので、自分を鼓舞するじゃないですけど、希望のあるパンチラインにしないと報われなさすぎて、自分でも"この曲をまた聴きたいと思えない"と思うから。それは思考回路に近いのかもしれないですね。自分は結構心配性で、不安を感じやすいタイプなんですけど、"だからって今すぐ死ぬわけにはいかないしなー。頑張ってやってくしかねえじゃん"ということと同じだと思う。若い頃にはなかなかこうは考えられなかったと思うんですよ。もっと余計なことを考えてた」

ーー思考がシンプルになってきたんでしょうか。

「それはすごくあると思いますね。コロナになった2020年に、"失業かもしれない"ってすごく思ったんです。"家族がいるのに職を失うな"と思っていたけど、結局じたばたして色んな人に助けてもらって、自分でもある程度頑張って、なんとか音楽を続けられている。ってことは、"不安だけど、とりあえず目の前のことを頑張ってやるしかないんだよな"って。その当たり前のことに、おじさんになって気付いたというか。不安になってもいいけど、目の前にあることはやらないといけない。一生懸命やってりゃ、何かに繋がってくるんじゃないかな。皆さんそうじゃないですか。コロナの時は大変だったけど、その時に皆さん各々頑張ったから、また世の中が戻って、今こうやって普通にお仕事ができるわけで。本当に皆さんから学びましたね」



『disappearing man』をリメイクした『消えゆく男』



ーー『消えゆく男』は、2001年にリリースされたバンアパのデビューシングル『FOOL PROOF』に収録の『disappearing man』の日本語バージョンで、原曲とは全く違うアレンジでカバーされています。

「アレンジはかなり違うけど、2010年に出したthe band apartの会場限定シングル『intoxication e.p.』の中で、このアレンジにかなり寄せてる英語バージョンの『DISAPPEARING MAN pt 2』が入ってるんです。確かリードギターも入ってなくて、僕がギターを弾いて、パーカッションがちょっとだけ入ってるみたいな。4人全員参加してない、エクストラトラックみたいな扱いで作ってて。もちろん正式なthe band apartのアルバムにそのアレンジが入ることはなかったんですよ。でも、僕がソロで何年かの間、そのバージョンで歌ってたんですね。せっかくやるから、英詞じゃなくて弾き語りの日本詞バージョンにして歌ってる間に、ソロでやる回数の方がダントツ多くなって、ライブの定番になりつつあって。あと、the band apart(naked)でこれをやることは多分ないなということになったので、今回ソロの方で引き取らせてもらいました」

ーー今回、改めて日本語訳をされたんですか?

「その歌詞は数年前からありましたね」

ーー訳についてはどんな意識をされましたか?

「やっぱり一音節に対する情報量が英語の方が多くて、元々決まってるメロの長さに全部は入れ込めないので、どうしても意味を凝縮させるか、少しニュアンスを変えるのがいいだろうなと思って意訳にしました。変化球のカバーみたいな感じだと思います。どちらかというと、リメイクに近いかな」

ーー新たな気持ちで歌っているような感覚ですか?

「かなり。最初に原曲を録った時のことは、記憶の隅に追いやられて全然覚えてないので、ほんとに別物みたいな感覚ですね」

ーー続く『バカと飾り』のメロディーは、少し切なさがあって美しいですね。

「個人的に1番良くできた曲かなという、手応えがある曲ですね」

ーーどういうところに手応えを感じられますか?

「さっきも言ったんですけど、この年だから歌える説得力のある歌詞の内容というか。20代や30代の哀愁と40代以降の哀愁は、だいぶ違うと思うんですよね。おじさんになると、当然のことながら甘酸っぱさみたいなものがなくなるわけで。20代ぐらいだと青さがあって失敗も画になるけど、俺なんて失敗したらちょっと見てらんない。今も50代や60代から見りゃ若いんですけど、"人生の折り返しは多分とうに越してて、ここから倍生きるとは思えない"と思うと、この曲ではわっと出てくる色んな感覚がうまく言葉にまとまった感じがして、すごく手応えがありました」

ーー<大事なものはとっくにわかってる>という歌詞は、歳を経ないと出てこないフレーズかもしれないですね。

「そうかもしれないですね。若い頃って、自分が何者かわからなくて彷徨うみたいなことが多いじゃないですか。これはおじさんの良いとこでもあり、悪いとこでもあるんですけど、悪い言い方をすると、歳をとると自分がある程度なんなのか、見限っちゃうじゃないですか。そんな"見限っちゃってるなり"の希望の見い出し方もあるな、という感覚が表されている。それは奢りでもあり、でもまだそれなりに頑張ってるんですよということの表明でもあるのかな」



気にかけて聴いてくれる人に、ちゃんと届くような活動を続けていきたい



ーー最後を飾る『リフレイン』は、アニメの主題歌になりそうなほどの疾走感を感じました。

「ありがとうございます(笑)。狙って作ったというよりは、『blue』で明るく始まったから自然とこういう形になっていったんです。イントロはドラムの一瀬さんが、"最初ギターと歌だけで始まった方がカッコ良いんじゃないの"みたいなことを言ってくれて。今回アレンジ面で一瀬さんと村田シゲに助けられたところは結構デカくて。メインのアレンジは僕がやってるんですけど、細かい部分を詰めるのに2人の意見をかなり参考にして組み立てていったんです。そのアレンジもしっかりハマりましたね」

ーーラスサビ前のギターソロにはバンアパ節も感じられますね。

「確かに2本重ねてる感じはあるので、唯一そこはバンドにも出てきそうなフレーズではあるかもしれないですね」

ーー曲順もこだわりましたか?

「最初『バカと飾り』を最後にしようと思ってたんですけど、『リフレイン』が完成した時に、"こっちかな"となって。適材適所、結構うまくまとまったというか。今なかなかアルバムを通して聴く文化じゃないのかもしれないけど、作ってる方はそれなりに意味を持たせたいので、曲順は結構考えました」

ーー通して聴く気持ち良さがすごくある1枚だなと思いました。

「良かったです。the band apartの時、曲順のことなんか全く考えないので(笑)。大体リーダーの木暮さんが考えてくれて、あまり自分で曲順を考えないので相当悩みました。でも"これしかないな"という感じになったので良かったです。制作が始まった時、完成形を全然想像できなくて、"どうなっちゃうかな"と思ったんですけど、全部通して聴いたらちゃんとまとまっていましたね」

ーー改めて全曲を見てみると、『夜を映したメロディ(M-2)』や『若い愛(M-3)』は、2023年後半以降にできた4曲(『blue』『夜明けまで』『バカと飾り』『リフレイン』)とは雰囲気が違いますね。

「その2曲は割とコンセプティックだったかもしれないですね。『夜を映したメロディ』は今作で1番古くて、2018年か2019年ぐらいに作った曲なんだけど、『若い愛』も多分それぐらいなんですよね。その頃は色々なタイプの曲を作りたいなと思ってた気がします。だからその2曲の歌詞は、実体験を綴ったものではないんです。端的に言っちゃえばフィクションに近い。それに対して他の曲は、もう少し内省的なものが多いと思います」

ーーこれからのソロとしてのビジョンはありますか?

「おかげさまですごくマイペースにソロをやらせてもらってて。結構気にして聴いてくれる方もいるので、そういう人にちゃんと届くような活動ができればいいなと思ってます。音源はちょっと空いたりすると思うけど、ソロの活動自体はそんなに絶やさずに、バンドの合間合間で、今後もマイペースにやっていけたらいいなと思ってます」

ーーちなみにライブのご予定は?

8月に2本ぐらい東京と大阪でライブをやろうかなと。あとは年内、ソロでちょっと聴いてもらえる機会があればやりたいなという感じですね」

ーー楽しみにしております!

Text by ERI KUBOTA




(2024年5月21日更新)


Check

Release

4枚目のソロアルバム『7years』発売中!

3000円(税込)
HMTA-10001

【収録曲】
01. blue
02. 夜を映したメロディ
03. 若い愛
04. ハチガツフツカ
05. 夜明けまで
06. 消えゆく男
07. バカと飾り
08. リフレイン

Profile

荒井岳史(アライタケシ)…1978年生まれ。the band apartのギター・ボーカルとして活動中。2013年より、本格的にソロ活動を開始する。これまでにミニアルバム1枚、フルアルバム3枚をリリース。2024年4月24日に4枚目のフルアルバム『7years』を約7年ぶりにリリースした。他にも弾き語りライブ会場限定での弾き語り音源もリリースしている。

Live

「ソロウフェロウ expand」
【東京公演】
▼5月28日(火) 亀戸文化センター カメリアホール
[出演]フルカワユタカ/荒井岳史/渡邊忍

「四絃一撥ノ巻2024 ~続・有楽町で逢いましょう編~」
【東京公演】
▼8月20日(火) ヒューリックホール東京
[出演]荒井岳史/Keishi Tanaka/ホリエアツシ/村松拓

「四絃一撥ノ巻2024 ~石川旅情編~」
【石川公演】
▼8月21日(水) 粟津演舞場
[出演]荒井岳史/Keishi Tanaka/ホリエアツシ/村松拓

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